IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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お待たせしました。そしてまずはいくつか謝辞を。

この話で医療関係、病気等の話が出てきますが、作者の幼稚な文章力でご不快になったりした場合は申し訳ございません。

そして長ったらしい英文も登場します。
英文は調べたりしましたがこれで合っているのかは正直分かりません。ですので違う、読みづらい等でしたら修正します。

作者はこの道を色々と迷った結果、最終的に選びました。賛否両論あると思います。



十九話 『Warfare』

 

 

 

 

「……え?」

 

一夏は呆けたような声を出す。

 

「聞こえなかったか? 助ける気もそこまでする義理もないと言ったんだ」

 

しばらく意味が分からないとばかりに聞いていた一夏は次第に表情を変える。

 

「……ふざけんなよ」

 

「ふざけてはない。第一に俺は一人のPMCの社員だ。勝手な行動は出来ないし、他国の、それも実質形だけのフランス大手のデュノア社と事を構えられるわけがないだろ?」

 

一旦言葉を区切り、そして続ける。

 

「もしするとしてもそれはビジネス面での話になる。損害(リスク)が利益(リターン)を越さないこと、これが大前提だ」

 

と一夏に告げる。

 

「ふざけんなよ! 友達を見捨てるってのかよ!」

 

一夏は声をあらげて凛に反論する。

 

「友達と思っているのは一夏、お前だけかもしれんだろ」

 

今一度、一夏にこの質問をする。

 

「だからどういうことだよ!」

 

「何故シャルロット・デュノアが嘘をついていると考えない?」

 

「……何だと」

 

 

「デュノアが言っていただろう、目的は男性操縦者と第三世代型のデータ収集だ。そこでまず男性操縦者の情報を得るためには何をする? 友好関係を築こうとするだろう? そしたら後はそれなりに簡単に情報なぞ手に入る。今までのも全て演技かも知れないだろう。それなら一夏は完全にその策に嵌まったことになるな」

 

「ふざけないで! 僕がそんなこというはずがない!」

 

デュノアは聞き捨てならないと激昂する。

俺は席を立ち、座っているデュノアの元へ歩みより、胸ぐらを掴み上げる。

 

「きゃっ……!」

 

少々強引にやったためかデュノアの持っていた携帯が服から滑り落ち、地面へ落下する。

それを気にもとめずに俺はデュノアへと話しかける。

 

「ならば何故、お前はデュノア社の操り人形(パペット)に成り下がる?」

 

そう、デュノアは嫌々とはいえランスロットとかいう奴の命に従っているのだ。

 

「そ、それは――逃げてもいずれはまた連れ戻されるから、従うしかなかったんだよ」

 

「おいっ! やりすぎだろ!」

 

一夏が何か言っているが今は無視して続ける。

 

「従うしかなかった? 逃げられない? ジョークならもう少し面白いのを言え」

 

「なっ!?」

 

「結局のところ、お前は甘えているんだよ、自分の境遇に。こんな哀れな私を誰か救ってやってくださいってな。悲劇のヒロイン気取りなら教会に行ってJesus Christ(イエス・キリスト)に祈りでも捧げたらどうだ? それなら少しはそれっぽくなるかもな」

 

「てめぇ!!」

 

一夏が激昂し俺に殴りかかってくる。それを俺はあえて受ける。

ゴスッ、と鈍い音が響く。

殴られた衝撃で一夏とは逆方向を向いた顔をゆっくりと一夏へと向ける。

 

「痛いじゃないか」

 

「うるせぇ! いくらお前でも言っていいことと悪いことがあるだろうが!」

 

また殴られる。俺はそれを受け、またゆっくりと一夏の方へと向き直る。

 

「だいたい、それほどまでに助ける理由が、一夏にはあるのか?」

 

「そんなもん、友達を助けるのに必要かよ!」

 

一夏は分かっていないようだ。

俺はため息を吐く。それが気に触ったのかまた殴りかかってくる。

俺はいい加減殴られるのがイヤになってきたので避けて組み伏せる。

 

「まずは落ち着け。すぐに感情的になる、それはお前の悪い癖だぞ? 一夏」

 

