【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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chapter38 決別……?

 腕が痛い。それに足ももげてしまったかのように激痛が走る。お腹なんてもっと痛い。でも、彼女はそこから逃げるわけにはいかなかった。子供たちが、待っているから。子供たちを、守らないといけなかったから。

 

『はぁ、はぁ……』

 

 待っててね。今私が行くから。その手に銃を携えて彼女は走った。電気設備が落とされて、真っ暗闇になった≪アルゼナル≫の中を。

 

『はぁ、はぁ……』

 

 彼女は走った。いつもの道を、いつも、あの子たちのところに行くために使っていた道を。走った。急いで、いつもだったら子供たちには廊下を走ってはならないと教えている自分が、走って向かった先。

 

『はぁ、はぁ……』

 

 いつもだったら、ドアを開けたらお姉さま、お姉さまと喜んでくれる子供たち。

 あのはじけるような笑顔で、自分のことを迎え入れてくれる子供たち。

 この前の任務でたまったお金でオルゴールを買って、それを送って、喜んでくれた子供たち。

 

『ッ!』

 

 でも、その子供たちのいた部屋は。

 その子供たちがいるべき場所は。

 本来、ドアがあるべき場所は。

 何も、なかった。

 あったのは瓦礫と。

 そして。

 

『ごめんなさい……ごめんなさい……』

 

 無数に群がる、子供たちの死体だけ―――。

 

「ッ! はぁ、はぁ……」

 

 その姿を見た瞬間だった。彼女は目を覚ました。宝島の中にある公園。そこにある一本の大きな木を背にして眠りこけていたエルシャ。

 いや、痛みで気絶していたようだ。無理もない。彼女は今回の戦闘で、はぐれていた子供たちを救うために単身兵士たちの中に飛び込んで行って、多くの弾をその身に浴びたのだから。

 主にひどかったのが腹部の損傷。医師のマギーからは無茶をしたことを咎められ、二度と子供を産めなくなる等と言われるほどに大きな傷を負った。治療の結果一命をとりとめ、本当だったらもう少しベッドで寝ていなければならないと言われたほどの傷。

 でも、それでも彼女は確認せねばならなかった。

 

「エルシャお姉様、大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ。貴方達さえ、無事なら、私は……」

 

 子供たちの無事を。

 そう、助かったのだ。全員。助けることができた。あの、幼年部の教室にいた子供たちだけじゃない。そこから別の場所に遊びに行っていた子供たちを、引率していた先生を。そして、まだ幼年部の教室にも通えないくらいの≪保護室≫にいた赤ちゃんたちを、皆救って見せたのだ。

 あまりにも大きな代償を負った。でも、それでも彼女は大丈夫大丈夫と気丈に子供たちに笑って見せた。そう、子供たちが皆無事なら、それで自分は―――。

 

「大丈夫なわけないよ、エルシャ」

「え?」

 

 と、その時だ。彼女は思いがけない声を聞いた。

 懐かしい声。もう、聞くことはないと思っていた声。

 二度とその顔を見ることがないと思っていた。今度会うときは地獄で、笑って会おうと思っていた女の子。それほどに、生存が絶望視されていた、あの女の子の声が、聞こえて来たのだ。

 

「あ、ナオミお姉さまだ!」

「ナオミお姉さま!」

「どこにいってたの!」

「ごめんね、少し寄り道してて」

 

 と言いながら子供たちの頭を撫でる女性。幼年部の子供たちにとっては、ナオミもまたエルシャと同じ自分たちに良く接してくれていた優しいお姉さま。

 最近来てくれないなぁとか、自分に彼女の事を聞いてくる子供たちに、遠くにドラゴンを退治しに行っているなどと言ってごまかしていた。ごまかすしかなかった。言いたくなかった。もう、あの子は、帰って来ないのだと。あの子は死んでしまったのだと。

 そんな女性が、エルシャの前に現れた。彼女は、フラフラと立ち上がりながら言う。

 

「な、おみ、ちゃん?」

「その、久しぶり……エルシャ」

 

 不意に、エルシャの瞳から涙が零れ落ちて来た。そして、呟く。

 

