IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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また、設定をミスった……

それでは、どうぞ。


十三話 『教師と生徒、時々社長』

 

 

 

 

 

「星野、ちょっと来い」

 

と一夏に昼食を誘われ、移動している時に織斑先生に呼び止められた。

 

「先に行っててくれ」

 

一夏にそう言って織斑先生の元へ行く。

 

「どうしたんですか?」

 

「ああ、追いて来い。何でも整備室にお前の知り合いが来ているそうだ」

 

それならわざわざ先生が来ることないんじゃないかと思いながらも織斑先生のあとを追いていく。

 

カツカツカツッ、とパンプスが廊下に響く音だけが規則正しく鳴り響く。

 

しばらくして織斑先生が口を開いた。

 

「星野、すまないな」

 

いきなり謝られた。訳が分からないので聞く。

 

「どうしたんですか急に」

 

織斑先生に謝られる覚えはないのだが……?

 

そう思っていると織斑先生がこちらを向く。

 

「勝手ではあるが星野、お前の経歴を調べさせてもらった」

 

まさかの言葉に驚いていると織斑先生は言葉を続ける。

 

「…………七歳の時に両親を事故で亡くしているな?八歳から九歳辺りに『イノケンティウス社』にひきつられたらしいな。それ以降のことは記録にはなかったが社の方で大分無理なことをしていたようだな」

 

ぐうの音もでないとはこのことか、と星野は諦めたように肯定した。

 

「……そうですよ。それが何か?」

 

「詳しくは聞かん、誰にだって言えないことはある。私もな。ただお前は私の生徒だ、生徒は教師を頼ってもいいのだぞ?」

 

「……慰め、ですか」

 

「ひねくれて捉えるな。そうだな、お前の境遇に似たようなものを感じただけだ。……一人ではできないことも人を頼ればできることもあるからな……」

 

その声色は昔のことを思い出しているように懐かしさと寂しさを含んでいた。

「まぁ、考えておきます」

 

俺の、さらに過去のことは知らなくてもこれは俺の問題である。すでに終わっていることを引きずっている、俺の――

 

「そうか」

 

一言だけいって歩き出す織斑先生、俺も再び歩き出す。

 

ふと聞きたいことを思いだし、聞いてみる。

 

「織斑先生、転入生のラウラ・ボーデヴィッヒについて教えてください」

 

「ボーデヴィッヒか? 何故だ」

 

「織斑先生は数年前にドイツ軍にいたんですよね? 知り合いがドイツ軍にいたので興味を持ったからです」

 

嘘は言っていない。すると織斑先生はふぅ、とため息を吐き、話始めた。

 

「ボーデヴィッヒを――ラウラを見つけたのは偶然だったな。いつものように軍人を訓練しようとして外に出ようとして道を間違ってしまってな、そこで物置部屋のような場所に着いてしまったのだ」

 

思い出しながら、言葉の端には懐かしさを感じられる。

 

「そこにボーデヴィッヒはいたんだ。まだ年端もいかない小娘が拙い手付きで銃を握り、構え、そして分解をやっていたのだ。たった一人で」

 

「私はボーデヴィッヒにそこで何をしている? と聞いていた。そしたら返ってきた言葉は小さな声で「うるさい」だったな。そこがボーデヴィッヒとの出会いだな」

 

「それからボーデヴィッヒを物置部屋から連れ出し、訓練に参加させたな。どうやら他の者はボーデヴィッヒをあまり快く思っていなかったからその性根を叩き直してやったな」

 

ふふっと思い出し笑いをしながら話を続ける。

 

「訓練に参加させて分かったのだが、ボーデヴィッヒは平均的な運動能力なと全てが並み以下になっていたんだ。軍人として落ちこぼれ、と周りから言われていた」

 

「――だから私はボーデヴィッヒを鍛え上げた。一からな。そして鍛えていくうちにどんどんと成長し、他の軍人以上の成績を出した」

 

生半可なものではなかっただろう、と織斑先生は呟く。

 

「その頃からだ、私に異常に執着するようになったのは。崇拝ともいえるくらいにな」

 

織斑先生は顔に影をおとす。

 

「あの眼帯は?」

 

あの頃は着けていなかったのだ、だとしたら軍時代に何かあったのだろうと聞いてみる。

 

