【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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chapter55 全ては、遅すぎた

 刹那、世界は光に包まれた。冷たい牢獄に囚われていた女王がその眠りから覚め、屈辱の日々から解放されたのである。

 そう、白い体躯に黄金の光で包まれた巨大なドラゴン。これまでそのヒトを助けるために多くの人間が犠牲になった。多くの人間を犠牲にさせた。そのドラゴンが、ついにこの世界に解き放たれたのである。

 

「「アウラ!」」

 

 ナーガとカナメはその姿を見て歓喜の声を上げた。いや、二人だけじゃない。他の生き残ったドラゴンたちもまた歓喜の雄たけびを上げ、アウラの帰還を祝福した。長年の宿願がかなったのだ。無理もなかろう。

 

「す、すげぇ!?」

「光ってる!」

「あれが……」

 

 その姿は勿論≪アウローラ≫の発着デッキにいたジャイアンとスネ夫、メイ、そして他のメイルライダーや整備班の人間たちにも見えていた。

 なんと、神々しいまでの光。まるで神様のような姿だ。ジャイアンやスネ夫は向こうの世界でサラマンディーネによってその姿を見せてもらっていたのだが、しかし実際にその姿を目の前にすると言葉を失ってしまう。

 其の時、横たわり治療を受けていたリザーディアが身体を起こして言う。

 

「わ、私たちの母なる光、アウラ、です……グッ!」

「じっとしときな! 傷は深いんだから……全く」

「ドラゴンの治癒能力なら全快は可能ですが、しばらくは絶対安静が必要ですね」

 

 マギー、それと向こうの世界から救援に来ていたドラゴンの医師、ドクターゲッコーがリザーディアの傷を治療しながら言う。とても深い傷だ。もしもこれが遺伝子操作を受けて治癒能力も向上しているドラゴンじゃなかったら間違いなく致命傷となっていただろう。そう言われながら治療を受けるリザーディアは、でも歓喜に震えていたのは確かだ。

 

「ドラえもん!」

「うん、これで時空融合は防げたはずだ!」

 

 そして、アウラの姿を遠目から見たのび太とドラえもんもまた、互いに手を取り合って歓喜の言葉を重ねる。ドラえもんも助け出し、アンジュを助けだし、アウラを救い、そして時空融合を阻止した。もうこれで二つの世界の崩壊は免れたのだ。

 そう、二人は喜んでいた。だが、通信機の向こうから叫び声が上がった。

 

『いや、まだだ!』

「え?」

 

 ≪アウローラ≫で作業を続けていたフロック、そしてクルトの二人である。

 二人は、皆が戦っている間に何か別の作業に没頭していた。それは何か。簡単に言えば、ハッキングである。彼らは、全員が戦っている間に≪暁ノ御柱≫と皇宮の中にあったエンブリヲの私室へとハッキングを仕掛けていたのであった。

 ≪暁ノ御柱≫自体は先ほどの≪アウローラ≫の攻撃で倒壊したが、その直前にデータをコピーして、二人で解析を続けていた。

 そして知った。この後に起こる悲劇を。

 

「あの塔のプログラムを解析して分かったんだ! もう時空融合のプロセスは次の段階に移行している!」

「なんだって!?」

「その通り!」

 

 クルトの言葉に驚きの声を上げたドラえもん。それに補足するかのようにエンブリヲが姑息な笑みを浮かべ、全ての通信機をジャックしてその言葉を乗せて来る。

 

「クッ……はぁ、はぁ……」

 

 エンブリヲの目の前には、タスクがいた。身体中傷だらけで、大量の出血が見られる。一体どれだけ凄惨な戦いを繰り広げていたのだろう。フロックとクルトの二人がハッキングを仕掛けている間、ずっとエンブリヲを引き留め続けていたのだ。その痛みと苦労は想像するのも計り知れないほど。

 しかしもう限界が来たようだ。タスクはその手を地面に触れ、片膝立ちの状態にならなければならない程の姿を見せていた。

 

