【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 今回も曲使用あります。二つ候補のあったうち、時間的に入れられるほうを選択致しました。


chapter42 戦争なんてそんなもの

 館内放送が全て終了した時、誰もが困惑した。果たして自分たちはどうすればいいのかと。

 自分たちはどちらに乗ればいいのかと。

 ≪アウローラ≫に乗れば、自分たちはまた、戦いの中に戻ることとなる。でも、宝島に乗れば、戦いから逃げることができる。彼女がその放送をする直前に二つの船を橋で繋いだのは、その選択をするためだ。

 戦いたくない人間を無理に戦わせる。そんな≪アルゼナル≫の時の二の舞には決してならないように。

 でも、その中でもいち早く宝島の方で立ち上がった少女がいた。

 

♪遠くを♪

「……」

「静香ちゃん……」

 

 静香である。凛とした表情で≪アウローラ≫の方を見つめている彼女の眼は、まさしく逃げる人間のソレではない。たとえどんな苦難が待ち受けていようとも、その先に進む。その先にある未来へと進むために一歩を踏み出す人間のソレであった。

 

♪君は眺めてる どんな昨日が♪

「静香、行くのね……」

「えぇ、セーラは、子供たちをお願い」

 

 静香は、セーラに対してこっちの船に残って子供たちが怖がらないように、子供たちが泣かないように、一人にしないようにと、彼女たちの事を託した。それに、うっすらと笑みを浮かべてセーラは頷く。

 まるで、こうなることが分かっていたように。いや、分かっていたのだ。きっと、静香ならそんな選択をするのだろうと。

 

♪君にあったのかも 何を思ったのかも 僕にはわからない♪

「ダメよ静香ちゃん! 危険すぎるわ!」

「ドラちゃんも、のび太さんもアンジュさんも! 大事な友達だもの! 放っては置けないわ!」

「静香ちゃん……」

 

 エルシャの言葉に、キリッとしたその顔つきを変えないままで静香が言った。

 一体どれくらいいるのだろうか。ただ友達のためだけに戦いに出れるような人間が。

 何人いるのだろう。彼女のように他人のために無茶ができるような人間が。

 どれだけいたのだろう。あの≪アルゼナル≫の中に、友達のために命を懸けられる人間が。

 

♪けれど♪

「友達……か」

「ヒルダ?」

 

 そんな彼女の言葉に立ち上がったヒルダは呟く。

 

♪抱えきれない荷物はほら 僕が持つから♪

「全く、考えてみたら、アタシあの痛姫様のこと名前ですら呼んでなかったんだよな……そのまま死ぬなんて……後味が悪いだろ?」

「ヒルダ……」

「……」

 

 と笑顔で言ったヒルダ。彼女には小さな思惑があった。でも、今この状況でその思惑を達成させるのは無理な事。もう一度会いたかった。でも、もしこの世界が無くなってしまったら再会することなんて叶わない。

 でももうそんなことどうでもよかった。自分は進む。アイツを、自分がずっと痛姫痛姫と呼んでいた、あの少女を救うために。

 彼女たちもまた、立ち上がるのだ。

 

♪ずっと友達でいたいよ 何の約束も いらないだろう?♪

「へ、勿論俺たちはついていくぜのび太!!」

「ジャイアン!」

 

 と言ってスネ夫を引きずりながらいち早く現れたのはジャイアンである。ある意味当然と言えば当然だろう。

 彼は勇敢であり、そして心優しい人間なのだから。例えどんな危険が待っていても、友達のためにならと動くことができる人間なのだから。

 

「む、無茶言わないでよジャイアン! 相手は神様なんだよ! かないっこないよ!!」

 

 と、弱気な発言をするスネ夫に対してジャイアンは耳元で叫ぶ。

 

♪君の友達でいたいよ 雨の日も 晴れの日も♪

「二つの地球がどうこうなるかのピンチなんだ! 男が黙って引き下がれっか!!」

「ひぇぇぇぇ……もう分かったよ。やればいいんでしょやれば!!」

「ジャイアン、スネ夫……」

 

 という事で、スネ夫はしぶしぶと言った感じではあるが参加することが決まった。

 そして、その次に現れたのはサラマンディーネの側近である二人の女性。

 

「サラマンディーネ様、リィザーディアが特異点を開いたようです。結果向こうの世界からドクターゲッコーを含めて僅かですが、援軍が到着しました」

「リィザーディアが……」

 

 リィザーディア、それがミスルギに潜伏中だった彼女たちの間者。その女性が、最後の力を振り絞ってわずかな時間ではあったものの、ドラゴンを向こうの世界から呼び寄せる特異点を開いてくれたのだという。

 

「死も覚悟の上で、特異点を開いてくれたのでしょう……」

♪空を僕は眺めてる♪

「えぇ、彼女の覚悟に報いるために、アウラを助けましょう……」

 

 全ては、アウラ奪還のために、そして、そのために犠牲となった多くの

 

同胞の魂を胸に。サラマンディーネは強く、頷いたのであった。

 

♪流れる雲を ふたりが出会った♪

「私たちも! 絶対にアンジュを助けようね! タスク!」

「うん、ありがとうヴィヴィアン。そうだ、たとえ二人だけでも、アンジュを助けよう」

 

