【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞 作:牢吏川波実
日が完全に沈み込み、闇とほんの少しの白という景色となった青空。満天の星が浮かび上がり、それと月が海の波に乱反射して綺麗な色合いを演出していた。
誰にも汚されることのない静かな夜。そう、本来ならば何人にも犯されることのないはずのいつもの夜の事だった。月を遮り、海に映った光を散らして四つと一つの飛行機が飛んでいたのだ。
「わぁぁ」
「ヤッホぉ!」
「イェーイ!」
と、滑空していたのは静香、スネ夫、ジャイアンの三人である。三人は、島で見つけた機体をもう十二分に操縦することができるようになっており、各々自由に飛んでいた。
特に静香のソレはあまりにも美しい。当初、他のメンバーと比べてやや乗り気じゃなかったのも忘れてしまったかのよう。優雅で、鮮やかに滑空している姿は、見ていてほれぼれするほどだ。
そんな姿を見て、自分の心配しすぎだったかと思っていたドラえもん。確かに、機械という物は扱いを誤れば悪魔となってしまう。しかし、上手に操ることができるようになると、とても楽しく、そして人類に豊かさをもたらしてくれる物となる。それを体現してるかのような光景だった。
「ウフフ、あれ? のび太君は?」
ふと、その時ドラえもんは気が付いた。あれ、のび太の姿がないと。と、その時だ。
「ドラえも~ん!!」
叫びながらドラえもんの後方から無茶苦茶な動きをしながらのび太が現れたのは。
「はぁ、全くしょうがないなのび太くんは」
これまたいつも通りと言うかなんというか、ドラえもんは呆れながらにのび太に近づこうとした。だが。
「あわわわわわわわわわわ……わぁぁぁ!!!」
「きゃぁ!」
「こらのび太!」
「ちゃんと操縦しろ!」
「そんなこと言われてもぉぉぉ!!!」
と、やっぱり滅茶苦茶な動きをするためにドラえもんが近づくことも許されず、それどころか上手に滑空している三人の方に向かって行くしまつ。危うくぶつかるところだった。
全く、思った通りの展開である。自転車にもうまく乗れないようなのび太が、この道具を使いこなすなんて、ましてや乗ってる物は自分たちからすれば未知の物体だ。
かつて、自分たちは宝島を探す時、そしてある人を説得するためにトビウオ型の“ひみつ道具”を使った。それと勝手が似てるので大丈夫だと思ったのだが、やはり見たこともないソレを使いこなすなんて無理な話だったのだ。
「やれやれ……ん? なんだあれ……」
と、のび太を何とかして止めようとした。その時だった。ドラえもんは、前方にある異常に気が付いた。
何かが、ゴロゴロと音を鳴らしている。雷、だろうか。だったら、飛んでいるのは危ない。何も遮るものがないこの海の上で、もし雷が自分たちの真上で落ちてしまったら、自分たちに当たる可能性が高いそう考えたのである。
「積乱雲? いや、違う!」
だが、事実は小説より奇なりとも言う。ドラえもんが考えていたそれよりも事態はより深刻であった。
よく見ると、暗闇の中であるためにハッキリとは見えていなかったが、空中に穴のようなものが開いているではないか。自分が雷だと思っていた物は、その穴の外周からあふれ出ているソレであったのである。
「みんな注意しろ!」
これはただ事ではない。そう感じたドラえもんが背後にいた三人に―因みにのび太は上の方でうろうろとしている―そう言った。その直後であった。
「え?」
「な、なんだあれ!」
「竜!?」
穴の中から巨大な何かが、それも無数に現れたのである。その姿形は、スネ夫が言う通りまさしく、竜そのものと言っても過言ではない。
と言っても、その顔が竜に似ていると言うだけで、体型は別に長細かったり鱗に覆われているわけではなさそうだが。
いや、そんな事今はさしたる問題じゃない。今するべきことはたった一つ。
「わぁ! 食べるならジャイアン! グルメならジャイアンだよ!!」
「てめぇ! それが友達に言う台詞か!!」
ジャイアンを生贄にすること。
ではなく。
「総員! 方向転換! さっきの無人島に引き返すぞ!」
「「「了解!」」」
自分たちが見た物が何であるにせよ、すぐにその場から立ち去ること。すぐにその竜と思わしきものから逃げる事が先決であった。
