わずかばかりの書き貯めとまったく関係のない作品を書いておりました。
合計で3~4試合くらい書きたいと思っているので良かったらお付きあいください。
それでは、どうぞ。
――――――――――――
「…………星野」
「…………正直、すまなかったと思ってる、ごめんなさい」
一夏が言い淀み、凛が土下座して謝っている光景を誰が想像できようか。
謝っている相手は俺たちが一回戦で戦った対戦相手の『谷本癒子・夜竹さゆかペア』の谷本癒子の方――。
「いいよいいよ、別に気にしてないから。ちょっと体中が痛かっただけだし~」
「うぐっ……」
何をしたか? それはデータ採取のために全力で多方向推進装置(マルチスラスター)を使ってしまい、先日のボーデヴィッヒの時と同じように谷本癒子もろとも壁に激突してしまったのである。
幸いにも前と同じように速度があまり乗らなかったこととISの防御力のおかげで両者ともほぼ無傷ですんでいる。
だが怪我がなくとも幸いした、というのが正しいので土下座だ。俺はこれ以上の謝り方をしらん。
「……癒子、いいじゃないの許してあげなさい。星野君がこんな姿になっているのよ?」
横から助け船っぽいものを出してくれた夜竹さゆか。
ありがたいんだが、とても貶されている気分です……。
「うーん、ま、そうだよね、ごめんね凛君」
「い、いやこっちこそすいません」
「あとでデラックスパフェセット、奢ってくれたら許すよ、夜竹っちのぶんも」
「……イエス・マム」
やったね! と叫ぶ癒子。親指をたてるさゆか。
学園の食堂で売られているバカでかいパフェ(一万円)をねだられた。俺にそれを断れるはずもなし。
「何やってんの、アンタ?」
「鈴、試合は終わったのか?」
セシリアとともに歩いてきた鈴は俺疑問をなげかけてきた。
「えぇ、もちろん勝ってきたわよ!」
「わたくしたちと当たったペアの方々には残念ですがわたくしたちのペアが勝つことは決定事項でしてよ」
セシリアが勝ったことをふふん、と腕を組みながら自慢する。
「で、こいつは何で土下座なんかしてんの?」
「あぁ、それは――」
一夏が説明すると二人は土下座してる俺に手をそれて口を開く。
「……どんまいですわ」
セシリアは慰めてきた。
「――ざまぁ(笑)」
鈴はすごくいい笑顔でおとしめてきた。
「殴りたい、その笑顔ッ……!」
だが殴ってはダメだ、流石に女性は殴れん。俺は出てしまいそうになる拳を耐える。
「ま、まぁ……もういいよな? ほら星野も立てって」
一夏が谷本、夜竹達に言ってから俺をたたせる。
くそぅ、すげぇ腹立った。
「あぁ、いやすまなかった谷本さん、このことの謝罪は必ず返すから、夜竹さんにも」
一夏に立たされながら俺はまた謝罪する。
「いやいや、そんだけ謝られるとこっちが悪い気持ちになってくるよ……そんなに気にしなくていいよ、埋め合わせはしてくれるんでしょ?」
「Exactly(その通りでございます)」
「ならいいっていいって。ね、夜竹っち?」
「うん、私がはいってるのは意外だったけど、癒子がそういうならいいんじゃない?」
無事に許して貰えて良かった……。
「まぁ、何だ……どんまいな星野」
一夏が俺を慰めてくる。
「ふっ」
その横でこちらを見て鼻を鳴らす鈴。
「…………」
気まずげに眺めるセシリア。
俺は深く息を吸い込んで一息に言い放つ。
「――よしおまえら俺らと当たるまで絶対に負けるなよ俺らもまけねぇからなそしてもし当たったら俺と闘(や)んのはお前だ鈴々(リンリン)谷本さん以上に酷い目に会わせてやらぁ!」
「アンタ明らかに八つ当たりの上にその名で呼ぶなぁー!」
もう許さん、ボッコボコにしてやんよ、ISを。
「まあまあ、落ち着けって鈴!」
「離しなさい一夏! セシリア! せめて一発、一発殴らせて!」
「落ち着きなさいまし鈴さん! わたくしたちは次の試合があるんですから!」
「ぐあああっ!」アンタマジで覚えてなさいよ! 」
一夏に止められ、セシリアに止められ引きずられるように去っていった。
