【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 みなさま、お忘れの方々はおりませんか?
 思い出しながらお読み下さい。


chapter48 一緒に見つけようよ

 振り下ろされた“名刀「電光丸」”。しかし、それが、のび太に当たることはなかった。いや、のび太に当たる直前に彼の頭上でソレが静止していたのである。

 

「の、び、太、君……」

「え……」

 

 と、その時だ。ドラえもんの口からのび太の名前が出てきたのは。これまで壊れた機械のような言葉しか出してこなかったドラえもん。しかし、その口から発せられたのは、それまでのどの言葉よりも人間味の溢れた、彼らしい言葉。

 

「ドラえもん!」

「馬鹿な! あのチップに逆らえるはずが!」

 

 と狼狽するエンブリヲ。

 あのチップを埋め込まれたロボットは例えどれほど優しい心を持ったロボットであったとしても自分自身の事を忘れ、どれだけひどい事であったとしてもソレをそうだと認識できなくなるくらいに悪人に染める物。

 かつて自分たちの時代で自分の知り合いの科学者によって発明されたが、そのあまりの危険性にすぐ販売中止になった“ひみつ道具”。それを改良に改良を重ねてさらにそのロボットの性能を上昇させてさらに劣悪になるように改造した“悪いチップ”を埋め込んだ。

 ソレに逆らう事なんて、絶対にできはしない。なのに、何故。

 エンブリヲにも分からないことが、のび太に分かるはずもない。けど、彼はその言葉からドラえもんがまだ、ドラえもんの意識が、記憶が、そこにあることに気がついた。

 

「ドラえもん! そこにいるんだね! ドラえもん!」

「ググ、ギギ、がッ!」

 

 それでもなお、ドラえもんは“名刀「電光丸」”から手を離さない。のび太の頭に振り下ろそうとしている。しかし、その自分自身の意思に対して必死に抵抗しているようにも見える。

 間違いない。ドラえもんは完全に改造されたわけじゃないのだ。自分たちの知っているドラえもんはすぐそばにいるのだ。

 のび太は叫ぶ。ドラえもん、ドラえもんと、彼の名前を。友の名前を叫び続ける。

 それは、のび太だけではなかった。

 

「ドラちゃん!」

 

 静香が。

 

「ドラえもん!」

 

 スネ夫が。

 

「ドラえもん!」

 

 ジャイアンが。

 

「ドラえもん!」

 

 クルトが。

 

「ドラえもん!」

 

 フロックが、そして。

 

「ドラえもん!!!」

 

 アンジュもまた叫ぶ。ドラえもんの名前を。その愛おしい五つのカタカナと日本語で作られた名前を叫び続けて、彼を引き戻そうとする。

 暴力ではない。破壊ではない。純粋たる、澄み渡ったクリスタルのような気持ちで、彼らは、彼女たちは叫んだのだ。

 そして、最後にドラえもんといつも一緒に、ずっと一緒にいた彼が叫んだ。

 

「ッ! ドラえもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん」

 

 その声が、その音が、まるで波のようにミスルギ皇国の全土に響き渡った。

 全てが始まった場所。

 すべてが終わる場所。

 ここから始まる場所。

 ここで取り戻すと誓った場所。

 友を救いたいと願った彼の戦いは。

 

「は、は、は……」

「え?」

「ハックション!!」

 

 そのくしゃみをもって終わることとなった。のび太は、突然ドラえもんの方から飛んできたソレを何とかキャッチする。どうやら手のひらサイズよりももっと小さな何かのようだ。

 果たして、これは何なのか。のび太は、閉じた手を開いた。すると、そこには。

 

「え? これは……」

「ドララ!」

「ミニドラ!?」

 

 “ミニドラえもん”。しかし、そのサイズは小型も小型、自分の知っているソレよりももっと小さく、さらにその手には何か黒い“チップ”のようなものを持っていた。

 そして、その“ミニドラ”が排出されたのがきっかけだったように、ドラえもんは頭を掻きながら言う。

 

「アレ? 僕は一体何をしていたんだろう?」

 

 と、いつものように呑気な声でそう言ったドラえもんに、のび太は近づく。

 