「ぐっ……! はな、せっ! 落ち着いてなんかいられるかよ! このままじゃシャルが!ぐぁっ!」

 

右腕を後ろにまわして起き上がれないように体重をのせながら間接技を極めている状態で無理に動こうとしているせいか痛そうに顔を歪めている。

だが解いてまた暴れられても困るので力は緩めない。

 

「だから、力を貸してくれっていってんだ! 俺はこのまま何もせずにシャルを放っておくなんて出来ねぇんだよ!」

決して揺らぐことのない意思を目に宿し、凛を睨み付けるように見る一夏。

 

「入りづらい空気ね、お姉さん、困っちゃうわ」

 

険悪ともとれるその中、更識楯無は忽然と現れて、二人の間に介入する。

 

「まずは喧嘩を止めなさい。これじゃ話し合いもままならないわよ」

 

「けど楯無さん!」

 

「落ち着きなさいと言っているのよ」

 

一夏を睨むように見る楯無。開いた扇子には『冷静沈着』と書いてあった。

 

「あーあ、こんな所に携帯まで落として、まったく」

 

楯無は携帯を拾い上げると机の上に置いて自身も椅子に腰かける。

それを見た二人も続くように椅子に座る。

そして不自然な静けさの中、楯無が口を開いた。

 

「では凛君、さっきあなたが調べてきて欲しいっていったことについて話すわよ」

 

頼む、とだけ言って話を再開させる。

 

「アリシア・ルイス。まぁ細かいことは飛ばすわね、一度殺し屋になり様々な人達を殺してるわね。でも数年前に裏の世界から足を洗って一般の会社に勤めていたがデュノア社に入り、ISの整備などを仕事にしている。でも最近再び殺し屋として働いていた。あっているかしらアリシアさん?」

 

「…………」

 

無言を肯定ととったのか話を続ける楯無、だが口角はうっすらとつり上がっていた。

 

「面白いのはここからよ~、彼女は実質――」

 

「言うなっ!」

 

突然爆発したようにアリシアが楯無に向かって動き出す。

流石は殺し屋といったところか、隠し持っていたナイフで楯無に次の言葉を言わせまいと迫る。

だが――

 

扇子を巧みに使い、ナイフを弾き飛ばしそこから流れるような動作で地面に組み伏せる。

 

「もうビックリしたじゃない。焦ってお姉さん加減を忘れそうになったわよ」

 

ふぅ、とひとつ息を吐いてから話を続ける。

 

「話を続けるわね、この女性、実質デュノアちゃんの――」

 

「言うな言うな言うなっ!」

 

「――従姉妹にあたる人なのよ」

 

要は親戚よね。と楯無は最後にそう付け足してアリシアから離れる。

 

アリシアは知られてしまったからか表情を歪めて項垂れる。

 

「…………嘘」

 

そのことに真っ先に反応したのはデュノアだった。

 

「……嘘じゃない本当よあなたのお母さん、オリヴィアさんは私の母さんの妹だった」

 

諦めたように話始めるアリシア。

 

「妹?」

 

「私の母さんはミレア・フローリス。今は結婚してルイスだったけど、あなたのお母さんの姉よ」

 

衝撃の事実に誰もが固まる。

 

「えぇ、事実よ。それにアリシアの下に娘がもうひとりいるくらいね」

 

凄まじい情報収集能力だな、と凛は内心で驚いていた。

 

「…………なんで」

 

ぽつりと呟いた消え入りそうな声。

 

「……なんで」

 

先程よりは声量が大きくなる。

 

「ならなんで母さんを助けてくれなかったんだよ! 姉じゃないのかよ! なんで! なんで!?」

 

アリシアを責めるように声を荒げるデュノア。そんなことしても無駄だと分かっていても彼女はせずにはいられなかった。

 

「……私があなたのことを聞かされたのは母さんが死ぬ前のことよ、あの時の私じゃ、どうすることもできなかった」

 

「――え!?」

 

アリシアは力なく立ち上がり説明をする。

 

「さっき、だったって言ったでしょ? 私の母さん、ミレア・ルイスは急性白血病だったのよ」

 

