IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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ちょっとホラー風に。
完全に深夜テンションでタイトルを決めたので大変なことに……

早く出したいなあの人……。

それでは、どうぞ。


十七話 『同級生と後ろの正面だぁれ?』

 

 

 

 

「俺はちょっとやることがあるから先に帰るわ」

 

「ああ、分かった。ちゃんと話してくれよ?」

 

「ああ」

 

アリーナを出る際に一夏に「軍属って何だ?」、「PMCって何だ?」としつこく聞かれたので後で答えてやると一夏に告げてアリーナを出る。

 

アリーナを出てまずは自室に向かった。

そして元PMC『Red Eyes Eagle』隊長。現『イノケンティウス社』社長、キーファー・アイスランドに電話をかける。

 

三コールほどで相手が出た。

 

「どうした息子よ」

 

「この際、それはツッコまねえよ。問題はあの新装の換装装備(パッケージ)だ」

 

畳みかけるように話す。

 

「今調べたら最大出力スペックが時速1800㎞/hってどういうこどだ!? 世界一周旅行でもしろってか!?」

 

思わず声が大きくなる。そりゃそうだ、全力で加速しようとして壁に激突したのだからシールドエネルギーが半分以上もっていかれ、機体もかなり損壊したのだ、無論俺もダメージを受けた。これで完全に速度にノっていたらと思うとゾッとする。

これで怒らないほど俺は聖人君子ではない。

 

「あーそれか……」

 

と珍しく、参ったなといった風な声を出す社長。

 

「何だ? どうしたんだ社長。てか今どこにいるんだよ」

 

「ん? ああ、京都だ。今Kiyomizu Temple (清水寺)の土産屋にいる。いやぁ、この生八つ橋というのは旨いな!八つ橋もすてがたいが――」

 

「コントじゃねぇんだよ、修学旅行じゃねぇんだよ社長! てか速っ! 一日でなんで関西にいってんだよ! いや行けないことはないけどさ!」

 

ツッコみまくって肩で息をする凛。

完全にキャラ崩壊している。

 

「はぁ……ちょっと待て。一旦切るぞ」

 

そういって電話を切る社長。しばらくするとまたかかってきた。

 

「どうしたんだ?」

 

「人気のない場所に移動した。お前もそうしろ、これから話すのは少々機密もはいっている」

 

あきらかに声色が変わっていた。

電話越しにでも伝わってくる現役時代の空気。

 

「分かった。今屋上に移動するから数分待ってくれ」

 

それに従い、すぐに移動を始める。

一度電話を切り、部屋を出て鍵を締める。またのほほんさんが来られても困るからな。

 

そこから走って屋上を目指した。途中デュノアが急いでいたようだが気にせずに走る。

 

 

「――ふぅ、もしもし? 移動したぞ。それで何を話してくれるんだ?」

 

一息ついてから社長に再び電話を繋ぐ。

 

「ではまず最初からだ。お前に渡した換装装備(パッケージ)は母国(アメリカ)とイスラエルで共同開発している、あるISの試験段階で造られた換装装備(パッケージ)だ。」

 

来月にある学年別トーナメントのデータを元にするそうだ。と淡々と言う社長。

 

「それで、そのありがたい実験に俺が選ばれたと? 舐めやがって」

 

てか俺社長にトーナメントあるって言ってないのに何で知ってんの? 怖っ

 

「ISはまだ試験段階ではあるがすでに製造されている。出力、スペックもお前の換装装備(パッケージ)よりも上をコンセプトにしているらしい」

 

……どうやら性能は化け物級らしい。

 

「社長。俺や社長、俺らの会社もそれに関与してんのか?」

 

俺達の会社――『イノケンティウス社』はアメリカにあり、社員や俺もそこが職場なのだ。

 

「いや、このことを知っているのは私と話したお前だけだ」

 

「そうか――」

 

そこで俺はある気配に気付く。

何度も味わった独特の気配、狙われる者として心臓を掴まれているかのような感覚。そしてそれがあったからこそ、イヤでもついた勘の鋭さ。凛は無意識に頭を数センチずらしていた。

 

「……社長、電話はまた後でにしてくれ。こっちにはお客さんが――」

 

――ブツンッ!!

 

大きな音を立てて凛との電話が遮断された。

突然の音におもわず耳に当てていた電話を離してしまう。

 

ツー、ツー、ツー――

 

「…………」

 

再び耳に当ててみると無機質な音だけが聞こえる。

社長、キーファー・アイスランドは視線を空に向ける。

 

社長はある確信があった。

凛今何者かに襲撃されていると。

しかしそれでも、星野が負けるはずはないと。

齢たったの15歳の少年だが戦闘能力は計り知れない。舐めてかかれば返り討ちにされるだけだ。

社長は星野の過去を知らない。

ゆえに心配なのだ、過去に何があってあんな戦闘能力をもったのかと。

 

「……凛」

 

自分の息子を好き好んで戦場に投入する親はいない。ましてや年端もいかない少年ならばなおさらだ。

 

「……凛」

 

