IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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かきためていた話を投稿します。
といってもかきだめはもう無いですが……

それでは、どうぞ。


三十話 『学年別トーナメントⅡ』

 

 

 

 

試合が終わった後、篠ノ之箒はただ呆然と一夏を見て何かをポツリと呟いて、そのまま去っていってしまった。

 

読唇で『そうか……私は負けたのか。力及ばずに負けたのか……』と言っていた。

 

てっきり一夏に詰め寄ってくると思っていたので驚いた。えらく落ち着いている、いや落ち込んでいるか、だがそれをしなかったのはちょっと不思議だった。

 

「(――篠ノ之(アイツ)、変なことをやらかさなければいいが……)」

 

ああゆうタイプは激昂するか激しく落ち込んだ後、何事もなかったかのようにケロッとしているか、いつまでも引きずっているか、どうしようもないくらいに堕ちていくかの数パターンに分けられるが大抵は『堕ちていく』。

 

だから、少し不安でもあった。堕ちてしまった人間が再起することは限りなく低い。

 

「どうした星野?」

 

気になったのか一夏が訪ねてきた。

 

「いや……ちょっと篠ノ之のことが気になってな」

 

「ん、あぁ、ちょっと落ち込んでるというか、すぐにどっかにいっちまったからな」

 

一夏も見ていたようでちょっと心配しているようだ。

 

「ま、なら後で訪ねてみればいいんだ。次の試合はすぐだからな」

 

「おう、分かった」

 

その時は一応俺も行こう。

 

 

 

 

 

「――やっと来たわね」

 

すでにアリーナ内に待機していた対戦相手に声をかける。

 

「またせて悪かったな――セシリア、鈴」

 

対戦相手は試合に負けるなよと言っておいたペアだった。

対戦相手はランダムで決まるのでやりたいとは思っていたがまさかあたるとは思っていなかったのでびっくりだ。

 

「えぇ、本当よ――だからまえにアタシのことをバカにした礼も含めてお返ししてあげるわ」

 

『――――試合開始ッ!!』

 

鈴の言葉が終わった丁度に勝負開始の合図が出る。

俺はグレネードスカート『コールザムーン』、『レイブン・試作機型』と、また送られてきた喚装装備(パッケージ)のひとつである『カルツェ・試作機型』を喚装する。

 

ISの両肩部に装着されたそれは獣の口のような形をしていて、鋭い歯が並んでいた。

 

『――カルツェ・試作機型起動。――開口。射出中』

 

両肩部の口が開き、咥内からキラキラとした粒子を吐き出していた。

 

「一夏、セシリアのことは任せた――って言いたいがあっちもそう簡単にはさせてくれないだろ。『カノンは』隙を見てするし、『釣り』は任せろ。あと『円舞』を忘れるなよ?」

 

「おう!」

 

一夏は理解したようで力強く意気込む。ちなみに『カノン』は支援射撃のこと、『釣り』は隙は作る、決め手は任せた、『円舞』は近くで戦え、という隠語である。

 

「Let's do this(さぁ、やろうぜ) 凰・鈴音(ファン・リンイン)!」

 

鈴に一瞬で近付いて好戦的に言う。

 

鈴の手には連結された大型の青竜刀――双天牙月。 そして両肩部の衝撃砲――龍砲。

 

「はぁっ!」

 

双天牙月を振り回し、こちらを迎え撃とうとする。

俺はそれを手にしていた『アヴェンジャー』で打ち合う。

 

「おりゃあああっ!」

 

「しっ!」

 

流れるように牙月を振り、攻撃する。それを『アヴェンジャー』で受け止め、受け流し、避ける。しかし――

 

「甘い!」

 

「――ぐっ!?」

 

砲身の稼動限界角度がない龍砲の衝撃砲が俺を襲う。

危なく連撃を食らうところで『レイブン』で距離をとる前に、グレネードスカート『コールザムーン』を数個切り離す。

 

「うわっ!」

 

爆破したグレネードに気をとられた隙をついてスナイパーライフル『サテライトレイ』を喚装し、龍砲に狙いをつける。しかし、引き金を引ききる寸前で上から襲来した閃光が『サテライトレイ』を貫く。

 

「なっ!?」

 

上に顔を上げて見るとその正体が分かった。それはブルーティアーズのビットだった。

 

「――させませんわよ」

 

そんな声がチャンネルから聞こえてくる。

 

くそっ、やられた! 連携ではあっちが上か!?

