【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

45 / 64
chapter43 小さな戦争の大きな遺物

 二つの船は向かう。すべてを決するため。すべてに決着をつけるために、ミスルギ皇国へとその矛先を向けて前へと進んでいた。

 前方を進むのが、今回の旗艦となる≪アウローラ≫、そのはるか後方には非戦闘員を乗せた宝島を配置。そちらの方には念のためにパラメイル第二中隊を配備し、流れ弾、もしくは≪アルゼナル≫を襲ったあの無人兵器が現れて、宝島方向に向かっても迎撃するようにと指示を出した。

 そして、≪アウローラ≫に一機の≪パラメイル≫が降り立った。それは、ピンク色をした機体。そう、どこかで見たことがある機体がヴィヴィアンの機体と共に降りて来たのだ。

 

「お待たせ、二人とも! ≪パラメイル≫を持ってきたよ!」

 

 と、タスクが言う。司令室の一件の後、のび太たちがこの世界にやってきたときに訪れた無人島へとその機体を取りに行ったそうだ。ヴィヴィアンの≪パラメイル≫に乗せてもらって。

 

「これって、僕たちがコピーした……」

「それじゃ、元々タスクさんの≪パラメイル≫だったの!?」

「正確に言えば、俺の母さん……アレクトラを助けるためにその命を散らした母の機体だ……」

「そう、だったんですか……その、御免なさい……」

 

 つまり、タスクにとっては母の形見とも言うべきものだったのだ。そんな機体を勝手に複製して、勝手に乗り回していたことを謝罪するのび太たちに、タスクは言う。

 

「いや、いいんだ。もしもアンジュがいなかったら……この機体はあそこでずっと眠ったままになっていた。ソレを考えると、君たちに見つけてもらってよかったのかもしれない」

 

 と。そう、自分は役目を放棄した。ヴィルキスの騎士としての役目を。そんな自分がその後に残してきた母親の形見についてとやかく言うつもりはない。

 自分は、自分たちはもう一度これで≪リベルタス≫を行う。サリアが言った通り、もう三度目なんてない。最後の≪リベルタス≫を。

 そのために、この機体を使うのだ。父や母、仲間たちの仇を討つため、そして愛する人を救うために。

 

「やってくれ、クルト」

「ありがとうございます! これを“フエルミラー”でコピーして……」

「よし、クイズ!」

「ク~イ!」

 

 と、タスクに言われたクルトは“フエルミラー”を使ってその機体を次々とコピーしていく。それと同時にその横ではコピーされた機体の精密な装置に相棒のクイズを接続してフロックが何かをプログラミングし始めていた。

 

「クルト、フロック、何をしているの?」

 

 と、のび太がその二人の行動の意味を問うと、フロックが言う。

 

「遠隔操作ができるように改造するんだ。俺とクルトのプログラミング力なら、二十機は同時に動かせる」

「えぇ、そんなに!?」

「まぁ、僕はフロックのように上手くはできないけどね」

 

 と言いながら、クルトは一機、また一機と≪パラメイル≫を出していく。これからの最終決戦に向けて、一機でもいいから戦力が欲しい。だから、元から父の手伝いのためにとプログラミングの練習をしていたフロック、それから“ひみつ道具”を作るために毎日パソコンやそれに類似する物に向き合っていたクルト。

 この二人が遠隔操作を用いることによって複数の≪パラメイル≫を動かすことになったのだ。

 

「あ、私に一機もらえないかな? 私が乗り込む機体は無いみたいだから」

 

 と言ったのはナオミである。確かに、彼女が元々乗っていた機体は撃墜された時に廃棄処分同然にまでボロボロとなってしまって、修理もできなかった。故に、彼女には機体がなかったのである。いや、正確に言えばヴィルキスがあるのだが、しかしソレを使えるのは現状アンジュのみ。

 だから、彼女は欲したのだ。自分が操作できる、最後の決戦に望むことができる機体を。

 

「わかった。ただ、“フエルミラー”でコピーしているから操作系統が完全に逆になっている。それを直すから少し待っててくれ」

「うん、お願い!」

 

 という事で、ナオミもまたタスクと同じ≪パラメイル≫を使用して出ることになった。それは、のび太たちも同じこと。

 

「よし、それじゃ僕たちも≪パラメイル≫に乗ろう!」

「応よ!」

 

 と言って、“なんでも操縦機”をその手に持ったのび太たち。しかし、だ。

 

「待って!」

「え?」

 

 と言って三人を止めたのは静香である。彼女は、その手に持っていた“壁紙格納庫”をその場の壁に貼り付けると、中に一度入り、しばらくしてから小さい三つのミニカーのようなものを持ってくる。

 

「じつはね、ドラちゃんからもらった“壁紙格納庫”の中に落ちていたの……」

「これって……まさか!」

 

 三人は知っていた。そのミニカーのような物の正体を。そのミニカーがどんな力を持っているのかを。

 

「“ビッグライト”!」

 

 そして、静香が取り出したのは、ジャイアンが持っていた“四次元くずかご”の中に入っていた“ひみつ道具”“ビッグライト”。物を大きくする“ひみつ道具”であり、その光にあてられたミニカーは徐々に徐々に大きくなっていった。そして、彼らの前に現れたのは―――。

 