「アウラのエネルギーは時空融合の起爆剤。後は無限宇宙の移送エネルギーで、勝手に融合は進むのさ……」

 

 つまり、手遅れだった、と言いたいのか。アウラを救出するのが、遅すぎたのだとそう言いたいのか。だとしたら、自分たちがやってきたことは、一体。

 その時だった。

 

「はッ!」

「なにッ!」

 

 エンブリヲの手を、手裏剣が貫いた。比喩でもなんでもない。それはまさしく大昔の日本で使われていた武器、手裏剣だった。その武器が貫いた手に持っていた物は拳銃。相手を殺すためのものじゃない。自分で自分を殺すため。そう、タスクは仮定していた。

 

「どうせ、自殺してそのままアンジュを連れ去って逃げるつもりだろうけど、そうはいかない!」

 

 と言いながら、それまでの傷が嘘であったかのように笑みをこぼして立ち上がったタスク。そう、嘘だったのだ。タスクは、服を脱ぎ捨てる。

 

「血糊だと!?」

「そう、これが忍法。俺が受け継いできた秘伝の技の一つだ」

 

 タスクの祖先は忍者だったらしい。その先祖代々引き継がれてきた秘伝の技がいくつもあった。その内の一つが、この騙し討ち。

 服の中にきわめて血の色に近い液体の入った袋を入れて、その部分をあえて攻撃させる。さらにその攻撃を受けた後に、ダメージを受けたふりをすることによって相手に自分が重傷を負ったと誤認させることができるのだ。

 種も仕掛けも分かってしまえば二度と使えない手段。しかし、ことこの場面においては最も敵の心理状態に有効打を与えられる手段であると言えよう。

 

「この、古い地球人の子孫がッ!」

 

 と、エンブリヲは呪詛を吐いた。とりあえず、これでエンブリヲが考えていたことの一つ、≪アルゼナル≫の時と同じように死んだ瞬間に瞬間移動してアンジュを連れ去る、という行動は防いだはずだ。

 だが、それですべての問題が解決できるわけじゃない。一番大きな問題、時空融合は着々と進んでいるのだから。

 

「もう時空融合は止められないの!?」

「このまま二つの地球が滅ぶのを待つしかないというのですか……」

 

 と、アウラを解放した後のアンジュ、サラマンディーネが言った。その後ろには勿論アストロタンクを操る静香の姿もある。

 アウラは救い出した。でも、それでも時空融合が止まらないとは予想もしていなかった。このままサラマンディーネの言う様に二つの地球が滅びゆく姿をその目で見るしか本当に手段は残されていないのか。

 

「ドラえもん! 何とかならないの!?」

「そんな事言ったって!!」

 

 そう。時空融合なんて訳の分からない物を相手に、さしものドラえもんの“ひみつ道具”でも何ともならない。これまで多くの冒険で多くの危機を乗り越えてきた二人だが、ここまでの大ピンチは恐らく鉄人兵団と戦った時以来ではないだろうか。

 あの時はギリギリになって二人の自己犠牲による救いで何とか危機を逃れることができたが、今回はどうすればいいのか皆目見当もつかない。

 

「くそ、エンブリヲのいる時空の狭間の場所は分かったんだ! 後は時間さえあれば!!」

 

 フロックが忌々しく言う。先ほども言ったが、彼らは崩壊直前の≪暁ノ御柱≫にハッキングを仕掛けていた。その際、アウラから供給されているエネルギー以外にももう一つ、今まで見たことがない様なエネルギー反応を探知したのだ。

 その場所は、全くと言って未知数と言うしかない場所に向かっており、そんな場所にエネルギーを送り続けるのならばエンブリヲの不老不死や瞬間移動能力に関係する物、つまりこの時空のゆらぎの中心、時空の狭間しかないと彼らは考えていたのである。

 しかし、場所が分かったところで時間がない。その場所に向かうまでの時間が。

 