もう一度、社長であるキーファーは息子のように思う凛の名前を呟く。

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

(くそっ、電話が破壊された。敵は狙撃手、マズルフラッシュが見えたのは三回。てことは三人か?だとしたら場所は――ビルやらマンションやらの屋上か)

 

今、凛はうつ伏せで倒れていた。別に撃たれたというわけではなく状況確認のために。遅れてターン、と小さな音が聞こえた。長距離狙撃特有の現象である。

 

迅速に目星をつけたのはここから1㎞ほどだろうか、ビルとビルの間を縫うようにして丁度こちらに射界がとれるビル。同じような距離に頭ひとつ分高いマンション。ポツンと建っているビル。この三つ。

 

(――だれが俺を狙ってんのか知らねぇが、ならこっちも殺らせてもらう)

 

生身で扱える武器など今はナイフしか持っていない。しかしISならば装備は潤沢に持っている。

ISを扱ううえでの条約上色々と厄介な問題があるが関係ない。

 

そうと決まれば凛の動きは速かった。

すぐに立ち上がり、走る。そして制服の懐に入れていた携帯用の手袋を取り出し、右手だけ嵌め、起動させる。

いつ狙撃されてもおかしくないこの状況で彼は見えない者たちがいるかもしれない方向に向かって走り、そして屋上の柵を踏み、飛んだ。

 

(――来い、『弐式』!)

 

 

わずか0.3秒程で自信のISを呼び出した凛。着けているのは例の『超』高速機動パッケージ。

 

「Let's do this!!(さぁ、 やろうぜ!)」

 

全速力を出せば音速を超える翼で自身が傷付くことなど省みずに敵に向かって大きく羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「――嘘……でしょ」

 

シャルル・デュノアはうつ伏せの状態でISの望遠機能を使い、戦慄していた。構えている狙撃銃のスコープから目を離して。

 

何故デュノアがそうなっているのか、時間は少し前にさかのぼる。

 

 

 

 

凛がやることがあると言って帰ってから、一夏に一緒に着替えないかといわれた。

 

「イ、イヤ」

 

「つれないこというなよ」

どうしてそんなに一緒に着替えたがるのだろうか。

「つれないっていうか、どうして一夏は僕と一緒に着替えたいの?」

 

僕は聞いてみることにした。

 

「というかどうしてシャルは俺と一緒に着替えたがらないんだ?」

 

やはり、不味かっただろうか、とデュノアは内心で思う。

 

「どうしてって……は、恥ずかしいから」

 

我ながらこれはおかしいなと言ったあとに思ってしまう。

これでは自分で自分の首を絞めているようなものではないだろうか。

 

「慣れれば大丈夫、さぁ、一緒に着替えようぜ」

 

しかしこの織斑一夏という男はまるでさっきの言葉が聞こえていなかったかのように、再度僕に問いかけてくる。

 

――ブーッブーッブーッ。

 

持っている服から微かに感じた携帯のバイブ音。

 

「えっと、ほら、携帯が鳴ってるからさ、ちょっと電話してくるよ!」

 

苦しい言い訳にしか聞こえないなとデュノアは思った。

 

「なあ、シャル――」

 

一夏がさらにたたみかけてこようとした時、唐突に第三者がやってきた。

 

「はいはい、アンタはさっさと電話に行きなさい。それに一夏、引き際を知らないやつは友達をなくすわよ」

 

なんだか知らないが中国の代表候補生、凰・鈴音が助けてくれた。

それに従って、僕は急いで電話に出るため、自室に行く。

 

途中、なにか急いだ様子の星野凛に出くわしたが構わずに自室を目指す。

 

自室に入り急いで電話をとると予想していた通りの人物だった。

 

「遅いぞ、何をしている」

 

「すいません、織斑一夏に色々と話されていたので」

 

「ふん、まぁいい。あれから何か分かったか?」

 

「織斑一夏からは少ししか聞き出せませんでした。星野凛にいたってはまったく」

 

織斑一夏は僕のことを警戒せず、むしろ友達として見てくれているようだ。

 

それが嬉しかったけど、同時にすごく心が痛くなった。

僕はそんな風に思ってくれている人を騙しているんだ、と。

でもしょうがないんだ。それに僕にはこれしかないんだと言い聞かせてきた。 逆に一夏が星野凛みたいだったら良かったのにと思った。

僕のことを警戒し壁をつくっているような、そんな関係ならこんな気持ちをせずにすんだのに。

 

デュノアの気持ちなど知るよしもない電話越しの相手は言葉を告げる。

 

「そちらに私が雇った者が着いたらしい、後はお前が指示して星野凛をおびきだして、殺せ」

 

『殺せ』――そんな言葉に無意識の内に体が硬直する。

 

「……待ってください、殺す必要は、ないかと」

 

絞り出した声で告げる。

 

「いいや、殺せ。このままではわが社が危ないのだ。そのためには何としても情報が欲しい。そのための犠牲など知らん」

 

ただ、男性の操縦者を殺すのは惜しいがな。と相手は告げる。

 

「ああそうだ、始末した後は死体は回収しておけよ? 大事な実験体にするからな、ISも貰っておくことにしよう」

 

……どこまで下衆(げす)なのだろうかこの男は。

 

