IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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予告通り、一周年記念です。なおこの回では頭の中を空っぽにしてご覧ください(if のようなもので本編のキャラたちとの喋り方? から絡み? まで違うので)

それでもどんとこいや、という方はどうぞ。


◆ 一周年記念

 

 

 

 

「――――で、何で集められたんですかね俺たち」

 

 

俺は集められた理由を目の前にいる織斑千冬と山田真耶に問いかける。

 

場には先生二人と織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰・鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識楯無、更識簪、そして俺こと星野凛の11人。

 

「というか二年の私も呼ばれているのが驚きなんだけれどね」

 

この中で唯一の二年生で生徒会長で更識簪の姉である更識楯無が独り言のように喋る。

 

「何、ちょっとした頼まれごとをされてな」

 

と千冬が説明を始める。

 

「今日呼んだのは他でもない、お前たち専用機持ちにやってもらってほしいことがあってな」

 

そういって織斑先生は山田先生に指示して手にあるものを見せる。手の中にあるものは小型の端末とそれを繋ぐケーブル、そしてHMD(ヘッドマウントディスプレイ)だった。

 

 

「……これは?」

 

簪が心なしか目を輝かせながら山田先生に聞く。

 

 

「えぇっと、これはですねIS用の端末とHMDですね、端末の中身は……」

 

「それは私が説明しよう」

 

山田先生の話を途中で遮って話始める織斑先生。

 

「この端末や機材を送ってきたのはあのバカ――束なのだが、何やらこの機材とISを使ってやって欲しいことがあるらしい」

 

束、という人物の名前が出て少なからずざわつく面々。

それもそのはず、ISを作った張本人でもあり、『歩く天災』とまで呼ばれている人物――それが篠ノ之束博士なのだから。

 

そこまで言って織斑先生が何かを取り出した、見たところ透明な四角い箱のように見える。

それを指の力で破壊すると、どういう原理か人が現れた。

 

『やーやー! 元気にしてるーちーちゃん! これが流れてるってことはちゃんと割ってくれたってことだね、束さんは嬉しいよ! そんなに私に会いたいなんて思ってくれているんだからね!』

 

タレ目で眼に隈ができている胸元の露出した服を来ていて頭には兎を模しているかのような物をつけている人物が一言に喋る喋る。

凛は「あぁ、これが篠ノ乃束(ISを造ったヤツ)か」と内心で思う。

千冬はヒクヒクとこめかみを痙攣させながらドスの聞いた声を発する。

 

「とっとと要点を言え束」

 

『わーこわいよちーちゃん。分かったよ、じゃあこの端末をISにインストールしてよ、数分で終わるから』

 

束博士がそういったあと、皆に端末が渡される。

そしてそれを待機状態のISに繋ぎインストールを始めた。

博士が言ったように数分で終わるとまた束博士が喋りだした。

 

『おわったみたいだね、じゃあ今度はそのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)をISに繋いで起動して』

 

言われた通りにする皆、だが俺も趣旨がわからずにちょっと困惑ぎみである。

まるでそんな心境を読み取ったかのように束博士は概要を説明し始めた。

 

『ふふん、今回君たちにやってもらうのはISを使ったゲームだよ! ISを使い、君たちをゲームの中のキャラを演じてもらおうと思ってね、君達はデータをISにインストールして、それを被って、寝るだけでいい、あとはISがやってくれるから、それではゲームのなかで会おう!!』

 

それだけ言いうと束博士の体が粒子になって消えてしまった。

……ホログラムだったのか、全然分からなかった。

 

「…………まぁ、何にせよやってみないことには始まりませんわ」

 

セシリアはそういってよこになる。確かにそうだと他の皆も横になり、ゲーム開始を待つ。

 

「――束が造った物なら内容はともかく安全性は大丈夫だ、心配はするな」

 

織斑先生が告げた一言は、おそらく俺たちを安堵させるには十分だった。

 

『――Stand by……game start』

 

無機質な声が発せられたと思ったときには俺は違う場所に立っていた。

 

「なに…………!?」

 

