IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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事後報告、みたいな話です。

それでは、どうぞ。


二十三話 『罪、そして結果』

 

 

 

 

 

 

 

――コンコン。

 

控えめなノックをする。

 

「はい、何ですか――って星野君!?」

 

俺がいることにすごく驚いている簪。

 

「久しぶり、早速で悪いが鍵ってある?」

 

挨拶もそこそこに、俺は自分の部屋の鍵の所在を聞く。

 

「いや、鍵は本音が持っているんだけど今はいなくて――ていうかよく私たちの部屋が分かったね」

 

なんということだろうか、鍵が無いとボストンバッグを置けない……。

 

「あぁ、それならさっき聞いてまわった」

 

「なるほど」

 

ホント焦ったよ、帰ってきて、さぁ鍵返してもらおうとしたらどこにいるか分からないんだから。おかげで少し時間を食ってしまった。

 

「それでのほほんさんはどこに?」

 

すぐに帰ってくるだろうか?

 

「……さぁ? 分からないわ、私が部屋に来たときにはいなかったから」

 

……鍵返してもらうの、絶望的じゃないですか。

 

「んー……なら、ちょっと物を置かせてもらえないかな? そんなに場所はとらないし、多分すぐに来るから」

 

社長や一夏、織斑先生などを待たせているのだ。少し乗り気ではないが仕方がない。そういうと簪は少し考えるような仕草をしてから口を開く。

 

「いいよ、それくらいならお安いご用」

 

「ありがとう、なら少しお邪魔するよ」

 

礼を言ってすこし部屋にいれてもらった。

 

そして部屋の角(すみ)にボストンバッグを置く。

これには『ガンケース』も二人に『お守り』と言った物も入っている。

それとは別にもうひとつ見られたくない物も入っている。

 

「無いとは思うが勝手に見ないでくれよな、頼む。のほほんさんにも言っておいてくれ」

 

一応釘を刺しておく。

 

「私はそんなことしないわよ。本音にも言っておくわ」

 

「ありがとう」

 

また礼を言ってから部屋を出る。そして皆の元に急ぐ。

 

 

 

 

 

「さて、どうするかな?」

 

あの後、織斑先生が便宜をはかってくれ、生徒会室に移動した。

 

更識楯無がいないので話せる話も出来ないのだ。

 

「しょうがねぇ、電話するか――」

 

数日前に新調した携帯を取り出し番号を押して通話ボタンを押して耳に当てる。

数コールほどでかかる、すると生徒会室のドアが開く音がした。

 

『――何で私の番号を知ってるのよあなたは』

 

すさまじいステレオ感、すぐに振り替えると入り口に携帯を手にした楯無がいた。

 

「それは前に借りた携帯から」

 

「淑女(レディ)の個人情報を見るものではないわよ」

 

「そりゃあごもっともで」

 

素直に謝る。この人には口喧嘩で勝てる気がしないからだ。

 

「さて、役者が全員揃った所で、始めますか」

 

俺が早速切りだす。数人が何を? といった顔をしているので簡単に説明することにした。

 

「この二人の処罰、ならびにシャルル――いや、シャルロット・デュノアの処遇についてって所か?」

 

椅子に縛り、動きを取れなくし、頭部に麻袋を被せてある図ってのはすごくシュールである。どこかの拉致られた人質みたいである。

それが男女二人でしかも暗さの恐怖からか抵抗か、ガタガタと動いているのでさらに珍妙さを際立たせている。

 

「まぁ、シャルロットちゃんのことは一先ず後回しにしてそっちから片付けましょう」

 

楯無が織斑先生に承諾を求め、先生もそれに同意する。

 

それを見て俺は二人の麻袋を取ってやる。といっても、口には喋れないように猿轡(さるぐつわ)をしているので呻くことしかできないが。

 

「ジョン、ちょっと猿轡(さるぐつわ)外すの手伝ってくれ」

 

「おう」

 

二人いっぺんには外せないのでジョンに手伝ってもらう。

 

「いいか? これからお前らの口を塞いでるのを取ってやる、騒ぐなよ?」

 

二人にそう言ってからジョンに合図して取る。

すると二人はまずむせた。そして呼吸を整えてから男の方――ランスロット・デュノアが唾を飛ばす勢いでこちらに向かって罵倒してくる。

 

「このクソガキがっ! 私を誰だと思っている! 早く私を解放しろ、こんなことをしてただで済むと思っているのか糞が!!」

 