 

壊れたライフルを投棄した直後、背筋をゾワリと悪寒が走る。

すぐに横に回避行動をとると今さっき自分がいたところの空間が若干だが歪み、後ろの壁に何かが音を立てて激突する、いわずもがな龍砲である。

 

体勢を建て直すべく両手に『オクトパス』、パイルバンカー『グレー・スケール』を喚装し突っ込む。

 

「このアタシに近距離戦闘とか、舐めんじゃないわよ!!」

 

双天牙月を分断し斬りかかってくる攻撃を『グレー・スケール』に着いているバックラーで受け流しながら、撃ち込まれる龍砲を感覚だけで避け、『オクトパス』を撃つ、それを繰り返していた。

 

「くっ、このぉっ!」

 

「うおおおおおっ!!」

 

見えない弾丸が襲いかかってくる恐怖はないのか、星野は至近距離で戦闘を続け、鈴の動きにピッタリとくっついていた。星野は培ってきた超人的な勘のみで衝撃砲を避けていた。

 

やがて『オクトパス』の弾丸が切れると今度は『レッドパレット』に喚装して同じことを繰り返す。

 

「っち! いい加減しつこいわね! 食らいなさいよ!」

 

「はっ、負けるのは嫌なんでね、断る!」

 

「アタシだって負けらんないのよ!」

 

連結した双天牙月を大きく振りかぶり、そのまま星野に向かって振り下ろす。 向かってくる刃をバックラーで受け止めずに下に流すように受ける。

 

「(なっ――)」

 

おもいっきり振り下ろした刃は威力を殺されることなく振られ、大きな隙を作ってしまう。

 

「(だけどアタシにはまだ龍砲が――)」

 

とっさに龍砲を使おうとして目の前に存在する物に気がつく。

 

『レッドパレット』の銃口とバックラーを固定アームで後退させた『グレー・スケール』が確実に鈴の頭部を捉えていた。

 

龍砲は一見すると弱点がないかのように思えるが数個存在する。そのうちのひとつが発射までの『溜めの時間』である。

 

周囲の空気を固め、それを弾として撃ち出す分、どうしても次弾を撃ちまでには数秒の時間がかかってしまう。威力が高ければ高いほど尚更だ。

しかも鈴の龍砲はどちらも衝撃貫通型の『溜め』が長いタイプのものであった。

 

「(――間に合わない)」

 

そう悟った鈴は反射的に体を後ろにそらして発射される攻撃を回避しようとした。

 

「く、うっ!」

 

『グレー・スケール』ではなく『レッドパレット』の弾丸が数十発単位で発射される。鈴は間一髪で避ける。

 

「避けると思ってたぜ」

 

 

「なっ!?」

 

不敵に笑ってチャンネルを使って言う星野の顔を見て鈴は驚愕をあらわにする。

 

「きゃああっ! 何ですの!? ――っ!?」

 

「――! もらったあぁぁっ!」

 

「(くそっ、アタシに向けたのはハッタリか! )」

 

鈴はセシリアと一夏の戦いチャンネル越しに聞き、理解する、そしてしてやられたとはがみする。

 

「やってくれたわねっ――!」

 

連結した双天牙月を星野向かって投げ、間髪入れずに両肩の龍砲を撃つ。

 

「――いや、こっからだぜ鈴」

 

鈴の言葉にそう返すと急激に速度が上がる。

鈴は知るよしもないが速度リミッターを20%から40%にあげていたのだ。

 

「(速い!!)」

 

内心で驚嘆しながらも返ってきた牙月を掴み、再び龍砲を狙いを定めて撃つ。

しかしそれを先程よりも早く回避している、だが攻撃は鈴ではなく的外れな場所にされるのを見て不審に思ったが攻撃する手は休めない。

 

「(――? 何このキラキラしたものは?)」

 

そこで鈴は視界に入ったキラキラとした粒子に気付く。

 

「(まさか、ISのジャミングかなにか?)」

 

ISも精密な電子機器の部類に入るためチャフやジャミングなどの物には若干ではあるが効く。それならばと、そういった電子機器に影響を及ぼす喚装装備(パッケージ)もあると聞いたことがある。