――白血病(はっけつびょう)は、「血液のがん」ともいわれ、遺伝子変異を起こした造血細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的に増殖して正常な造血を阻害し、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出てくる血液疾患。白血病細胞が造血の場である骨髄を占拠するために造血が阻害されて正常な血液細胞が減るため感染症や貧血、出血症状などの症状が出やすくなり、あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。治療は抗がん剤を中心とした化学療法と輸血や感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植治療も行われる。大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の4つに分けられる。

現在の白血病の治療の基本は化学療法(抗がん剤)である。白血病の治療では骨髄移植が知られているが、骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植療法は過酷な治療であり治療そのものが死亡原因になる治療関連死も少なくはない。また寛解に入っていない非寛解期に移植をしても失敗する可能性は高い。そのために白血病の診断が付いてもいきなり移植に入ることはなく、まずは抗がん剤による治療になり、その後は経過や予後不良因子によって移植の検討がされている。

 

「母さんは日記にそのことを書き記していたわ。白血病と診断されて日、妹から助けてほしい、と電話があったと」

 

デュノアは驚愕の表情でアリシアを見る。

 

「今の自分ではむしろ妹の足を引っ張ってしまう、そう思った母さんは助けることは出来ないけど最大限の援助はすると。でも本来なら助けたかった胸が張り裂けそうだったと書いていたわ」

 

「そこで母さんは病気を治すべく、治療を始めたわ。父さんも当時幼かった私も母さんのことを励ましていたと。妹のことは自分のツテを使いなさい、といって知り合いに無理を言ったりもしたらしいわ」

 

「そこから数年後、母さんの状態があまり芳しくなくなったのは」

 

「原因は簡単だった。白血病が薬の耐性をもっていたと、このままではこのままでは長くないと言われたと」

 

「移植をすれば助かる見込みはあるが今の体力では手術に耐えられないとも書かれてた」

 

顔は苦痛に歪み声は震えながらも続きを話すアリシア。

 

「そんなときよ、私が妹のことを聞いたのは」

 

「その時、私は母さんが初めて泣いたのを見たわ。自分がやったことを押しつけてごめんなさい、私の妹を助けてあげて。私は……もう長くないからって」

 

俯き、声を震わせながら目元の辺りを拭う動作をするアリシア。

 

「その一週間後、母さんは息を引き取ったわ。盛大に泣いた、悲しんだのを覚えているわ。でも母さんに言われたことを思い出して私はオリヴィアさんを精一杯探したわ」

 

 

「だから私は一つの賭けをしたの。膨大な情報を得るために自身の手を汚す殺し屋になった」

 

「そこからは速かった、裏でいき交う情報を元にオリヴィアさんのことを探して娘が入ることを知った。そして一ヶ月とかからずに見つけることが出来た。私はすぐにその場所に向かったけど、手遅れだったの、娘の姿は見当たらず、オリヴィアさんは横たわったまま息を引き取っていた」

 

「それからまた私は探したわ。そしたらあなたはデュノア社にいた。でも私一人で連れ出すのは不可能だった」

 

「ちょっと待って、あの後、お母さんはどうしたの?」

 

デュノアは話をさえぎり、母がどうなったのかを確認する。

 

「あの後、遺体は私が持って帰って母さんの隣に寄り添わせたわ」

 

寄り添わせた、その言葉の意味を理解して安心するデュノア。

そしてまた一拍おいて話を再開する。

 

「だから私はデュノア社に潜入することにした。機会を伺って助け出すために、でもその後すぐにこの学園に入学させられることをしった」

 

「そうして安心したのもつかの間、社長の命令で監視役としてこの学園に飛ばされ、着いた先には雇われた殺し屋がいたわ。話を聞いたら星野凛という男を殺すために雇われたらしかった。着いてから私は渡された電話番号にかけた、そしたらシャルロット、あなたが電話の相手で驚いたわ。あの男は娘まで手を汚させようとしてるなんて!」

 

アリシアは何かを決意したかのようにデュノアの前まで歩き出した。

 

「シャルロットさん」

 

「は、はい」

 

急に名前を呼ばれ、しかも目の前に立たれてとなると少し緊張した面持ちになる。

 

「あなたのお母さんを助けることが出来なくてごめんなさいね」

 

深々と頭を下げた。

 