それから谷本さん達とも別れた。
「――それにしても星野の『アレ』、カッコいいな。何か翼が生えて飛んでるみたいで」
俺たちはまだ次の試合まで時間があるので駄弁っていた。
不意に一夏がそんなことを言ってきた。
「機械の翼って感じだけどな。カッコいいけどかなりじゃじゃ馬だぞ?」
未だにうまく使いこなせずにあのざまだからな、と付け足すと一夏は苦笑いを浮かべる。
「で、でも乗り越させたら凄くないか、それに色々と戦いにもバリエーション? ってやつを増やせると思うぜ」
「まぁな……」
一夏の言ってることは正しいのだが実現するのは難しい。
超高速機動時間など数十時間しか訓練してないうえにアリーナの狭さでこの喚装装備(パッケージ)を十全に使えていないような気がする。
普通に飛行して戦う分にはまったく問題ないのだから不便といえば不便な喚装装備(パッケージ)といえる。
「……そうなると、俺がいかに『アレ』を使いこなせるかにかかってるってことか」
「いや、まぁそれもあるかもだけど俺らの連携も大事だろ」
「……そうだな」
喚装装備(パッケージ)のことに気をとられていてそのことをすっかり失念していた。
「俺と一夏なら上位に食い込めるだろ」
曲がりなりにもこの数週間だけとはいえ、やって来たんだ、ならばできることをするだけだ。
「おう! だけど、何だったら優勝する気でやらなきゃ燃えねぇよ!」
優勝すべく燃える一夏。
俺はそんな一夏を見て、小さく笑みを浮かべ、合わせることにした。
「んじゃ、優勝するために全部勝っていこうぜ――『相棒』」
そして拳を出して一夏の返事を待つ。
一夏は俺の行動の意味に気付くと同じく拳を出してはっきりとした声で返事をした。
「――おう!」
拳同士がぶつかり、互いに誓い合った。
―――――――――――――
あれからアリーナで試合が行われ、次に俺らの番がやって来た。
「よし、行くか」
いつも通りにISを展開し、手足をはめる。
手足は前に頼んだ物ではなく通常装備を使用している。
『――さぁ、ここで最注目ペアの登場だぁー!』
会場のアナウンスが観客を湧かすためか盛大に言い放つ。
「――待っていたぞ、一夏」
はっきりとした声量の音声がオープン・チャンネルで聞こえた。
「さあ! さぁさぁさぁさぁ、やって参りました! 今大会一年生学年別トーナメント最注目にして男性IS操縦者によるペア――『織斑一夏・星野凛ペア』!! 対するは怒濤の新人、猛進の剣士――『相川清香・篠ノ之箒ペア』!! はたして勝つのはどっちだぁ!?では――」
「一夏、箒は任せた、てかあっちがご所望だ。終わったら俺も加わる」
「おう、だけど出来れば一人でやらせてくれないか?」
「分かった、なら任せた」
アナウンスが喋っている最中、俺は一夏とチャンネルを繋ぎ、箒のことを任せると言った。
『――試合開始!!』
一夏はアナウンスとともに動き出すと相手も同じように行動していた。
俺はその場にとどまって例の喚装装備(パッケージ)を呼出(コール)する。
「――来い『レイブン』」
一拍の間を置いて粒子化状態から出現した超高速機動パッケージ『レイブン・試作機型』。
それはまるで烏の翼のように黒く、今にも飛び立たんと翼を大きく拡げていた。
『おおっと! 夜竹さゆかとペアである谷本癒子を一瞬で下したものが再び現れたーっ!』
会場がどよめきたつ、が勝負に入っている四人には聞こえていない。
「行くぜ――」
俺は標的を相川さんに合わせ、両手にガトリングガン『レイジングビー』とショートブレード『アヴェンジャー』を持ち、向かう。
今度はレイブンに速度リミッターをかけ、出力を20%にしておいた。
今さら考えるとなぜもっと早くかけていなかったのかと自分に呆れてしまう。
多方向推進装置(マルチスラスター)が火を吹き、十分な速度で相川さんに向かって飛んでいく。
「相川さん、残念だが一夏の相手は先客がいるんでね、変わりに俺と踊ろうか」
『レイジングビー』が唸り、射線上のものを蹂躙すべく弾を吐き出すが、
「――よろこんでっ!」