「あれか、あれは私にも分からん。以前に聞いたことがあるがうやむやにされてしまってな。それから少し前の記憶が無いそうだ」

 

織斑先生の言葉に俺は耳を疑う。

 

「記憶が、無い?」

 

「ああ、何故かは言っていなかったな」

 

と思い出したように言う。

 

「私が知っているのはここまでだ」

 

「そうですか……ありがとうございました」

 

「なに、気にするな――あぁそれと部屋割りのことだが」

 

どうする? と聞いてくる。

 

「織斑先生はデュノアについて、どう思います?」

 

と俺は答えとは違う質問を投げかけてみる。

織斑先生は少し考えて口を開いた。

 

「疑ってはいる。しかし明確な証拠がない」

 

織斑先生も態度には出さないが疑っているようだ。確かにおかしいといえばおかしい。何故今さら男性のIS操縦者が出てきたのか。しかもなんの報道もなく、俺の時でも多少はニュースになったのだ。

 

「じゃあできるだけ一人部屋でお願いします」

 

――だとすると情報を持ち出す密偵か美人局(ハニートラップ)の可能性高い。

 

「それかデュノアと同部屋で」

 

それならば男性の一夏か俺が狙われる。ならばどちらかにデュノアがついた方が良いだろう。

 

「分かった、部屋割りの結果はあとで報告する」

 

織斑先生は了解してくれたようでうなずく。

 

それから特に話すこともなく整備室に着いた。

 

「ここだ」

 

と織斑先生は俺に言う。

中に入ってその人物を探す。するとすぐに見つかった。

 

後ろでまとめている髪。バンダナのようなものを額に巻き、左目には眼帯をしている。

身長は180㎝以上はあるだろう、服の上からでも分かるほどその身体はたくましく、ひきしまっていた。

――そこに『イノケンティウス社』社長、キーファー・アイスランドがいた。

 

ただ、そこにはもうふたり、社長のたくましい二の腕に掴まり、ぶら下がっているクラスメイトの布仏本音、そしてそれを見て目を輝かせている簪がいた。

 

「お、星野やっと来たか」

 

こちらの存在に気付き、声をかけてくる……どうみても伝説の傭兵にそっくりである。

 

後ろにいる織斑先生は「蛇……だと!?」 と驚愕していた。

 

のほほんさんを降ろし、こちらに近付いてくる。ピンと伸びた背筋、堂々とした歩き方。見えるか? これで齢60を越えてるんだぜ? 30代にしか見えない。

 

「どうだ、上手くやれてるか?」

 

「あぁ、まぁ」

 

「そうか、それは良かった」

 

と柔和な笑みを浮かべる社長。

 

「それで今日はどんな用事があってきたんですか社長」

 

「おいおい、別にかしこまらなくていいぞ、お前は俺の息子みたいなものだからな」

 

「黙れジジィ」

 

外見がアレなので違和感しかない。

 

「お、教師の方ですか? うちの息子がお世話になっているようで」

 

「は、はぁ……」

 

「おい無視か」

 

俺に話していると思えば急に織斑先生へと話始める。

先生も見た目に反して紳士的な振るまいに困惑している。

 

「おっと、忘れるところだった。星野」

 

「何だ?」

 

「お前が頼んでいたものを持ってきたぞ」

 

不敵な笑みを浮かべる社長。すげぇ似合っている。

「ほんとか」

 

「もちろんだ。早速最適化(パーソナライズ)するぞ」

 

そういって、社長は端末コンソールを取り出し、整備室の奥に行く。

 

「で、では星野、私はもう行くぞ」

 

「はい、ありがとうございました」

 

織斑先生は用事があるらしく行く前にお礼を言った。

 

「ほっし~私も見てていいかな~?」

 

「わ、私も」

 

とのほほんさんも簪もついてきた。

 

「では始めるか、このふたりは?」

 

「見学だ、俺は別に構わないぞ」

 

「ならば始めよう、まずISを展開してくれ」

 

 

 

 

 

言われた通り自分のIS『ラファール・リヴァイブ・弐式』を展開する。ただ手足は無い状態で。

 

「ほら、頼まれていたもののひとつだ」

 

そういって出されたのは俺の携帯用の手足だった。

前のとあまり変わっていないので社長に聞いてみる。

 

