【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞 作:牢吏川波実
「フロック、クルト、どうして二人がここにッ!?」
目を覚ましたのび太が、何故フロックとクルトの二人がここにいるのかを聞こうとした。その次の瞬間にはその身体を勢いよく締め付けられる。その理由は。
「のび太! 目ぇ覚めたかぁ! こんにゃろぉ、心配かけやがって!!」
「のび太ぁ!」
「のび太さん、良かった……」
「い、痛い痛いよジャイアン!」
と、ジャイアンがとてつもない力で抱き着いてきたからである。他にもスネ夫や静香の姿も見える。静香は、その目に涙を浮かべているほどで、その喜びようから三人がどれだけのび太の事を心配していたのか分かる。友達だもの、当然のことだ。
「ここは……」
「タスクも、目が覚めたみたいだね」
「ジャスミン、マギー、メイ……ここは、まさか≪アウローラ≫の中か?」
「いや、≪アウローラ≫はまだこの隣を泳いでる。ここは、他の船の中さ」
と、のび太の隣で横になっていたタスク。よく見ると右奥にも誰かが眠っている姿があるのだが、ソレが誰なのかはまだ分からなかった。
とにかく、タスクはその場にいた自分の知り合い三人の名前を呼び、自分が今いる場所の把握に入った。そうか、と締め括ったタスクの代わりにのび太が聞く。
「あうろーら?」
「まぁ、簡単に言えば潜水艦さ」
「潜水艦?」
「その通り。≪アルゼナル≫の機能は完全に停止したからね」
≪アウローラ≫。それは、≪アルゼナル≫の地下に極秘裏に配備されていた大型潜水艦である。
聞くに、≪アルゼナル≫は無人兵器による攻撃と、白兵戦の影響によりそのまま居続けることが困難になるほどのダメージを負った。そして、またいつ攻撃が開始されるか分からなかったため、≪アルゼナル≫を放棄、つまり捨てて生き残っていた全員がこの船と、もう一つ≪アウローラ≫の中に逃げ込んで、今はどこともない場所を潜水しているらしい。
「残ったのは、わずかな≪パラメイル≫とこの船、≪ジャスミン・モール≫の売れ残りに、そしてヴィルキスだけよ」
「ヴィルキス? そうだ、アンジュは!?」
タスクは、ジャスミンのその言葉にアンジュの事を問いただした。果たして、自分たちが攻撃されて、あの後どうなったのかと。本来彼は≪ヴィルキスの騎士≫の名誉をいただいていた男だ。だから、ヴィルキスを守れさえすればそれでいい。しかし、今の彼にとってはもうそんなものどうだってよかった。
アンジュが無事かどうか、自分の希望がどうなったのか。ソレをただ聞きたかったのである。
だが、彼の問いに対してその場にいる全員が暗い顔をし、そして代表するかのようにジャスミンが一度目を瞑って言う。
「……連れていかれちまったよ、あのロボットと一緒に、エンブリヲに」
「ッ!?」
なんてことだ。あの男に、みすみすアンジュの身柄を渡してしまったなんて。こんなことなら、あの時助けていれば。
いや、そうしろと言ったのはアンジュの指示だし、もしあそこでアンジュに固執していたら、今横にいる少年を助けることもできなかっただろう。だから、ソレを考えれば、アンジュの言う通りに彼の命を守ることができたことを喜ぶべきだ。
話に聞いているエンブリヲの性格の事だ。早く助けに行かなければ、そう、気が焦ってもおかしくないがこういう時こそ冷静にならなければならない。
それに、アンジュは強い女性だ。きっとどれだけ屈辱的な行いをされていたとしても、絶対にその心を動かされたりなんてしない。タスクはそう信じるしかなかった。
「ロボットって……まさか」
そして、のび太はジャスミンの言ったロボットと言う言葉に反応した。あの場にいたロボットと言えば、一人しかいないからだ。
「そう、ドラえもんの事さ……」
「ッ! ドラえもん……」
「僕たちじゃ、どうすることもできなかった……ゴメン、のび太……」
「そんな、フロックたちのせいじゃないよ!」
と、顔を下に向けて謝ることしかできないフロックたち。もしも自分たちにもう少し力があれば、武器があれば助けられたかもしれないのに。そんな自責の念が見て取れる。
そんな責任負わなくていいんだ。そうのび太が声をかけると同時に、彼は聞く。
「……でも、どうして僕は生きてるの? それに、どうして二人がここに……」
そう、あの兵器が、いくつもの戦艦を撃墜したアンジュとサラマンディーネの機体と同じ武装が自分たちに向けられていたことは見て取れた。
あれだけの威力だ。もしも直撃していたら塵一つ残らないはずだろう。なのに、どうして自分とタスクは生きているのか。いや、そもそもの話だ。どうしてフロックとクルトがここにいるのか。
フロックは、かつて自分達が宝島を探すために冒険をする途中で出会った、その島、いやその船の艦長の息子。妹のセーラと共に父親がやろうとしていた過ちをただすために一緒に説得した友達だ。
クルトは、以前にも話しただろう。ひみつ道具
そんな二人は、自分たちからすれば未来の人間。それも、本来の自分たちの世界にいるはずの二人だ。それがどうして、ここにいるのか。
「その問いには私が答えよう」
と言って入ってきたのは、一人の老年とも言える男性だった。片方の足が悪いのか杖を突いて歩く、白髪の男性。その姿に、のび太は見覚えがあった。
「フロックのお父さん?」
「その通り。久しいな、野比のび太君……」
そう、フロックの父親であり、科学者でもあるジョンである。ジョンは、手を差し出すとその再会を祝してくれているようで、のび太もそれに応じて手を出して握手をする。