「ドラえもん!」

「あ、のび太君! 良かった無事で!」

「ドラえもんこそ!! 大丈夫!? もう、“熱線銃”を撃ったりしない? いつもの、いつものドラえもんだよね!!」

「当たり前じゃないか! 僕は、のび太君の友達の、ドラえもんだよ!」

「ドラえもん!!」

 

 のび太は、その言葉を受けて泣きながら抱き着いた。良かった、目が覚めたんだ。本当に、辛い戦いだった。“ひみつ道具”を駆使して戦う、今までとはまた違った戦いの結果、そして、彼のドラえもんを信じる心が起こした奇跡。いや、違う。これは必然だったのだ。

 

「馬鹿な! “ミニドラえもん”だと! 四次元ポケットの中は全て調べた! あんなものなどいなかったはずだぞ!」

 

 エンブリヲが慌てているのを見たアンジュもまた、不思議に思っていた。確かに、エンブリヲは先ほどの部屋にいた時にドラえもんの“四次元ポケット”の中身を徹底的に調べまくっていた。だが、出てくるのは先ほど使っていたような攻撃に使用できる武器やガラクタばかり、それ以外に入っているはずの“ひみつ道具”は何もなかったと言う。

 でも、確かにアンジュは向こうの世界で見た。今目の前にいるような“ミニドラ”を、ドラえもんが“四次元ポケット”の中から出した姿を。では、あの“ミニドラ”は“四次元ポケット”のどこかに隠れていたという事になる。しかし、どうやってエンブリヲの手から逃れていたのか。

 

「ん、あ、あれ?」

「どうしたの? ドラえもん?」

 

 と不思議な声を上げたドラえもんを心配するのび太。するとつかさずドラえもんは大笑いをし始めた。

 

「く、ははは! くすぐったい!! 何かが“四次元ポケット”の中で暴れてるんだ!!」

「何かって、何が!?」

 

 と、のび太が疑問を呈したその時だった。

 

「はぁ、疲れた……」

「もう少しポケットの中身整理してよ」

「き、君たちは!?」

 

 と言って、現れたのは二人の女性だった。その二人の女性。のび太は知っていた。当たり前だろう。ジャイアンが≪アルゼナル≫にいた人間たちを助けていたように、のび太たちもまた、その女性たちの事を助けていたのだから。

 

「イルマ! ターニャ!!」

「無事だったのか!?」

 

 そう、≪アルゼナル≫第三中隊所属のイルマとターニャである。そういえば二人は、≪アルゼナル≫が襲われた際にのび太やサラマンディーネ、それからちょっと乱暴なアンジュの手によって救助されて、ドラえもんが回収していたのだ。今の今まで忘れていた。

 

「本当、散々な目に合った……でも、おかげで……」

「ドララ!」

 

 と言いながら、のび太の手の上にのる“ミニドラ”と握手をしようとするイルマ。しかしその大きさがかなり違うので、握手と言うよりも“ミニドラ”の手を触っているようにしか見えないのだが。

 そう、それはドラえもんがエンブリヲの手に落ち、“四次元ポケット”の中身を調べていた時だった。

 

『私たちいつまでここにいればいいの?』

『さぁ……』

 

 イルマとターニャの二人はドラえもんに助けられた後、彼のポケットの中でずっと待っていた。彼が、自分たちを外に出してくれるその時を。しかし、いつまでたってもドラえもんは彼女たちを外に出してくれる様子もなく、ただただ幾何学的な模様をしたその空間に浮かんでいるたくさんの道具を前に浮かんでいるしかなかった。

 彼女たちにとって、ドラえもんの“四次元ポケット”はおろか、そもそもドラえもんや、浮かんでいる“ひみつ道具”も未知の存在。

 そのため、その空間がそもそも四次元空間である事や、一体外で何が起こっているのか、そもそもその場所に外と言う物があるのかどうかも分かっていなかった。

 そんなときである。

 

♪みんなで♪

 

『ドララ!』

 

 と、自分たちの事を回収してくれたドラえもんに似た、小さな何かに声をかけられたのは。赤、黄、緑。多種多様の色合いを持つソレらは、自分たちに何かを伝えようとしているようだった。でも、当然であるが彼女たちにその奇怪な生物、いや生物かどうかわからないような存在を正体を知るすべはなかった。

 

♪行こう 僕たちの夢 ほら 広がる世界の先へ♪

 