……驚いたな、まだこんなに余力が残っているとは。それに日本語喋れんのかよ、あの時普通に日本語で話せば良かったじゃねえか。

 

「聞いているのかクソガキ! さっさと――ぐうっ!?」

 

 

「うるせえっての、周りに聞こえたらどうすんだ」

 

喚くランスロットを黙らせるために殴る。それなりに強く殴ったのにまだわめくわめく。

 

「貴様っ! 貴様だけは許さん! 私をここまで侮辱しおって! 絶対に後悔させてやるぞ小僧ッ!!」

 

いい加減、イラッとしたのでランスロットに向かってローリングソバットを放つ。

 

「ぐうっっ!?」

 

椅子に座った状態で縛られているため身動きが取れず、凛の振り抜いた右足の踵が顔面を捉える。

当然、ガードなどできるはずもなく顔面にぶち当たり、床を少し滑ってから止まる。

俺は近付いて倒れているランスロットを起こしてやる。顔はもちろん血が出ていた。

 

「どうだ? これでもさっきと同じことが言えるか? 今、自分が置かれている立場を理解したか?」

 

「ぐぅぅぅぅっ、き、貴様……」

 

呻くだけで次の言葉を発っさない、どうやら理解してくれたようだ。

 

「あ、あなた! しっかり!」

 

と、そこに口を出してくる女性特有の少々トーンの高い声。それは、スノウ・デュノア夫人だった。

 

 

「お前も黙れよ、殴るとこっちも痛いんだ」

 

その時、後ろから肩を叩かれた。

 

「凛、ちょっとやりすぎだ。話し合いができなくなるだろう」

 

振り向くとキーファー社長だった。

 

「……わりぃ、やりすぎた」

 

そういって二人から離れる。お馴染み『Red Eye's Eagle』のメンバーは苦笑いを浮かべ、一夏、シャルロット、織斑先生、楯無はひきつった顔をしていた。

 

「……話を戻すぞ」

 

「相手にローリングソバット食らわせた人が何飄々と話を戻そうとしてるのよ」

 

ぐっ……仕方がなかったんだ、あまりにもイラついたからやった、後悔はしていない。むしろ殴れてちょっとスッキリした。

 

――おおっと、また話がそれたな。

 

「とりあえず、話を戻すぞ」

 

「楯無会長、アリシア・ルイスから言質取りました?」

 

楯無会長がいなくなる前、俺が飛び立つ一日前に言っておいたことだ。

 

「もちろん、バッチリよ」

 

「よし、なら次は――デュノア、お前だ」

 

「えっ!? な何が!?」

 

「何がってお前、デュノア社の内部の話だろうが」

 

聞いていなかったのか? だとしたらもっかい言ったほうが良いのか?

 

だがそれは杞憂に終わってくれたようで、つらつらと話始めた。

デュノア社にされたことや今までの仕打ちを。

途中、ランスロットが口をはさんできたのでO・HA・NA・SIして黙らせた。

 

 

「――十分ね、これなら」

 

そういって楯無さんが取り出したのは小型の録音機。恐らく先程の会話を録音していたのだろう。

 

「ふむ、確かに先ほどのことが全て本当なら、起訴しても十分に勝てるだろう」

 

しかし、と聞いていた織斑先生は言葉を一旦区切ってから告げる。

 

「委員会(うえ)が重い腰を上げるかどうかだな」

 

織斑先生は少々、苦い顔つきになる。どうやらそれほど上役は面倒事が嫌いらしい。

 

「それに関してはすでに手は打ってありますよ、織斑先生」

 

すると楯無さんが織斑先生にいう。

 

「ちょっと手荒ですがあれなら動いてくれると思います。それにこの録音したデータはさっき送りましたから」

 

一体いつの間に送ったのだろうか、織斑先生も唖然としている。

流石は更識、といったところだろうか、手際の良さは見習いたくなるほど速いな。

 

「そうか、それならばじきに通達が来るだろうな。だがフランス政府がどう動くか」

 

それに関しては問題ないだろうと俺は思っている。

デュノア社は第二世代型の量産化止まりでいつまで経っても良い功績を残せていない、いくらシェアが高くともフランス政府としては金を食い潰す存在だろう。それを国を挙げて守るほどのものだとは思わない。それに楯無会長が裏で何かやるだろう、俺達がこの依頼を受ける前にあれだけ言っていたのだ、そうでなくてはこちらは会社としては損害の方が大きいからな。