「……私こそ、さっきはあんな酷いこと言って、理由も知らずに……本当にごめんなさい」

 

デュノアもまた頭を下げた。

 

「頭を上げてちょうだい。あなたがそんなことする必要は無いのよ」

 

「いいえ、あります。だからあやまらせてください、そしてお母さんの変わりに言わせてください…………助けてくれて、ありがとうございます。そして巻き込んでごめんなさい」

 

深々と頭を下げた状態で告げるデュノア、そうして顔を上げてアリシアを見つめる。

 

「私を、お母さんを助けてくれてありがとうございます」

 

そういってまた頭を下げた。

しばらくしてアリシアはデュノアの頭にそっと手を置いた。

 

「っ!」

 

「そう思ってくれただけで嬉しいわ。母さんもやっと安らかに眠れるわよ」

 

驚きに顔を上げたデュノアが見たのは微笑みを浮かべるアリシアの姿だった。諭(さと)すように告げながら頭を撫でるアリシアを見てデュノアは母――オリヴィア・フローリスの面影を見た。

髪の毛の色こそ違うが確かにデュノアは母を見た。そして母は笑っていたのだ。

娘の成長を喜んでいるかのように、たしかに育ってくれたのを嬉しんでいるかのように。

それを見てデュノアも笑った。心から笑ったのだ。

それを見てアリシアも笑った。

まるで久しぶりに再会した母娘のような光景に周囲は何も言わずただただ見守っていた。

 

 

しばらくしてアリシアがデュノアから離れ、楯無と凛、一夏の方へ歩み寄ってきた。

 

「……無理なお願いってのも厚かましいってのも分かっているわ、でもお願いシャルロットをデュノア社から、解放してあげてほしいの。もう私じゃ駄目なのよ」

 

「どういうこと?」

 

シャルロットが疑問を投げかける。

 

「私がデュノア社に戻っても消されるだけなの。あの男は臆病だから証拠となる人物を残しておくわけがない。過去にそういったことにたずさわることになった社員は皆『姿を消した』わ」

 

姿を消した、意味を理解した一夏とデュノアは息を飲む。

 

「……ちょっと待ってよ、じゃあ僕、またひとりになるの? せっかく出会えたのに……そんなのってないよ」

 

デュノアが泣きそうな顔をしている。アリシアは何も言わずただ申しわけ無さそうな顔をしていた。

 

 

――突如。

 

「ッ!」

 

ぞわりと首筋があわたつ感覚。先ほどの狙撃されたときとまったくの同じ感覚。

 

「……楯無会長」

 

「ええ、分かっているわ。狙われているわね、恐らく窓の方向よ。でも大丈夫」

 

 

楯無さんも気付いているようで三人に悟られないように話す。だがアリシアは気付いているようで諦めた顔をしている。

 

「窓ガラスはNIJ規格のレベルⅣを取りつけてあるわ。並大抵のものじゃ貫通すらしないわ」

 

――NIJ規格は欧米でも防弾能力を表す一般的な規格として使用されている。この規格におけるボディーアーマーの防弾性能には「タイプ」という語が用いられており、タイプ IIA、II、IIIA、III及びIV の5つのカテゴリーに分類されている。タイプ I は現在のバージョンでは存在しない。タイプ IIA よりもタイプ IIが、タイプ IIIA よりもタイプ III がそれぞれ防弾性能は高い。 防弾性能に対する銃弾の貫通能力は「レベル」の語が用いられ、防弾性能のタイプと貫通能力のレベルは1対1に対応する。

ちなみにNIJ-Ⅳ規格の防弾ガラスは、Remington(レミントン) M700狙撃ライフルやM60、M240軽機関銃で発射される7.62mmNATO AP(徹甲弾)、AK-47で発射される7.62㎜X39APやドラグノフ狙撃ライフル、軽機関銃PK、PKM、で発射される7.62X54R(ラシアン) AP弾クラスまでなら停弾することができる。

 

楯無が言い終えた後、窓際に面している山の一部からマズルフラッシュが見えた直後、窓に弾丸がぶち当たり、痕を残す。しかしNIJ-Ⅳ規格の貫通はしなかった。

 

「そこね」

 

「きゃっ!」

 

