書き溜めていたものを一気にあげようとしたら文字数がオーバーしていまい、中途半端になってしまいますが分けました。
それでは前編、どうぞ。
いや~、面白かったね、あれは。
凛は放課後となった教室で帰りの支度を整えている時に、今日の出来事を思い出していた。
――――クラスの女子が席につき、一夏が帰ってきて席に座る。それから授業開始の鐘が鳴り、遅れて女子が帰ってきた。なんかあの女子が一夏を睨んでいるように見えた。あ、女子の後ろに織斑先生が。
パァンッ!
「とっとと席に着け、篠ノ之」
「……はい、織斑先生」
いや、音すごい。首席簿から出る音じゃないからねアレ。
あと篠ノ之というらしいな。今度誰かに名前を教えてもらおう、呼びづらい。
「――であるからして、ISの基本的な運用は、現時点で国家の認証が必要であり、逸脱したIS運用をした場合は――――」
それから授業が始まり、すらすらと教科書を読んでいく山田先生。
いや、入学前に渡された分厚い本読んでて良かったわ。
あれ読んでなきゃこんなん分かるはずねぇよ。今でもついていくのがギリギリだし。
ふと、一夏の方を見ると、教科書とにらめっこしていた。心なしか顔が青い気がする。
(?なんだ、トイレか?)
「織斑君、星野君、何かわからないところはありますか?」
「あ、えっと……」
一夏はもう一度教科書に視線を落とす。
「先生!」
「はい、織斑くん!」
「ほとんど全部わかりません!」
「え……?ぜ、全部、ですか…………?」
山田先生が困り顔になってる。織斑先生は……若干キレてるように見える。
「え、えっと……星野君は分かりますか?」
「何とかですが、分かります」
一夏は「マジでか……」と小声で呟いていた。
おおかた、厚すぎて読む気になれなかったんだろうな。
「…………織斑、入学前に渡した参考書は読んだか?」
教室の端で授業を見ていた織斑先生が一夏に訊く。
「……あ、古い電話帳と間違えて捨てました」
――パァンッ!
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」
「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」
「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」
「やれと言っている」
「…………はい。やります」
訂正、こいつアホだ。
――――てなことがあったからな。 正直、思い出して笑いをこらえるのに必死だった。
さあ家に帰ろうかなと廊下に出たら、声をかけられた。
「あ、星野く~ん、ちょっとまって~」
誰かと思えば、副担任の山田先生だった。
ちなみにクラスのやつから先生の名前も教えてもらった。
「山田先生、どうしたんですか?」
たったったっ、と小走りで来るのでその主張激しい胸がさらに激しく――ゲフンゲフン。
「今から帰るところですか?」
「えぇ、まぁ」
「良かった、間に合って……えっと、基本的IS学園の生徒は全寮制で三年間は寮で暮らすことになってるんですよ」
なん……だと?
「本来は一週間は自宅から通ってもらうのですが、理事長がそれを変更したらしいんです。それでですね、今から星野君に住んでもらう寮に案内するんですが、落ち着いて聞いてくださいね?」
(何? そんなにひどいことをいわれるの俺)
「星野君は一人部屋になります。どういうわけか相手がとれなくて……」
「いいや、大丈夫ですよ、一人暮らしで馴れてますから」
だからそんな申し訳なさそうな顔をしないでほしい。なんかこっちまでも申し訳なくなる。
「そう、ですか?」
「はい、ですが、荷物を持ってきていないので一旦取りに――」
「その必要はない。すでにお前の荷物は手配しておいた」
後ろから会話に割って入ってきたのは織斑千冬先生だった。
「織斑先生、手配って持ってきたんですか、俺の家から、荷物を」
「いや、私ではない。お前の方の者達だそうだ」
プライバシーもあったもんじゃねぇな、と思ったが、この人、調べたな。
「まったく、それはちゃんと報告せんか馬鹿者。」
そこまで知っているなら。完璧にそうだな。
「あの~織斑先生?どういうことです?星野君がどうしたんですか?」
山田だけが話についていけてなかった。
「ふむ、星野凛、PMC『イノケンティウス』社の前部隊『Red Eye's Eagle』に所属。それからはISの開発、製造に変わり、そこから武器、ISの修理、追加などをしている――といったところか。 それに首のチョーカーは『IS』だそうだな?」
…………すげぇ、調べられてるんだけど、チョーカーのことまで知られてんの?
