IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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遅くなって申し訳ございませんでした。
それにいただいた感想に書いていた箒の処遇についてですが、話を進める上で少し消化しなければならないものがあるのでもう少し先になります。期待していた方、裏切るような形になってしまい申し訳ありません。
なるべく早くにはその場所を投稿できるようにがんばります。

それでは、どうぞ。


九話 『Consideration』

 

 

千冬side

 

 

 

保健室を出ると一夏と鳳がいた。

 

「見舞いか」

 

「ちふ――織斑先生、星野は」

 

一夏が心配そうに私に聞いてくる。

 

「あぁ、入っても大丈夫だろう、ノックを忘れずにな、織斑」

 

すぐさま入ろうとドアに手をかけている姿を見て、千冬と鈴は苦笑する。

 

それから二人のもとを立ち去った。コンコンコン、とノックの音の後に少し間をあけて、どうぞと声が後ろから聞こえた。

 

 

 

「山田先生、大丈夫ですか?」

 

「ぐすっ……あっ、話は終わりましたか?織斑先生……」

 

千冬はそのあしでIS学園の教師しか入れないとある一室に赴いた。そこには山田先生が泣きながら作業をしていた。

「えぇ、星野なら大丈夫です。それで結果は?」

 

山田先生は私に見やすいように少しずれる。

 

「ふむ」

 

私は山田先生が調べてくれたデータを見る。

 あの後、ボロボロになったISは回収し、専門の教師達によって解析が行われた。 

 

「……無人機か」

 

千冬が苦々しげに呟く。

「コアはどうだった?」

 

「回収したコアを確認したところ、全ISのどのコアにも合いませんでした。完全に登録されていないコアです」

 

「そうか…………」

 

 

あごに手をあて、考えるそぶりをする。千冬にはある心当たりがあった。あの天災…バカの事だ。

 

登録されていないコア――私は思った。そんな芸当ができるのはあいつではないか、と。

『歩く天災』と称され、ISの生みの親である篠ノ之箒の姉、篠ノ之束である。

「何か心当たりでも……?」

 

「いや、私の考えすぎのようだ」

 

しらずしらず顔に出てしまっていたらしい。

 

あの束が原因だろうが明確な証拠が無いのでまだふせておこう。

 

「山田先生、あと一件調べてもらっても?」

 

むしろ私はこっちの方が重要だ。

 

「? は、はぁ、何をです?」

 

あいつは、人を殺してしまうかもしれないという状況だったのにまったくの躊躇がなかった。無人機だから良かったものの、あの武器を使ったこともだがあの惨状を見て人が乗っていたらと思いたくはない。だがそれは前に所属していたPMC(民間軍事会社)の部隊とやらの経歴を見れば、多少なりとはいえ納得できる。

だがあいつはISと戦う前『こんな遊びみたいなものやこれ以上のこと、腐るほどやってきた』といっていた。

 

いくら星野の経緯が常人それよりも外れているからといってあのような、一歩間違えれば死ぬかもしれないことを腐るほどやってきたというのか。千冬にはそれが気になっていた。

 

「――――星野凛という生徒についてだ」

 

 

 

 

 

千冬sideout

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

千冬姉に言われた通りノックをする。少ししてから「どうぞ」と星野声がした。

「星野、入るぞ」

 

扉を開けて中に入る。鈴も中に入る。

 

「あぁ、見舞いか?一夏に鈴」

 

星野を見て、一夏は少しだけ安心していた。

あれだけのことがあったのだ、もしものことがあったらと考えずにはいられなかった。

今の星野は両腕にギブス、そして腕、脚、顔には包帯が巻かれていた。

もともと星野は一夏と比べ、大分背が低い。それに髪の色も白髪に黒髪が混じっていると少し変わっている。それが相まって余計に痛々しく見えるのだ。

 

「……本当に大丈夫か?」

 

「あぁ、大丈夫だ。幸い、ただの骨折だ」

 

上半身を起こしている彼はこちらに腕を見せるようにしてくる。

 

「そうか……箒を助けてくれてありがとな」

 

一夏は俯きげに感謝の言葉を言う。

 

「気にするな、この程度で命を救ったんだ。神様に感謝だ」

 

と何でもないように一夏と鈴に言う。

 

「だけどよ――」

 

「だけどアンタは無茶しすぎよ、ヘタすればアンタが死ぬところだったのよ?」

 