 

「――楯無会長がやってくれてるなら安心そうだ。なら次はこの二人を『どうするか?』だ」

 

俺がそう言うと二人はギョッとして俺のことを見た。

 

「ち、ちょっと待って、私は関係無いわよ! この男が勝手にやっただけで――」

 

「貴様、この私を売る気か!」

 

「うるさいわよ! 元はといえばアンタが悪いんでしょうが!」

 

「好き放題いいおってこの売女がっ!」

 

「はいは~い、醜くてくだらない夫婦喧嘩はよそでやるか犬に食わせてねー」

 

パンパンと手を叩いて言い争っている二人に言う。

 

「私は関係無いんです、だから見逃してください!」

 

「関係ない、ねぇ……」

 

「そうです、だから――」

 

息を吸うように嘘を吐くとはすごいな。

 

「――社長、例の紙、ある?」

 

「ん? これか?」

 

社長が取り出したのは数枚の束ねられた紙、それを受け取ってスノウ夫人に見せる。すると顔色を目まぐるしく変化させた。

 

「――こ、これは!」

 

「これでも自分は関係ないと?」

 

見せたのはデュノア社の膨大な金の横領明細と最近過激化しつつある女尊男卑についてのデモや活動などを書いたもの。

 

「デュノア社のあからさまな金の異常な流れ、それにデモ活動なんてやっていてまだ言い逃れか?」

 

そこまでいうと発狂したように騒ぎ始めた。

口から出る言葉は男を卑下する内容や、はたまた罵詈雑言の嵐。聞いていると耳を塞ぎたくなる。

なので再び猿轡(さるぐつわ)を噛ませ、喋れなくする。

 

「……スゴかったわね」

 

耳を塞いでいた楯無さんが呟く。さすがの楯無さんでも顔がひきつっていた。 他の面子も何とも言えない表情をしていた。

 

「……今のはともかく、この件については理事長に話を通してから委員会(うえ)にいくだろう、それにフランス政府にも。そうなればすぐにでもどうなるかが決まるだろう」

 

顔をしかめながら坦々と告げる織斑先生。そして理事長に報告するためか、先程の書類を持って出ていった。

 

「これで二人の処遇が決まったとして……デュノア、ちょっと来い」

 

楯無さんにも予備としてコピーした書類を渡してから一夏にくっついているデュノアを呼ぶ。

すると渋々ながらもこっちに来てくれたので話を始める。

 

「お前、この二人をどうしたい?」

 

「えっ? ど、どうって――?」

 

いまいち意味が分かっていないようなので具体的に言ってやる。

 

「何、簡単な話だ、法の元で裁かれるのを見てるか、ここで、自分の手で始末するか――自分でって言うんなら手を貸すってことだけだ」

 

説明し終えてから俺は制服の内ポケットから小型の拳銃を取り出す。

俗にリボルバーとよばれる銃――S&W M36 チーフスペシャルをデュノアの前に差し出す。

 

小型リボルバーの代名詞であり、半世紀たった今でも隠し持てる小型拳銃として絶大なる支持を得ている。

M36の特徴は、警察用拳銃として携行性の向上を図るために倉弾数を減らして小型化に成功し、警察官が常に携えたり、いざという時に使用するに適したサイズと軽さになったことだ。

 

デュノアは目の前に出された鉄の塊に少したじろぐ。するとそこに楯無会長が止めに入ってきた。

 

「星野君、何考えているのよ、一般人に殺人しろっていうの」

 

少し怒ったような口調でこちらに言ってくるが社長が会長を制してくれた。

 

「さぁ、どうする?」

 

引き金はまだ引かず、握把(グリップ)をデュノアの方に向けて返事を待つ。

 

「うぅ~……い、一夏ぁ……」

 

不安そうな顔で、なんと一夏に助けを求めるデュノア。

 

「お前の意思で決めろ、一夏に意見を求めるな」

 

と俺は言うがなおも一夏を見て不安そうにしているのを見て、一夏が口を開いた。

 

「シャルル、『撃つ』かどうかはシャルル自身が決めることだから俺は何も言えないよ」

 

一夏がデュノアにそう告げると決心したように握把(グリップ)を握った。

俺はそれにあわせてM36の撃鉄(ハンマー)を起こした。ダブルアクションでもあるが、起こした方がだいぶ引きやすいだろう。

 

