IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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そろそろ閑話は終わります。
投稿が遅れて申し訳ございません。


閑話 『岐路』

 

 

 

 

 

 

 

『――また失敗か。なら次に『B-88』に12と26番の投薬をしろ』

 

あれから僕たちは男女に別けられ、男子は訓練と『IS』を乗れるようにする実験を、女子にはそのまま訓練とISを乗りこなす訓練をやっていた。

 

どうやらこのIS、女性にしか動かせないようで僕を含めて男子は乗れるように実験を繰り返されていた。

投薬から電流、身体の内部(なか)を弄られたり、とにかくありとあらゆることをされてると思う。そのなかで数人は実験で廃人となったり、死んでしまうものもいた。

 

――コツコツコツ。

 

誰かが近付いてきた。それは白衣を着ていておじさんといった風貌をしていた。

おじさんは青色と薄緑色の液体のはいった注射器を僕に射して中身をゆっくりと入れていく。

一本目、薄緑色の液体をすべて入れられた直後、激痛が全身を襲った。

反射的にもがこうとするが、一体いつつけられたのか手足などが拘束されていた。

 

「――――――!」

 

叫びたくても喉が潰されていれば叫ぶこともできない。

前に身体に入れられたナノマシンは死んでいるから機能などしていない。

前に投薬された時、薬を見てみたら『Nano・Obliterate(ナノ・アブリタレイト)』と書かれていたものを注射されたときから傷が治らないのでおそらくそれだろう。

 

その状態で戦闘訓練をやらされ、また実験をやられる。

正直、僕や男子達はやられていたことをよく覚えていないと思う。

僕自身、何をやられていたかまったく分からない。

 

そんなことがいつまでも続き、身心ともにボロボロだった。何より一番ショックだったのがボーデヴィッヒや他の家族が別の場所に移されたことだ。

ボーデヴィッヒは泣きながら離れたくないと言っていたが、ラウラやイリアが「はなればなれになってもいつかきっと、私たちなら出会えるわ。だから大丈夫よ」、といってなだめてボーデヴィッヒが移される前に元気づけていた。

 

 

戦火がこちらまでくるらしいからそれを止めてこい、ということで戦場に僕だけ駆り出された。

 

 

 

 

 

 

「……ひゅー、ひゅー、ひゅー………………」

 

戦場に出て、何人か撃っていたら兵に撃たれた。

元々、実験のせいで動きは鈍く、ナノマシンもなくなっているので痛い。血が止まらない。それに喉がつぶれているので声が出せない。これはちょっとつらい。

 

そこからかろうじて逃げられた僕は血を舐めて地面に垂らさないように廃墟の中に入った。

 

幸いなことに、ここの中には崩れかかった本棚や割れた皿が散乱していた。

こういった場所には布などがある可能性が高いのだ。

 

「(ここは……ない。ここも……ない)」

 

といってもそうそうあるわけでもない。

 

「(ここは…………ん?)」

 

すると布とは違うが別の物を見つけた。古いカメラだった。

 

「(カメラか……)」

 

僕はいらないとばかりに放ろうとした時、ある考えが浮かんだ。

そして少々手こずりながらも自分の肩にかけていた予備のバッグへと入れる。

このカメラであることをしようと思うと、撃たれた痛みがちょっとは軽くなった。

 

それから少し探していると幸運なことに大きな布きれを見つけることができたので少しだけ使って血を拭き、傷口を縛った。痛かった。

 

 

 

 

 

それから何発か被弾しながらも、おおもととなっていた兵器と兵士を排除して施設に帰った。

 

血を流しすぎたせいか、実験のせいか僕は施設に着くと倒れた。

遠のく意識の中でたくさんの足音が近づいてくるのが聞こえた。

 

「――う゛っ!」

 

怪我した場所を刺激されたような激痛を感じ、意識が覚醒する。

 

「あ、ごめんなさい、痛かった?」

 

独房のような壁をそのまま削って造った部屋に最低限のものを置いたような場所に僕はいた。

横にはおそらく僕を看病でもしていたのかラウラがいた。

 

「お、目覚めた、大丈夫?」

 

ラウラの後ろにはイリアがいて、心配そうに聞いてきた。

 

僕は大丈夫だ、と言ってからここはどこなのかを聞くとここは余り部屋らしい。

あの後、気を失った僕は二、三種類投薬されてからここに放り込まれたらしい。

だが傷がまだあることや喉がうまく喋れないからナノマシンではないだろう。

(そうなんだ……教えてくれてありがとう)