突然のことに混乱していると目の前いっぱいに何かが現れて声が聞こえた。

 

『バ○オハザードの世界へようこそ! いえ~い!』

 

声は束博士の声でそんなことを言っている。

 

『混乱してるね? そんな君には優しい束さんが説明してあげよう、一度しか言わないからよく聞きなよ~――』

 

それから数分、説明を聞いて要約今起こっている現象を理解できた。

――要約すると、今見ている光景や感覚があるのははISにインストールしたデータを元に脳が造り出して、HMDでそれを調整しているかららしい、何でもありだなIS。

さらにこの世界はゾンビとかいうファンシーな生き物が歩き回ってる世紀末な場所で、仲間を見つけ、助け合いながら目的地にたどり着けば良いらしい。

ちなみに今いるのは俺一人で何階か分からない廃ビルのような場所。目的地は屋上のヘリポートらしい。さらにゲームのように視界には様々なものが表示されている。視界の左上には『LIFE』とかかれたバーが存在していたり、右下には銃のアイコンがあったりと本当にゲームのようだ。

ようするにSF(すこしふしぎ)ファンタジー。

 

『さて、いい加減尺使いすぎだね!ゲームをはじめよーか! ほいゲームを始める前にプレゼント! ――じゃあいってらっしゃあーい!』

 

「ちょっ!? 唐突にメタいな! いきなりすぎるわ!!」

それだけいって空気に溶けるように消えてしまった束博士、それにちょっと困惑する。

するとピローン、という電子音とともに足に何か重量のあるものがまとわりついたのを感じた。

視線を足に向けると両足にレッグホルスターとレッグマガジンホルダーが装着されていた。

 

「…………M92F、9パラか」

ホルスターに入っていた銃を引き抜くと、それはピエトロ・ベレッタ社の傑作銃といわれているBertta M92F、9X19㎜パラベラム弾を使用し倉弾数は15発。マガジンホルダーには4つマガジンが入っていた。

 

「45口径(フォーティファイブ)じゃないのは残念だがまぁいい、さてゴール目指していっちょいくか」

 

銃からマガシンをリリースし、薬室(チャンバー)に弾丸が込められているのを確認してから再びマガシンを装填する。

 

 

――――そして、まるで謀ったかのように現れた数体のゾンビに向けて銃を構え、発砲する。

 

渇いた音が連続してボロボロの空間に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「――――すっっごい悲鳴が聞こえてきたから来てみればまさかお前だったとは……」

 

「ぅるっさいわね、こっち見んじゃないわよばーか!」

 

わーわーと泣きながらわめき散らす鈴に意外だといわんばかり目を剥いている凛。

物語は少しだけさかのぼる。あの後、出てきたゾンビの群れを突破してとりあえず上を目指すところでつんざくような悲鳴が耳に届く。

助け合いながら脱出をしろと言っていたので俺は悲鳴が聞こえた方に走り出す。

わらわらと寄ってくるゾンビを頭を撃って殺し、蹴散らしながら目指す。

 

「くっそ、数が多い。弾が足りん!」

 

途中から銃をホルスターに戻し、打撃をゾンビの体にブチ当て、周りのゾンビを倒しながら前に進む。

 

「――らぁっ!!」

 

ドロップキックを目の前のゾンビにきめ、周囲の奴等も巻き倒した時、二人の人物が目にはいる。

 

「ボサッとすんな! はやく来い!」

 

怒鳴るようにいうと二人は焦ったように立ち上がり、ダッシュでついてくる。 ぶっちゃけ俺もなかなかに余裕がない、今も起き上がったゾンビが襲いかかってきていたので、少ない弾丸を使い、二人を逃がす。顔も見る余裕がないから誰だか分からない。

 

すこし走った後、手頃な一室を見つけたのでそこに滑り込む。

二人を部屋にいれてから扉を閉め、指示を出す。

 

「何か、バリケートに使えそうなものを!」

 

「「は、はい!」」

 

なおも俺らを喰らいに扉を壊そうとするゾンビを止めるべくバリケートに使えそうなものを要求する。

デスクやいす、ロッカーを倒し重ねてバリケートを作ったところで一息をつく。

 