鈴が一夏の言おうとした言葉を被せて星野に言う。

確かにそうだと、一夏は内心で思った。

あのISはアリーナのシールドを突破してきた。つまり、ISのシールド程度では防げず、絶対防御を貫通し搭乗者に攻撃がモロに食らうのだ。

 

「あぁ、まぁな。流石に俺も死ぬかもと思ったな」

 

「アンタね……」

 

自身の心配をしない星野に鈴は呆れた表情を見せる。

 

「まぁいいだろ、生きてるんだし。ところであのISは何だったんだ?」

 

星野は無理やり話を変える。

 

「いや、全くわからない。千冬姉も何も言ってくれないし」

 

「私も何も知らないわよ」

 

二人の話を聞いてふむ、と考える素振りを見せる。 しばらくして顔をあげると「分からんな」とだけいった。

 

「あぁ、そうだ、それ取ってくれ」

 

突然星野がベッドに立て掛けている松葉杖を指す。

「いいけど、何に使うのよ?」

 

鈴が渡し、受け取る。

 

「何って帰るんだよ、自分の部屋に」

 

なにいってんだと言わんばかりに二人に言う。

 

一夏たちとは反対側に松葉杖を移動させ、うまい具合に脇にはさみ立ち上がる。

「いやいやいや、寝てろって!?」

 

「そうよ寝てなさいよ!だいたい許可も取っていないでしょうが!」

 

見事な連係プレーで星野を押さえ込む一夏と鈴。

 

「ええい! 離せ、触るな! 痛い!」

 

「じゃあおとなしくしてろよ!?」

 

結局、この問答は星野が折れるまで続いた。

 

「じゃあ俺たちはもう帰るから大人しくしてろよ」

 

「勝手に動いて部屋に戻ったらダメよ」

 

「お前らは俺の両親かなにかか?」

 

まるでそのような発言をする二人に嫌味のように言う星野。

 

「り、両親って、それじゃあ一夏がおと、夫……」

 

顔をまっかにしスカートを握りしめ俯く。

せいだいに勘違いをしてらっしゃる、この鈴ヶ。

 

「? どうしたんだ鈴、急に真っ赤になって?」

 

まぁ朴念仁の一夏には鈴が何で真っ赤になってるかはわからないだろうな、と星野は思う。

 

「な、何でもないわよ!一夏のバカっ!」

 

「あ、おい鈴待てよ!じゃあな星野」

 

慌てたように鈴の後を追っていく。

 

一夏は知らないが、足音が聞こえなくなるまで鈴は走り去っていった扉を見つめていた。

 

 

 

 

一夏sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛side

 

「行ったか」

 

足音がしなくなったのを確認し、片方のギプスを外してみる。

 

「ぐっ……」

 

外す際に擦れて痛いが何とか外す。

やはり骨はまだくっついていないようで腕が少し曲がっている。

だが火傷は着々と治っていた。

 

「腕は丸五日って所か、火傷は――こりゃ、痕が残るな」

 

折角腕には傷が無かったのに。と愚痴をはきながら傷の具合を確認してまた戻す。

 

火傷のレベルは深度2~一部3。身体に軽度のダメージが残る程度である。

 

何故彼の体が驚異的な早さで治癒するのか? それは体内にナノマシンが入っているからである。

しかし、彼の体内にはいっているのは旧世代のナノマシン。故に次世代のものと比べて治りも遅いのだ。

 

ふぅ、と一息ついてからズボンのポケットをまさぐる。そして携帯を取り出しかける。

 

「もしもし、社長。――社長は不在?あぁ、そうですか。なら社長に伝えておいてください。『頼んだものは届いたよ。ありがとう。ついでにもうひとつ頼まれてくれ』と。はい、お願いします」

 

用件を伝えて電話を切った。

 

「…………」

 

凛は自分のIS――チョーカーに触れようとした。

しかし首にはチョーカーはなく、生身の肌の感触。

「はぁ……」

 

恐らく修理に出されたのだろう。

ダメージレベルがひどい時などは修理のために出されるのだ。

 

しまったな、修理のことを社長に話してなかったな。

 

また電話をするのがはばかられるので電話は後回しにする。

 

「……そういえばあの時――――いやあのIS、俺を見ていたような……?」

 

最後にいった言葉に僅かに反応したような、と考えて止める。ただ搭乗者がいただけだろうと思考を打ち止めにした。

 

――さて、一夏たちにはああ言ったが部屋に帰るか。

 

こんな体でも今日は色々あって体が汚れてるのだ、シャワーくらい浴びたい。松葉杖を手に取り、立ち上がり、扉がを目指す。

 

