【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 本当はこの話までクロスオーバー先はナイショにしたかったのですが、OPで堂々と記載してるのに気がついてOP後の発表となってました。


chapter6 地獄への案内人

 この出会いも、本来の彼女たちの任務から考えると、奇跡的な出会いなのかもしれない。

 彼女たちの仕事。それは日中、日が昇っている時間帯に割り当てられていることが主だったから。こういった夜間任務には、ほかの部隊の人間が当てられていることが多いのだー完全にないわけでもないー。

 しかし、こと今回の場合は司令の方からなにか≪シンギュラー≫とはまた別の反応を探知した、との報告も受けて、念には念を入れて彼女たちの組織中でも特機戦力を持つ、エース部隊の彼女たちを送ったのだ。

 正直、彼女たちの中の数人は、既にもう日中に一度出撃したために疲れてしまっている人間がいる事は確か。そう言う事がないようにと、日中に行動する部隊と、夜間任務専用の部隊があるのだから。

 だが、彼女たちの場合、出撃し、敵を殺せば殺すほどその報酬が上がると言う歩合制であるため、その何人かの人間も、これ幸いとばかりに≪パラメイル≫に乗り込み、向かった。

 ≪シンギュラー≫反応と共に、謎の反応を探知した、例の海域へと。

 そこは、その部隊のある人物にとってはなじみの場所、と言うより数週間ほど前に一度だけ行ったことのある場所であった。と言っても、ほとんど不可抗力に近い形なのだが、なんにせよ、≪あの男≫がドラゴンに襲われているかもしれない。そう感じた≪彼女≫が、隊列を乱して先行するのは、もしかしたらそれだけは必然だったのかもしれない。

 

「え?」

「何? あの光?」

 

 その瞬間だった。彼女たちの目に映ったのは、まるで花火のように光り輝いた景色と、ソレに照らされて映された、無数に何かに群がっているドラゴンの姿。

 そして、今にも襲われそうになっている誰かの姿だった。

 

「ッ!」

 

 ソレを見た≪彼女≫は、いち早く現場に向かった。その速さは尋常な物ではなく、普通の≪戦闘時≫においてもめったに見ない程の俊敏性を見せていたと言ってもいいだろう。

 そして―――。

 

「え?」

「今のは!?」

 

 彼女は、目の前でドラゴンに喰われそうになっていた二機の≪パラメイル≫を救うべく、三発の弾を発射した。

 

「きゅるるるッ……」

 

 と、ドラゴンは断末魔のように小さな声を上げながら絶命し、海へと落下していく。見ると、海面には無数のドラゴンの死体―この時にはそう見えた―が浮かんでおり、かなり長時間にわたって戦闘が行われていたことが見て取れた。

 

「≪アンジュ≫! 独断専行は……って」

「ありゃあ……」

「わぉ、≪パラメイル≫だぁ!」

 

 と、アンジュという女性を咎めようとしていた女性。そして他の女性たちも全員が驚いていた。なぜなら、そこには本来いるはずのない≪パラメイル≫を駆使する五人の≪ノーマ≫がいたからだ。

 

「先行していた部隊がいたの?」

「いや、そんなはず。今確認を」

 

 と言ってこの部隊の隊長である≪サリア≫が自分たちの≪所有者≫であり、司令官である人間に連絡を取ろうと試みる。

 しかし、その前に動く人間がいた。

 

「そんな時間はないわ」

 

 女性。アンジュは≪パラメイル≫のハンドルとクラッチを操作して再び空を舞う。その動きは、もはや洗練されたレーサーのように俊敏で、なおかつ、ライオンのような獰猛さ、そして判断力という笠をその身に付けたような頭脳で、ドラゴンの群れの中に向かう。

 

「ハァッ!? おい、痛姫!」

「勝手な行動して!」

 

 と、他の仲間たちから咎められるが、そんな事彼女には関係ない。

 

「ハァァァ!」

 