「ふぅ、ひとまずはこれでよしと」

 

「――はあああああぁ、死ぬかと思ったぁ~……」

 

「はははは……何だったんですのあれは…………」

 

少し落ち着けて聞き覚えのある声に振り向く。

 

「セシリアに鈴だったのか」

 

俺が声をあげるとゆっくりとセシリアが視線をこちらに向ける。

 

「……あ、星野さんでしたか。わたくし気が動転してなにがなにやら」

 

「まぁ、そりゃあそうだろうな、俺も今も信じられん」

 

茫然としているセシリアにそう告げる。

LIFEが見えていたり銃アイコンがあったり、見たことない場所にいきなりいたらそりゃあそうなるわな。 だが俺だって伊達にPMCをやっていたわけではない、すぐに順応したわ。

 

「そういえば」と、思い悲鳴のことを思い出して上の台詞に戻る。

 

 

 

「というかお前、こういうの苦手なんだな。意外だったわ」

 

腰砕け、といったように床に座り込んで目には涙を浮かべている。

 

「あ、当たり前じゃない……あ、あんなグロいものみて平気なヤツなんていないわ!」

 

「逃げている時もわたくしにしがみついて離れなかったのですよ、わたくしも恐かったですのに」

 

「しょ、しょうがないじゃない、震えて動けなかったのよ……」

 

同じく座り込んでいたセシリアが鈴に向けて言うと鈴はバツが悪そうに告げる。

 

俺が口を挟もうとした時、バリケートがガタガタと大きく動く。

それに応じて二人の体もビクリと反応し、怯えの色を顔に浮かべる。

 

(ここももう、もちそうにないな)

 

バリケートを見ながら内心で思うと二人に向き直りあることを質問する。

 

「ふたりとも手短に答えてくれ。今のLIFEバーの残量と束博士から渡された銃はどんなのだ?」

 

そういうと二人は確認するように右上を見ながら答える。

 

「私は四分の三くらい残ってるわ、武器はこれね」

 

「わたくしは……半分くらいですわね。束博士からでしたらこれですわ」

 

と見せてくれた。

鈴はM870ソードオフショットガンを携えていた。

実に鈴にあった銃であると言えよう、火力も申し分無く、小さく利便性もあるたよりになる武器だ。

セシリアはイギリスのアキュラシー・インターナショナル社というところで開発された「L118A1」という狙撃銃だった。

「鈴の方はM870……ショットガンか、いい武器だ。セシリアはL96A1か――いや、イギリスならL118A1か」

一般的には「L96A1」の名称で知られている銃だが、イギリス軍ではこの狙撃銃を「L118A1」と呼ぶらしい。

 

「ふたりとも使い方は分かるか?」

 

首だけそちらに向けて二人に聞くが、二人とも首を横に振る。

 

まぁそうじゃないかとは思っていた。銃を見たことはあっても、さわる機会なんてめったに無いだろう。撃つなんてなおさらだ。

 

バリケートから聞こえる亡者の呻き声が大きくなる、まずいな突破されかけてる。

 

「ふたりとも、撃ち方はわからないなら最悪、鈍器として扱え。そうすりゃあ多少は戦える」

 

俺は二人にそういってからホルスターのベレッタを取り出しいつでも対処できるように構える。

 

――その時、ゾンビの声を掻き消さんばかりの轟音が響く。音とともに壁までもまるで爆発したかのように吹き飛んでくる。

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!」

 

「いやぁーっ!」

 

俺も含め、飛んでくる壁の残骸が当たらないように祈りながらとっさに頭をガードして体勢を崩す。セシリアや鈴も頭はガードしているようだ。

連続して起こる爆発に完全にドアとバリケートが木っ端微塵に吹っ飛び、肉片が飛び散る。

 

「ぐっ……何だ!?」

 

伏せ撃ちに近い体勢になりながらも爆発が起こった方へ油断なく銃口を向ける。

 

「けほっ、けほっ……やり過ぎたわね」

 

「………………」

 