とその時、ガラッと勢い良く扉が開けられ誰かが凛めがけて飛び込んできた。

松葉杖を脇ではさんでバランスをとっている今の状態では避けることができなかった。

 

「ぐふっ!?」

 

腹部に衝撃が駆け抜ける。

普通の男子としては身長が低い凛はまさか腹部に来るとは思わず、変な声を出す。

 

加えて謎の飛来物体に松葉杖と一緒に両腕をホールドされていることに気づいた。痛い、超痛い。

 

受け身をとることすら叶わず頭を床にぶつける。

 

「ごはっ!!」

 

「……本音、そんなに勢い良く入ったら…………もう遅いか」

 

後から小走り気味に入ってきたのは、髪が水色で眼鏡をかけた気弱そうな印象をもつ女の子。

 

痛い。腕も後頭部も痛くて意識が朦朧としてきた。

――ん? そういえばさっき聞き覚えのある名前が出てきたような……。

 

「…………のほほんさんか」

 

本音、フルネームは布仏本音。

無理やり意識を引き戻して、何とか上半身を起こす。そして腹部から引き剥がす。

 

サイズを間違えたんじゃないかというくらい袖が長い制服。眠たそうな目――うん、間違いなくのほほんさんだ。

 

だがのほほんとした面影は無く、今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「……どうしたんだ?のほほんさん?」

 

「ごめんね、ほっし~……私のせいで……」

 

と謝ってきた。正直、謝られる覚えがないのだが

 

「いや、何の話だのほほんさん?」

 

「私のせいでほっし~が怪我した~」

 

……泣いてしまった。いや別にのほほんさんが悪い訳じゃないんだが、というかまた抱きつかないでください、身体中が痛いのと若干だけど柔らかいものが当たっているんです!!

天国と地獄。まさにそれである。

 

「……本音、とりあえず落ち着いて」

 

水色の髪と眼鏡をかけた女の子はそう言ってのほほんさんをなだめる。

すると落ち着いたのか離れた。

…………痛みから解放されて嬉しいような悲しいような。

 

 

おそらく、というかこの傷のことを言っているのだろう。

 

「心配ないさ、のほほんさん、別にのほほんさんのせいじゃない。俺の不注意だから」

 

といってのほほんさんの頭に手をおいて撫でる。だから泣き止んでくれ、女の子が泣いているのはあまり気分の良いものじゃないからな。

 

「うぅぅ~……」

 

俺はのほほんさんが泣き止むまで撫で続けた。

 

「…………ありがとね、ほっし~」

 

しばらくするとだいぶ落ち着いたのか、充血した目を俺に向けて礼をしてきた。

 

「いやいや、こっちこそありがとな、のほほんさん」

 

泣き止んでくれてなによりだ。それに俺のことを心配してくれたのは嬉しい。

 

「そっちの人もありがとな。えっと……」

 

「……簪。更識簪。……好きなように呼んで。」

 

「そうか、じゃあ簪さん、ありが――更識?」

 

どこかで聞いたような苗字に凛は思考をめぐらせる。

 

「…………どうしたの?」

 

簪が不思議そうに聞いてくる。

簪の問いを無視して数秒、俺は『ある人物』の名前を思い出した。

 

「いや……すまない、失礼だが簪さん、姉か妹はいますか?」

 

「? ……姉なら……」

 

意味が分からないといった風に答える。だが若干だが姉と発音した時、トーンが通常よりも下がっていた。

 

「違ったらすまないが、『更識楯無』という人物が君の姉さんか?」

 

「っ!? ……姉さんを知ってるの!?」

 

驚愕といった表情で聞いてくる。すごい食いつきようだ。

 

「いや、生徒会長ということしか」

 

「……そう」

 

そう呟いて、どこかほっとしたという表情をする簪。

凛は嘘をついていた。

あの時、アリーナで読んでいた紙には他にも書かれていた。更識楯無自身のこと。機体のこと。そして『裏』のこと。

嘘をつくのは少し心苦しいが詮索していることが姉にバレるのはまずいからな。

 

「ほっし~はかいちょうと知り合いなの~?」

 

のほほんさんが聞いてくる。これは本当のことを言っても大丈夫だろ。

 

「あぁ、部屋に侵入してた」

 

「!?」

 

「へぇ~」

 

簪はビックリ、といった顔をし、のほほんさんは間延びした声を出す。

……というか本当に、そろそろ部屋に戻らせてくれないだろうか。

 

「すまないがのほほんさん、簪さん、松葉杖を取ってくれないか?」

 

「え?……あ、はい」

 

「ほいほ~い」

 

話の流れをぶったぎる。取ってくれた二人に礼を言って松葉杖を上手く使って立ち上がる。

 

「よっと」

 

そして今度こそ自室を目指す。

 

「どこいくのほっし~?」

「部屋に、戻るんだ、よっ」

 

しかし歩きづらい。こんなにも使いづらいとは。

 

「危なそうだから~わたしもついていくよ~」

 

「……じゃあ私も」

 

簪、のほほんさんがパーティに加わった!

