IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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少々遅れました。

今回は漫画風の挿絵に挑戦しました。
下手ですからどうぞ笑ってください。

それでは、どうぞ。


十六話 『装備の性能』★

 

 

 

「…………」

 

どうしてこうなった?

 

時計を確認するとAm4:30。他の生徒ならまだ寝ている時間だろう。

いつも通り起きたはいい、問題なのは俺の隣だ。

 

隣には同じく壁にもたれかかりに布団にくるまって眠りこけている布仏本音ことのほほんさんがいた。

 

「……何故?」

 

のほほんさんはベッドで寝ていたはずだが……もしかして凄まじく寝相が悪いのか?

 

俺はのほほんさんを起こさないようにベッドに移動させ、部屋を出る。

 

移動する先は整備室。ここ最近整備室が空いていることに気付いたからだ。

 

中に入ると先客がいたようだ。

 

「ん?」

 

よく見ると簪だった。ディスプレイに突っ伏して寝ていた。もしかしていつもここで寝ているのだろうか?

 

俺はそっと制服の上着をかけてやった。まだ肌寒い時があるからな、それで風邪を引かれては困る。

 

ならここでするのもいかがなものかと思い、更に奥に行く。

 

ISの稼働実験室。ここなら大丈夫だろうとさっそくISを展開する。

 

「来い、『弐式』」

 

先日機体をアップデートしてもらい外見がガラリと変わっている。機体カラーは変わらず灰色だが。

 

「ふむ――せっかくならちょっと換装装備(パッケージ)でも見てみるか」

 

あの時は確認していなかったので早速今付けている『空母』を外し、新しい換装装備(パッケージ)を取り付ける。

 

――描写? 後のお楽しみだよ。

 

 

 

 

――――――

 

 

「――ふぅ」

 

ISを待機状態にして一息つく。

 

注文以上の出来だった。これには驚嘆した。まぁまだ動かしていないが。

本当にありがたいよ、社長には。まぁ絶対に口には出せないが。

 

ふと、誰かの視線に気が付く。

視線の方を見てみると寝ていたはずの簪が見ていた。

……目をキラキラさせながら。

 

「…………何だ?」

 

気づいてしまったからにはしょうがないので声をかける。

 

「……何も」

 

いや今さら取り繕われても。ほら恥ずかしいのか顔が若干紅潮している。

 

「あぁ~……機体か?」

 

何となくそんな気がしたので聞いてみる。

 

「そう、です」

 

……マジか。

 

そう思っていると簪は部屋に入ってきて俺に近付いてきた。

 

「……もう一回、機体見せて」

 

また目をキラキラさせながら簪は俺に言ってくる。

 

「わ、分かった」

 

前に見た印象とまったく違うことに少しビビりながらも答える。

 

「来い、『弐式』」

 

本日二度目の呼び出し(コール)である。

 

「ほおおぉおおっ………!」

 

容姿(みてくれ)が気に入ったのか変な声を出している。

そしで全体を見るように俺の周りをぐるぐるとまわる。

 

……すごく、気まずいです。

 

「ありがとう」

 

一通り見て満足したのか、顔をつやつやさせながら言う。

 

「簪さんは専用機は無いのか?」

 

資料だと存在していると書いてあったのだが。

 

「ある……一応」

 

とたんに表情が陰る。どうやら地雷だったようだ。

 

「じゃあ見せてくれないか?」

 

しかし俺はその地雷を踏み抜く!

 

「……だめ…………途中」

 

断られました。

 

「そうか――って一人で造っている? ISをか?」

 

だとしたらすごいな。

 

「うん。……お姉ちゃんもそうだったから」

 

お姉ちゃん、その言葉を発した時、簪の顔がさらに曇る。

恐らく姉である更識楯無のことを言っているのだろう。

 

「良かったら手伝おうか?」

 

「ダメよ、これは私の問題なの。私とお姉ちゃんとの」

 

「無理に姉にあわせる必要は無いんじゃないか、簪さんは姉――楯無さんじゃないんだから」

 

「ううん違う、お姉ちゃんに出来たんだから妹の私にもできる」

 