「あ、アストロタンクだ!?」

「な、なによこの戦車!?」

 

 と、驚きを隠せないメイ。それもそうだろう。目の前で小さな戦車を出されたと思ったら次の瞬間にはそれが大きくなって≪パラメイル≫にも引けを取らない大きさの戦車になったのだから。

 ジャイアンが自慢するかのように言う。

 

「ただの戦車じゃないぜ! 陸だけじゃなく空も飛ぶことのできる、番号洗車だ!」

「ソレを言うなら『万能戦車』」

 

 と言って訂正したスネ夫をぶん殴るジャイアン。理不尽だ。

 

「前に他の星で戦った時にスネ夫が改造してくれた……戦車なんだ。その星はとても小さい人たちが暮らす星で、向こうのサイズに合わせて僕たちは戦っていたんだけど……」

 

 正確に言えば、戦わされていた。と言った方がいい。自分たちが別の星の人間と出会って、その人間のサイズに合わせるように“ビッグライト”の逆である“スモールライト”を使ったのだが、それが裏目に出て“スモールライト”を奪われてしまい、元の大きさに戻ることができずに、スネ夫が作ったラジコン戦車をドラえもんの“ひみつ道具”を使って改造して戦えるようにした戦車。それが、今自分たちの目の前にあるアストロタンクなのである。

 でも、確かあの戦いのときに作られた五台は―――。

 

「そうか! あの時二台は落とされたけど、地面に隠してあったものも回収して三台残っていたんだ!」

 

 と、思い出した。あの時の戦いで、静香とスネ夫が乗っていた機体は電波障害を発生させる装置を使われたことによって海に沈んでしまった。しかし、その星に潜入するために使ったアストロタンク、そして、小惑星群の中にあった向こうの星のレジスタンスの基地に置いてきたモノを回収し、“壁紙格納庫”の中に入れていたのだ。

 オーバースペックなその存在を、あの星に残さないようにと配慮した結果だったのだが、おかげで、彼らは大きな武器を手に入れた。

 

「えぇ、これで十分戦えるはずよ」

 

 確かに、これで自分たちも“ビッグライト”を浴びてその戦車の操縦席と合う大きさになれば、≪パラメイル≫よりも使いこなしているその戦車を使うことができるはず。その内部の構造性からして、≪パラメイル≫よりも安全で、しかも戦闘に利用できると言うのはその星での戦いで実証した通りだ。

 しかし、大きな問題が一つある。

 

「でも三台だけでしょ? 一人余るじゃない!」

 

 その場にあるアストロタンクは三台。自分たちは四人。誰か一人はアストロタンクに乗れずに余ってしまう。そう言うスネ夫に対してのび太は率先して言った。

 

「なら……僕は“スタークラッシュゲーム”の戦闘機で出るよ! 皆は、アストロタンクに乗って!」

「のび太、お前……」

「ちょちょちょ! ちょっと待ってよ! なんであの戦闘機で出る必要があるのさ!? ≪パラメイル≫を使ったほうがいいでしょ!?」

 

 確かに“スタークラッシュゲーム”の戦闘機も強力だ。でも、アストロタンクに比べたら武装も少なくて少し頼りない。それにのび太はソレに乗って一度エンブリヲに落とされたと言う苦い記憶を持っているはずだ。それなのに、自分からそのトラウマになってもおかしくはない機体に乗ると言い出すなんて。

 

「分かってる。でも、ドラえもんを助けに行くんだ。僕たちは。皆んながドラえもんのおかげで作ることのできたアストロタンクに乗るんなら、僕だって、ドラえもんの“ひみつ道具”でドラえもんを迎えに行く!」

 

 先ほどまでは、≪パラメイル≫に乗って戦うことを考えてたはずののび太。でも、それじゃダメだと心の中では思っていたのかもしれない。“ひみつ道具”を悪用するエンブリヲを、“ひみつ道具”によって倒して、平和を取り戻したい。そう考えたのだ。

 ジャイアンは、その言葉にのび太の男気を感じ取り、ある物を取り出した。

 

「ドラえもんが俺に預けた“四次元くずかご”だ! 海に落ちて行ったのも含めて大量に“ひみつ道具”が入ってる! 使ってくれ!」

「ジャイアン……」

 

 彼のいう通り、その中には≪アルゼナル≫でドラえもんがジャイアンに渡したときだけじゃない。他にも戦闘中にドラえもんがのび太を助けようとして放り投げて海に落ちた数多くの“ひみつ道具”が入っているのだ。

 勿論中にはガラクタなんかもあったのでそれはごみとして捨てたのだが、しかしそれを除いたとしても生き残るには十分すぎるほどの“ひみつ道具”があるはず。

 それを彼は渡したのである

 “四次元くずかご”を受け取ったのび太は、真剣な顔つきで頷くと空を見上げて呟いた。

 

「絶対に助けに行くからね、ドラえもん……」

 

 世界の終わりまであと数時間。のび太の向けた視線の先には、雷がゴロゴロとうねる分厚い雲があるだけ。それはまるで、世界の終焉を表しているかのようで不気味であった。




 アストロタンクの所在については可能性としてあり得るものを選択させて頂きました。
 因みに何故≪パラメイル≫を使用しない展開に持っていったかについては、物語に少し幅を出したかったから、ですかね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。