【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 今回、リクエストされたあの曲を使用。そして、小説の『本編』を締めくくる挿入歌の最後を飾るのは……?


chapter61 そうボクはみんなの……!

「で、ハッピーエンドでいいんだろうけどさぁ?」

「俺たちどうやって帰ればいいんだ?」

「それは、その……」

 

 と、親子の絆が産まれ、姉妹の絆が元通りになった姿を見てハッピーエンドだと称したスネ夫。しかしだ、確かに自分たちはどうやって元の時代に帰ればいいのか。それは、ドラえもんも見当がつかなかった。

 と、その時だ。一人の男性が現れて言った。

 

「心配はいらない」

「フロックのお父さん……あ、そうだった! あの島って!」

 

 そうだ数十分前に聞いていたじゃないか。思い出していたじゃないか。この船が、あの宝島が、タイムマシンであるという事を。

 そして、この世界が自分たちの世界の未来だとするのならば―――。

 

「そう、あの島を使えば君たちの過去に帰ることができる」

「それじゃ!」

「ただし……」

「え?」

 

 ただし、何だろう。この時、のび太の頭の中には何かデジャヴュのようなものが浮かんでいた。

 そう、あの時、魔法世界を作ってしまった時と同じような感覚が。

 

「この分岐した未来には、二度と来ることはできない。ここは、私たちの世界から見たパラレルワールドとなるのだ……」

 

 そう。もう未来は変わった。戦争が起こる世界は無くなったのだ。エンブリヲは時空跳躍の事故によって行方不明となり、そのまま進んだ歴史の中に入ることになる。つまり、今ここにいるサラマンディーネやアンジュたちのいる未来とつながることは決してないのだ。

 

「そんな、それじゃもう……」

「アンジュさんたちには、会えないのかよ……」

「……」

 

 せっかく、仲良くなれたのに、そんな風にしょんぼり顔を浮かべてたからだろうか。アンジュはのび太の頭の上に手を置くと言った。

 

♪忘れないでこの星に 不思議ひとつ見つけたよ この手のひらで 微かに光る 僕の大事な宝物だよ♪

「なにをそうがっかりしてるのよ。せっかく帰れるのよ、もっと笑いなさいよ」

「アンジュさん……でも……」

「貴方たちがいなくなっても、優しさはこの世界に残る。私たちが、残して見せる……貴方たちの知らない未来の世界までね」

 

 のび太たちがいなくなっても。のび太たちがたどり着けない未来だったとしても、その先の未来は必ず明るいものにして見せる。そう、アンジュは断言することによって、少しは彼の不安と言うか、彼の寂しさを解消させようとしたのだ。

 もう会うことはできない。でも、過去はつながっている。彼らがいた過去に、そしてこれから彼らが歩む人生は、何も変わらないのだ。

 自分達だって変わらない。これからも生き続ける。この本当の地球で、真実を見つめて、ドラゴンたちと一緒に。

 

「……はい」

 

 のび太は、寂し気に返事をした。するしか、なかった。その様子を見たドラえもんは言う。

 

♪君といつか話したね 翼生えた夢のこと♪

「のび太君。一日だけいや、疲れているだろうから三日だけ、この未来にいようよ」

「ドラえもん……」

「良いですよね、ジョン船長」

「あぁ、勿論」

 

 元々二泊三日キャンプの予定だったのだ。それが少しずれこんだだけ。だから、大丈夫。ドラえもんはそう言ってジョン船長に三日間の猶予を貰った。

 この未来の世界でアンジュたちと過ごす、最後の時間を。

 

♪虹を飛び越え 太陽の国 溢れる予感 どこまでも行く 輝いた 記憶に 見つめ合う心で♪

「よっしゃ! 最後にこの未来に続くくらいのとびっきりの思い出を作ろうぜ!!」

「もう疲れたよぉ……でも、海にはまだ潜り足りないしいいか!」

「ねぇ、サラマンディーネさん。もう少しこっちの世界を観て回ってもいいですか?」

「もちろんです。あなた方は、二つの地球……いえ、三つの地球の未来を守った英雄ですから」

 

 ジャイアン、スネ夫、静香はそう言った。その顔にはやはりどこか寂しさがあるけれど、でもその寂しさも受け入れて、笑顔で、未来永劫続くくらいの思い出を作ろうと言ったのだ。

 そして、サラマンディーネもまた、この地球と、向こうの偽りの地球。そして、ジョンが見た絶望の未来をひっくり返し、言い換えれば自分たちの地球も救ったのび太たちに敬意を表する。