「わ、私、痛みで幻覚でも見てるの? それとも、もう子供達と一緒に死んで……ううん、だったらこの子達がいるはずがない。私はきっと、地獄に落ちるから……なら、貴方は何? まだ、私は夢の中にいるの? 子供たちが死んで、現実逃避して、昔の、昔の幸せだった時の記憶を見て満足してるだけの女なの? 私は」

「エルシャ!」

「!?」

 

 エルシャが混乱を起こして、妄想的な発言をしているのに対して、ナオミは彼女に抱き着くと言った。

 

「大丈夫。エルシャも、子供達も、私も、生きてるんだよ」

「ナオミちゃん、本当に、本当に生きてるのね……本当に、本当に……」

「うん、ゴメン、心配かけて……」

「よかった……ナオミちゃん……よかったッ!」

 

 その後しばらく、エルシャの目から流れ落ちる涙が収まることはなかった。

 本当に、ナオミは生きているのだと。その身体を抱きしめた温もりで分かったから。

 十数分後、ナオミがテスト飛行でドラゴンに襲われた時、海の下にもぐっていたこの船、≪宝島≫に助けられて治療を受けていたらしい事を聞いた。

 自分もまたこの船でマギーから緊急手術を受けていた時に彼女からまた聞きしていた。この船が、向こうの地球の過去から来た船である事。この船の医療技術は自分たちの知っているそれよりも上回っている事。そして、もしその技術がなかったら自分は助かっていなかったであろうと、そう彼女が言っていたからはっきりと覚えている。

 その後、子供たちは、先生の号令を受けて集まって、エルシャとナオミはようやく二人きりになることができた。

 

「これだけ傷だらけになっても子供達を守るのは、エルシャらしいけど、無茶は良くないよ」

「え、えぇ……そうよね。ありがとう」

 

 何を、話したらいいか。彼女には色々と報告しなければならないことがあった。≪アルゼナル≫の事、アンジュの事、向こうの世界の事。いや、そんな事よりももっと重要な話があった。エルシャは、それから逃げていた。でも。

 

「……エルシャ、聞いてもいい?」

「え?」

「ココと、ミランダの最後……それから、アンジュって子の事も」

「ッ!」

 

 彼女は逃げなかった。決して、現実から。向こうの世界に行った時に、全てを否定しようとしていた自分たちとは違って、彼女はまっすぐと現実を見ようと頑張っていたのである。

 ならば、エルシャは勇気を出して語る。彼女の友達二人の事。そして、結果的とはいえ、その死に関わってしまった、アンジュの事を。

 その一方で、≪アウローラ≫の方ではクルトから“人間製造機”の開発者がエンブリヲであるという話。それから、ナオミを治療した際にその“人間製造機”で作られた人間にあるDNAの特徴がみられたことから、見出した仮説。そして、≪ノーマ≫と揶揄され来た人間たちと≪マナ≫を使えるエマやモモカと言った人間の細胞を調査した結果、≪ノーマ≫の人間達は本来あるべきはずのDNA情報の一部が欠落していることから得られた確信を、彼女たちに伝えた。

 

「そんな、それじゃこの世界の人たちは皆!?」

「エンブリヲに作られた、ペット。友愛道具に過ぎないのさ……」

「ひどいわ……」

 

 そして、この世界がエンブリヲによってつくられた世界であるとそう言ったのは、何故かジルであった。もしかして、彼女は何か知っているのだろうか。そんな疑問がのび太たちの頭の中に浮かんできた瞬間だった。スネ夫が叫ぶ。

 

「でも待ってよ! さっきも静香ちゃんが言ってたけど、エンブリヲって人は二十三世紀で戦争を起こしてたんでしょ?」

「あ、そうよ! なんで、その人が二十二世紀で“人間製造機”なんて発明出来たのよ!?」

 

 そう、エンブリヲは本来なら二十二世紀、つまりドラえもんが来た世界で“人間製造機”という悪魔の“ひみつ道具”を作った人間。それがどうして、二十三世紀というさらに百年後の戦争に関与するのか、いやそれ以前にだ。