ドラえもんの指示を受けた三人はすぐに方向転換して、自分たちがキャンプ地としている無人島へと進路を変えた。しかし。
「ま、待ってよみんな!」
「あの馬鹿!」
「のび太さん!」
まだ上手く乗りこなせていなかったのび太は、ただ一人置いて行かれそうになり、ソレを見た四人は再び方向転換。危険を承知でのび太の方へと向かって行こうとする。が、それを制したのはドラえもん。
「皆は離れてて! 僕が助けに行く!」
「ドラえもん!」
その言葉と同時に飛び出したドラえもん。もし竜が襲い掛かってきたとしても、生身である他の三人と違って自分には頑丈さと言う物がある。それがあるからこそ、彼は一人のび太を助けに向かったのだ。
「うわぁぁ助けてぇ!!」
しかし、そうこうしている間にも、竜はのび太の周りに集まってきて、今にも襲われそうだ。幸か不幸か、のび太の操縦があまりにも無茶苦茶すぎてその突撃のどれもが当たってないようだが、このままではいずれ―――。
「のび太くん! えっと、なんかないかなんかないか!!」
その姿をみたドラえもんは、急いでポケットの中に手を入れて武器になりそうなものを探す。しかしその手探りはあまりも拙い物。と言うより彼自身の性格故にポケットの中身が整理されていなかったので、次から次へといらない物を出しては捨て、出しては捨てを繰り返していく。
「とりあえず! “こけおどし手なげ弾”!!!!」
と言ってドラえもんはピンク色の手りゅう弾のようなものに顔が付いてある物を取り出し、そのピンを抜くとすぐに放り投げた。
すると、辺り一面にとてつもない光と音が鳴り響いた。まるで花火のような、巨大な光と音。こんなものを使用してのび太は大丈夫なのかと思う者もいるかもしれないが、これはその名前の通り≪こけおどし≫。音と光だけで何の害も与えない“ひみつ道具”だ。簡単に言えば、軍隊でよく使用されているスタングレネードの強化版と言ったところだろうか。
故に、まだ危機から脱したわけじゃない。ただただ竜たちの目くらましで、時間稼ぎにしかならない。
「どこだどこだどこにいった!」
その間に、ドラえもんは再び“四次元ポケット”の中身を出していきながら目的の道具を探す。
そして―――。
「あった! のび太くんこれを!」
と言って、ドラえもんが投げ渡した物。それは、“ショックガン”というひみつ道具で、稲妻状の光線―あるいは電撃か衝撃波―を放つ光線銃。相手を傷つけずに気絶させることができると言う、生物に対して優しいのび太にとってはありがたい道具なのだ。
「うわっとっと……えい!」
のび太は、ソレを空中で受け取ろうとして手を伸ばし、両手の上でお手玉をしてしまうが何とかつかみ取る。
運動音痴ののび太にしてはこれだけでも上出来と言っていいだろう。しかし、この竜に囲まれてしまっている中、果たしてその銃だけでどこまで耐えることができるのか、分かった物では―――。
「フッ! ハァッ! やぁぁぁぁ!」
否。彼には特技が三つあった。一つが、以前にも紹介した最速睡眠時間0.93秒。二つ目があやとり。そして、最後のもう一つが、射撃。である。彼は、乱戦状態の中、的確に自分に向ってくる竜を次々と撃っていき、気絶させていく。
一体何匹の竜を気絶させたのかは分かった物ではない。しかし、竜たちが錯乱している状態の中で撃たれたソレにより、竜の動きが鈍ったのか、ある方向に大きな通り道ができる。
「のび太くんこっちだ! 急げ!!」
「わ、分かってるよぉ!」
ドラえもんがいるのは下の方だった。のび太は、やはり拙い動きでドラえもんがいる場所まで何とか飛ぶことができ、合流することができた。これで一安心と、二人が思った。その時だった。
「ドラちゃん! のび太さん! 下よ!」
「「え、うわぁぁぁぁ!!!」」
静香の言葉で下を向いた二人の目に映ったのは、今にも自分たちの事を喰らおうとしている竜の大きな口と、その中に生えた巨大な牙であった。
因みにドラえもんが“四次元ポケット”から大量のガラクタを出してるシーン、一つ一つのモノ書こうと思ったんですけどもそれだけで何行にもかかるのでやめました(例:ヤカン、扇風機、どくさいスイッチ(!?)、悪魔のパスポート(!?!?)、イナゴの缶詰等色々投げてます)。