 

僕は喋れないのでラウラの手のひらに字を指で書いて伝える。

 

「気にしなくていいわ。それよりも今は休んでいなさい、ひどい怪我よ」

 

上半身を起こしていた僕を横にさせて言う。

 

「…………お姉ちゃん」

 

「えぇ……分かっているわ。もうダメね。今日、行いましょう、材料も揃っていることだし」

 

ラウラとイリアは小さな声で会話していたため、近くにいた僕でもよく聞き取れなかった。

 

それから安静に、といってから二人静かに出ていった。

 

「(そうだ、バッグは……)」

 

あれにはカメラが入っているんだ、なかったら困る。

そう思い周囲をキョロキョロと見て探すと、あった――部屋の隅に。

 

僕はそれをたぐりよせてから横になり、これからまた来るであろう実験に向けてカタチだけの睡眠をとった。

 

 

 

 

 

 

 

「(――う゛あ゛っ!!)」

 

突然、首輪から電撃がはしり、全身を刺激する。

今までのたまものだろうか、こんな体でも反射的に立ち上がる。

そして襲う激痛を耐えて周囲を確認する。

 

「(なんだ? 何が起こったんだ?)」

 

しだいにまどろんでいた意識が覚醒するのと同時に周囲の状況がおかしくなっていることに気付く。

 

騒がしいのだ。何時もは電撃や実験での痛みで叫んでいる声が聞こえるのだが今はそうでもなく、むしろ何か勢いの感じられる絶叫が時折聞こえる。

 

「(なんだろう……いてっ!)」

 

思わず身を乗り出すようにして原因を探そうとしたので体が傷む。

 

こんな状態では何もできないと思い、じっとしていることにした。

 

 

数分だが、何か大きな物がしだいにこちらに近付いてくる足音がした。

ガシャン、ガシャンと機械のような足音をたてて、一歩、また一歩と近付いてくる。

見えないので得たいの知れないと思ったが不思議と怖くは無かった。

 

すぐそこまできて足音は止まった。何かと見ようとしたときそれは起こった。

強烈な音をたてて崩れさる壁。

大きく、無骨な手のひらをこちらに向けている一機の機械。

そこにはISを纏ったラウラが僕に手を差しのべているんだと理解した。

 

「無事? さぁ、早く!」

 

そう言って僕を掴んで外に出す。僕はバッグを肩にかけて邪魔にならないようにした。

 

「何が起こっているの? ラウラ?」

 

まるでわからないといった風にラウラに聞く。

 

「ここから脱出(で)るのよ、皆と一緒に」

 

そういってラウラは僕を掴み、走った。

 

ISを纏っているため、狭い廊下の壁を削りながら移動するラウラ。

 

「凛、これを」

 

移動している途中、ラウラが僕に何かを渡そうとしてきた。

それは突如、ラウラの手のひらから形を造り、姿を現した。

 

(――魔法みたいだな)

 

子供さながら、というのだろうか、今さっき起こった現象に感嘆の声をもらしていた。

 

そして、現れたのは一挺のAK-47と数個の弾倉(マガジン)の入ったベスト、そしてサバイバルナイフだった。

――どれも、僕達がよく使い、よく手にした道具だった。

 

「これを着けて、先に外に出ている仲間と逃げなさい」

 

それを受け取った僕は頭(かぶり)を振って否定をあらわす。

 

「(僕も戦う。それにまだ逃げてない人もいるんでしょ? だったら助けないと)」

 

ラウラは僕の言葉を読み解いて、驚き、少しためらいながらもやがて諦めたように口を開いた。

 

「ダメって言っても聞きそうに無いわね……分かったわ。 ただし、必ず皆と生きて戻りなさい、分かった?」

 

僕は力強く頷いてまかせて、と口パクで言う。

 

「じゃあ、私はD区画をやるからC区画をお願い」

 

そういって僕を降ろして、D区画ほ向かったラウラ。

 

僕も早速C区画に向かった。

 

C区画に入った時、銃声が聞こえた。そして目に飛び込んできたのは苦しそうに横たわっている二人の男の子。

すぐに状態を確認するとどうやら撃たれたようで二人は肩や腕、腹部に弾丸を食らっていた。

 

「――大丈夫!? そこの三人!」

 

ひとまず血を止めようと自分の服を破って傷口を縛っていた所に声がかかる。 確認するとそれはISに乗ったマインだった。

 

「(マイン! この二人、お願い! 僕は先に行かないと!)」

 

「あ、ち、ちょっと!」

 

マインには悪いがここは任せて先に行くことにした。

各部屋にはちらほらいたり、混乱している者がいたので落ち着かせながら皆がいるであろう方向に誘導させる。

他にもいないか探していて広間に着いた時、それは起こった。

 

――パン、パン!