 

♪あざやかな♪

「……」

 

 もう、全部終わったのか。本当に。アンジュは、どこか虚無感と一緒にこれから歩むべき自分自身の未来に思いをはせていた。

 

♪蒼い勇気が 奇跡を起こすよ 僕たちに♪

「アンジュさん。これから、どうするんですか?」

「……国をつくるわ。ここに。私たちだけの国。ノーマも人間もドラゴンも関係ない。皆が自分の意思で生きる……厳しくて当たり前の国」

 

 のび太の質問に自信をもって答えたアンジュ。

 差別も偏見もない。ノーマや人間やドラゴンも関係ない。それぞれがそれぞれらしく生きることができる輝かしい未来。ソレを作る。

 理想論だってことは分かってる。でも、のび太に感化されてしまったのか、彼女は、そんな世界を本当に作れるような気がした。

 いや、絶対に作る。彼らの思いを受け継いだ自分だったら、絶対に作れるはずだ。

 

♪忘れない この星に♪

「もちろん俺も協力するよアンジュ」

 

 と、タスク。そして―――。

 

♪生まれそして出会う 繰り返す 時間への旅に♪

「あたしだって、アンタと一緒に行くよどこだってさ……あ、その……あ」

「え?」

「アンジュ……」

 

 と言ってヒルダは、アンジュの唇を奪った。

 

♪奇跡を起こすよ 僕たちが♪

「!?」

 

 突然のことに動転したアンジュ。因みに彼女にとってキスはこれで三回目。一度目は元隊長だったゾーラに、二度目は下剤を飲まされそうになった時口移しで飲まし返したロザリーに、そしてこれが三度目のキスだった。

 

「ねぇ、何が起こってるの?」

「子供は見ちゃダメ見ちゃダメ」

「えぇ、ズルイよエルシャぁ」

 

 と言って、エルシャやドラゴンの面々は翼を大きく広げてのび太や幼年部の少女たち、あとついでにヴィヴィアンにもその姿を見せないようにした。

 

♪輝いた 記憶に 見つめ合う心で♪

「ひ、ヒルダ!?」

「アンジュ、あたし、アンタが好きだ!」

「え……はぁ!?」

 

 突然の告白。というか、好きって、本気で言っているのか。というか、いつから自分たちはそんな関係になった。あんなに痛姫痛姫と呼んで、ゾーラを殺してしまったことを憎んでいたはずなのに、どうしていきなり告白されるような関係になったのだ。アンジュの頭の中は混乱していた。

 あともう一人も同じく。

 

♪あざやかな 蒼い勇気が♪

「えぇ!? ソレ、俺が言う台詞じゃないの!?」

 

 と、アンジュの騎士たるタスクがそう言った。確かに、この場面ではタスクの方がアンジュに告白すると言う場面が想像できるはずなのだが、しかしその役目をしっかりとヒルダに横取りされてしまい、こちらもこちらで動転している様子。

 

♪奇跡を起こすよ♪

「まっ、今回の功績をたたえてアンタを第一夫人にしてあげる。あたしはその次でいいから!」

「うわぁ!」

「きゃ!」

「あ……」

 

 と、ヒルダに背中を押されてアンジュの方に倒れこんでしまったタスク。

 結果―――。

 

♪僕たちに♪

「痛たたたた……ん? げぇぇ!?」

「こ、この……年中発情期男がぁぁぁ!!」

「ぎゃぁぁぁぁ!!」

「ねぇ、何が起こってるの?」

「子供が見ちゃダメな世界さ」

 

 アンジュの叫び声と、タスクの叫び、頬を叩く音とジルの小さな一言が、島中に響き渡った。

 なお、何が起こったかは、ご想像にお任せしよう。

 と言ったところで、綺麗にオチが付いたところで。

 さぁ、楽しい後夜祭の始まりだ。

 アウローラに乗っていた、そして、宝島に乗っていた全員が、≪アルゼナル≫に集結した。戦いも、悲惨な争いも存在しない、そして、誰にも後ろから操作されることもない、素晴らしい世界に降り立ったのを見たドラえもんは嬉しそうに言う。

 

♪花やくさきとおはなしが できたらうれしいとか♪

「ようし! 僕の道具をありったけ出すよ! 皆何がしたい?」

「あ、なら私は“きせかえカメラ”を……」

「“きせかえカメラ”?」

 

 とサリアが一番に手を挙げた。そう言えば最初に“きせかえカメラ”を取り出した時にも彼女は反応していたが、何かあるのだろうか。

 