「はぁ、そうですね、すいません」
「あとで職員室に来い」
まぁ、隠してた俺が悪いからこれは素直に従っておくか。
山田先生は目が点になるくらい驚いているよ。
「それで荷物はいつ届くんですか?」
織斑先生は腕時計を確認してから告げる。
「そろそろだ、だがお前は自分の部屋を知らんだろう、山田先生」
呼ばれた山田先生ははっと気がつき、大きく返事をしてから俺にカギを渡してきた。
「星野君の住む1052号室のカギです」
「荷物はIS学園の前に届くそうだ」
俺は礼を言って荷物を取りに外に出た。
外で待っていると一台の宅配用トラックが止まった。運転席から出てきたのは俺の知り合いだった。
「トムじゃねーか!久し振りだなおい!」
「よう星野、お前のためにわざわざ日本に来てやったぜ」
「おいおい、俺を忘れんなよ」
「ジョンも来てたのか!」
トムとジョンと握手を交わす。
「お前も大変な場所に入れられたな、異性しかいない環境ってのもキツいだろうしな」
「それはいうな、元は社長(ジジィ)のせいだ」
「違ぇねぇな」
三人でそんなとりとめのない会話で笑い合う。
「おっと、そうだった。お前の荷物はこの中だ」
目的を思い出したかのように言い、ゴンゴンと荷台を叩く。
「あぁ、ありがとよ」
礼を言って荷台の扉を開くそこには数個の段ボール箱と拳銃が入るサイズの二つの黒い『ガンケース』が積まれていた。
「…………持ってきてたんだな」
俺は、多分今なんともいえない表情をしていると思う。
「……あぁ、お前が大切にしてたものだからな」
知っているのか、トムは顔に影を落として言う。
忘れることができない記憶――それがこのふたつには詰まっている。
「いや、なかったら取りに帰ろうと思ってたんだよ、助かった」
「あぁ、そういってくれると嬉しいね」
それから荷物を運ぶのを手伝ってもらって早く終えることができた。
とりあえずケースを机の上に置いてベッドに横たわる。
帰り際にふたりは――
「後でちゃんと仕事代請求してやるからな」
「あ、それ俺も請求するわ。疲れたし」
「疲れたは関係ねぇだろ」
――といってきたことを思い出す。
どうぜ冗談のつもりで言ったのだろうが、礼も含めてちゃんと振り込んでおいてやるよ、と心の中でもう一度二人に礼を言う凛。
――予談だが、振り込まれていたことと、その金額にふたりは顔を見合わせたのは言うまでもない。
ベッド横たわり、うとうとしかけているとき急に起き上がった。
(殺気?)
凛は殺気を感じて起きたのだった。
自分に向けられているのではないが、少し気になったので見に行ってみる。
スルスルと音をたてないように移動すると人が一室の前に集まっていた。
見ると、部屋の扉に突いたような穴が複数空いていた。
「何があったんだ?」
情報がないと何も分からないので、聞いてみる。
「あ、星野君、それがね織斑君と同室の篠ノ之さんが何かやってるみたいだよ」
ふむ、目的は不明、なら中を見てみるか。
「それより~、ほっし~はどこに住んでるの~」
入ろうとしたら、のほほんさんこと、布仏本音に止められた。
「あ、私も気になってた!どこどこ~」
のほほんの一言を皮切りに、他の女子達も同じことを聞いてくる。
俺は短く「1052号室だ」と言い、女子の間を抜けて部屋へと入る。
目にしたのは、一夏の頭めがけて木刀をふりかぶる女子。
このままでは危ないと思い、素早く体を動かして近づき、なんとか降り下ろされる直前で阻止する。
「なっ!?」
「星野!?」
二人は突然の第三者の出現に驚いていた。
「お前な、女子でも木刀なんて硬いものを振りおろしたら最悪、人が死ぬぞ」
後編へ続きます。