 

「さらに言えば、私とフィオナ、アウラ、そしてエンブリヲがドラグニウムの研究をしていたのは二十三世紀中盤のことだ」

 

 だったら尚更おかしい。どうして一世紀以上にも渡ってエンブリヲという存在が暗躍していたのか。

 仮説であるが、ジョンは一つの考えを言う。

 

「恐らく、“タイムふろしき”で若返りを繰り返していたのだろう」

「“タイムふろしき”!?」

「なによ、それ……」

「風呂敷型の道具で、包んだり、そのものの上に乗せることでその物体を過去の姿や未来の姿に変えることのできる道具さ」

 

 と、クルトが補足した。

 のび太も、その“タイムふろしき”には何度もお世話になったから当然覚えている。≪三匹≫の恐竜の卵の化石をその時代の、産まれる直前まで戻したり、はるか銀河遠くで宇宙船のメインエンジンを直したり、それから炭になってしまった魔法の絨毯を直したことだって。

 だから彼は知っていた。その利便性も、そしてその恐ろしさも。

 

「待って! もしそんな道具があったら、不老不死だって」

 

 夢じゃない。そうクリスが言った。そうだ、確かにもし老齢に差し掛かった際にその“タイムふろしき”を使用すれば、若返り、老齢になったら若返りを繰り返したら不老不死の完成である。

 のび太自身、過去に無人島に遭難して十年経過してドラえもんに救出され、過去の世界に戻った時“タイムふろしき”で小学生の姿に戻してもらったことがあった。

 不老不死。その可能性を考えたことは誰しもがあることだろう。

 

「そう、だから本来僕たちの世界じゃ“タイムふろしき”の人間への使用は二十四時間しかできないように法整備がされてるんだ」

「え、そうなの? でも僕は無人島で十年過ごした時に……」

「その場合は特例なんだ。事故や遭難で時間が失われた場合は、“タイムふろしき”の使用が許可されるんだ」

「そうなんだ……」

 

 なるほどそういう事だったのか、でもだったら尚更エンブリヲのその行動が為せたこと、理由がわからなくなる。と、その時クルトが言った。

 

「これは想像だけど……“悪魔のパスポート”を使ったのかも」

「“悪魔のパスポート”!!??」

 

 のび太はその言葉を聞いてびっくり仰天を絵に描いたような顔をする。

 

「おいのび太。なんだよ、その道具」

「ど、どんな犯罪でもそのパスポートを見せればなんでも許してくれる。まさしく、犯罪者にうってつけの道具のことだよ!」

『……………………なんだよ(なんなのよ)その道具!?』

「「僕に言われても!?」」

 

 と、≪アルゼナル≫勢どころかジャイアンたちですらもツッコミを入れざるを得なかった。で、理不尽に怒られるのび太とクルトだった。

 “悪魔のパスポート”、それはのび太の言うように例えどれほどの悪事を働こうともそのパスポートを見せるだけで犯罪者を許してしまう、そんな“ひみつ道具”のことだ。そう、どんな犯罪でも、窃盗でも、万引きでも、殺人でも。

 

「あんた達の未来世界の治安がどうなってるのか不思議でしょうがないよ」

「あ、あははは」

 

 と総括したジャスミンの言葉にから笑いを浮かべるしかなかったクルト。

 とにかく、恐らくエンブリヲは“タイムふろしき”を使用することによって不老不死を実現させ、ジョン達がドラグニウムの研究をするその時まで生き延びていたのだ。全ては、自らの欲望を実現させるための何かを待つために。その何かが、ドラグニウムだったのだ。

 ジャスミンが聞く。

 

「それで、どうするんだい? アレクトラ?」

 

 因みに、今更だが、アレクトラと言うのはジルの本名であるらしい。彼女に親しい人間は、その名前を使っているのだとか。

 そんなジャスミンの言葉に、煙草に火をつけて一服したジルは呆然自失の状態で言う。

 

「どうするもこうするもない……アンジュという最大の駒を喪った。もう≪リベルタス≫はできない」

 

 と。その言葉に、しかし反論する人間がいた。

 