♪空をとびたいなんて♪

「あ、あはは」

 

 因みに、その後ろではやっぱりナオミが苦い顔をしていた。

 そう、知っていたのだ。サリアにはある趣味があるという事を。それが、コスプレ。彼女はストレスが一定以上たまると、≪プリティ・サリアン≫という魔法少女のコスプレをすると言う趣味を持っているのだ。

 以前ソレをたまたま見てしまったナオミは、絶対にそのことを他の仲間たちには言うなと更衣室の中で言われてしまった。その時、ついうっかり鼻をぶつけてしまい、鼻血が出て、それがライダースーツに付着してしまった。そう、今となってはもうどうでもいいことだが、アンジュが前に使っていたライダースーツの血の正体である。

 

♪まかせておくれ簡単さ♪

「はーい! 私はこの世界も一度飛んでみたい!! いや絶対飛ぶ!!」

 

 と言ったのはヴィヴィアンである。そう言えば、彼女は一度、というか向こうの世界に来るまではこっちの世界で自由に飛んでたのだから、もっともっと空を飛んでみたいと思うのはもっともな事なのかもしれない。

 それに対して、エルシャが≪空を飛んで≫言う。

 

♪うかんだ雲をわたがしに かえて食べちゃうことも♪

「そうね、私もヴィヴィちゃんや皆と一緒に飛びたいわ」

「うわ! すごッ! もう飛べるようになったんだエルシャ!!」

 

 確かに、冷静に考えてみたらさっきドラゴンになったばかりのエルシャが、もう翼を自由に使いこなしている。思い返してみれば、さっきもヒルダのキスシーンやタスクのラッキースケベを子供たちに見せないためにその翼を大きく広げていたが、意外と扱うのは簡単な事なのだろうか。

 

♪できるよ チョット待ってね ポケットをさがしてみるよ♪

「ドクターゲッコーに頼めば、いつでもドラゴンの姿に戻れます。その姿ならば、きっと空を羽ばたくことができるでしょう」

「ありがと! サラマンさん!」

 

 と、サラマンディーネに言われたヴィヴィアンは喜ぶ。考えてみれば、身分の差的にもヴィヴィアンがサラマンディーネにこんなにフレンドリーに接しているのもどうかと考え者になるが、ここはそんな差別も上位関係も関係のない自由な国。だから、こんな風に接しても誰も文句は言うまい。

 

♪きかせてその大きな夢を せいいっぱいキミの声で♪

「なら、あたしはこの世界でも≪ジャスミン・モール≫を作ろうかね」

「病院もいるね、ドラゴンじゃない人間のための」

 

 という大人組。もう子供も大人すらも関係なかった。誰もが誰も、自分たちの未来に想いを馳せる。≪アルゼナル≫では決して出来なかったこと。

 

♪その夢 忘れないでいてね そうボクがかなえてあげるよ♪

「さぁ行こうのび太! 時間は限られてる! でも、目の前の未来を掴み取った僕たちには! 未来は永遠に続いていくんだ!」

 

 と言うフロックに続いてクルトが言う。

 

「未来へ向かう。かけがけのない大切な未来を一緒に見つけようよ!」

 

 ナオミが言う。

 

「偶然なんかじゃない、ここにいることが必然だったって言えるくらいに楽しく遊ぼう!」

 

 アンジュが言う。

 

「そうね、これまでの苦労が吹き飛ぶくらい……」

「アンジュお姉さま……」

♪みんなのやくにたつ人に いつかはなりたいんだね♪

「涙なんて忘れて……みんなが笑顔になれる。そんな思い出を作りましょう!」

 

 そして、のび太が言った。

 

♪せんせいかしゅにはかせ パイロットにパン屋さん きかせてその大きな♪

「うん! お願いドラえもん! みんなみんなみんな叶えてくれる道具出してよ!」

「分かった! もし分からない道具があれば、僕が説明するから、注意して使うように!」

 

 この言葉に、元≪アルゼナル≫組の面々はつい反射的に答えてしまった。

 

♪夢を♪

『イェスマム(たぬきさん)!』

 

 と。

 

♪せいいっぱいキミの声で♪

「あぁ! 誰だ今たぬきって言ったのは!!」

 

 因みに、言ったのはヴィヴィアン、一度注意されたことがあるにもかかわらず言っているので、完全にわざとなのは間違いない。

 

♪その夢 忘れないでいてね♪

「フフッ、ヒルダ、あのたぬきはな……」

「え?」

 