 自分の目的はただ一つ。ドラゴンを狩ること。それだけが、自分に残された生きる意味。生きる目的。そして、仕事だったから。

 

「すげぇ!」

「あの竜を倒してる!」

 

 彼女の乗る≪パラメイル≫、通称≪ヴィルキス≫は、時に飛翔形態の≪フライトモード≫からロボット形態≪アサルトモード≫となり、次々と手に持ったアサルトライフルで、そして手に持った刀で、周囲のドラゴンを駆逐していく。

 そのたびにあふれ出るドラゴンの血。それは、汚されることのなかった海を、鮮血に染めるには十分すぎる物だった。のび太たちにとって良かったことと言えば、それが夜であったために海を染めた紅を見なくて済んだことであろうか。

 

「あぁ……」

 

 ドラゴンを次々と狩っていくアンジュの活躍に、やや遠くから見守っていたジャイアンとスネ夫は、その動きに目を輝かせている。しかし、唯一。ドラゴンに襲われていたのび太だけは、その姿を見て何か思う事があったらしく、自分が≪パラメイル≫に上手く乗ることができないことを忘れているかのようにボーっとただただアンジュの駆る≪ヴィルキス≫の姿を目で追うだけだった。

 

「のび太くん! 今のうちにここから脱出するんだ!」

「う、うん!」

 

 ドラえもんのその言葉に、自分が危機的状況に陥っていることを思い出したのび太は、すぐにその場から離脱するためにやっぱり拙い動きで移動しようとしていた。

 

「待ちなさい!」

「うわぁぁぁぁ!」

 

 その時である。暗闇でよくは見えないが、青色の機体に乗った女性が、その身を≪アサルトモード≫の状態にした≪パラメイル≫から出すと、ドラえもんとのび太の前に立ったのだ。二人は、そのロボットが目の前にいるためにそれ以上動くことができなかった。

 その二人を見た瞬間、何か違和感を感じた青いロボットに乗る女性は、目を風やドラゴンの血から守るために付けているバイザーを上げると、その二人の姿をじっくりと観察する。

 やっぱり、見間違いじゃない。どう見繕ってもあれは―――。

 

「ッ! 男の≪ノーマ≫? それに、たぬき?」

「僕はたぬきじゃなーい!!」

「≪ノーマ≫? それって」

 

 ≪ノーマ≫。その言葉を初めて聞いたのび太は、隣でいつものようにたぬきと間違えられたことに憤慨してるドラえもんをよそにその意味を聞こうとした。しかし。

 

「あなた達、私たちと一緒についてきてもらうわ。従わない場合は……」

「えぇ!?」

 

 と言いながら、女性。サリアは太ももの辺りに常備してあった拳銃をのび太に向けて、脅しをかけてくる。

 

「のび太! 今助けるぞ!!」

 

 その姿をみたジャイアンは、すぐにのび太に加勢するために≪パラメイル≫を操り、女性に向かって行く。やはりこういった時のジャイアンは頼りになる。確かに無謀ではあるのかもしれない。だが、それでも銃を持った人間に対して恐れることなく向かって行くのだから。

 

「待った! 今は、この人たちの言う事を聞いた方が良さそうだ……」

「くそ、しょうがねぇか……」

「そ、そんなぁ」

 

 しかし、そんな危険な目に子供たちを巻き込ませるわけにはいかない。ジャイアンは、ドラえもんの静止を聞き、その動きを止める。その背後ではスネ夫がいつもの通り弱気ともあきらめとも言えるような台詞を吐き、静香は名前の通りに静かにその様子をうかがうだけだった。

 

「あの竜、それにこの機体……一体なんなんだ……」

 

 こんなもの、未来世界でも見たことがない物だぞ。そうドラえもんが考えている間にも、戦闘は次々と進んでいく。

 ある物はブーメラン型の武器を使って、またある者は大砲型の武器を使って、またある者はやはり敵に突撃してそのドラゴンの身体を引き裂き、そして特別大きなドラゴンは、≪凍結バレット≫と呼称した武器を使ってその身体を凍らせて。