あ、駄目だこれ。何を言っても聞かない感じだ。

 

「…………とりあえず、これは渡しておく。要らないのなら破棄してもかまわないから」

 

そういって簪に俺のISの戦闘データを渡す。

 

「…………」

 

無理矢理渡された簪はあまりいい顔はしていなかったが受け取ってくれてよかった。

 

そのまま俺は気まずくなった整備室をでた。

 

 

 

 

「――何であんなおせっかいを焼いたのかね俺は」

 

自分のした行動原理が分からず、口に出ていた。

 

自室に戻るため、廊下を歩きながら考える。

 

(――そうか、何故俺はあんなにおせっかいを焼いたのか。それは――)

 

俺と――

 

「っ!?」

 

殺気を感じ、バッと後ろを振り向く。しかし誰もいなかった。

 

(気のせいか……?)

 

「あら? どうしたのかしら、後ろを向いて」

 

「…………」

 

いつの間にか対象は目の前にいた。そいつの持っている扇子には『ドッキリ成功』と書かれていた。

 

「何か用ですか生徒会長」

 

「あら、知ってたのね。おねぇさんうれしいわ~!」

 

茶化すように声を出す

 

「何の用だと聞いている」

 

「せっかちねー、そんなんじゃモテないぞ青年!」

 

なおもふざけた空気を作り出すが急に声色を変えて喋りだす。

 

「そうね、私があなたに言いたいことはひとつだけよ。簪ちゃんに手を出さないことよ」

 

殺気をだしなから俺を威圧する。

 

「ふん」

 

それを鼻で笑う。

 

「手を出すも何もその気はないから安心してください」

 

「何……? 簪ちゃんに魅力が無いっていうの!?」

 

「違うわ」

 

「――はっ! もしかしてそんな気はないと思わせておいて懐柔させるつもりね! そんなに死にたいの!」

 

「だから違うわ! このシスコンが!」

 

「誰がシスコンよ!」

 

「自覚がないなら今自覚しろ!」

 

思った以上にシスコンだったようだ。

…………もしかしたら今日は厄日かもしれない。

はぁ……とため息を吐く。

 

「じゃあ何でよ、いくら私の簪ちゃんがかわいくて手が出せないなら貴方にはメリットが無いはずよ?」

 

妹のこと好きすぎるだろうよこの生徒会長は。

 

「別に、ただ昔の俺に似てただけってな話ですよ」

 

――あの頃の俺に。

 

「ふぅん……そうなの?」

 

訝しげに聞いてくるがそれ以上は追及してこない。

「ええ、それだけです」

 

しばらく何かを考えていた楯無は先ほどまで立ち塞がっていた廊下を横にはける。

 

「いいわよ、帰って」

 

「どうも」

 

そう言って楯無の横を通りすぎ、自室に帰る。

 

 

その時俺は気が付かなかった。俺の姿が見えなくなるまでジッと後ろ姿をで見ていたことを。

 

 

 

 

 

(――あれから『星野凛』について色々と調べたのに)

 

それこそ更識の家の力までフルに使って。

 

しかしそれでも彼の全てを暴けなかった。

彼のPMCに所属していた時代の前の経歴――

 

――それ以前の【過去】の記憶

 

そこだけが無いのだ。まるで『誰かに消された』かのように存在していないのだ。

 

「一体、あなたは何者なの……?」

 

誰もいない廊下で楯無はポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

「…………」

 

俺は今絶句していた。

あの更識姉妹から逃げ、部屋に入ったらのほほんさんが部屋の中をうろうろと徘徊していた。

 

ひょっとしたらのほほんさんは夢遊病の気があるのではないだろうか。

だとしたら心配になってしまうな。

そう思っているとこちらに気付いたのほほんさんが勢いよく抱きついてきた。

「うおっ!?」

 

いきなりのことに驚きながらも受け止める。その際に手が当たったのか顔のガーゼが取れ火傷痕があらわになる。

 

「いかないでよぅ……お姉ちゃん……」

 

のほほんさんとは身長差はそれほどない。なのでのほほんさんは肩辺りに顔をうずめ、泣いていた。

 

