それでは、どうぞ。
凛side
昼が終わり、午後の授業も滞りなく終わって俺と一夏は自室に戻ってきた。
――コンコンコン。
とタイミングを見計らったかのように控えめなノック音が聞こえてきた。
「俺が出るよ」
一夏がそういうので任せることにした。
手持ちぶさただったのでISの参考書でも読もうかなーと手を伸ばしたとき、一夏から呼ばれた。
何かと思い、行ってみるとそこには一夏、山田先生、織斑先生、デュノアだった。
「あ、星野君、来ましたか」
山田先生が俺を見るなり何か申し訳なさそうな顔になった。何故だ?
「引っ越しだ星野。部屋割りは織斑とデュノア。そして星野が一人部屋となった」
と山田先生に代わって織斑先生が言う。
見事にハブられたな俺。まぁ、女子の誰かと相部屋になっても上手くやれる自信がないから助かった。
「すみません……なぜか人数が合わなくて……」
「そんなに落ち込まないでください山田先生、俺なら大丈夫ですから」
シュンとする山田先生にそう言ってから今度は織斑先生に言う。
「荷造りに三十分ほどかかりますけどいいですか?」
「今日中ならば構わん。デュノアもそれで良いだろう?」
「はい」
と許可をもらったので早速移動するべく荷造りを開始する。
一夏にも少し手伝ってもらい、二十分ほどで完了した。
「で、どこの場所になるんですか?」
ちょっとの間とはいえ過ごした場所から離れるのは寂しいがしょうがない。
「1057号室です」
「はい?」
聞き間違いかと思い、もう一度山田先生に聞く。
「1057号室です」
一字一句同じだった。しかも隣じゃねぇかよ、ちょっと寂しいとか思った俺恥ずかしいんだけど。
「わ、わかりました……」
内心、転げまわりたいほどだが何とか留まって部屋に移動する。
そして鍵を渡され、部屋に入り、荷物を入れていく。
そして二十分ほどで完了した。
「たまには遊びに来いよ」
一夏が俺に言ってくる。
「あぁ、分かった」
そうして一人部屋になった俺は荷物を整理することに放課後を費やした。
俺の部屋が一人部屋といったな? ――――あれは嘘だ。
自分でもこんなに早く自分の言葉を撤回するとは思わなかった。
あの後、一夏とデュノアから夕食を誘われ、食べて自室に戻ってきたらのほほんさんが寝ていた。
俺、部屋間違えたわけじゃないよな? と思い、確認する。うん1057号室だな。
「マジか……」
すでにベッドで寝ているのほほんさんを見て呟く。 この部屋にはベッドが一つしかないのだ。
「……しょうがないな」
かといって気持ち良さそうに寝ているのほほんさんを起こすのも気が引けるので壁にもたれかかって寝ることにした。
――ブー、ブー。
と寝ようとした時、机に置いていた携帯が振動する。
見てみると社長からだった。
「もしもし?」
出て、何か用かと聞く。
「ああ、ひとつ言い忘れていたことがあってな」
チャプチャプと水の音が聞こえる。……こいつもう温泉に入ってやがる。
「最近、【裏】の者が活発になってきた」
「裏? どこの組織の?
社長に聞く。
「ほぼ全てが動いている。その中で最も活発に動いているのが――」
「――『亡国機業(ファントムタスク)』だ」
亡国機業……ここ最近確認された組織か。
「分かった、警戒しとく。そっちも気を付けてくれよ社長」
「分かってる、息子に心配されるほど私は弱くないぞ」
いや、アンタを倒せる奴がいたら逆に見てみたいわ。CQCだって速すぎて見えないし強いし。ヤバい。
「何かはいり次第連絡する」
「ありがとうございます。社長」
そう言って電話を切る。社長はそっちの世界のことにも詳しいから助かる……ほんと何者なんだよ。
「よっ……と」
再び壁によりかかる……こうして寝るのはいつぶりだろうか、『Red Eyes Eagle』の頃以来だろうか?