「ヴィルキスは残っているわ! 私がそれに乗ればまだ≪リベルタス≫は!」

 

 サリアである。どうやら、アンジュが乗りこなしていたあのヴィルキスという機体は、彼女たちの言う≪リベルタス≫とやらに必要な物であるらしい。だが、≪リベルタス≫とはいったい何の事なのか。

 

「≪リベルタス≫って何なの、サリアさん……」

「それ、アタシたちも思ってた」

「もしかして、私たちに隠し事?」

 

 と、のび太の言葉に連なって第一中隊の面々もまた聞く。この感じからして、≪リベルタス≫なる物は、全員が全員知っている物である、という事ではないようだ。

 黙り込んだサリアに変わって、その場にいた整備士のメイが言う。

 

「≪リベルタス≫。つまり、自由への反乱……エンブリヲを倒して≪ラグナメイル≫である≪ヴィルキス≫の力をもって世界を破壊する。しいたげられた物による反抗計画。それが、≪リベルタス≫」

「≪ラグナメイル≫?」

「我々の使う≪龍神器≫そして、恐らくこの世界の者たちの使う……」

「≪パラメイル≫の原型になった機体。まぁ、完全に再現できてたのはそっちだったみたいだけど」

 

 と、メイが言った。完全再現とはどういうことなのか。それに、何故≪リベルタス≫というモノにヴィルキスが必要なのか、よく分からない。

 

「どうして、ヴィルキスって奴が必要なのさ?」

「≪時空収斂砲≫……」

「え?」

 

 何故≪リベルタス≫のために≪ヴィルキス≫が必要だったのか聞いたスネ夫に対して答えたのは、サラマンディーネであった。

 彼女は続けて言う。

 

「私の焔龍號にもついてあるあの兵装……あれによって、向こうの世界は滅んだも同然……その力をもってこの世界を破壊するつもりだったんですね」

「簡単にいやぁ、そう言う事さ。エンブリヲを殺し、奴が作った世界を壊すには、それくらいの兵器が必要だったのさ……だが」

「サリア、お前じゃヴィルキスを乗りこなせない。それは分かっているだろう。だから、私はあいつに……アンジュに賭けた……なのに、そのアンジュを連れていかれて……もうどうしようもないのさ」

 

 と、ジルが呟いた。その目には、もう強くてカリスマ性にあふれていた司令官の面影なんてなく、もう何もかもを放棄してしまったような、そんな印象をもたらす。

 

「アンジュアンジュって……そんなにアンジュの事が大事!? 私の事なんて、どうでもいいの!! 私の事も、≪リベルタス≫のための駒だったって、そう言いたいの!?」

「……あぁ、そうさ……」

「ッ!」

 

 その、ある意味でサリアと言う存在を否定するような言葉を発した瞬間だった、サリアは目に涙を浮かべて会議室から逃げるように立ち去った。

 

「あっ、サリアさん!」

 

 と、静香がその後を追った。そして―――。

 

「司令さんひどいよ! あんなこと言うなんて!」

 

 のび太は、面と向かってジルに言った。どうして、あんなひどいことを言う必要があったのかと。彼女がこの人のために尽くしてきたという事は、少ない会話ではあったが分かった。なのに、そんな人に対して言うセリフが、≪リベルタス≫と言う物の≪駒≫として見ていた。なんて、ひどすぎる。

 

「……事実を言ったまでだよ」

 

 しかし、のび太の言葉に対しても、ジルは何でもないように言ってのけた。もう、自分の事は放っておいてくれ。そう言っているようにも思えた。

 

「全く……大人と言うやつはどの世界でも同じようだ」

 

 と、言ったのはジョンである。彼は誰よりも前に出ると言った。

 

「どの世界の大人も、子供たちには本心を隠す。だからこそ……仲たがいをしてしまう」

「アンタには……関係ないだろ?」

「いや、関係ある。少なくとも私とフロック、そしてセーラは……私が事実を隠してしまったために仲たがいを起こし、大きな亀裂を生んでしまった……だからこそ分かるのだ。貴方が、まだ何かを隠しているのだと」