『ならば、その時間。私が作ります』

 

 と、その時だった。一人の女性の声が響き渡った。

 

「アウラ!?」

 

 そう、空を滑空しているアウラである。彼女は、金色を更に強くするように輝き始め、その身を中心として力を解放させたのであった。

 

『私の残った力で、時空融合の進行を遅らせます。ですが、それも長くは続きません……』

 

 そう、彼女の体内に残った力。いや、正確に言えば彼女に送られていたドラゴンたちの体内から抽出されたドラグニウムの力を最大限まで高めて一つのフィールドを形成、時空融合を阻止していたのだ。

 しかし彼女の言う通りそのエネルギーは長くは続かない。仲間たちから取り出されたドラグニウムは刻一刻とそのエネルギーを減らし続けていたのだから。

 

『ジョン。全ての、諦めなかった人間たちと……共に時空の狭間にいるエンブリヲを倒してください……』

「アウラ……」

 

 ジョンは、かつての共同研究者だったアウラの言葉を受け、帽子を目深までかぶった。その行動が意味するところを、想像できない者などその場にはいないだろう。

 しかし時空融合がいったん止まったところでまだ問題はある。

 

「でも、そんなところどうやって行くのさ!」

 

 そうだ。エンブリヲがいる場所はアウラたちの言うところの時空の狭間。そんなところにどうやって行けと言うのか。そう疑問を呈したのび太に、フロックが笑顔で言う。

 

「簡単な事さ、時空間の迷路から時空の狭間に行けばいいんだ!!」

 

 時空間の迷路。この言葉を聞いてドラえもんはある言葉を思い出した。

 

「タイムスペースラビリンス!!」

 

 そう。向こうの世界で静香がアンジュに語ったロボット王国(キングダム)がある世界に行くための迷宮。その名前の通り、時空間の中に迷宮のような場所があり、そこを通ることによって異世界やとても遠い惑星へといくことができる。

 しかし、その迷路を通るには万全の準備と、そしてたどり着くための運が必要となって来る。とても危険で、迷ったら二度とはい出ることのできない、そんな危険な空間だ。

 

「私がかつて一度だけ行ったことがある、あの時空の狭間……あそこに行けばすべてを終わらせられる……だが、そのためには……」

「パパ……」

 

 ジョンはかつてその場所に行ったことがあった。そう、エンブリヲの起こしたあの実験の際に、一度だけ行ったことがあるのだ。幸いにも彼だけはすぐに帰ることができたあの場所。そこに行けさえすれば、エンブリヲを倒し、尚且つ時空融合を阻止することができる。それは科学者であるために理解はできた。

 しかし、問題はそのために払うことになる大いなる犠牲の可能性。その事を考えると、ジョンはその行動に移すことを躊躇する。

 隣にいたセーラもまた、その姿を見て父が苦悩しているという事が分かっていた。そう、それはあの時の、過去の世界からドラグニウムを吸い出そうとした時のように。

 

「そのためには、何!?」

「この船は……丸ごとタイムマシンなのだ。そして、そのタイムマシンを使わなければ、あの時空の狭間に行けない……つまり」

 

 この言葉を聞いた瞬間。ジョンが何を言おうとしているのか、それを理解できたものはごく少数だった。サリアは、その中の貴重な一人である。

 

「非戦闘員も……戦闘に巻き込むことになる!」

「え……!?」

 

 そう、忘れている者はおるまい。今宝島の中には≪アウローラ≫から下船させた数多くの非戦闘員、主に子供たちがいるのだ。いや、それだけじゃない。元々宝島にいた島民たちや、他にもこの場所に来るまでに救助した数多くの民間人がいる。

 時空の狭間、そこに行くために宝島と言う名前のタイムマシンが必要であるのならば、必然的にその非戦闘員たちを戦闘に巻き込むことになってしまう。戦場のど真ん中、一番危険な場所へと。

 

「そんな、何とか、できないんですか! ッ!」

 