「何!?」
相手――相川清香の力を甘く見ていたわけではないが、『レイジングビー』をこうも易々と避けこちらに向かって来るのを見て面食らう。
「はぁ!」
「うおっ」
的確なタイミングで振るわれる打鉄の近接ブレード『葵』が迫り、すぐに『レイジングビー』の攻撃を止め、体を反らして強引に避ける。
そこから加速器(スラスター)を逆に噴かし相川さんから距離をとる。
「やるな相川さん、今のは危なかったぜ」
「ふっふっふっ、私個人の思いと悲願のためにも頑張ったのよ」
オープン・チャンネルで会話をしている最中にも事態は動く。
凛は『レイジングビー』をしまいアサルトライフル『レッドパレット』を出して撃つ。
しかし相川さんはそれを避けながら徐々に俺に近付き、斬りかかってくる。
「でりゃあ!」
「ふっ!」
振るわれたブレードを『アヴェンジャー』で受け止め、即座に『レッドパレット』の弾丸を浴びせる。
「ぐっ――まだまだ!」
大きく怯んだが再びブレードを振るい、攻撃してくる。
俺はそれを『アヴェンジャー』で受け流しながら弾丸を少しずつ浴びせる。
それも数回行うと流石に警戒してあまり近付いてこなくなりブレードの代わりアサルトライフル『焔備』を装備してこちらに撃ってくる。
――なら、速度を上げるだけだ。
俺は速度リミッターを20%から30%に設定し加速する。
「――なっ!?」
いきなり速度が上がったのを見て動揺する相川さん。
俺は『アヴェンジャー』を一度しまい『オクトパス』を出して『レッドパレット』と一緒に撃ちまくる。
『レイブン』の速度に着いてこれずに被弾する相川さん。
「ぐっ、あっ、うわっ!」
縦横無尽に飛来する弾になすすべなく当たりパニックになっているように見える。
そして状況を打開しようと回避行動とこちらに向かって『焔備』を撃ってくる。 だが――
「逃がさんよ!」
弾を当たらないように飛び回りながら再び『レイジングビー』を出し狙いをつける。
『――砲身回転。ISによる補助動作(バックアップシステム)起動。弾道補正、修正点+2度』
ISからバイザーに表示される情報を元に狙いをつける。砲身は回り、鉛弾を吐き出すのをいまかいまかと待っている。
そして訪れる弾丸の雨あられは適格に相川さんのISを捉え続ける。
「う、ぐふっ! きゃあっ! ――こ、この……負けられないのよ……! 優勝すれば織斑君のお兄ちゃんプレイ、星野君の弟君プレイのために!!」
おい、一夏のもそうだけど弟君プレイってなんだよ。
気迫、いや執念というべきかそれは凄まじかったが秒速数百発という弾丸全てをかわしきれずにシールドエネルギーが零になってしまった。
「あぁ~全女子の夢が~!」
惜しむようにいう相川さん、ふぅ……とりあえずは勝てた。やっぱり扱いが難しいなこれは。
「いや、相川さんすごかったよ。まさか短期間であそこまでIS操作がうまくなってるなんて思わなかったから危なかった」
俺は相川さんを褒め称える。
お世辞でも何でもなく素直な気持ちだ。正直専用機を持っていないとなかなかISを操作する機会がないからどうしてもうまくない。
だからここまで上手くなっているのは驚きだった。
「そ、そうかな? えへへへ……」
誉められたのが照れくさいのか顔を赤らめてぎこちない笑みをする相川さん。
さて、こっちは終わったし、一夏の方はどうなった?
見れば一夏の方も終わりかけていた。
一夏は箒の攻撃を避けたり捌いたりしながらも攻撃を当てていく。
対する箒は猪突猛進といったようすで一夏に斬りかかっていく、だが近接ブレードを用いて襲い来る攻撃を捌いていたが慣れていないのか時折動きがぎこちなくなる。その隙をつかれて攻撃されてたりもした。
そして――
一夏の雪片弐型による『零落白夜』が発動、見事に箒に決まり勝負が着いた。
『勝者――――』
『――織斑一夏・星野凛ペア!!』
勝負がついたことによって歓声が沸き立つ。
「やったな、星野」
「ああ」
俺達は試合前のように互いの拳をあわせて勝利を喜びあった。