「父さん……」

「パパ……」

 

 そう、自分だからこそわかる。かつて何もかもに絶望して、二人に何も告げずに妻との思い出の詰まった船を改造して過去の世界を混乱させようとした。自分だからこそ分かるのだ。

 彼女はまだ、何か隠していると。

 

「待って! サリアさん!」

「離しなさいよ!」

 

 そのころ、廊下ではようやく静香がサリアに追いついてその手を持っていた。しかし、サリアは何度も≪パラメイル≫に乗っているベテランメイルライダーである上に、ジルのためにと自分の事をずっと鍛え続けて来た人間。だから、本当だったら小学生の静香が抑えられるほど甘い人間ではなかった。

 でも、それでも―――。

 

「いえ、離さない!」

 

 静香は離さなかった。もう、見たくなかったから。セーラやフロックのように仲たがいをする人間たちを。そんな光景を、もう二度と繰り返したくない。同じ過ちを繰り返させはしない。そう思っていたから。

 

「もう一度ジルさんと話をしてみましょう! きっとジルさんにも、何か事情が」

「事情も何もないわ! 私は、私はアレクトラには必要とされていないのよ……!」

 

 サリアはこれまで頑張ってきた。文字通り尽くしてきた。ジルの騎士になれるように必死で頑張ってきた。≪最初のリベルタス≫が失敗して、傷だらけになって帰ってきた彼女を見て、自分が、彼女を守れる一番の騎士になれるように、彼女の役に立てるように頑張ってきた。

 だからこそ、ヴィルキスに乗って、彼女の役に立ちたかった。≪リベルタス≫の成功のカギとなるヴィルキスを自由に操れるようになって、認めてほしかった、褒めてほしかった。それなのに、なのに彼女は自分の事を駒だと言った。

 もう、何もかも崩れ落ちてしまったような気がした。自分のこれまでの人生も、彼女への信頼も、全部裏切られた。

 

「私を必要としてくれる人なんて、誰も……」

 

 残っていない。そう、言おうとした彼女は思い出す。あの時の、エンブリヲの言葉を。

 

『辛いだろう。苦しいだろう。私の所に来れば、その苦しみから解放してあげよう。サリア』

 

 アイツだったら、ジルが最も憎んでいるあの人は、自分が苦しんでいることを知ってくれていた。もしかしたら、あの人だったら自分を救ってくれるかもしれない。あの人だったら、自分の痛みを、苦しみを分かち合ってくれるかもしれない。そう思ってしまった瞬間だ。

 

『難しいことは俺にはよく分かんねぇけどよ』

「ッ!」

『一度離れちまったらまた友達になるのは難しいし、時には命を賭けないといけなくなっちまう』

 

 あの子供の、ジャイアンの言葉が通り過ぎた。

 友達になるのは簡単。でも、離れるのは一瞬。自分とジルの関係ってなんだったっけ、友達、親友、盟友、駒使いとただの駒。ジルの言葉から考えると一番最後だ。だったら、元から自分たちには友情何てあるわけがない。だから、離れるわけがない。だから、自分から彼女を切り捨てても関係ない。

 そう、思っているのにどうして。どうして、こんなにもその言葉が気になるのだろう。どうして、何度も頭の中でその言葉が流れるのだろう。

 どうして、自分はジルの事を完全に嫌いになれないのだろう。

 答えは、一つだった。

 

『サリアは、私によく似ていた』

「え?」

 

 聞こえて来たのは、ジルの声だった。どうやら、艦内放送を使って言葉を≪アウローラ≫全体に流しているようだ。ジルは続ける。

 

『真面目で、泣き虫で、思い込みが激しいところも……全部似ていた。そんなサリアと、あの男を、エンブリヲを会わせてしまったら、きっと私のように、堕落してしまう。だから、巻き込みたくなかった……私の、妹のような存在を……』

「いもう……と……」

 

 その瞬間、サリアの心が透き通ったような気がした。




 “悪魔のパスポート”、なんでそんなもん作った未来の科学者!? と、誰もがツッコミを入れる“ひみつ道具”ベスト10に必ず入るモノです。
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