なんだこの勝てそうにないパーティは。

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

そうして俺は二人に無事部屋まで送り届けてくれた。

 

「ありがとな、のほほんさん、簪さん」

 

「べつにいいよ~、困ったときはおたがいさま~」

 

「……私も関わっているからこれくらいはしないと」

ひらひらと袖を振るのほほんさんと淡々と告げる簪さんにもう一度礼を言って部屋に入ろうとする

 

「そうだ~怪我が治るまでわたしが看病してあげるよ~!」

 

 

よほど気にしているんだろう。気にしなくてもいいのに。

 

「そうか、気持ちだけ受け取っておく」

 

「あ~ほんとうにやるとおもってないな~ほっし~は~!」

 

プンプンと袖を振って怒りをあらわにするのほほんさん。だが怒っているように見えない。むしろ可愛い。

 

「そうか、期待しないで待ってるよ」

 

のほほんさんに告げて扉を開ける。

まってろよ~、とてを振るのほほんさんと小さく手を振って「バイバイ」を表す簪。

俺は「また明日」と言って扉を閉めた。

 

「ねぇねぇ聞いた?今の話?」

 

「怪我してる星野くんを看病できるってはなし!」

 

「キマシタワー!」

 

この後、噂が駆けめぐり、何故か『一週間星野凛の身の回りのお世話ができる』という噂を知るのはもう少しあとの話。

 

 

 

 

―――――

 

部屋に入ると一夏はいなかった。

 

――なんだ、飯か?

 

時刻は午後6時48分。夕食には丁度、といった時間帯だ。かといって飯を食う気もないのでシャワーをさっさと浴びよう。一夏もいないことだしな。

 

そしてギブスやら包帯やらを外してシャワーを浴びた。傷にしみて痛いが砂などのごみがついているのも気持ちが悪いので我慢だ。 何とか体を拭いて動きやすい服に着替える。次にギブスをつけ、包帯を巻いていく。

 

――ガチャリ。

 

扉の開く音がした。どうやら一夏が帰ってきたようだ。

 

「はぁ~疲れた、って星野!?お前どうしてここにいるんだよ!?」

 

「よう、一夏。遅かったな」

 

そうとう驚いている。

 

「何で来たんだよ!怪我が悪化したらどうするんだよ!」

 

一夏も心配してくれるようだ。ここの人達って皆優しいな……。

 

嬉しいが正直にシャワー浴びてました、何て言ったら怒られそうだから誤魔化すことにした。

 

「一夏はこんな時間まで何してたんだ?」

 

さきほど疲れたと言っていたので夕食ではないだろう。

 

「え? あぁ、さっきまで鈴とセシリアに付き合わされて特訓してたんだ」

 

ん? 一人少ないな。

 

「箒はどうした?」

 

いつもなら一夏にしつこいくらい突っかかる奴がいないのは意外だな。

 

「箒?さぁ、二人にも聞いたけど見てないらしい」

 

ということは自室か? 何か企んでいる気もするが、まぁいいか。

 

「しかし、こんな時間まで訓練をするなんてな」

 

ざっと3時間くらいやってたことになる。

 

「いや、俺が一方的にやられてただけだからな」

 

聞けばどちらと戦うか選べずにいたら二人と戦うことになったらしい。

 

「大変だったな」

 

「しばらくは動けなかったよ……」

 

一夏に労いの言葉をかける。かなり疲れたようだ。

 

「次にやるときは俺も参加させてくれ。自分が弱いのが分かったからな」

 

焦って冷静ではなくなった。これだけでも致命的なミスである。

このミスが自身の生死を左右するときもあるのだから。

 

「どこが弱いんだよ……俺より強いだろ」

 

と皮肉をいいながら参加を許可された。

 

――一夏、お前はまだ分かってないかもしれないが、お前は強くなるぞ。俺なんて比べ物にならないくらいに。

 

その言葉を凛は自分の胸の中にしまった。

 

 

凛sideout

 

 




次回は『あの姉妹』についてです。
多分短いです。
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