 そうして、いつしかドラゴンたちはその数を大きく減らし、残っていた者―中にはのび太が気絶させていたドラゴンもいる―もまた自分たちが現れた穴の向こう側に消えていった。そして、世界は静けさを取り戻した。

 海面上に散乱している、ドラゴンの死体を除いて。

 

「こちらサリア、作戦終了。帰還します」

 

 サリアは、≪シンギュラー≫が完全に閉じたのを確認すると、自分たちの本部たる場所へと連絡を取った。

 

「たく、またあの痛姫様の独占かよ」

「本当ウザイ」

「まぁまぁ」

 

 と、上から黄色い機体に乗る女性、黄緑の機体に乗った女性、そしてオレンジ色の機体に乗った女性がそれぞれに口を出している。どうやら、今回一番ドラゴンを落とした女性に対して募りを隠せていないようだ。

 でも、それは少しおかしいのではないだろうかとのび太は思っていた。なぜなら、一番ドラゴンを落としたという事は、一番部隊の中で活躍したという意味なのだから、本来だったら賞賛を受けてしかるべきこと。ソレなのに、どうしてそんなに、まるで目の敵にしているかのような声を上げなければならないのか。不思議でたまらなかった。

 

「うぅ、ドラえもん……本当にこの人たちについて行っていいの?」

「あの無人島に帰った方がいいんじゃないかしら……」

 

 と、言うスネ夫と静香。しかしだ。すでに四人は他の機体に包囲されており、もし逃げ出そうものならばすぐ撃たれてしまうのは確実。のび太に至っては全然乗りこなせないから拘束用の道具を使われてけん引されている始末だしこの状態で逃げるなんてこと、不可能であろう。

 

「ここでクイズです!」

「うわぁ!?」

「私たちがこれから帰る場所は一体どこでしょうか?」

「帰る場所?」

「クイズ?」

 

 こんな状況ではあるが、というかこんな状況にもかかわらず、ピンク色の機体に乗る、飴玉を口にくわえている女の子が元気にそう言った。

 その言葉に、どこか既視感を覚えたのび太。クイズ、か。そう言えば、彼らは今どこで何をしているのだろう。前に一緒に海で大冒険をして、一番大切な宝物を一緒に見つけた。大事な友達は。

 

「そんなの決まってる……」

 

 そんな彼女の言葉に、周りの人間からアンジュ、ある女性からは≪イタヒメ≫なんて呼ばれ方をされていた。そして、のび太とドラえもんの命の恩人でもある女性が、吐き捨てるかのように言った。

 

「私たちが帰る場所は、あの場所しかない……あのクソッタレな≪ノーマ≫の集積所しか……」

「≪ノーマ≫……ソレって一体」

 

 と、再度のび太が聞いたことのない言葉に対して疑問を呈しようとした。その時だった。

 

「見えたわ」

 

 と、先行していたこの部隊の隊長であろう女性が言ったのは。

 そして、彼らの視界に入ってきた物。それは―――。

 

「!?」

「なんだ! 断崖絶壁の上に要塞が建ってる!?」

 

 そう、まさしく要塞だ。島の上に要塞が建てられている。いや、正確に言えば島の中に要塞を組み込んでいると言った方がいいのかもしれない。とにかく、明らかに飛行機の発着場を意識したような長い滑走路と、まるでマンションの一部のように光り輝く窓。これはまさしく、要塞と言っても過言ではなかった。

 そして、驚いている五人を一瞥した隊長のサリアが、一言。

 

「ようこそ、≪アルゼナル≫へ」




 因みにクロスアンジュ世界にタヌキがいるかどうかについては無視しております。
 後、クロスアンジュの原作時系列的にはこの作品は、『第6話 モモカが来た!』と『第7話 サリアの憂鬱』の間に入ります。
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