『え? 何?』

『何なの?』

『ドラ……ドララ! ドラドラ!』

 

 と、その時だ。“ミニドラ”の一体が閃いたようにそこに浮かんでいたある本を指さした。

 

♪手をかざして 未来へ向かう(飛び立とう)♪

 

『え、あれを取って来いって?』

『ドラ!』

 

 そう指示されてイルマが持ってきたのは、“宇宙完全大百科”。文字通り、ドラえもん達の世界のソレまでに分かっている世界の歴史が綴られている本である。“ミニドラ”はその中の自分たちの事が書いている頁を開いて、自分たちが何者であるのか、そしてドラえもん達やのび太たちがどんな存在であるのかを教えてもらった。

 

♪素敵な何かが待ってる♪

 

『二十二世紀の……猫型ロボット?』

『タヌキじゃなくて……?』

『ドラララ……』

 

 いや、気にするところはそこではない。“ミニドラ”はさらに身振り手振りをまじえて言う。

 

♪鳴らしてリンリンドン(リンリンドン) 手のひら いっぱいの 希望を胸に♪

 

『ドラ! ドドド、ドラ!』

『え、今度は何?』

 

 どうやら、どこかに一緒に行こうと話してくれているようだった。とりあえず、自分たちが“四次元ポケット”なる珍妙なるものの中にいて、ここが四次元空間であることは分かった。それにしても、かなりとっ散らかっている四次元空間である。

 “宇宙完全大百科”、その中身の“ひみつ道具”の欄を少し見て分かったが、そこに浮いてあったもののほとんどがその“ひみつ道具”と扱われているものであるそうだ。“ミニドラ”もそう。しかし、その種類は膨大かつ大量で、奥に進めば進むほどその容量のようなものが圧迫されているのか、不思議と狭く感じてしまうほど。

 というか、どう見てもガラクタにしか見えないような物も浮かんでるのだが、その中を泳ぐように、そして頭をぶつけないようにとかき分けていた。その時だ。

 

♪扉開けて ミュージアム ミュージアム♪

 

『きゃ!』

『なに!!?』

 

 変な手が、四次元空間に現れたのである。“ミニドラ”たちはソレを見て驚いている彼女たちに対して、≪いいから早く逃げろ≫と言わんばかりに急かしてくる。正直どういう事なのかさっぱり分からないままに彼らの言う通りに四次元空間の隅の方に向かった彼女たち。

 手は、その内に四次元空間を探るのを止めたようで、その空間の中には一種の沈黙のようなものが産まれる。

 どうやら、そこは四次元空間の中でもかなり奥の方であったらしく、ガラクタに囲まれていたためにその場にあった多くの“ひみつ道具”と一緒に難を逃れたようだ。

 

♪かけがえのない 大切な未来を つなぐ ひみつ♪

 

『何だったの、今の?』

『ドラ……ドド!』

『え?』

 

 と言って、“ミニドラ”が“宇宙完全大百科”にて見せた物。ソレは、二十二世紀最悪の科学者と言われた発明家、エンブリヲの項目だった。

 エンブリヲ。元々は量子物理学を研究していた科学者であり、“人間製造機”を作り出した発明家。ほか、多くの研究者とともにドラグニウムという物質の研究をしており、二十三世紀中盤に突如として研究を行っていた島と、そこにいた数多くの研究者とともに行方不明となった。

 エンブリヲは、その何年たっても歳を取らないという特性からして、かぶせた物の時間を戻らせる“タイムふろしき”を用いて若返ると言う、未来世界において違法と言える物を行っていた疑惑があり≪タイムパトロール≫なる物により、逮捕が急がれるときの惨事であったことが、そこには書かれていた。

 

♪ミュージアム ファンタジー ファンタジー 足りないのは何?♪

 

『もしかして、さっきの手はこのエンブリヲって人だっていいたいの?』

『ドラ……ドララ……』

 

 そして、さらに“ミニドラ”が見せた物。それは、“悪くなるチップ”という項目だった。そのチップはロボットに取り付けるだけでその性格を改変させ、本当だったらそのロボットがやらないであろうことも簡単に行わせてしまう“ひみつ道具”。いや、未来世界ではその危険性から“ひみつ道具”として登録される前に販売中止となってしまった兵器であるのだとか。

