IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

38 / 66
投稿が遅れました、すみません。
色々と悩んでいました、執筆中のこのISのことや私自信のことなど。
何で通っちゃったかな……選択ミスったなー、辞めようかなー、迷惑かけるなーとか色々とグチグチ悩んでいました。
まぁ悩んでいても事態は収集されないのでとりあえずふんぎりをつけたい…………そんなわけで二十六話、どうぞ。

閑話『End Line』に画像を貼り忘れていたので貼っておきました。よろしければ見てくださると嬉しいです。


二十六話 『試合前』

 

 

 

 

「――――――っ!!」

 

俺の意識は突然襲いかかってきた痛みで覚醒する。

 

「……はぁ、またか」

 

俺はため息を吐く。

こっちに来てからいつもこれだ、痛みで目を覚まし、手に深々と自前のナイフが刺さっているのを目にする。

しかも、壁にまで突き刺さっているのでなかなか取るのが大変だったりする。

「ったく、よっ!」

 

一、二回ナイフを上下に動かしてから思いきり引き抜く。

 

手から血が滴り落ち、ナイフを引き抜いたことによって血が吹き出す。

 

ベッドから少し近い場所にいるのはわざわざ立ち上がってから刺したのだろうか? だとしたらシュールな気もするな。

とりあえず滴る血を服で押さえつけながら洗面器に行く。

 

「あぁくそ、掃除が大変だなこりゃ」

 

床や壁、服に付いた血を見てため息を吐く。

血を洗い流し、水気を軽くとってから置いていたガーゼと包帯を巻く。

あと数分もすれば治るだろう。

それから俺は血まみれの服を脱いで洗濯機に入れ、床やら壁やらを掃除する。

 

ここは俺の所属してる会社の寮みたいな場所である。

といっても今は社長についていって俺とあと二人しかいないが。

 

 

「よし、これでいいか、さて」

 

掃除もあらかた終わり、服を着替えてから日本に帰る準備をする。

こっちに来て4日が経った。そろそろ帰らないと一夏が心配になる。

荷物はあまりない。むしろこっちに置いてある物の方が多いくらいだ。

 

寮を出ると近くにお馴染みの車が停まっていて、二人の人物がこちらに気付き向かってきた。

 

「よう、そろそろ行くか?」

 

吸っていた煙草をもみ消してこちらに尋ねる男。

 

「あぁ頼む、トム」

 

そう言うとトムは車の方を向いて頷くと車の近くにいた女性、サラが車に乗り込みエンジンをかけた。

 

 

「――ったく、いつの間にか寮に帰ってるって思ったら急に帰国(かえ)るなんて言われたら慌てたぜ?」

 

「急だったか? そりゃすまなかったな」

 

「まぁいいさ、最年少(ルーキー)の面倒を社長に頼まれたからな、任せろ」

 

また煙草に火をつけて吸い始めるトム。

 

「言ってくれるぜ、おい」

 

軽く言い合いながら車に乗り、空港に走らせる。

その後も二人と話をしながら俺は日本へ発った。

トムとサラはしばらくの療養をいわれているので流石に二回も日本に行くことはなかった。

余談だが、手の傷は飛行機に乗る前には完治したのでガーゼ等はゴミ箱に棄ててから飛行機に乗った。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「――久し振りにやって来ましたIS学園」

 

外はもう夜になっており、学園内では夕食の時間ではないだろうかという頃合い、特に何事もなくIS学園に着いた俺はまず自室――に行く前に職員室に向かう。

しょうがないだろ織斑先生が言ってたんだよ、帰ってきたら報告しに来いって。

織斑先生には逆らえねぇよ……。

 

てなわけで行きました職員室。

 

「織斑先生ぇ~、織斑先生はいますか?」

 

職員室内に入り、まばらに人がいるなかで尋ねるように声を出す。

すると返答は背後からやって来た。

 

「私を呼ぶ奴は誰かと思えば、帰ってきていたのか」

 

「――うぉおっ! ビックリした!」

 

背後からかけられた声の正体は織斑先生だった。

ビックリしたので飛び退いて距離をとる。

 

織斑先生は俺を見て話し出す。

 

「特に怪我もなく無事のようだな――なら明日から四日分の溜まった授業をやっても平気そうだな」

 

織斑先生が心配とかしてくれた! ……と思った時期が俺にもありました。

あげて落とすか、でもまったく反論できねぇ。

 

「はい……」

 

かといって受けないわけにもいかず頷いた。

 

後で授業内容を山田先生に聞いたり一夏に聞いたりしよう。

 

それから自室にたどり着き、カギを差し込んでガチャリと解錠する。

 

今日は飯はいいや、さっさと寝ようかなぁ、と考えながら部屋に入ろうとしたとき、叫びにも怒号にも似た声が響いた。

 