どうやら何か怖い夢を見ていたようだ。

 

「落ち着けのほほんさん。誰も置いていったりしないから」

 

子供をあやすように抱きしめながら頭を撫でる。

のほほんさんが泣き止むまでまでそれを続けた。

 

 

「…………ほっしー?」

 

どうやらだいぶ落ち着いたようだ。

 

「どうした?」

 

「何でほっしー私に抱きついてるの?」

 

「いや、のほほんさんのほうから抱きついてきたんだが――ってそれはいいか。そっちこそ大丈夫か?」

 

俺はのほほんさんに確認する。

 

「もう大丈夫だよ~」

 

「そうか、なら良かった」

 

「ありがとねほっしー」

 

そういってさらに抱きつく力を込めてくる。

ち、ちょっ、ただでさえ意外に大きい胸が俺にあたってるのにそんなに抱きついたら、ヤバイ!

 

すでにのほほんさんのたわわな果実は押しつぶされ、感触が直に伝わってくる。もう少し自覚してほしい、何をとは言わないが。

 

「何でほっしーそんなに顔が真っ赤になってるの~?」

 

見なくても分かる。耳まで真っ赤になってるだろうよ。

耐性がないので飛びそうな理性と意識を何とか保たせる。

 

「いや、何でもないんだ。それよりそろそろ飯を食いに行きたいんだが」

 

ただいまの時刻Am6:45。飯を口実に離れてもらう。いや離してくださいお願いします。

 

「も~そんな時間? じゃぁ~食べにいこー!」

 

「ちょっ!? だから離してくれって!」

 

 

それからのほほんさんに腕を掴まれ、連行されるように食堂に向かう。

途中一夏たちとも合流し一緒に飯を食った。火傷痕は皆最初は驚いていたが普通に接してくれた。ありがたいな。

 

飯を食い終わってからデュノアが一夏と特訓をするらしいので同行させてもらった。

 

「で、何でついてきたんだ二人は……」

 

のほほんさんと簪が追いてきていた。

 

「おもしろそ~だったから~」

 

「興味深い」

 

とのことである。すると簪がなにかをこちらに差し出してきた。

 

「やっぱりいい。気持ちだけ受け取っておくわ……でもありがとう」

 

「そうか、分かった」

 

そう言って簪に渡していたデータは返ってきた。

 

 

「どうした星野? とのほほんさん……と誰?」

 

近寄ってきた一夏がそんなことを聞いてくる。何故かそのとき簪が顔を歪めていた気がするが無視して一夏に話しかける。

 

「何でもない、それよりとっとと始めよう」

 

 

それからそれぞれISを展開し、アリーナに集合する。俺はまだ展開せず辺りを見回す。

 

「んー、それなりに人がいるな」

 

アリーナには訓練機を使っている者、それを見ている者など少なからずいた。なのでここで俺の装備を使うのは危ないな。

 

ならば近接と立体起動でもやるか、とプランを立てる。

 

「一夏、お前はどうするんだ?」

 

「俺はシャルルに射撃武器について教えてもらうんだ」

 

デュノアのISは俺の『弐式』と同タイプのラファール、つまり使用武器は火薬銃である。

 

「そういえば星野も射撃武器だよな、よかったら教えてくれないか?」

 

「そうなの? なら少し興味があるよ」

 

デュノアが興味深そうに聞いてくる。

 

「ああ、少ししたらな。俺もまだ新調したIS(コイツ)を試してないんだ」

 

コツコツ、と待機状態のチョーカーを指でつつく。

二人は疑問符を浮かべているが後ろの壁付近にいるのほほんさんと簪はすでに見ている。

 

「お~っ! おひろめだ~!」

 

「……はやく見たい」

 

よほど気に入ったのだろう、テンションが上がっている二人。

俺は二人を無視して素早く手足を装着し、ISを展開する。ちなみに手足は前に使っていたものを使用している。

 

「――来い、『弐式』」

 

一瞬だけ視界が白に染まり、次にはIS特有の画面になる。最も俺はヘッドギアを着けているから少し違うが。

二人は驚いたように口を開けていた。

 