 と、ヒルダはヒルダ(妹)に耳打ちをする。その姿を尊そうに見ているヒルダの母親。

 

♪そうボクがかなえてあげるよ♪

「イェスマムってのも違うわね……フフッ、ソレじゃあ」

 

 確かに、マムと言うのは女性への言い方だし、だからと言ってイェスサーと言うのもちょっとかたっ苦しい言い方になってしまう。

 アンジュは、そう言うとその場にいる全ての子供たちを集めて互いに顔を見合わせて全員にある言葉を伝えた。その姿を、大人たちは見つめ、微笑んでいた。

全く、楽しそうだ。子供たちは。エルシャの言う通りかもしれない、ジルは手に持ったたばこのケースを力いっぱいに握りしめる。もう二度と、ソレを口にしないと、決めたかのように。

 子供たちがのびのびと、笑顔で生きる世界。それこそが、本当に目指すべき世界だったのかもしれないと、復讐で身を焦がした自分の代わりに作れなかった世界を、子供たちが作る世界を夢見て、彼女は子供たちには不必要となるソレを捨てたのである。

 未練何て、あるわけない。

 ジョンもまた、その姿を遠目から、アウラとともに見つめていた。これからの未来を生きることになる子供たちを。自分が見た滅びの未来を回避し、新しい未来を歩んでいくことになる子供たちを。

 そして、彼は誓う。

 

♪きのうのしっぱいも こころのビタミンなんだ♪

「アウラよ」

『なんですか? ジョン』

「私は、ドラグニウムの著作権を持とうと思う。無論、過去の君と相談してだ」

 

 絶対にドラグニウムが悪用されないようにその著作権を保有することを。

 

♪だいじょうぶあしたはもっと できることが多い♪

『自然エネルギーに著作権、前代未聞のことでしょう』

「あぁ、だがもし私が生きている間にドラグニウムの安全な運用方法がわかれば……」

 

 そう、自分がもしその著作権を持てれば、ドラグニウムエネルギーが悪用されることは、自分が生きている間は決してない。

 もし、自分が存命中にドラグニウムエネルギーが安全に使用できる方法が見つかれば、もっといい。

 

♪キミがいるから いこうよ♪

「全ては、未来を生きる子供たちのために」

『そう、ですね……』

 

 ジョンは、アウラにそう誓うのであった。その時、二人は海の向こうに見た。優しく、自分たちを、そして子供たちを見つめるフィオナの幻覚を。

 ソレを見て、ジョンはフッ、と笑った。

 

♪きかせて その大きな夢を せいいっぱいキミの声で その夢 忘れないでいてね そうボクがかなえてあげるよ いつかはその大きな夢が せかいじゅうにひろがるから かがやき 忘れないでいてね♪

「いい? みんな、せーので一斉に言うんだよ!」

「ほら、皆んなもね」

「はい! エルシャお姉様!!」

「ヴィヴィアン、今度は悪ふざけは無しよ」

「もちのろん!」

「お姉様、手を、握ってもいいですか?」

「……えぇ、そうね、みんなで手を握りましょう!」

「えぇ、我々ドラゴンと人間の友好の証として、この一瞬の時を、永遠の思い出とするために!」

「いくわよ、のび太!」

「うん! いくよぉ!」

「「せーのッ!」」

 

 そして、大人組のジョン、アウラ、ジル、マギー、ジャスミン、ヒルダの母、エマ・ブロンソン、リィザーディア、ドクターゲッコー、ラミアが見守る中。

 のび太、静香、スネ夫、ジャイアン、クルト、フロック、セーラ、サリア、ヒルダ、ヒルダ(妹)、サラマンディーネ、ナーガ、カナメ、タスク、モモカ・荻野目、ヴィヴィアン、エルシャ、ロザリー、クリス、ターニャ、イルマ、メアリー、マリカ、ノンナ、メイ、パメラ、ヒカル、オリビエ、ナオミ、ミスティ・ローゼンブルム、幼年部の子供たち、シルヴィアそしてアンジュが声を揃えて言った。

 

♪そうボクはみんなのドラえもん♪

『夢をかなえて! ドラえもん!!』

「フフフッ、オッケー!!」




 次回、最終回。
 余韻のために、ここで言いますが、次回の最終回後、活動報告にて完結した感想などを書きますので、よかったら見に来てください。
 長かったこの物語も残り後わずか、読者の皆様、ここまで付き合っていただき、ありがとうございます!!
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