 エルシャが痛む身体を振り絞って上半身だけを上げると叫んだ。せめて、子供たちだけでも何とか守れない物かと。

 

「≪アウローラ≫に非戦闘員を移している時間もない。アウラの力が尽きる。その前に、時空融合を阻止せねばならないのだ!」

「そんな……」

 

 エルシャの顔は、絶望に浮かんだ。確かに、彼女の言わんとしていることも分かるし、ジョンのいう事も分かる。非戦闘員を≪アウローラ≫に移すにはそれ相応の時間がかかる。その間にアウラの力が尽きてしまえば、全てが終わってしまう。だから、できるだけ早く、宝島に全ての戦力を集めてタイムスペースラビリンスへと向かわなければならないのだ。

 分かっている。分かっているけれど、それじゃ、子供たちを戦場に送り出すのとまるっきり同じ。あの≪アルゼナル≫の時と同じことじゃないか。

 もう、見たくない。あんな、絶望の夢を。子供たちが無残に殺されて、その亡骸を抱きしめるなんて悲しい事、夢であっても、現実であっても、もうしたくなかった。

 そんな時だった。

 

「エルシャお姉さま!」

「!?」

 

 ≪アウローラ≫のモニターに、一人の女の子が映ったのだ。いや、一人だけじゃない。そこにいたのは宝島に移していた幼年部の子供たち。そして、戦闘には介入できないという事で宝島の方に移動していた生活班の≪ノーマ≫たちだった。

 

「私たちは大丈夫だから!」

「悪い人をやっつけて! お姉様!!」

「お姉さまたちだったら絶対できるって、信じてる!!」

「皆……」

 

 なんて、たくましく育ってくれたのだろう。エルシャはまるでその子たちの母親のように涙を流した。

 あの地獄のような≪アルゼナル≫の日々は、まだ世界の事を何も知らない。知る由もない。知らなくてもいい様な子供たちですらも変えてくれていたのだ。

 彼女たちは口々に言う。自分たちに構わずにすべてを終わらせてきてくれと。

 

「でも……」

「安心しな! あたしたちが命を懸けて守ってやるよ!」

「そうさ、ここで引いたら海賊の名が泣くからね。そうだろ! 皆!」

『おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 エルシャが心配する声を上げると、その場にいた宝島に乗船していた海賊たち。マリアやビビ達が威勢よく言った。彼女たちにも自分たちにできる事なんて微々たるものであることは知っている。しかし、それでも生身でも子供たちを守って見せるという勇気と、覚悟は確かな物だった。

 

「皆さん……ッ、お願いします!」

 

 エルシャはその姿を見て、覚悟を決め立ち上がった。全ての決着をつけるために。

 ちょうど≪アウローラ≫はサブエンジンの修理が完了して浮遊する事だけはできていた。その大きさはほとんど宝島と変わらないが、しかし宝島を囲っているバリアを少し大きくすれば≪アウローラ≫も一緒に空間の狭間の中に行くことができるはずだ。そうジョンは言う。

 その言葉と同時に、≪アウローラ≫へと帰還していく各≪パラメイル≫たち。

 

「ドラえもん! 僕たちも!」

「でも、僕たちにはもう……機体は……」

 

 のび太は、ドラえもんに対して自分たちもまたアンジュ達の最後の決戦に着いて行こうと当たり前に進言した。

 だが、例え彼女たちに着いて行けたとしても、アストロタンクはエネルギー切れ、“スタークラッシュ”の戦闘機も品切れ状態。

 だから、生身で戦いに出るしかないわけだが、そんな危険な真似をのび太たちにさせるわけにはいかない。しかしだからと言って自分たちだけが後ろで彼女たちが戦う姿を指をくわえて見ているわけにもいかないのも事実。

 果たしてどうするか。そう考えていた時だった。通信機の方に明るいクルトの声が響き渡った。

 