動きが少し鈍くなる程度だが使い慣れた者ほどそれは脅威であった。

鈴はその粒子を龍砲でふっ飛ばす。空気の塊がキラキラとした粒子を掻き乱し散乱させていく。

 

――鈴が気付いたように上空でもセシリアもまた気付いていた。それを対処しようとしたがしかし一夏が突っ込んで来るためにそれをさせてくれない。

すでに四基のビットは破壊されており、残るは『スターライトMk.Ⅱ』と隠し玉の砲門二基とショートブレード『インターセプター』である。

 

「(気になりますが今は敵(一夏さん)に集中しなくては)」

 

キラキラと光るものを気にとめながらも一夏の相手をするセシリア。

一夏は前に戦ったよりもさらに強くなっていた。それこそ、先程星野に隙をつかれて一気に四基のビットを破壊されていた。

 

それほどまでに苦戦を強いられていた。

 

ですが――

 

「(一夏さんとのデートのためにも、わたくしとて負ける気はさらさらありませんのよ!)」

 

決意を胸にセシリアは想い人(一夏)と相対する。

 

 

 

「――あーっ! 鬱陶しい!!」

 

鈴はキレ気味に龍砲を撃ちまくる。

 

大げさに避けたり、最小限の動きで避けたりするものの、当たるには当たる。 しかしすぐに距離を縮められ、ピッタリとくっついてくるのだ。

それが鬱陶しくなって鈴は動きが短調になってしまう。

 

「――もうちょい、あと一押しか」

 

だから、ポツリと呟いた星野の言葉を聞き逃す。

 

「鈴、お前に一つだけいっておきたいことがある」

 

「何よ!」

 

会話をしながらも攻撃する手を休めず、星野もまた避け続けながら行動に移す。

 

「――お前に足りないものの話だ」

 

「ほんとに何の話よ!?」

 

双天牙月を横薙ぎに振るい遠心力を使い畳み掛けるが、切った場所に星野はおらず、ISのハイパーセンサーが星野のISを捉える。

 

 

「上!?」

 

見上げると星野がいつの間にかもちかえたショートブレード『アヴェンジャー』をこちらに向けていた。そしてチャンネルを使って鈴に話す。

 

 

「――お前に足りないもの、それは! 情熱・思想・理念・思いやり・気品・優雅さ・おしとやかさ! そしてなによりもォォォォ――!!」

 

「――――速さが足りない!!!!」

 

星野は速度リミッターを40%から60%まで解除した瞬間、星野の喚装装備(パッケージ)である『レイブン・試作機型』の黒い翼ようなの多方向推進装置(マルチスラスター)が大きく羽ばたく予備動作を見せ、姿が欠き消える。

 

「――ぐぁっ!」

 

鈴のシールドバリアーに何かがぶち当たり、衝撃が駆け抜けエネルギーが削られる。

 

「ぐっ! うっ!?」

 

後ろから。横から全く見えない突進が鈴を襲う。

 

「ははははっ、どうしたァ! 来い!」

 

「っ、言われなくても行ってやるわよ!」

 

ハイパーセンサーを最大限に使い、影の端でも捉えた場所に龍砲を撃ち込む。

「ああああああーっ!」

 

こちらの攻撃は当たらず、あちらの攻撃は着実に自分のシールドエネルギーを削られていくのがさらに鈴の苛立ちを募らせていく。

 

 

「――――っち、ああもうっ! 何よさっきから邪魔くさいわね!!」

 

そして先程よりも粒子の空中に漂っている濃度が濃くなっていることに苛立つ鈴。

 

 

『――カルツェ起動中。射出中。充満率84%。予測連鎖率72%。――対象、連鎖範囲に該当』

 

――――来た!!。

 

「一夏ぁっ! でっけぇ得物、『釣り』上げるぞぉ!!」

 

俺は一夏に合図を出す。そして『カルツェ』を本当の意味で起動させる。

 

『カルツェ・試作機型、射出停止。――次のシークエンスを実行します』

 

粒子の射出が停まり、開いた口がガキンッ、と音をたてて勢い良く閉じられた。

 

「なっ――――」

 

「え――――」

 