「な、何だ!?」

 

「伏せてなさい!」

 

楯無は標的を見つけたとばかりに相手がいるであろう方向を見る。

デュノアと一夏は状況が分からずにおろおろとしている。デュノアはアリシアと一緒に伏せて射線から外れようとする。

俺は一応、一夏を伏せて、射線から外れる位置に移動させる。

 

楯無は窓を割ろうと次々に放たれ、防弾ガラスに阻まれる弾丸を無視し扇子を撃ってくる方角に向けて一言だけ言葉を放つ。

 

「バーン♪」

 

楯無が相手に銃を撃ったような仕草をする。

するとさっきまで続けて聞こえていた銃声と窓に当たる弾丸の音が止む。

一辺して辺りは静かになった。

 

「まったく、これじゃあ他の生徒や教職員まで被害が出るじゃない」

 

やれやれ、と楯無は呟きこちらに身を翻して歩み寄る。

 

「星野凛君」

 

そして俺の名前を呼ぶ。

 

 

「あなたに仕事をたのみたいのだけれど? このままだと他の生徒達にも被害が出そうだから迅速にお願いしたいわ。『私達』はそういった表の荒事には不向きなのよ」

 

「……俺だけでは承諾しかねるな」

 

「そういうと思ってあなたの上司(うえのひと)には話を通しているわ」

 

はいこれといって楯無は携帯を差し出してくる。

くそっ、どうやって調べたんだよ。

 

俺は楯無から引ったくるように携帯をつかみ、耳に当てる。

 

『おお、凛生きてたか、心配したぞ』

 

社長のキーファー・アイスランドだった。

 

「ああ、携帯を壊されたぐらいだ。それより話は聞いてるんだろ?」

 

『ああ、お嬢さんから聞いている』

 

「依頼内容は?」

 

「それは今から説明するわ」

 

「内容はデュノア社の社長、及びその夫人の確保よ。報酬等は『私達』が出すわ」

 

楯無が言うと社長は少し考えてから話す。

 

『それで、私たちのメリットは何だ? まさかその報酬だけとは言わないよな? 私たちは確かに傭兵だが社員でもある。私の社員をそれだけのことに巻き込むわけにはいかん』

 

「まさか、それだけのはずが無いでしょう。デュノア社が潰れれば世界のシェア率は大きく動く。それは貴方達の会社にも当てはまることでしょう? それに私達『更識』とも少なくともより良い関係は築けると思うわよ?」

 

……そう来たか。話を聞いて俺は内心で下を巻く。交渉が上手い、そして交渉材料が会社としても魅力的である。

社長から更識のことを教えてもらったのだ。だから更識の力を知っている者としては思った以上の提案だ。

 

『…………良いだろう。その依頼は受けよう。凛、お前はどうだ?』

 

しばらく考えた末、社長から出た言葉はイエス。

 

「社長がそう言ったんだ。社員の俺はそれに従うさ」

 

俺もそれにイエスと言う。

こうなればしょうがない。ならば俺は自分のやれることをやるだけだ。

 

「……それじゃあ」

 

アリシアが確認するように聞いてくる。

 

「ああ、俺、星野凛は『イノケンティウス社』とともにデュノア社を潰そう」

 

『――Warfare(戦争だ)』

 

携帯越しに物騒なことを呟くなよ社長……。

 

「アリシアさん、貴方をしばらくは私達で身柄を拘束します」

 

「え!?」

 

デュノアが驚き、させまいと前に踊り出る。

 

「狙われる身なんだから拘束して身柄を隠すのは当たり前だろ」

 

俺はデュノアにそう言って楯無の方を見る。

 

「やるにはやるが、ならしっかり対処してくれよ? 裏も表も」

 

「そこはお姉さんにまっかせなさ~い! バッチリやっておくわよ!」

 

ブイ♪ と手をチョキの形にして俺の方へ向けてくる……うざい。

 

 

「ちょっと? うざいとかお姉さん傷つくわよ?」

 

おまけに読心術とはさらにうざいな。

 

「ひどっ!?」

 

――PPPPPPPPPPPP!