立ち込める煙から出てきたのは手にダネルM32MGLを持った更識楯無と楯無の服の裾を握ったまま青い顔をしている更識簪だった。

 

「ぶはーっ、更識姉妹か」

 

そう言って凛は銃口を二人から外して大きく脱力する。

 

「あら、助けてあげたのに随分な物言いね」

 

ダネルの弾を交換しながら言う楯無。まぁ助かったのは事実だからそれ以上は何も言い返せない、だから感謝を述べておく。

 

「おかげて助かりましたよ、ありがとうございます生徒会長」

 

俺も立ち上がって礼を言う。そしてセシリアと鈴もなんとかたたせる。

 

「あなたがいうと嫌味にしか聞こえないわね…………まぁいいわ、それでこれからどうするの?」

 

失礼だな、一応先輩だから敬語を使ったのに。

 

「屋上を目指して行くしかないでしょうね。下に下がっても危険度が増すだけですし、人数が多くてもこれを使えない人がいるんじゃあ逃げるしかないですね」

 

銃をちらりと見て楯無に目を向ける。実際に使えるのは俺と楯無会長だけだろう。

 

「決まりね、じゃあ移動しましょう」

 

そうして俺達は上へと移動を始めた。先頭を俺、最後尾を楯無にして三人を守るような布陣で進む。

簪の持っていた武器はベレッタCx4 Storm。M92Fと同種の弾を使え、マガジンも同じものを使えるので分けてもらう。

そして俺はM92Fを手に進む。

 

「うわーっ!」

 

すると男の悲鳴とともに無数の亡者の呻き声がこちらに向かってきていた。

 

「一夏! それに篠ノ之!?」

 

「一夏さん!? それに篠ノ之さんも!」

 

織斑一夏と篠ノ之箒が必死の形相で走って来ていた。後ろにもちろんゾンビを連れて。

 

「っ、これじゃあ狙えないわね」

 

楯無が歯噛みしながら銃口を下げる。

確かにMGLでは爆発がでかすぎて二人までも巻き込んでしまう。俺が頭を狙って撃とうとするが一夏と箒が射線にちらちらと入ってしまいなかなか撃つことを躊躇ってしまう。

 

「――――退け、貴様ら」

 

「――――皆、頭下げて!」

 

その時、俺らとは反対の後ろ側から二人の声が発せられた。全員が反射的に飛び退くようにしゃがむ。一夏、箒はこちらに滑り込むようにして頭を下げる。

 

瞬間、けたたましい音や規則正しい発射音とともにゾンビが血飛沫をあげ、手足、胴体が吹き飛び床に散乱していく。

数秒で襲いかかってきたゾンビは全滅していた。

 

「 み、みみがー!?耳がいたいですわー!」

 

「あつ! あつ! ちょっと熱い!!」

 

『ヒトラーの電動ノコギリ』と名高いドイツ製グロスフスMG42機関銃はその名の通り、電動ノコギリのような音を撒き散らしていた。

 

そのおかげでセシリアは悲鳴を上げ、その隣にいた鈴は排出された空薬莢があたったり、服に入ったりと散々な目にあっていた。

 

「――うぁ、ラウラと……デュノアか」

 

 

音が反響して聞こえるなか、逆さまになった視界にふたりの人物が映る。

 

「ちょっとラウラさん! 耳が痛いじゃありませんこと!」

 

「ちょっとラウラ! あっついじゃないの!」

 

「ふん、それくらい泣き言など、耐えろ」

 

「あはははは…………」

 

 

 

なんとか全員か揃うことが出来た俺たちは上(ヘリポート)を目指して進むことになった。

 

ゾンビに襲われながらもセシリア、鈴、簪、一夏、箒に簡単な銃の扱い方を教え、少しでも戦力になるようにした。

 

ちなみに、一夏の武器は日本の銃ら三八式歩兵銃

で箒はこれまた日本の武器の試製拳銃付軍刀というキワモノ武器だった。

 

 

「――いやー、結構来れたね~。束さんはビックリだよ」

 

「どぅわっ! ビックリした!」

 