「あ、はい、お久しぶりです……でも、どうしてフロックのお父さんまで?」
「それは、勿論……あの島ごと来ているからだ」
「あの島?」
ジョンの言うあの島。のび太には一つしか思い至らなかった。
「あの島って、もしかして! 宝島の事!?」
「その通り……」
やはり、そうだったのか。フロックの母親が設計し、それを子供たちの未来のためと考えて悪用、と言うより自分たちだけ逃げようとしてしまって改造してしまったあの宝島。
確か、あれもまた潜水艦の機能が付いていたはず、だから≪アウローラ≫という船と一緒について来れているのだろう。
とはいえ、今はその存在意義をほとんど別の物に傾けているので宝島、と言うのも違うのかもしれないが、彼らにとって一番分かりやすいのがソレであるので、ジョンはこの船の名前を宝島、とそのまま呼称することにしたらしい。
「そして、君たち二人を助けたのは、彼女だ」
「あはは、ごめんねこんな格好で……」
と言って笑うのは、のび太の横のベッドに寝ていた女性だ。
桃色髪の女性。その朗らかに笑う顔は、しかし、どこか影を見せる。そんな女性だった。
見知らぬ女性。ジョン船長が紹介するという事は、あの宝島に乗っていた女性なのだろうか。しかし、以前行った時には見なかった。
いや、あの事件の時に宝島に行った時、自分が出会ったのはごくわずか。それもかなり乱戦状態の中だったし、もしかしたら宝島にはいたけれど会っていないだけなのかもしれない。
「全く、最初はわが目を疑ったわ……よく、無事だったわね……」
「え、そんなにひどいけがをしたんですか!?」
のび太は、メイの言葉にもしかして自分たちのために大けがを負ってしまったのではと心配する。よく見ると包帯も手に巻いているし、心配になるのも分かる。だが、彼女はやっぱり朗らかな笑顔を絶やさずに言った。
「違う違う。今回はただの打撲だけ。二人を助けるために海に飛び込んで、その時にね」
「ほら、前に父さんの船を追う時にスネ夫とジャイアンがサメ型の飛行機を使っただろ? アレを使って海に潜って二人を助けてもらったんだ」
「ギリギリだったけど助かってよかったわ」
と、フロックが言う。確かに、自分たちは以前宝島を追っている際に乗っていた船であるのび太作“ノビタオーラ号”を失ってしまい、トビウオ型のマシンとサメ型のマシンを使って宝島を追った。そのトビウオ型のマシンは、元々ドラえもんの“ひみつ道具”だったのだが、フロックによる改造によって飛べるようになったのだ。トビウオだけに。
そしてもう一つ、サメ型のマシンにはもう一つの機能があり、それが潜水機能。今回、その桃色髪の女性が海に落ちた、と言うより潜ってエンブリヲの攻撃を少しでも弱めようとしていたタスクとのび太を救助し、そのままギリギリ射程圏外に逃走。勿論、攻撃の余波が彼女の事を襲って、その時にやや打撲を負ってしまったらしい。
だが、そもそもその前に急ぎすぎて勢いよく海に入った時から痛かったので、もしかしたらその時点で打撲を負っていたかもしれないと言うのは彼女の談である。
「その後、潜水している宝島のバリアを一部解除して」
「三人と、水中の中にあったヴィルキスを回収したってわけ」
「へぇ……って、どうして静香ちゃんが知ってるの?」
そう、クルトが知っているのもおかしいが、静香が知ってるのもよく考えるとおかしい。聞くと、どうやら彼女は先にフロックの妹であるセーラと離島で接触し、そのまま潜水モードの宝島に行き、そこでのび太が無事に帰ってくるようにと祈っていたそうだ。
そして、彼らのピンチを救った後、宝島を覆っていたバリアを一部解除、気絶したのび太たちを回収した。そう言う経緯で宝島に入ったようだ。さらにおまけで海中を漂っていたヴィルキスを回収し、今≪アウローラ≫でメンテナンスが行われているらしい。
という事は、ジョン船長は、引いてはお隣の女性は自分たちの命の恩人という事になる。お礼を言わなければ。そう思ったのび太の前に彼女が言った。
「貴方、のび太って言うのね。初めまして」
「は、初めまして……あのありがとうございます。助けてくれて」
「いいの。私も同じ事、ジョン船長にしてもらったから」
「同じこと? そう言えば、貴方の名前は?」
「私? 私は……」
と、その時だった。
「マギー、どうしてこっちの船……に……」
と、サリアたち≪アルゼナル第一中隊≫が入ってきたのは。どうやら、アンジュとエルシャを除けば全員いるらしい。
いや、そんな事よりもだ。
「お、おい嘘だろ?」
「ど、どうしてお前がここに……?」
と、第一中隊の面々は驚きを隠せない様だった。当然だろう。なぜならその女性は、その女の子は本来ここにはいないはずの人間。
というか、もうこの世にはいないはずの女の子だったからだ。
そう、既に死んでしまったと思っていた少女。その子が目の前で元気に、そして前に≪アルゼナル≫にいた時のように笑顔を振りまいているのだから、これを驚かない方がおかしいだろう。
「あ、あはは。恥ずかしながら、帰ってきちゃった……」
という桃髪の女の子。第一中隊の他の面々は唖然とした顔でその顔を見つめるばかりであるが、やはりと言うかなんというか、ヴィヴィアンだけは違った。彼女ははじけるような笑顔で言う。
「嘘ッ! 生きてたんだナオミ!」
その少女の名前はナオミ。偶然に偶然が重なって、奇跡の生還を果たした女の子であった。
ゲーム版主人公ナオミ参戦!
オールスター勢揃いでこの小説は進んでいきます!(お前いつもそればかりじゃねえかというツッコミは置いといて)