 

おもむろに鳴る携帯の着信音。それは机の上に置かれたデュノアのものからだった。

 

デュノアが顔色をなくす。

 

「――社長、ちょっと盛大にやってくるわ」

 

『あまりやり過ぎないでくよ。軍隊など呼ばれたら洒落にならんからな』

 

社長から許可が出たので分かってるよ、とだけいい楯無の携帯を置き、デュノアの携帯へと持ちかえる。

 

「皆、喋るなよ」

 

そういってから通話ボタンを押した。

 

「やっと繋がったか、待たせおって、そっちはどうなっている、ちゃんと始末出来たのか? 送った別動隊からも連絡は途絶えている、どうなっているんだ」

 

フランス語で喋られても何いってるかほとんど分からんが、恐らく俺のことを始末したかどうか聞いてるんだろう。

 

「――Hello. No, whether it is the better of France now you said that Good evening?(こんにちは。いや、今フランスの方はこんばんわと言った方が良いのか?)」

 

俺は英語で喋る。相手が英語を話せるなら少しでも会話が成立できるからな。 現在の日本の時刻は午前10時35分。フランスでは誤差が-8時間、よって今あっちは午前1時35分ほどだろう。

 

「……But who differents(何者だ、貴様)」

 

お、どうやらご丁寧に英語を使つかってくれたぞ、これは助かる。

 

「Hey, it is not curving. Did you forget the other phone was partner? Indeed's France. Hard whether as head also French bread?(おいおい、そりゃないぜ。もう電話した相手を忘れたか? 流石はフランスだ。頭もフランスパンのように硬いのか?)」

 

「The differents……you are listening who do!(貴様……何者だと聞いている!)」

 

ありゃ、挑発は効果なしか、こういう手合いなら聞くと思ったんだが。

 

「It's just a Boondock Saints. I for reap you of life.(ただの処刑人だよ。お前の命を刈り取るためのな)」

 

「What――(何?)」

 

「Material to judge you I'm complete. Excuse is useless.(お前を裁く材料は揃ってるんだ。言い訳は無駄だぞ)」

 

「Ha. He even if such a threat is good for me?(はっ、私にそんな脅しが効くとでも?)」

 

鼻で笑い、小馬鹿にした声。

 

「Do not believe believe It's you of selfish. Well, you's where you have to climb the stairs to now guillotine. Close the day to put his head on the guillotine.(信じる信じないはお前の勝手だ。さて、お前は今断頭台に続く階段を登っているところだ。断頭台に頭をのせる日は近いぞ)」

 

相手の言葉を聞かずに電話を切る。

 

「……やり過ぎよ、巻き込んでどうするの」

 

楯無は先ほど繰り広げた言葉に呆れを見せていた。

「今更ですよ楯無さん」

 

そういって俺はある人物に声をかける。

 

「さて、こうなったからにはお前も手伝って貰うぞ――一夏」

 

そう、一夏に手伝ってもらう。

 

「お、俺!? でも俺あんまり力になれないと思うぞ?」

 

「何、簡単だ。お前は俺たちが帰ってくるまでデュノアを守ればいいだけだ」

 

「ぼ、僕も狙われてるの!?」

 

デュノアが俺のことばに反応する。

 

「さっきの言葉のせいでより狙われるはめになるかもね」

 

まったく、と楯無は呟きながらデュノアに言う。

デュノアは俺のことを恨みがましい目で睨み付ける。

 

「遅かれ早かれお前は狙われるはめになってただろうよ。それがはやまって色々と厄介事が付いてきただけだ」

 

「――さて確認だ。全員聞いてくれ。社長も」

 

『ああ』

 

「俺たちが帰ってくるまでにデュノア社社長、夫人両名を連れて帰ってこれたら俺らの勝ち。逆に逃げられてシャルロット、アリシア両名が死んだら俺らの負け。分かったか?」

 

俺のかみ砕いた説明に納得し気を引き締める一夏たち。

 

「でもシャルも狙われるのならアリシアさんとおなじように匿えばいいんじゃないか?」

 

一夏が楯無や俺に質問を投げかけてくる。

 

「まあ確かにね。でもこれには理由があるのよ。ひとつは敵の分断。もうひとつはひとりが襲撃されてもひとりは確実に逃げれるように」

 