――いや、もっと前か。
などと考えているうちに昔の記憶がフラッシュバックした。
――――――――
『危ないから今日は下手に動かず、ここで夜を明かした方がいいわね』
「だね」
『遠足みたいで楽しいね♪』
「ここ紛争地域だよ?」
――――――――
「……はっ」
振り払うように、壁にゴンッと頭を打ち付け、なるべく考えないように今日は眠りについた。
凛sideout
ラウラside
私は今日、少し調べものをしていた。
ドイツ軍に頼めばすぐなのだろうが、何故か自分で調べたかった。
調べる対象はいわずもがな、私の敵である織斑一夏――と星野凛という人物である。
他のものなどどうでもいいと思っていたが、IS訓練の時アイツは私に恐怖や侮蔑ではなくまったく違う感情を私に向けていた。
あの感情は私には分からないが、何故そんな目で見てくるのか不思議だった。そして興味がわいた。
どんな結果であれ見てみたいと思った。
そして私は管理室(ライブラ)に来ていた。
全生徒の情報を管理する場所だが『今日は偶然開いていた』のだ。
中に入り、早速情報を引き出す。
情報の閲覧、それはこの学園ではもっとも警戒されることである。
IS関係で他国や様々な者が集っているのだ。欲しい者からしたら宝箱と同義である。
故にラウラは迅速に情報を選び、閲覧していた。
長い間とどまればそれだけリスクが高くなる。そもそもこの二人以外には見る理由がないのだから必然的に絞られるのだが。
素早く二人の情報を見て、記憶し、そして証拠を残さないように出る。
まるでスパイだな、とラウラは思った。
見た情報で織斑一夏はどこまでもふざけていた。機体の使用武器が雪片弐型だった。
(――気に入らん)
顔をしかめる。
あれは教官しか使いこなせん、ましてやあんなものが使えば教官の技が曇ってしまう。
やはりあいつは私の敵だと再認識する。
「しかし――星野凛という男、興味深いな」
廊下を歩いている途中、不意に呟いていた。
(幼少期のことはいっさい不明だが奴はそこら辺のものと違いPMC(民間軍事会社)に所属していて何度も戦争や要人警護、暗殺など、軍属の私と同等かそれ以上に死線をくぐってきている。これほどの者がいるとは。これは――)
――楽しめそうだ。とニヤリと口角を上げて笑う。
「…………良いんですか織斑先生」
ラウラが見えなくなってから声と共に一人の生徒が影から出現する。
その人物は更識楯無だった。
「ああ、すなまいな更識姉」
同じく影から出現した織斑千冬。
「あそこは全生徒のデータを管理しているんですよ? それを生徒に見せて良いんですか」
ここの管理は生徒会長である楯無と織斑千冬に任せられている。
無論、千冬とてただではすまないだろう。
「そうだな。見逃せ」
平然と言う。
千冬の目にはある想いが宿っていた。
(――頼むぞ、星野)
千冬は凛がラウラのことについて聞いてきたとき、あるいはラウラが調べている時に決心したのだろう。
星野なら今のラウラのことを変えることが出来ると。
妙な確信が千冬にはあった。
「――頼んだそ」
ぼそりと口に出ていた。
(わたし、すっごい場違いな気がする……)
その横で更識は気まずそうにしていた。
ラウラsideout
シャルルside
「改めてよろしくね、えっと……織斑くん」
「一夏で良いよ、デュノアさん」
「こっちもシャルルでいいよ」
「分かった。じゃあシャルル、これからよろしく」
一夏が手を差し出してきた。
握手だと理解するのに時間がかかり、あわてて握手しかえす。
「こ、こっちこそよろしくね、い、一夏くん!」
初めてだったのでテンパってしまったがそんなことを気にする素振りさえみせずに一夏は続ける。
「それじゃ、自己紹介も済んだし部屋のことを決めておくか」
と一夏が言ってきた。
「うん、分かった」
その後、ベッドは僕は手前、シャワーは9:00からとなった。
「この緑色の紅茶、意外と美味しいね」
僕たちは今くつろいでいた。
一夏から出された緑色のものには少し驚いたが美味しい。
聞くところによると緑茶というらしい。なるほどと思った。
「へぇ~、これが日本のわびさびってものか~」
「わびさびなら本当は抹茶を立てるんだけどな。まぁ俺はまだ本物は立てたことないけど」
「へぇ~」
僕は前々から興味のあった日本の文化に感動していた。
「ねぇ、一夏がどうやってIS学園に入ったか教えてくれないかな?」
話もそこそこに僕は『本題』を切り出す。
「う~ん……」
あっさりと話すと思っていたら悩みだした。意外と慎重なのかな?
「ど、どうしたの?」
だとしたら聞き出しにくいな、とシャルルは思った。
「いや、『星野』のやつが男性操縦者の情報はなるべく明かすな、って言ってたからそれは言っていいのかなって」
……やはりあの『星野凛』という男は危険だな。
数日接してみて意外と親切と思える部分があって苦手意識は大分なくなったけど、何を考えているか分からない、それに一夏に警戒を促していたことに手が早いなと思う。
「僕も男性IS操縦者だよ? 他の男子にどんな経緯があったか知りたいんだ」
「う~ん…………まぁいいか」
それから少しだけだったが、情報を聞き出すことができた。
これだけでも今は十分だ。
同室の一夏が寝たのを確認し、シャワー室に移動する。別にシャワーを浴びるわけではなく連絡が入ってきたから移動しただけだ。
「はい」
「どうだ、何か有力な『情報』は掴めたかシャルロット」
携帯電話から聞こえる声――それに僕、シャルルは答える。
「いえ……織斑一夏や星野凛のことについてはまだ少ししか――同じ男性操縦者の星野凛から妨害があったので」
僕の解答に声の主は少し考えてから口を開いた。
「邪魔ならば少々もったいないが消せ。バレてはデュノア社が危ないからな。何ならば数日中にそっちに工作員(スパイ)を送る」
ギュッとてに力がこもる。
「それと他のISの情報や他国の代表候補生のことも頼んだぞ」
どこまでも身勝手な、とシャルルは心の中で思う。
「――はい、分かりました」
だが私には何もすることが出来ない――――何も……。
通話中のシャルルは前と同じように目が濁り、諦めたような顔をしていた。
シャルルsideout