「大丈夫! その近くには……」

「あれは!?」

「僕たちが乗ってた、≪パラメイル≫!?」

「その通り! 破損部位が全くない完全なパラメイルが残っているんだ!」

 

 そう、そこにあったのは≪パラメイル≫。それも、無人島で借りたタスクの、正確に言えばタスクの母親の≪パラメイル≫だった。この戦いの当初、フロックとクルトの二人が操作していた無人機の≪パラメイル≫が一機、まだ完全な状態で残っていたのだ。であれば、いける。

 

「ドラえもん!」

「うん!」

 

 そして、二人は一緒にその≪パラメイル≫に向かって行くのであった。

 

「タスク! 迎えに来たわよ!」

 

 と、それとほぼ同時刻、アンジュは闘い続けていたタスクを迎えに来ていた。上半身裸で、一体どんな戦いを繰り広げていたかはよく分からないが、どうやら傷一つないのは確かなようだ。

 

「はは、さっきとは逆だね、うわぁ!」

「きゃぁ! もう、この馬鹿、こんな時まで!」

「わぁ、ゴメン!!」

 

 何が起こったのかはご想像にお任せするとして。

 

「アンジュ! くそ!!」

 

 エンブリヲはその姿を苦々しく見るだけだった。そこにはそれまであった余裕しゃくしゃくの笑みは見受けられず、逆に追い詰められた負け犬と言っていい様な無様な格好をさらしていた。

 

「とりあえず、ここのアンタは今殺す!」

「ガッ!」

 

 と言って、アンジュはタスクを自分の後ろの席に乗せて、身体を密着させ、もしもエンブリヲが≪アルゼナル≫の時と同じようなことをしても防げるような体勢を取ってからエンブリヲに向けて発砲。脳天を突き破ったその攻撃によってここにいたエンブリヲは絶命したようだが、その姿はヴィルキスの姿に重なっていたためよく見えなかった。

 そう、彼らは、そして多くの者達はその遺体を目にすることなかったのだ。

 

「アンジュさん! それに、えっと、タスクさん!」

「のび太! ドラえもん!」

 

 それぞれに≪パラメイル≫に乗ったドラえもんとのび太が合流したのである。そう、勿論あの≪パラメイル≫を再び“フエルミラー”で増やして、“なんでも操縦機”を取り付けたのだ。

 この世界の戦いで、自分たちの武器を用いて戦っていた彼ら。だが、最後の最後でメイルライダーとして戦うことになったのは、もはや必然なのかもしれなかった。

 

「行こう! アンジュさん!!」

 

 のび太は笑顔で叫んだ。アンジュは、とても慈悲深い笑みを浮かべる。のび太に対する感謝を込めた笑み。

 もし彼がいなかったら、今の自分はいないかもしれない。

 もし後ろにいる彼がいなかったら、自分はすべてを諦めていたかもしれない。

 そして、目の前のあのロボットがいなければ、自分は何も信じず、何も見ず、何も夢を見ることなく全てから目を逸らしていたかもしれない。

 ありがとう。その笑みにはそんな意味が含まれていたのかもしれない。

 

「えぇ……行くわよ、タスク!」

「あぁ、アンジュ!!」

 

 という事でタスクはヴィルキスから振り落とされないようにアンジュの身体を掴んだわけだが。

 

「ってどこ触ってんのよこの変態!」

「ちょ、違ッ! 最後までこんな役回り……!?」

 

 まぁ、そんな役回りである。いや、≪損≫な役回りである。

 

「そう言うのは後でいいから! 今は、エンブリヲを殺しに行くわよ!」

「え? 後ってことは……」

「余計な詮索はしない! 分かった!?」

「い、イェスマム!!」

 

 こうして、彼彼女たちは締まらない結果になってしまった物の、最後の戦いへと向かうのだった。

 

(さようなら、シルヴィア)

 

 皇宮の中にいるシルヴィアに、心の中でさよならを告げ、彼女は飛ぶ。

 妹の明日を、創るために。

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