「それでは頼むぞ」

 

ブツリ。と一方的に切られた。

それを待っていたかのように電話が再びバイブ音を発する。

 

「はい」

 

出てみるとそれは女性だった。

 

「あなたが依頼者(クライアント)の言ってた指示者(リーダー)ね?」

 

「はい、あの……誰ですか?」

 

僕は疑問に思って聞いてみた。

 

「そうね、私は一般会社で働いてるただの職員よ」

 

「それより、対象(ターゲット)が屋上にいるんだけど、ヤっていいの?」

 

僕の質問に一拍の間をおいて答える女性。すでに星野凛が狙われていることに驚いた。

それと同時に自問する、何故彼は屋上などというひらけた場所にいるのかと。

 

「……早く、指示をちょうだい」

 

考える時間などあるはずがなく、急かされる。

 

「はい、お願いします。私も向かいます」

 

「分かったわ」

 

それだけ言って、切れた電話。僕も急いで向かうことにした。

移動している最中に思う。

願わくは生きていてほしいと。

何故だかは分からないがデュノアはそう思った。

 

 

 

屋上がよく見える位置に移動した僕はISを使って見ることにした。

 

そこでまた電話がかかってくる。

携帯は地面に置いていたので、通話ボタンを押して出る。

 

「もしもし、あなた今ISを展開してるわね?」

 

かかってきた内容に思わずドキリとする。

 

「あなたを見ているからよ」

 

まるで私の心を読んだかのように告げる女性。

 

「そっちから対象(ターゲット)は見える?」

 

そう聞いてくるので僕は答える。

 

「はい、見えます。倒れています」

 

僕は屋上と同じくらいの建物にいた。

 

何か分からないが女性は少々怪しんでいる。

その時、それは唐突に起こった。

 

突然起き上がったかと思えば走りだし柵を飛び越えたのだ。

デュノアは気でも触れたかと思った。

しかし次の瞬間には何をしたかが分かった。

 

ISを展開し、飛行しようとしていたのだ。

 

おそらく換装装備(パッケージ)であろう背部に付いている他方向推進装置(マルチスラスター)のようなものは機械であるが形はまるで翼のようであった。

それは先ほどの騒動で一瞬だけ見えたもののような気がした。

 

「ッ!? なにをしているお前ら! 撃てっ!」

 

女性が慌ててそこにいるであろう仲間に指示を出す。

そこから断続的に続く射撃音。構えている銃のスコープを覗いて見てみる。だが――

 

「何!?」

 

高速で動くISを捉えられるはずがなく、位置を特定され、星野凛に攻撃されていた。場所は凛が予想した通りだった。よく見てみると使っているのはナイフのような物一本だけだった。

 

「ぎゃあああああっ!」

 

「う、腕がぁああああっ!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

 

断末魔のような悲鳴をあげている男性。

僕は思わず覗いているスコープから目を離して呟いていた。

 

「――嘘……でしょ」

 

目を離す前に行われていたのは正気を疑う行為だった。

 

腕を切り飛ばしたり、脚を切り落としたり、中でも一番酷かったのは男の腹にあのナイフを突き刺していた。

 

僕は見ていられなかった。

だが何故か再び、銃のスコープを覗いていた。

 

そこに写るのは彼――星野凛と左手で首を掴まれている女性だった。

 

電話の声とスコープ越しの動きが重なる。

 

「何者だ、何故俺を襲った? 雇い主は誰だ、殺し屋」

 

 

淡々とした声で女性に聞く星野凛。その表情は全身装甲(フルスキン)はもとより、後ろ姿なのでよく分からない。

 

「……はっ、誰だってプライドがあるように、殺し屋(私たち)にだってプライドはあるんだよ」

 

そのことを誇るように女性は星野凛に告げる。

 

「――……そうか」

 

そう、一言だけいい、ISのナイフを持っている右腕を振り上げた。

 

「――残念だ」

 

あとは振り下ろすだけ、それであの女性は死ぬだろう。

しかし自分でも分からないが体が勝手に動き、銃の引き金を引いていた。

 

大きな音とともに放たれる弾丸は星野凛に向かっていく。

当たれば少しは動揺するだろう。その隙をついて逃げてほしいとデュノアは思っていた。しかし――

 

「ふん」

 

ガウィンッ! と何か金属質同士がぶつかる音、それは凛が持っていたナイフで飛んできた弾丸を強引にそらした音だった。

 

「そこか、まだいたのか」

 

携帯とISのハイパーセンサーで拾った音が重なる。今度はこちらに完全に焦点を合わせ、今にも向かってきそうである。

 

――に、逃げないと……

 

 

――――カツンッ。

 

うつ伏せから体制を起こし逃げようとした時、後ろからたしかに聞こえてきたのだ。

 

「――ここで、何をしているのかしら?」

 

疑問は確信に変わった。

僕はゆっくりと首を声のする方向へと向けた。

 

そこにはIS学園生徒会長である更識楯無がこちらに変わらぬ笑顔をむけ、立っていた。

 

 

いまさら僕の鼻腔をつく硝煙の匂いがこの時ははっきりと感じられた。

 




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