何だ? と思っていると何者かがこちらに走ってくるのが見えた。

――それは更識簪だった。その表情は怒りに満ちており、目尻には涙が貯まっているように見える。

ていうか正直怖い。

考えても見てくれ、いきなり怒号が聞こえたと思ったらかなりの速さでこちらに走ってくる女性、しかも怒っていて目には涙、そして髪を振り乱してこっちに走ってきている。

どう考えても怖いだろ。

反射的に持っていた荷物を離し、迎撃態勢を取るが簪はそのまま走り去っていった。

 

どういうことだ? とまったく何が起きたか分からない俺。

 

「な、なんだ……?」

 

俺が呆然としていると、タッタッタッと誰かが走ってくる音が聞こえてきた。

「待って簪ちゃんっ!」

 

聞き覚えのある声が聞こえる頃にはその姿が確認できた。生徒会長の更識楯無だ。

 

「楯無会長、どうしたんですか? 簪さんなら走り去っていきましたけど…………」

 

楯無の顔にはやってしまったといった表情が浮かんでいる、さっき駆けてった簪と何か関係があるんじゃないかと凛は思った。

 

「かんちゃ~ん!」

 

すると楯無の後ろから声が聞こえてきた。

ぱたぱたと足音を立ててやってきたのはクラスメイトの布仏本音ことのほほんさんだった。

 

「ほっし~!? かえってきてたの!?」

 

楯無とのほほんさんがそろい、一番驚いていたのはのほほんさんだった。

 

「あぁ今さっきな。ところで何があったんだのほほんさん、楯無会長、簪さんに何かあったのか?」

 

いまいちど二人に同じ質問をする。

 

「――いや、あなたには関係の無い話よ」

 

楯無会長は一瞬迷い、だが話す気はないと切り捨てた。

 

「実はねぇ、たっちゃん会長が~――」

 

「ちょっ、本音ちゃん!?」

 

しかし、本音は楯無と違い、話そうとしたので楯無は慌てる。

 

「かんちゃんとむぐぅぐう」

 

「すまん、何言ってるのか全然わからん」

 

口をふさがれてもごもごとしか聞き取れなかった。

「星野君に言っても意味無いでしょ! これは私と簪ちゃんと本音ちゃんの問題よ!」

 

「ぷはっ! でもぉ、このままでぎすぎすした感じで大会にでるの、やだよ~わたし~」

 

「うぐっ……そ、それはそうだけど」

 

のほほんさんの意見に若干たじろぐ楯無。

 

「それに~たっちゃん会長も『このまま』ってやでしょ~?」

 

「うぐぐっ……」

 

しばらく唸り声をあげていたがガックリと首を落とす楯無。

 

「分かったわよ、はぁ……これは私で解決したかったのに」

 

項垂れていたかと思えばこちらを向く。顔つきは真剣なものとなっていた。

 

 

「――星野君、わたしの話を聞いてアドバイスを頂戴。『私と簪ちゃんの仲良し向上』するために。もちろんこれは強制じゃないわ、やりたくないならいいわ。無理強いはしない――というかやらないわ」

 

「……その前に聞いてもいいですか? 楯無会長と簪さん姉妹は、仲が良くないんですか?」

 

「……? えぇ、そうよ」

 

「そうですか、分かりました。俺でよければ尽力します」

 

俺は会長の顔を見る。

 

俺は心に決めていた、よっぽどのことがない限り二人の仲を向上したいと。

 

「じゃあ話を聞いても良いですか?」

 

「……えぇ」

 

そう言うと楯無は苦い顔になりながらも今までのことを話してくれた。ただ廊下で話すのははばかられたので自室に入れてから話を聞いた。

楯無は『暗部』のことはもちろん凛にはいっていない。

 

――子供の頃は姉にベッタリだったこと。

――何をするのも一緒だったこと。

――妹、簪ちゃんは努力家だということ。

よほど妹が好きなのかノロケかというほどの話を延々と聞かされた。

そしてどこから仲があまり芳しくなくなったのか、すれ違うようになったのか、楯無が言ったことや簪が影で努力をしていたことなどを語ってくれた。

 

「――こんなところよ」

 

そう言葉を締め括った楯無の表情は固く暗い。

 

「……何か無いかしら?

何だったら罵倒をくれてもいいのよ、ダメな姉だって」

 

「…………」

 

楯無は自嘲気味にいうが、対する凛はなにも言わず目を閉じていた。

 

「――楯無会長ひとつだけ、聞いてもいいですか」

 

ゆっくりと開いた目を楯無へと向けて話し出す。

 

「――何で『そんな言葉』を言ったんですか?」

 

凛の声音は冷たく部屋に響いた。

 

「『簪、あなたは何もしなくていいわ、わたしが全部してあげるから。だから――』

 

「『――無能のままでいなさいな』なんて、何で言ったんですか?