何も無かったはずの空間から現れた爆発が爆発を生み、セシリアも鈴も飲み込んだ。

 

キラキラとした粒子の正体は小型の爆弾である。爆弾としての機能を必要最低限まで削った結果、無数に空中に放り、合図を出すことで起爆させ、連鎖爆発を生み出し辺りにあるものを全て巻き込む。

――それこそが『カルツェ・試作機型』の力である。

 

龍砲の衝撃砲に当たった粒子は壊されてしまってなかなか充満しなかったものの何とか爆破することができた。

 

『カルツェ』の真骨頂は狭い場所にこそ真価を発揮する。

アリーナ程度の広さでは充満に時間がかかるものの問題なく使える。

 

 

「――――げほっ、げほっ、い、ったい何が起こったの?」

 

いまだ爆風による煙が立ち上るなか、力なく落下したセシリアをよそに、そこから飛び出してきたのは鈴だった。

連鎖爆発が起こった後、龍砲の衝撃砲を使い、爆発のダメージをいくらかはなくしたのであった。

しかしシールドエネルギーはほとんど残っておらず万事休すの状態であった。

 

「――マジかよ、アレでまだシールドエネルギーが残っているとかすげぇな」

 

と、後ろからそんなこえをかけられた。

 

直後、何かの破裂音とともに体を駆け抜ける衝撃に鈴は吹っ飛ばされながら気を失い、シールドエネルギー残量がゼロになった。

 

星野はさきほどまで鈴がいた場所で硝煙が上がる『グレー・スケール』を手に持っていた。

 

 

「いや、手強かった、つか『カルツェ』ヤバすぎ。俺もちょっと食らってるし」

 

星野は鈴を倒した後、自身のエネルギー残量を見てそう呟いていた。

 

星野のエネルギー残量は5割ほど。実際それほどまで削られたのだ。

 

 

「――おい星野っ! 規模でか過ぎるだろ!俺も食らったじゃねぇか!」

 

そんなとき一夏からチャンネル越しに怒られる。

 

「え、マジ? 俺も食らったよ。しかし使い方が難しいな、下手したら自分も仲間もヤバイことになるなこれは」

 

これを元にISを造るとか言っているのだから地雷臭しかしない、ちゃんとしたISになるのだろうか?

 

「おい? 聞いてるのか星野?」

 

「ん? あぁ聞いてる聞いてる。悪かったって、でもまぁ勝ったんだからよ」

 

 

『勝者――――織斑一夏・星野凛ペア!』

 

勝敗が決まり、会場が沸き立つ。俺と一夏はピットに戻り、回収されて目を覚ました鈴やセシリアに話しかけた。

 

「よっ、大丈夫か?」

 

「大丈夫に見える? おかげでISを修理に出さないといけないレベルまで損傷してるわよ」

 

てかあの爆発は何よ、と鈴が言ってきた。

 

「一応、開発段階の兵器だということしか言えんな」

 

「えぇー……そんな中途半端なヤツであれなの……」

 

鈴はあきれたような顔をしていた。まぁその気持ちは分かるぞ。

 

 

「――――すいません、ちょっといいですか?」

 

その時、おれらの後ろから声がかかる。透き通った女性特有の声。

 

「――こちらに星野凛というお方はいますか?」

 

振り向くと、そこには白いワンピースに麦わら帽子をかぶり、さらさらと銀髪を揺らして、目元には遮光タイプのサングラスをかけていた少女がいた。まるで日本に旅行しに来たといわれても信じてしまいそうな気安さで、しかしまとっている雰囲気と容貌はどうしようもなくラウラ・ボーデヴィッヒに似ていた。

 

俺も含め、この場にいた四人は少なからず見知った者の違和感に固まっていた。

 

「? ――――あぁ、自己紹介がまだでしたね」

 

固まっている俺たちに気づかないでいるのか、目の前の少女はあぁ、と言って口を開く。

 

「――私はクロエ。『クロエ・クロニクル』といいます。以後お見知りおきを」

 

自分をクロエと言った少女は微笑を浮かべてこちらに頭を下げた。




はっきり言いますと書いていた次話が消し飛びました(笑)

一度文章におこして安心しきっていた際に起こった出来事だったので今現在思い出しながら再度執筆中ですので遅れるかと思います。

くそぅ……
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