 と言うのはヴィヴィアンとタスクである。例え二人ボッチだけだったとしても、アンジュを助けたいと思ってくれている人間が自分たちだけであったとしても絶対に助ける。その命に代えても。タスクはそう意気込んでいた。

 しかし。

 

♪この場所で今♪

「二人だけじゃないわよ」

「え?」

 

 と言いながら現れたのは、彼らも見覚えのある女性たちであった。

 

♪夏が終わっていくよ キラキラ光る 宝物は♪

「エルシャ! 皆も!」

「あの痛姫様には色々と貸しがあるから、それを返さねぇとな……」

「私なんて、まだアンジュとちゃんと話もしてないもの、その前に死ぬなんて嫌だから!」

「皆……」

 

 アルゼナル第一中隊。いや、それだけじゃない。第二中隊、そして第三中隊、アンジュと関わりのなかったはずの者たちまでも、現在出撃することができる全てのメイルライダーがそこにはいた。

 そして―――。

 

♪心の中に♪

「のび太さん、お待たせ!」

「静香ちゃん、フロック、クルトも!」

 

 静香に加えて現れたのは、フロックとクルトだった。

 

♪ずっと友達でいたいよ 何も言葉などいらないだろう? 君の友達でいたいよ いつまでもいつまでも♪

「父さんは宝島の舵を握っている。だから、俺たちでエンブリヲからドラえもんを助けようぜ!」

「僕たちの時代で作られた“ひみつ道具”やエネルギーが悪用されているんだ。だったら、僕たちの手で、ソレを止めないと!」

「やりましょうのび太さん! 一人一人の力じゃ勝ち目はないかもしれないけど、これだけの人がいるんだもの! きっとなんとかなるわ!」

「みんな……ッ、ありがとう!!」

 

 涙を流しそうだったのび太は、しかし我慢して流れ落ちそうだった涙を引っ込めると友達に向けて笑顔で言った。

 誰もが、自分たちの中で守りたいもの、自分たちの中の正義に基づいて行動する。自分たちの思いをもって、個人の思想をもって戦争に出ようとする。

 昔、ドラえもんが言っていたことがある。『どっちも正しいと思って戦っている。戦争なんてそんなもの』なのだと。

 彼女が、彼女たちが正しいと選んだ道。それは、複数にも分かれていたはずだったけれど、しかしその分岐の先が一本の一つの大きなゴールに向かっている。そんな道。

 それは―――。

 

「サリア、非戦闘員は……整備班、医療班以外の人間はジョン船長の船に乗せたよ」

 

 と言いながら、ジャスミンが現れる。

 

「そして、戦闘員からの離脱者は……見ての通りゼロさ。当然、エンブリヲの所に尻尾振る馬鹿もいない。いや」

 

 と言って笑ったジャスミンは、誇らしげに言う。

 

♪ずっと友達でいたいよ 何の約束もいらないだろう?♪

「勝ち目がないと分かっても残る、こっちが馬鹿かね」

「ッ!」

「噛みついてやろうじゃないか。最後の最後までさ」

 

 と、そんな自分もまた馬鹿だと言うかのような笑みをこぼした。

 意外だった。切り札もない。≪リベルタス≫を成功させる策もほとんどない状態。ソレで、非戦闘員である人間以外が全員、こんな無謀な作戦に参加してくれるなんて。そして、彼女の後ろには≪マナ≫を失い、≪ノーマ≫、いや普通の人間となってしまったエマやモモカ、そしてもう一人の女性の姿も見える。

 自分たちには戦う力なんてない。でも、何か役に立てることがあるはずだ。そう言った意思のようなものを感じる。

 サリアの、唯一人を守りたい。

 のび太のただ一人の友達を助けたい。

 タスクのただ一人の愛した女性を助けたい。

 サラマンディーネの、向こうの世界の人間たちの最終目標であるアウラを奪還したい。

 そんな願いに、全ての人間が同意し、そして誰も自分たちのことを見捨てなかった。誰も、エンブリヲに命乞いをする人間なんていなかった。

 あったのはただ一つ。利害の一致の上での共闘。でも、誰もが幸せになるための道標。

 

♪君の友達でいたいよ 雨の日も 晴れの日も♪

「……サリアさん行こう! ドラえもんを助けに!」

「アウラを助けに!」

「アンジュを、助けるために!」

「私たちの……≪ラスト・リベルタス≫を成功させるために!」

 

 のび太が差し出した手の上に、重なるように置かれた三つの手。いや、それだけじゃない。次々と置かれていく手。途中で、あまりにも大きくなりすぎて手が届かなくなったりしたけれど、でも心のどこかで重なっている手。

 利害の一致、そんな図々しい言葉じゃない。

 彼女たちの意思が結集した瞬間だったのだ。

 全てを、終わらせるために。

 この世界を、向こうの世界を、守るために。

 人間と呼ばれ、≪ノーマ≫とののしられ、ドラゴンとして恐れられ、そして冒険をするために集まった者たち。その、最初で最後となる作戦の幕が、こうして上がったのだった。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

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