 

凛は純粋に分からなかった、兄弟姉妹がいないというのもあるがただ単純に何故妹を貶めるようなことを言ったのかが分からなかった。

 

「そ、それはッ……」

 

「俺バカなんで楯無会長の意図したことを汲み取れないですけどそれは無いですよ」

 

言いよどんでいる楯無など構いもせずに凛は続ける。

 

「何でですか?」

 

「それは……」

 

「ほっし~、おちついて」

 

のほほんさんが凛をなだめ、楯無に心配そうに声をかける。

 

「たっちゃん会長、だいじょうぶ?」

 

「えぇ、大丈夫よ……」

 

楯無はそうのほほんさんに言ってから凛の方へと向き直る。

 

「さっきの質問に答えるわ、それはあの子のためよ」

 

一拍置いて楯無は話始める。

 

「簪ちゃんは私に憧れて努力していたの、私の力になりたい、私と同じ立場に立ちたいって……でもそれは駄目なのよ。そうしたら簪ちゃんに辛い思いをさせてしまう、キツい思いを、怖い思いをさせてしまう。そんなこと姉である私が許せるはずがないでしょう! だから――」 「だから、切り捨てたんですか?」

 

最後の方は声を荒げていた楯無の言葉をさえぎり、淡々と告げる凛。

 

「――――なん、ですって?」

 

ギギギ、と音が鳴りそうなほどゆっくりとこちらを見る。その目には確かな殺意が浮かんでいた。

 

「あなたに、何がわかるって言うのよッ……私の何がわかるっていうのよ!」

 

怒鳴るように叫ぶ楯無。しかし対する凛はただ無表情に楯無を見ていた。

 

「俺に会長の気持ちは分かりません」

 

「だったら――」

 

「でも」

 

再び声をあらげる前に凛が喋り出す。

その声は楯無のものより小さいはずなのによく聞こえた。

 

「さっきの言葉は『逃げ』じゃないんですか」

 

その言葉を聞いて、楯無は固まる。

 

「守りたいならそばにいてやればよかったじゃないですか。妹が受けるであろう分まで自分が受ければいいじゃないですか。キツい思いも怖い思いも一緒に乗り越えていけば良いじゃないですか」

 

言葉をいったん区切り凛は口を開く。その言葉には言い様のない重みを二人は感じた。

 

「それが『家族』じゃないんですか? 『姉妹』じゃないんですか?」

 

「…………」

 

ついには口を閉ざしうなだれてしまった楯無をじっと見つめる凛。

 

おろおろとするのほほんさんを尻目に凛は告げる。

 

「俺はこれから簪さんに話をしてきます。のほほんさんは後から簪さんに話を聞いてくれ」

 

「う、うん」

 

うなずいたのを確認し、立ち上がってノブに手をかけた所で声をかけられた。

 

「待って星野君……最後に一つだけいいかしら」

 

「何ですか」

 

「あなたは……どうしてそこまで正しくあるの?」

 

正しくある。そこ言葉にたくさんの意味が込められていると凛は思った。

 

「俺は家族がいません」

 

 

ある程度調べていた楯無なら周知のことを凛は告げた。

 

「だから理想像なのかもしれませんし憧れなのかもしれません。だから俺はそうであって欲しいと想うんでしょうね、ですが――」

 

体ごと楯無とのほほんさんさんのいる方を向いて言う。

 

「俺はそれだけしか出来ません。全ては楯無会長、貴女自信の行動で、言葉で決まります。俺はそれだけしか出来ません」

 

強調するように二度、言い放つ。

 

それから凛は二人にことわりをいれてから部屋を出た。

 

「なんなのよ……」

 

ぽつり、と楯無は呟いた。それにのほほんさんは顔を向けたが言葉は発さなかった。

 

「私は間違っていたっていうの?」

 

誰かに聞いてもらいたい、教えてもらいたい、そうも受け取れる発言に答えるものはいなかった。

 

凛は部屋を出たあと、しばらく立ち尽くしていた。

 

「…………何を言ってんだ俺は」

 

言える資格なんてもっていないのに。

誰も守れなかったのに。

浮かんでは消えていく後悔の念。

 

だが凛はすぐに歩き出した。

 

「とりあえず、二人を助けないとな――悩んでいても仕方がない。そういわれたしな」

 

簪と楯無を助ける――そう決めた凛に迷いはなかった。

 

「しかし――」

 

「――姉妹っていいな。繋がりあってるみたいじゃないか」

 

ポツリと凛は呟く。それは誰にも聞こえない。




次回はなるべく早く投稿させます。
そして目指せ学年別トーナメントタッグマッチ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。