「何か変わってるのか? 見たところかわっているように見えないんだが」

 

「見た目は変わっていないがそれでもかなり防御力は上がっている」

 

それに、と社長はつけ足す。

 

「筋出力も上げておいた、これなら多少重くても問題なく撃つことが出来るはずだ」

 

「ほー、それはいいな」

 

早速手足に着け、起動する。以前のよりもフィットしている感じがする。

俺は手の五指を開閉したり足を動かしたりして調子を確かめる。

そしてためしにショートブレード『アヴェンジャー』とショットガン『オクトパス』を出して構えてみる。

そして『オクトパス』をしまい、『アヴェンジャー』軽く素振りする。

 

「確かに前よりは速く動かせるな」

 

「おお~、ほっし~すご~い」

 

見ているのほほんさんが声を上げる。横で見ている簪も驚いたような顔をしていた。

 

「いい感じだ、ありがとな社長」

 

そう言って着けていた手足を外す。

社長は何やら端末コンソールをカタカタとうっていた。

 

「それは良かった。次に頼んだものをインストールするからISを待機状態にしてこっちに来てくれ」

 

「分かった」

 

言われた通り近くに行くと首のチョーカーにコードを繋がれた。

そこから、約十分ほどでインストールが完了した。

「そしてこれが新しい『手足』だ」

 

と社長が大きなケースを開けると中にはISの手足が入っていた。

 

ISの右腕部にはシリンダーのようなものが取り付けられていて、左腕部には機械が取り付けられている。しかも手のひらは少々大きくなっていた。脚部は両方とも前のものよりもスリムになっていた。

 

 

「まったく、無理な注文をするな、造るのが大変だったぞ」

 

社長は呆れたように言う。

 

「ほっし~何それ~?」

 

のほほんさんは不思議そうに聞いてくる。

 

「秘密だ」

 

これは今度ある学年トーナメントのためのものなので流石に言えないな。

 

「えぇ~! けち~!」

 

「これは言えないが、新しい機体はお披露目するからさ」

 

しかも一番最初に見れるのであるからこれでよしとしてほしい。

 

俺は皆から少し離れてISを展開する。

 

――来い、『弐式』

 

一瞬視界が白に染まったかと思えば、目の前を数字の羅列が流れていく。

数字が全て流れ終えると暗かった視界が鮮明に映る。そして手足を装着して完成である。

 

のほほんさんも簪も驚いていた。

 

全身装甲(フルスキン)のようである、と。

身体の八割以上を装甲で覆い、頭部も顔が完全に隠れるようなヘッドギアをしていた。

 

「か、かっこいい……」

 

さきに声を出したのは簪だった。

 

「ほっし~がメカメカしくなった~!」

 

のほほんさんは俺の機体を見てはしゃいでいる。

 

「どうだ? 気に入ったか?」

 

身体を動かし、違和感が無いか確かめているときに社長が笑みを浮かべて聞いてくる。

 

「あぁ、想像以上だったよ。感謝します、隊長殿」

 

「それならば、開発者冥利に尽きるというものだ」

 

満足だといった表情を浮かべる。

 

 

ああそれから――と社長は言葉をつけ足す。

 

「もうひとつ、新しい換装装備(パッケージ)もいれておいたぞ」

 

それに感謝の言葉を述べる。色々としてくれて正直頭が上がらないな。

 

「久し振りの日本(Japan)だ。しばらくは滞在するが何かがあれば連絡を入れろよ」

 

「分かったよ、どうせ風呂が目当てだろ?」

 

「その通りだ」

 

社長は前に日本に来た時、露天風呂に入って温泉と景色に魅了されてからすっかりハマってしまったらしい。

 

それでは失礼する、といって帰っていった。

 

その後、ISを解いて手足をしまい、昼食を食いに一夏の元へ行こうとしたときに二人に興奮気味に質問攻めに合った。

 

それから二人の質問を全て答え、一夏と合流するのはまた別の話。

 

余談だが、あれから織斑先生は行動が規制されている箒が何やら屋上に行こうとしているのを見つけ、呼び止めた所、舌打ちをされたので出席簿アタックと自室に連行したのだった。




出てきた社長、キーファー・アイスランドですが、伝説の傭兵中の人の声をやっている人をもじりました。
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