「全身装甲(フルスキン)……!?」

 

デュノアはまさかというように呟いていた。

 

「おおっ! カッコいいな!」

 

一夏は興奮気味に言う。

実際全身装甲なんてものを着けているのはそんなにいない。拡張領域(バススロット)も食うらしいからな。

 

「てなわけだ、まだこれに馴染んでないからな。少ししたら手伝うからよ」

 

「おう、分かったぜ!」

 

一夏たちと少し離れて早速体を動かす。

 

本当ならインストールした換装装備(パッケージ)を使いたいんだが大会まで初見にしておきたいんだよなぁ……だが慣らしておかないと、うーんどうしたらいいものか。

 

さんざん迷った結果、例の換装装備(パッケージ)は待機させておくことにした。

 

「さて、ではやるか」

 

ショートブレード『アヴェンジャー』を取り出し、構え、そして振るう。

 

「――シッ!」

 

短く息を吐き、『アヴェンジャー』を振るい続ける。

ただ無闇に振っているわけではなくそこに人がいるイメージ。

人の急所を突き、切り裂くように振るっていく。

 

「――ふぅ……」

 

一通りの動きが終わり、呼吸を整える。

続いてアサルトライフル「レッドパレット」を出し、構え、そこから立体起動に移る。

また人をイメージし人から銃口を離さないように動く。

それを速くしたり遅くしたり変化をつけたりと繰り返した。

 

「――……すごいな」

 

本当にこの一言に尽きる。

前よりも動きやすい気がする。

加えてこのヘッドギア、視界をまったく阻害しない。むしろ前より良くなっている気がする。

 

「すごいな今の!」

 

いつの間にか一夏が近くにいた。

いや、俺が近付いたのか。改善の余地あり、だな。

 

「スゴいね星野君」

 

デュノアが俺を誉めてくる。

 

「いや、まだまだだ、まだ完全に使いこなせてないからな」

 

俺よりは上手いだろ、と一夏が呟く。

 

「さて、俺はもういいとして一夏、やるぞ」

 

射撃についてはデュノアと一緒に教えるからほぼ俺は何もしない。

というかデュノアがいるからあまり教えたくない。

しばらくしていると一夏が近接タイプオンリーということが分かった。まぁ武器がブレード一本なので予想はしていたが。

 

「一夏は近接攻撃を極めろ」

 

「それ千冬姉にもいわれたよ……」

 

苦笑いをする一夏。まぁそうだわな。射撃のセンスが無いって言われてるようなものだし。

 

「一夏、まず手合わせだ。来い」

 

だから近接攻撃の練度を上げるしかない。

本当はやりたくないが一夏のためだ。

 

「あ、あぁ、分かった」

 

突然のことに多少驚きながらも近接ブレード『雪片弐型』を構える一夏。

俺もショートブレード『アヴェンジャー』を逆手に持ち、構える。

 

「はあっ!」

 

「っ!?」

 

一夏が俺に飛び込みながら雪片を振るってくる。

驚いたのはそこではなく、直感による危機察知、そしてヘッドギアに表示された警告の文字。

狙われたのは後ろから、丁度『俺と一夏が重なりあっている』射線上だ。

 

すぐさま加速器(スラスター)を吹かし、一夏にタックルをする。そしてそのまま狙われている射線上からずらす。

 

直後――

 

――ズガァァンッ!

 

アリーナの壁に攻撃が当たる。幸いにもその付近には誰もおらず、爆風が舞い上がるだけだった。

 

「――ほう、今のをかわすか。タイミング共に完璧だと思ったが。流石は元軍属だ」

 

声がした方向を見ると少女が一人、ISに乗り、堂々とたたずんでいた。

 

――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

彼女は不敵に笑っていた。

 

段々とアリーナがざわめき始めた。

無論それはボーデヴィッヒが登場し、撃ったからだろう。

 

周りの女子生徒たちが何やら口々に話始める。

 

「ねえ、ちょっとアレ……」

 

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

 

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

 