そうでしょ? と俺に確認してくる楯無、そうだがもうひとつだけ理由がある。

 

「そうだ。ただもうひとつだけ理由がある。シャルロットを学園に残す理由は安全だからだ」

 

「安全?」

 

「ああ、楯無の方は分からんが、ここの教職員はISの熟練者たちだろ? それに織斑先生もいる、何とか俺が行くまで会長と一緒にかけあってみるさ」

 

「でもさっきだって撃たれたりしたじゃないか。それでも安全なのか? 危なくないか?」

 

「――それについては私が話すわ」

 

楯無が会話に割り込み一夏に説明する。

 

「今日襲撃されたのは警戒レベルが0(ゼロ)だったからよ。つまりは無警戒。この警戒レベルをあげると生徒たちを危険に晒さないように校舎や寮を覆うように特殊なシールドバリアを張れるようになっているのよ。まあこのシールドを展開するにはどーしても教師に事情を報告しなきゃならないのよね、そこで――」

 

「シャルロットちゃん、あなたの本当のことを話さしてもらうわね」

 

「……私のことですか?」

 

「大丈夫よ、そんな根掘り葉掘り言うってんじゃなくてあなたは女の子でしたーとかそんなことよ。でも今までの事があるから処罰は免れないわ」

 

「……はい、分かりました」

 

決意したようにシャルロットは楯無に答える。

 

「よろしい、シャルロットちゃんとアリシアさんの処罰のことはこれ件が片付いてから報告するわ。じゃあ私は諸々の仕事をしなきゃいけないからもう行くわね」

 

「おい待て、携帯」

 

「通話中でしょ? 後でちゃんと返してくれればいいわ」

 

じゃあね、そう言い残して生徒会長、更識楯無は去っていった。

 

「社長、こっちもやらなきゃいけないことがあるからとっとと作戦前会議(ブリーフィング)を済ませよう」

 

『ああ、そうだな、こっちも色々と準備や招集をしなければならんからな、忙しくなりそうだ』

 

「まったくだ、近々学年別トーナメントがあるってのに」

 

『それは災難だったな』

 

ぐたぐだいっても始まらねえや。

 

「移動は、集合場所、作戦開始日時は」

 

『移動は目立つと不味いからな。飛行機、着いたら徒歩だな。集合場所、日時は追々伝える』

 

「分かった。あと聞いていたと思うが、ハンティング以外の道具も揃えていてくれ」

 

『まかせろ』

 

「俺は携帯が壊されたから手に入ってからもう一度連絡する」

 

分かったとだけ言ったあと、向こうから切られた。

 

さて、忙しくなりそうだ。まずは織斑先生に話を通さないとな、すげぇ怒られそうだ。

 

「星野」

 

「ん? どうした一夏」

 

一夏に話しかけられた。何か申し訳ないといった顔をしている。

 

「なんか、俺のせいですまん」

 

「気にすんな、始まったものは仕方がない――それより」

 

俺は一夏の方を向き、両肩をガッシリつかんで一夏に少々渇をいれてやる。

 

「大丈夫だほら、もしものことなんてあんまねぇよ!あったとしたらお前がシャルロットを守ってやれ! 男をみせろよ一夏!」

 

バンバンと肩を叩く。

痛そうにしているが先ほどの表情はもう見受けられない。

 

「よし! もう大丈夫そうだな、なら俺はもう行くぜ、任せた」

 

「あぁ! 任せろ!」

 

互いの拳を軽くつけて離す。何だかどこかの青春マンガのようだとすこし照れ臭くなる。

 

そうして生徒会室を出て準備と織斑先生の元に向かう。

 

 

――さぁ、久々の仕事だ。

 

歩きながら、しかし纏う雰囲気は先ほどとは明らかに違った。

 

「――さぁ、久々の仕事だ」

 

少年は歩きながら昔の勘を取り戻すように体をほぐしていた。




前書きは暗くなってしまったのであとがきくらいは明るくしたい。

今年も残すところ後少し。
皆さんはどう年を明けますか?

作者は恒例のガキの使いを見て、年越しそばを食べてグダグダしながら年を明けます(笑)

では皆様、良いお年を
(^-^)ノシ
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