予定より早く完成したので投稿します。
それでは、どうぞ。
「あ、いた。おーい、こっちだぞ!」
一夏が俺を呼んでいる。
「わるいな、待たせて」
俺は屋上に来ていた。そこにいたのは一夏、鈴、セシリア、デュノア、俺である。学食にいったら
いなかったので、偶然通りかかったのほほんさんと相川さんに聞いたところ屋上に行ったらしい。
どうせなら皆で昼食を食べようとのことで集まった。一夏たちが待っていてくれたのは感動した。
「ん? 箒はどうした?」
集まった面子で一人だけいないので聞いてみた。
「篠ノ之さんなら織斑先生に呼ばれてたよ」
デュノアが説明してくれたので礼をいう。
「ていうかアンタのそれ何?」
鈴が俺の手に持っているものについて聞いてきた。
「ん? ああ、これか。これはレーションだ」
レーション、MRE(Meal, Ready-to-Eat)ともと言うもので、味よりもカロリーを優先した食べ物のことである。
「レー……ション?」
デュノアが分からないといった風に首をかしげる。他の皆も同じのようだ。
「一言でいうなら不味い食料だ」
「そんなものをアンタは食べてんの?」
うげっ、と鈴が顔をしかめていう。
「違う、これは……貰ったんだよ」
あのジジィ……よりにもよってレーションを拡張領域(バススロット)に入れてるとは思わなかったぞ……しかもこれアメリカの不味いと悪評だった旧型レーションだし。
俺は社長のことを思い出す。見た目に反してすごく子供好きだからな。
「ま、まぁ食べようぜ」
俺の不穏な空気を感じ取ったのか一夏が告げる。
そして次々に弁当を出していく。
「はい、一夏」
「一夏さん、これを」
セシリア、鈴から 重箱とタッパーを貰う一夏。
「あ、ありがとな二人とも」
セシリアの重箱を受けとるとき顔がひきつっていた一夏。
そうして全員が食べ始めた。
「…………」
「ど、どうですか一夏さん、今回は前よりも腕によりをかけて作りましたわ」
「ああ、う、旨いよ……」
そういうわりには顔が青ざめて脂汗がでているんだが?
重箱にはいっぱいにサンドイッチが入っていて、タッパーにはこれまたいっぱいに酢豚が入っていた。
酢豚はもくもくと食べる一夏にセシリアがサンドイッチを勧め、食べたら段々と顔が青ざめていったというわけである。
鈴はやっちまったなと言わんばかりにため息を吐いていた。
「星野君のお弁当変わってるね。良かったら食べてみてもいいかな?」
デュノアが興味ありげに聞いてくる。
「いや、これを食うくらいならセシリアのサンドイッチを食べた方がいいと思うぞ、すげぇ不味いから」
「そ、そうだ! 星野、サンドイッチ食べてみないか!」
一夏がしめたとばかりに言ってくる。
「くれるのか? それはありがたい」
重箱からサンドイッチをひとつ貰い、咀嚼する。
よく噛み、そして飲み込む。
食べている間、二人はじっと俺のことを見ていた。
食べ終え、そして一言。
「うまいな」
一夏と鈴が信じられないものを見る目で見てきた。
「……マジでか」
「味覚大丈夫なのアンタ……?」
遠回しにセシリアの料理をdisっている二人に告げる。
「レーションに比べればうまい」
まさにこれである。多少味が混ざっていて辛いだか苦いだか甘いだかよく分からなくなっていてもレーションよりは圧倒的に旨い。
「逆に食べてみたいな」
「確かに……」
三人がこわいものみたさで言ってきたので少しあげた。
俺は手をつけていないハム・アンド・チキン・ローフとビーフステーキ・ウィズ・マッシュルーム と英語で書かれているものの封を切る。
先ほど温めたばかりなので湯気がほんのりとたち、鼻腔をくすぐる。ほんと匂いだけは良いんだよな。
それをスプーンですくってまずデュノアに食べさせようとする。
「え……あ、あの……」
顔を紅潮させ、ためらう。セシリア、鈴は口をぽかーんと開けていた。
「どうした? 食わないのか?」
俺がデュノアに聞くと恥ずかしそうにぼそぼそと答える。
「…………他の食べさせ方で」
しばらく考え、納得する。 まあ、男同士で食べさせ合う絵面のも確かに気持ちが悪いので新しいスプーンを渡す。というか俺にそっちの気はない。しかしデュノアには疑心感のほうが強くなってきたんだが。
「じゃあほら」
とデュノアにスプーンとレーションパックを渡した後、一夏にも渡す。
「そ、それじゃああらためて――」
――ぱくり。
二人がレーションを食べる。
モグモグと咀嚼し飲み込む。先に変化が現れたのは一夏だった。
「……ごふっ」
何かを吹き出し、前のめりに倒れる。
「……ぐふっ」
同じようにデュノアも倒れた。
倒れている二人の男子、戦慄の表情を浮かべるセシリア、鈴。散らばっているレーション。
――カオスだ。
「ひどい味だった。脂の塊みたいだ」
「僕のは粘土みたいだったよ……」
数分で意識を取り戻した二人は口々に感想を言う。
「だからいっただろ? ――さぁ二人はどうする?」
セシリアたちを見るとぶんぶんと首を振って激しく拒否する。
「さすがにあれ見たあとに食べようなんて思わないわよ……」
「鈴さんのいうとおりですわ……」
セシリアが呟いた後、鈴が何かを思いついたようで自分の酢豚を一つつまみ
「はい、一夏口直し」
と一夏の口に運ぶ。
「おおっ、ありがとな鈴!」
と一夏は鈴から差し出された酢豚を食べる。「あ~ん」と食べさせられる一夏。
よっしゃとガッツポーズを決める鈴。それを見たセシリアも負けじと一夏へと差し出す。
「一夏さん! わたくしのもいかが!?」
「あ、ああ、ありがとうな」
そういって鈴と同じように食べさせられる一夏。
また一夏に食べさせようとする鈴。
「――なんだか、賑やかだね」
不意にデュノアが呟く。
その顔は少し暗い。
「そうだな、いつもこんな感じだ、デュノア」
「…………そう」
そういったきり喋らなくなるデュノアと俺。
どこか影を抱えているような顔を騒いでいる一夏たちに向けている。
俺も何も言わずに三人を見る。
そうしてにぎやかになりつつある昼食の時間は過ぎていった。
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