急に声をかけられて驚いているとその声の主――篠ノ之束はかまわずに続ける。

てか、いたのかよ。

 

「でもこれからだよ~。私がそんなあまっちょろい物を作るわけないじゃ~ん!」

 

そのセリフが皆にも聞こえているようで、若干数名が青い顔をしていた。

 

 

 

しかし、最上階の手前まで何も起こることなく進むことの出来た俺達だが、その表情は良くない。

束博士がいったセリフに警戒をしているのだ。

 

 

「……? なぁ、なんか聞こえないか?」

 

最初に気付いたのは一夏だった。

それを皮切りに次々と気付く。

 

「なによ、この不気味な音……」

 

先程までの静寂が嘘のように、呻き声のようなものが階に重く響く。

鈴とセシリアは完全に怖がっており、ひしっと一夏に張り付くように抱き着いていた。箒は一夏の服の裾を固く握りしめていた。

簪は楯無に抱き着いており、それをなだめていた。

俺、ボーデヴィッヒ、デュノア、楯無は自身の武器を構え何が来ても対処できるようにする。

 

「さあさあ、くるよくるよ~!!」

 

呻き声は大きくなり、不快な音に変わる。

次の瞬間、正面の扉が壊れ、濁流のごとき勢いでゾンビがこちらに向かってきていた。その数は尋常ではない。

 

「ゾンビラーーッシュ!!!!」

 

ホログラムの束博士は眼前のゾンビの波を見ながら興奮したように叫ぶ。

 

「――何でもいいっ、撃てぇー!!」

 

マズイ、あの量はマズイ。

すぐに指示を出し全員で一斉掃射をする。

 

ボーデヴィッヒの機関銃で蹂躙し、楯無のグレネードランチャーで爆殺し、デュノアと俺が正確に一人ずつほふり、鈴、セシリア、簪、一夏、箒は弾をばらまき、少しでも足止めする。

 

しかしそれ以上に捌ききれないほどに量が多く、圧されていく俺達。

 

「全員、ヘリポートまで走れーっ!!」

 

射撃音に負けないくらいの音量で叫び、撤退を促す。

俺の声が聞こえてくれたようで次々と上に続く道を全力で駆け上がっていく――ボーデヴィッヒを除いて。

 

「おい、ボーデヴィッヒ! 何してんだ、速く来い!」

 

「黙っていろ! これくらいなんとかなる!」

 

ああ、くそっ。聞いてくれよ。

 

「死なれたら困るんだ、よっ! 文句なら後で言え!」

 

「――む!? 貴様、離せ!」

 

俺はボーデヴィッヒを担ぎ上げ、有無を言わせずにヘリポートへの道を全力で駆ける。

ボーデヴィッヒや銃の重さはアドレナリンが出ているからか、感じなかった。

 

「――ふん!」

 

屋上の扉を蹴り開けると、ヘリポートには輸送ヘリコプター――CH-47J チヌークが停まっており、すでにプロペラを動かし飛ぶところであった。

 

けたたましいローター音が耳をつんざく。

 

「――うおおおっ!!」

 

ボーデヴィッヒを担いでいる俺いままさに飛び立とうとしているヘリへと急いで走る。

 

しかし、あと少しというところでヘリは俺達の届かないところまで飛び立つ。

「クソッ」

 

 

悪態をつくが、すぐに後ろをむき、ゾンビと対峙する。

 

「すまんなボーデヴィッヒ、せめてお前だけでも乗せたかったんだが」

 

「ふん、ここまできて貴様に悪態をつくほど阿呆ではない」

 

ボーデヴィッヒをおろし、ゾンビに銃を向けながら謝るが、さもなんでもないとばかりにボーデヴィッヒはMG42をリロードする。

 

 

「――ここまで来たんだ、死なないでくれよボーデヴィッヒ?」

 

「――誰にものを言っているんだ。貴様こそ死なないように気を付けることだな――星野凛」

 

ニイッ、と人知れずにくちもとが弧を描く二人。

 

二人が眼前に迫るゾンビにいままさに攻撃せんとしたとき、上空から声がかかる。

 