「ひぃ、く、くるなっ、来るなぁっ!」

 

身動きが取れないのでよってくるデュノアには塞がれていない口で反論するしかない。夫人のほうもたいそう怯えている。

 

そして第一対象であるランスロット・デュノアの額に銃口を向ける。

 

「――じゃあね」

 

デュノアはそう言って迷いなく引き金を――引いた。

 

――――パンッ。

 

 

「ひィ……ひィ……ひィ……」

 

あまりの恐怖で呼吸が定まらなくなったランスロット、まぁ無理もないか。

 

「……あれ?」

 

異変に気付いたデュノア、再び引き金を引くが、音が鳴るだけで弾丸が発車されていない。

 

「……空砲だったのね」

 

それを見てホッとした表情を浮かべる楯無さん。

 

「流石に一般人に実砲を装填(入れた)銃なんて危なくて持たせられませんから」

 

楯無さんに言ってから銃を取り上げる。

すると恨みがましい目でこちらを睨んできた。

 

「何で撃たせてくれなかったのさ」

 

「理由はさっき言った通りだ。それにもう『撃った』じゃないか、それでいいだろ」

 

なおも不満そうな顔だったが無視して楯無さんに話す。

 

「会長、話も纏まったことですし身柄を移動させましょう」

 

「えぇ、そうね。分かったわ」

 

楯無さんも社長たちも了承してくれたので二人を縛りなおして移動させる。

 

「凛、お前は今日はもう休んでいいぞ。これの移動は会長さんと私たちで行(おこな)っておく」

 

と、社長が言ってきた。俺も手伝うと食い下がったが、断られてしまった。

 

その場に残った俺と一夏とデュノア。

 

「――そうだ、星野、言いたいことがあるんだ」

 

しばらくして見計らったかのように一夏が話しかけてきた。

 

「ん、何だ?

 

俺はM36を再び懐にしまいながら答える。

 

「ありがとな、手伝ってくれて。俺なんてなにもしてないのに」

 

申し訳ない、といった風に頭を下げて謝ってくる

 

「気にすんな、それにちゃんと守ったじゃねぇか、身を呈してまで。だから何も謝ることはねぇって」

 

一夏に言ってから生徒会室を出ようと扉を開ける。

「星野――来月にある学年別トーナメントで勝ったらひとつ、聞いてもいいか?」

 

「おう、良いぜ」

 

最後にそう言ってから一夏達と別れた。

 

荷物を取りに簪たちのいる部屋に行く廊下を歩いている最中、俺は考え事をしていた。

 

(――デュノアの様子がおかしい)

 

何でも一夏の判断を聞こうとしたり、常に一夏にくっついている。

 

一夏の事が好きだからこその行動なのかは分からんが、ヤバイのはその次だ。

 

先程の、ランスロットを銃で射殺しようとしたこと。

 

一夏が言ったらすぐに撃ったのには少し驚いた。

一夏に何でも許可を求めようとしてる。

 

――依存か?

 

何にせよいずれアイツは何かをしでかすな、それも近い内に、俺の勘がそう言っている。

 

一応、警戒するに越したことはない。

 

――一夏にも一応、言っておくか。

 

バッグを取りに行く間、そんなことを考えていた。

 

――後日談だが、これから一週間後にフランス政府からシャルロット・デュノア、アリシア・ルイス(旧姓・デュノア)の両名に謝罪文章が送られた。

および、男性操縦者の殺人未遂の容疑で「懲役7年と保護観察・情状酌量の余地あり」 を言い渡され、デュノアはIS学園を卒業後に収監となり、アリシアは一時的に身柄を拘束し、デュノアと同時期に収監されるらしい。

色々とあの更識楯無がやってくれたことがありありと見てとれる、本当に感謝しなくちゃな。

 

そして今回の発端となったデュノア社は解体、倒産となった。

そしてランスロット・デュノア、スノウ・デュノア(旧姓・マイリス)の両名は法に則り、無期懲役の有罪判決が下され、身柄を拘束、すぐさま収監となったらしい。

 

そのおかげか今まで注目されていなかった俺ら『イノケンティウス社』が一気に世界シェア率が上がり、利益が上がったのも楯無会長のおかげかもしれない…………何か礼でもしないとな。

 

また別のことで頭を悩ませるのも全くの余談である。

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