 そして、“ミニドラ”はそのチップの項目を見せた後に再びドラえもんの項目を指さした。この行動が意味するところ、イルマとターニャは考え、そして結論を見つけた。

 

♪一緒に見つけようよ キミにもできるはずさ♪

 

『チップ……ドラえもん……ロボット。まさか、そのドラえもんにこのチップが?』

『ドラ!』

『それじゃ、そのドラえもんってロボットは……』

『ドラ……ドラララララ! ドララドララドドドドドラララドドラララドララ!!』

『え? なんて?』

 

 と、“ミニドラ”が何かを伝えようとするのだが、全く持って意味が分からない。まぁそれ自体は予想通りだったので“ミニドラ”はさらに“宇宙完全大百科”の中身の頁を開いていき、ある“ひみつ道具”を見せてから、大量にその場に置いてある山のようにあるガラクタを指さした。

 

♪みんなでつなぐ 僕たちの夢 ほら広がる心の中へ 笑いあえば 自信も持てる(飛び立とう)♪

 

『え? もしかして、コレを探してってこと?』

『ドラ!』

『探してって……』

 

 この中から? たった二つの“ひみつ道具”を? なんだか考えただけで疲れが出てきそうになる二人だったがしかし、頼まれたからにはやるしかない、と言うよりもそれ以外にやることがないので他のたくさんの“ミニドラ”と一緒にその二つの“ひみつ道具”を探しに出た。

 で、それからなんやかんやあって。

 

♪素敵な冒険が待ってるよ 鳴らしてリンリンドン(リンリンドン)手のひら いっぱいの 希望を胸に♪

 

『あったよ!』

『ドラドラ』

『え、違うの?』

『それじゃこれは?』

『ドラララ』

『違うんだ……』

『ドララ!』

『ドラドラ』

『ドラァ……』

『いやそっちも間違えたらだめでしょ……』

 

 と言って、イルマとターニャ、それから他の“ミニドラ”ともども持ってきたのは“モドリライト”“ダッピ灯”“デラックスライト”に“イメージ灯”“月光灯”に蛍光灯といわゆる懐中電灯型の“ひみつ道具”たち。しかしどれも“ミニドラ”たちが探している物ではないようだ。というか最後に至っては完全にただのガラクタである。

 まったくもって、よくもまあこんな無限に広がるような四次元空間の中を物であふれさせるものだと感心すらしてしまいながら、二人はようやく見つけることができた。二つの“ひみつ道具”を。

 

♪扉開けて ミュージアム ミュージアム かけがえのない 大切な未来を つなぐ ひみつミュージアム♪

 

『はぁ、ようやく見つかった“スモールライト”と“どこでも大砲”』

『それで、コレでどうするの?』

『ドララ!』

『え? 自分に当てろって? まぁ、いいけど……』

 

 と言いながらターニャは、その“ミニドラ”たちの中のリーダー格であろう“ミニドラ”、並びに“どこでも大砲”にも“スモールライト”を照射する。

 その瞬間、二つの“ひみつ道具”は収縮を始め、小さくなった。確かに大百科の中には“スモールライト”は対象を小さくするものだと書いていたが、しかし実際にその目で見てもまだ信じられないところがある。一体どんな原理をしているのだろうと二人が考えていた時だった。

 

♪ファンタジー ファンタジー 足りないのは何? 一緒に見つけようよ キミにもできるはずさ♪

 

『ドラ!』

 

 と言って、ミニドラは工事現場で使われるようなありふれた黄色いヘルメットを被り、“どこでも大砲”の中に入っていったのだ。確か、その大砲の効果はその中に飛ばしたいものを詰めて付属しているヒモを引くと目的地にその詰めた物、今回の場合は“ミニドラ”が飛んでいくと言う物だったはず。

 

『もしかして、あのチップを外しに行くの?』

『ドラッ!』

『でも、危なくないの? だって、いくら狙いを定めたら飛んでいくって言っても……それに、チップがどこにあるのかも……』

『ドラ! ドララドラドラ!! ドドドドドラ!』

『え? 自分は昔ドラえもんの中に入って直したこともあるから心配するなって?』

『ドラ!』

 