なるほど、第三世代か。確かにここまで騒ぎになるほどの機体だな……。

全体的に黒色で右肩には大口径の砲身。

おそらくあれでさっき俺たちを狙ったのだろう。

 

「だいじょ~ぶ、おりむ~、ほっし~、でゅのあ~ん!」

 

のほほんさんと簪が駆け寄ってくる。てかでゅのあんって……すさまじいほど違和感があるな。

 

「軍属……?」

 

ラウラが言った言葉に一夏とデュノアが反応する。別に隠していた訳ではないが知られたくなかったな。

 

「何を言っているんだボーデヴィッヒさん、俺はただの学生だ」

 

「とぼけるな、貴様の経歴は見た」

 

手が早いことだ、となるともうごまかしは効かないな。

 

「……昔の話だ。それに軍じゃなくPMCだ」

 

経歴がどこまで見られたかは分からんがPMCより前のものは『存在してない』からな、知ることもできないだろうよ。知ってるのは俺だけだ。

 

一夏もデュノアも驚愕していた。

のほほんさんも簪も何となく察したようで気まずそうにしている。

 

「ふん、そんなことはどうでもいいのだ」

 

言葉を一旦区切り、そして発する。

 

「織斑一夏、星野凛、私と戦え」

 

「…………」

 

「イヤだ、戦う理由がねぇよ。俺も星野も」

 

俺が無言でいると一夏口を開き、ラウラにそう告げる。

 

「ふん、たとえ貴様らになくとも私にはあるのだ。ならば――」

 

そう言いかけたとき、ラウラの足元に数発の弾丸が飛来する。

 

「――なんの真似だ、そこのお前」

 

ラウラが前にも増して眼光を鋭くする。

その先にはアサルトライフル『レッドパレット』を構えていたデュノアがいた。

 

「こんな人が多い空間でいきなり戦闘を始めようだなんてドイツの人は随分と沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」

 

デュノアがラウラを挑発しながら俺たちの前に出る。

 

「フランスの第二世代型(アンティーク)ごときで私の前に立ちふさがるとは」

 

「いまだに量産化の目処(めど)すらたっていない第三世代型(ルーキー)よりは動けるだろうからね」

双方のにらみ合いが続く、殺気があふれだす。

 

先に動いたのはラウラの方だった。

右手を上げ、手のひらを目の前のデュノアへと向ける。

 

「ッ!? 動かない!?」

 

何か来ると思ったのだろう、その場から距離をとろうとして自分の陥っている状況に目を剥くデュノア。

無理もない、こちらから見てもよく何が起きているのか分からないのだから。

 

「愚か者め」

 

ラウラの右肩の砲身がデュノアを捉える、そして――撃った。

 

 

「アァアアアアアアッ!」

大口径の弾はデュノアに正確に直撃し大きく後ろに吹っ飛び、シールドエネルギーが削られる。

 

「今一度問うぞ、私と戦え」

 

ラウラは俺ら二人に言う。

 

「シャルルッ!」

 

ラウラの言葉など聞こえていないかのように一夏が吹っ飛んだシャルルの元へ走り出す。

 

「背中を見せるか織斑一夏。失望したぞ」

 

一度だけ一夏を見てから今度は俺に目を向けるラウラ。

 

「私と戦え、星野凛。織斑一夏はそのあとにしよう」

 

「……一夏が言ったように戦う理由がないな」

 

俺はラウラと大きく距離をとる。

さっきのがラウラの乗っているISのものだとしてそれがどこまで届くのかは知らんがやらないよりはマシだ。

 

「ふん――ならば戦わざるをえないようにしてやろう」

 

ニヤリと笑い、砲身をこちらに向け、射撃体制に入ったラウラ。避ければ問題ないと思い、加速器(スラスター)をいつでも使えるようにする。

 

しかし、直感だろうか、俺は弾丸が発射されるこの短い時間で後ろを見た。

ISの機能の360°視界(フルビューイング)で。

すると丁度俺の後ろにのほほんさんと簪がいた。

 

すぐさま、先程考えたプランを破棄し、待機状態にしていた『あれ』を出す。

「させるか!」

 

換装装備(パッケージ)が展開される短い時間でも惜しい。俺は走り出していた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

キュイン、と音がし、換装装備(パッケージ)が切り替わる。

そして量子変換から実体を持って出現し、その姿を見せる。

 

(――間に合えっ!)