「――星野っ!! 受け取れっ!」

 

一夏の声が聞こえ、上を見る、すると一夏が何かを投げてきた。

それをキャッチすると凛は再び笑みを浮かべる。

 

それは恐らくヘリに積まれていたものであろう――5.56x45mm NATO弾を使用するミニミ軽機関銃だった。

 

「ありがてぇっ!」

 

すぐにボルトハンドルを数回コッキングし弾が装填されているのを確認し、ゾンビに攻撃を仕掛ける。

 

ボーデヴィッヒはMG42を、俺はミニミを乱射し、迫り来る群れを弾の続く限り蹴散らす。

 

「――くっ……!」

 

だが、ふたつの機関銃をもってしてしてもゾンビの物量に圧され、焦り始めるラウラと凛。

 

「――二人とも、急いで捕まって!!」

 

その時、ヘリのローター音にかき消されないように大声で楯無が叫ぶ。

チラリと後ろを見るとチヌークから縄ばしごのようなものが屋上の縁の近くに垂れ下がっていた。

 

片手で某大佐のようにミニミを撃ちながら空いた手でラウラの肩を叩き、合図を出す。

 

ラウラは一瞬こちらを見て「先に行け」と呟いた。

 

先に置いていけるか! と言いたかったが、俺はラウラを信じることにした。

 

そうそうに掃射を切り上げ、ミニミを投棄して縄ばしごに向かい走る。

 

縁まで走ってジャンプして縄ばしごを掴む。

 

すぐに後ろを振り替え、ボーデヴィッヒの方を向くと丁度射撃を止め、銃を棄ててこちらに走ってくる。 俺と同じように縁までいってジャンプする――が縄ばしごまでの距離が少しだけ足りなかった。

それに気付いたラウラは僅かに顔をしかめる。

 

「――捕まれ!」

 

同じくその事に気付いた凛は片手をラウラへと伸ばす。

 

「――ちっ」

 

小さく舌打ちのような音がラウラから聞こえたがラウラはその手を掴む。

 

凛はがっちりと握りしめ、決して落とすまいと力を込める。

そして、腕力でボーデヴィッヒを縄ばしごまで釣り上げる。

 

「礼など言わんぞ」

 

「ああ? 別に礼を言われるようなことはしてないんだがな」

 

「ふん……減らず口を」

 

ご機嫌ななめだといわんばかりに顔をしかめるラウラに凛は苦笑をうかべる。

 

「星野~! 大丈夫か~!」

 

ヘリの中から一夏の声が聞こえてきたので、俺達は縄ばしごを登り皆と合流を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「いやー、まさかクリアするとはね! 束さんビックリだよ~」

 

ゲームクリアした俺達はいっせいに起き上がると口々に感想を漏らした。

 

「もう二度とやりたくないわ……」

 

「わたくしですわ……」

 

「あははは……でも面白かったよね?」

 

「あぁ。こう、普段味わえないスリルがあってスゴく楽しかったよな」

 

「私ももうやりたくはないな……」

 

「いやー、ストレス発散になって楽しいわね! ね、簪ちゃん?」

 

「…………私は画面の外で見てるだけでいい……」

 

 

「ふん、まぁいい運動にはなったな。仮想空間などとあなどってはいかんようだ」

 

と、三者三様の感想を口にしていた。

 

俺はというと普通に面白かった。

ゲームとはまた違うもので体験してみて、肌で感じるとまた違った面白さがくせになりそうなくらいだ。

 

「おー? なかなかに好反応が多いぞ~、束さんうれしい! ――良いサンプルも取れるし次いってみよー!!」

 

「「ちょっ!?」」

 

全員の感想を聞いて喜んだかと思えば、別のゲームをまたやらされるらしい。

 

次の瞬間にはまた別の空間に全員がいて、また銃を持っていた。

 

「出して~!」

 

涙目で数名が訴えるが当然聞いてもらえずに二回戦を始めることとなった。

 

 

俺達が束博士から解放されたのはそれから一日が経ってからだった。





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