 そう、確かに“ミニドラえもん”はかつてドラえもんの中に入って故障している部分を直したり、それから完全にその機能を停止させたドラえもんの修理をしたこともあった。だから、彼ならばきっと、外付けのチップである“悪くなるチップ”を取り除くことなんて簡単にできる。だが、そこまでの道のりは長く、遠い物のはず。

 

♪鳴らして リンリンドン(リンリンドン) 手のひら いっぱいの 希望を胸に 扉開けて ミュージアム ミュージアム かけがえのない

大切な未来を つなぐ ひみつミュージアム♪

 

『ドラ!』

『『『ドラ!』』』

『あ、えっと……』

 

 “ミニドラ”にとってそれは決死の作戦と言ってもよかった。故に、彼は大砲の中に入ってからその場にいた他の“ミニドラ”たちに敬礼する。なんだかそのコミカルな表現に、ついうっかりイルマとターニャもまた敬礼を返してしまった。別に上官でもなんでもないのに。

 というかーーー。

 

『私たちなんでこの子たちの言葉が分かるように……』

『なんだか、深く考えない方がいい気がするわ……』

 

 とかなんとか言っている間に、作戦は実行された。“どこでも大砲”のヒモがひかれた瞬間、中に入ってた“ミニドラ”が“四次元ポケット”の出口に向けて跳んでいったのだ。

 そして、ドラえもんの中に入った“ミニドラ”はエンブリヲによってつけられた“悪くなるチップ”を引き抜き、ドラえもんは元に戻ったのである。そして、ドラえもんのくしゃみと同時に外に出て来た。

 これが彼らの戦いの裏で行われていたことの全容である。

 

♪ファンタジー ファンタジー 足りないのは何?♪

 

「ドラえもん!! よかった!!」

「ごめんねのび太君、心配かけさせたみたいで」

 

 といって、のび太はミニドラが手放した“悪くなるチップ”に目もくれず、ソレを踏んだことにも気が付かずにもう一度涙を流してドラえもんの身体に抱き着いた。ドラえもんは、よく覚えていないが自分が捕まったばかりにのび太に心配をかけたことを謝る。でも、それが筋違いであることを彼は勿論知っていた。

 

♪一緒に見つけようよ キミにもできるはずさ♪

 

「ううん、ドラえもんのせいじゃないよ。全部エンブリヲのせいなんだから!」

「エンブリヲ……そうだ、アンジュさん! エンブリヲと一緒にいるんだ!」

「本当に!? よし、早く助けに行こう!」

「うん! と、その前に……“ビッグライト”! で“ミニドラ”を元の大きさに戻して」

「ドラ!」

「二人とも、どこかに身を隠してて」

「え?」

 

 と、ドラえもんが声をかけたのはイルマとターニャの二人である。

 

「一応“ミニドラ”の護衛は付けるけど、今どういう状況になっているか把握できるまで、隠れていた方が賢明だ!」

「まぁ、確かに……」

「そうかも……そもそもここがどこだか分からないし……」

 

 そうか、二人は≪アルゼナル≫で闘い、ドラえもんのポケットの中にずっといたから今の状況を把握できていないのだ。のび太はそれが分かると二人に聞く。

 

「僕、野比のび太です。お二人の名前は?」

「え? イルマ、だけど……」

「ターニャ……」

「イルマさん、ターニャさん。ドラえもんを助けてくれて、ありがとうございます!」

「え? あ……」

「大丈夫。絶対にこの戦いを終わらせます! だから、二人は迎えが来るまでここで待ってて!」

「うん、分かった……」

「それじゃ!」

 

 と言って、のび太とドラえもんの二人は“タケコプター”を使ってその場から去って行った。

 ありがとう、か。なんだろう。任務の後でよく隊長からかけられていた言葉だ。でも、今日のそれはいつもとは違ったありがとうだった。

 イルマも、ターニャも、心のどこかで暖かい物を感じ取ったのだった。それこそが、のび太が分け与えてくれた優しさ。

 ここに、のび太たちの優しさによって救われた者がまた増えた、瞬間だった。




 因みに、“悪いチップ”には元ネタとなる“ひみつ道具”があったりします。ドラえもんオタクの方々は、わかるかもしれませんね。
 まぁ、今回出したのはそれをエンブリヲが魔改造したものですが。
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