 

この間約二秒。驚きの速さである。

 

凛は新しい換装装備(パッケージ)を使い、『全力で加速した』。

 

――瞬間、地面が爆ぜる、後に爆風が巻き起こる。

「!!」

 

――ズガァアァァァァンッ!!

 

凄まじい轟音が上がる。

「……何……?」

 

ラウラはしばらく自分が地に伏していることに気が付かなかった。

ガバッ、と起き上がり状況を確認する。自分は確かに星野凛に向けて撃ったはずだ、と。

 

しかしアリーナを見てみると分かった。

狙った場所から大きく上にズレているのだ。

 

では、その星野凛はどこへ行った……?

 

ラウラは辺りを見回す。そして丁度後ろにいた。

 

アリーナの壁に逆さになってめり込んでいるのだ。 丁度何かが量子変換してしまったたため、何かは見れなかったが。

 

「……痛てぇ」

 

凛が気が付いたのは大きな衝撃と痛みである。

 

全力で加速した後、次には壁に逆さにめり込んでいたのだ。

 

「くそっ、なにが高速移動パッケージだ、『超』高速移動パッケージじゃねえか」

 

あのジジィ、と心の中で悪態をつく。

 

「だが……なんとか、弾は逸らせたみたいだな」

 

逆さになっていて確認しづらいが二人も無事みたいだ。よかった。

 

俺は換装装備(パッケージ)を戻す。これは後で徹底的にやらなければものにできないな。

 

「ぐぅ……」

 

壁から自分の体を剥がし、そのまま落下する。

 

シールドエネルギーが思った以上に削れていたそしてさっきので痛みで思うように動けない、ラウラが起き上がり、こちらを向く。

――やべ、撃たれる。

 

今まさに発射されるところで思わぬ乱入者が入ってきた。

 

ガアァァン!

 

「っ!!」

 

「!」

 

「――ふぅ、これだからガキのお守りは嫌いだ」

 

そこには近接ブレード『葵』をもった織斑千冬がいた。IS用のブレードを軽々と持ち上げてラウラが撃つ寸前で割り込み、砲撃の軌道をそらしてみせたのだ。

 

「教官! 邪魔をしないでください! これは私の問題です!」

 

「黙れ、貴様は無抵抗のものをなぶって楽しいか?」

トントン、と肩に『葵』の峰(みね)を当てながらラウラに問う。

 

「それは……」

 

「それに来月の頭には学年別トーナメントがある、自重しろ」

 

ふぅ、と一息ついてから俺たちにも聞こえる声量で言い放つ。

 

「トーナメントまでは一切の私闘は禁じる! したものは出られないと思え!」

 

ラウラ、一夏、デュノア、そして俺の順に見てから帰っていった。

 

「教官がああ言うならば今日は引こう」

 

ラウラは砲身を下げ、後ろを向いて帰ろうとする。

「デュノア、無事か?」

 

俺は一夏とデュノアの場所へ行き、デュノアの容態を確認する。

 

「うん、大丈夫。ちょっとモロに食らっただけだから」

 

ふらふらとした足取りで立ち上がる。

 

「お前こそ大丈夫なのかよ、いつの間にか壁に突っ込んでたじゃねえか」

 

「ああ、ちょっと操作をミスっただけだ、心配ない」

 

「ほっし~! でゅのあ~ん! だいじょーぶ~!?」

 

とことことのほほんさんが走りながら聞いてくる。

「心配ないよ布仏さん」

 

「大丈夫だ、のほほんさん」

 

「――織斑一夏」

 

不意にラウラがオープンチャンネルで話しかけてきた。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから私は貴様を――貴様の存在を認めない」

 

そう一夏に言ってアリーナを出たラウラ。

 

一夏たちは何とも言えない表情をしていた。

 

(――これは思った以上に大変そうだ)

 

俺はラウラがいた場所をしばらく眺めていた。

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