 

白衣を着ているおじさんが銃を手にし撃っていたのだ。

――誰に?

 

銃口はこっちに向いていて、うっすらと白煙が上がっているのが見える。

おじさんはだめ押しとばかりにさらに二発撃つ。

 

今度ははっきりと分かった。

 

撃たれた衝撃で後ろに大きくたたらを踏んで後退する。そして思い出したかのように口から血が溢れ出す。

 

「ごふっ、ふっ」

 

背中が壁につき、ずるずると力なく座る。持っていたAK-47は手の届かない所に転がっていた。

 

「くそっ! せっかくの研究が台無しだ!」

 

苛立たしげに言うおじさんは喋りながらゆっくりとこちらに向かってくる。

 

「まぁいい、また時間はかかるが始めからやればいいのだ、どうせ『材料』なんて腐るほどある」

 

誰かに言い聞かせるように両手を広げて言う。

 

僕は自分の周りに出来上がっていく血だまりを見ながらあることを思う。

 

(約束、守れるかな……?)

 

こんなところで死にたくはない。約束もしているのだ。

 

(でも、もし……死ぬならコイツも…………一緒に殺そう)

 

コイツのようなやつがいるから僕達みたいなのが生まれるんだ、人を材料なんて思っているやつがいるから。

行われる惨劇は繰り返させやしない。僕達と同じ人たちなんてもう生ませちゃいけないんだ。

僕は覚悟を決め、バレないようにナイフを手にとる。

 

「惜しいよ、本当に惜しい。君のような材料を失ってしまうのだからね『B-88』。だが安心したまえ、君の死は無だにはしないさ、私は生きて君は死ぬ。そして私は研究を成功させるまでゆっくりとあっちで見ているといい」

 

ニヤリと口角をつり上げて銃口を再びこっちに向ける――させるか、だったらお前も死ぬんだ。

おじさんとの距離は7~8mはあるだろう。そんな距離をこの体で走って殺しにいくのはちょっと無理がある。ならば一つしか方法がない、それにかけよう。

 

ナイフを抜き大きく『溜め』を作ろうとしたとき、僕から見て右側の壁が爆発したように飛び散る。

 

「な、なんだ!?」

 

おじさんがそのことに大きくうろたえる。僕はその隙を使ってナイフを持ち、投げた。

 

手の力だけで投げるのには少し不安があったが、ナイフは回転して目標に突き刺さらんと向かっていき、無事に心臓の箇所に刺さった。

 

「――か、っはっ! ……な、ん……だと……?」

 

数秒遅れで刺さったことを認識したおじさんは苦痛に歪んだ顔でこちらを見る。そして銃を一発撃つ。

 

だが、銃口が定まっていないので弾丸は地面を抉るだけに終わった。

 

「む……ぐっ……あっ………!」

 

苦悶の表情を浮かべて倒れてもがき、やがて動かなくなった。

 

そこまで見たところで視界の端からじょじょに黒い何かが覆うようにして見えなくなってくる。

 

(――あぁ、死ぬのかな)

 

しだいに眠くなってきた。瞼も下がってきているのがわかる。

 

「――――ッ――――ッ!」

 

誰かが何かを言っている気がするけど分からないよ。眠いんだ、すごく。

 

 

「(――ありがとう)」

 

口パクだけど僕は最後にそう呟いた。

ラウラには、悪いことしたな。約束、破っちゃったし。

イリアも、ボーデヴィッヒも悲しむだろうな、他の皆も。

 

体が揺すられたり叩かれている気がするがよく分からないよ。

 

その時、ドンッと何か音がした気がする。

何かは分からないけど、多分ラウラ達じゃないかと僕は思った。

 

 

あぁ、最期に謝れるなら……謝りたかったなぁ、でももう遅いや。

 

 

 

 

 

 

――――ラウラ、ごめん。

 

 

And the story was started moving large ――I does not I also need to boy walked as a traged

y.

(そして物語は大きく動き出しました。――それが悲劇だとしても少年は歩まなければいけません)

 

 

――The boy told us to God.(――少年は神に言いました)

 

 

 

――God, why am I in was not?(――神よ、何故私ではなかったのですか?)




前話、二十四話ですが、ご指摘を受け少々書き換えさせていただきました。
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