IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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お待たせしました。
これで二章は終わります。次章のタイトルは決めてない!
待っていろ、臨海学校!

それでは、どうぞ。


三十五話 『動きだすもの』

 

 

 

 

「………………」

 

翌日、ラウラが起こしたVTシステム事件のため、生徒たちは休日になり、教員たちは事後処理のデスマーチにおわれた。

だが生徒会長が何かやったのか、他のアリーナを使用でき、俺と一夏はそこで試合をすることになった。

 

計五回。三対二という結果で辛くも俺が勝利した。だがおかげで疲れた。

 

 

「あ、ほっし~おはよ~」

 

「あぁ、おはようのほほんさん」

 

席につきながら挨拶をする。

その後、一夏を含めぞくぞくと教室に入ってきた、がラウラとデュノアの席がまだ空席だった。

 

「おはようございます、みなさん~……」

 

そんな時、山田先生が――若干顔に疲れが見える――入ってきた。

 

「え~……今日は転校生を紹介します。と言っても皆さんがよく知っている人物なのですが――入ってきてください」

 

ガラリ、と教室の扉が開くと女生徒の制服を着た、かつて男性服を着ていたシャルル・デュノアだった。

 

「――シャルロット・デュノアです。皆さん、あらためてよろしくお願いします」

 

そう言い、皆に向かってお辞儀をする。

デュノア社が倒産したのは記憶に新しい、それが少なからず関与しているのだろう、そう思ったのは二、三人だけだった。

 

一同が驚愕し、教室内に静寂が訪れる。ただそれも数秒で爆発する。

 

「え? デュノア君って女の子だったの!?」

 

「おかしいと思った! 美少年じゃなく美少女だったのね!」

 

「一夏君みたいにイケメンで星野君みたいに背が低いのに女の子か~」

 

わいわいと教室中が盛り上がる。一部俺がdisられているが、気にしない。

デュノアの事を知っていたのは少数でへたな混乱などを防ぐために教師たちや知っている者には箝口令がしかれていたのだ。

だから騒ぐのも無理もない。

 

「――ちょっと待って、そういえば昨日って男子が大浴場使ってなかった!?」

 

その時、一人の生徒が発した言葉に一瞬場が静まる。が、またも爆発したように話始める。

 

「え、じゃあ星野君や織斑君が知らないはずないんじゃない!?」

 

「織斑君にいたっては同室だったわけだし!?」

 

疑問の波が出来上がり次々と視線を向けられる。

自然と一夏と目があう。一夏も同じ気持ちらしい。

質問攻めでもみくちゃにされ、あらぬ誤解を受ける前に解決しなくては、そう二人は思ったがすでに遅かった。

 

「――一夏ァッ!」

 

扉をぶっ壊さんばかりに横にスライドさせて現れた凰・鈴音は怒気を発しながら一夏にいまにも飛びかからんとしている。この流れだ、一夏も事情は察している。

 

「ま、待て、鈴。話せば分かる!」

 

「鈴! Calm down!(落ち着け) ちょっとこっちのはなしを聞けば誤解だって分かるから!」

「い、一夏さん! それはどういうことですの!?」

 

「説明しろ一夏ッ!」

 

弁明をはかる一夏と俺、一夏に詰めよって説明を求めるセシリアと箒。

 

「言い訳なんて聞きたくないわよ! 男ならすぱっと言い切りなさい! そして運命を受け入れなさい!!」

 

「話聞けよ! ――うおっ!?」

 

「――おわぁっ!?」

 

「一夏さん! 聞いているんですの!」

 

「おい、一夏!」

 

飛びかかってきた鈴をギリギリで避け、さらに詰めよる二人。注意と申し訳程度になだめているが効果はなく、さらにカオスと化している教室内。

その時、凛とした声が教室に響く。

 

「――すみません、遅れました」

 

その場にいた全員が今の事態を忘れてそちらを向く。その視線の先にいたのはさきの事件を起こしたラウラ・ボーデヴィッヒだった。

その視線の集中砲火を全く意に介さずラウラはツカツカと山田先生に歩み寄り「遅れました」といって再び頭を下げた。

その行動に再度目を剥くクラスメイトたち。

そしてこちらに歩いてくると一夏に掴みかかった状態で制止している鈴と一夏を見て口を開いた。

 

「凰・鈴音、織斑一夏。私を助けるのに尽力を注いでくれたらしいな――ありがという」

 

感謝を告げ、頭を下げるラウラにまたも驚愕が走り抜ける。

 

「あ、あぁ……」

 

「い、いや、いいわよ別に……当たり前のことしただけだし」

 

困惑している二人をよそに今度はこちらに向くラウラ。口元は真一文字に結ばれ、目には決心の念が浮かんでいた。

 

「織斑一夏と凰・鈴音とともに私を助けてくれてありがとう――そして、また会うことが出来たね凛『兄さん』」

 

固く結んでいた口を緩め、わずかな微笑を浮かべる。

――ラウラ、お前思い出したのか。

 

 

「「「「に、兄さん!!!???」」」」

 

クラスメイトが、先生までもが驚愕をあらわにしていた。

その叫びは一学年に響き渡ったとか。

 

 

「ちょっ、ちょっと星野君、どういうことか説明して! お兄さんでどういうこと!?」

 

「どーいうことなのほっし~!」

 

「どういうことなんだ星野!」

 

 

「話が目まぐるしく変わってついていけない……」

 

「み、皆さ~ん、ちょっと落ち着いてくださ~い……」

 

最後の方で山田先生が控えめな声で注意するが意味がなかった。

 

「……なに、随分と前に――子供の頃に一緒に遊んだりしたんだ。その時にそう呼ばれてたんだ」

 

苦笑して話しながらラウラの頭に左手をおいて撫でてやる。ラウラがまんざらでも無さそうな顔をする。あ、包帯とガーゼがとられてる。ま、治ってるからいいか。

その話を聞いて全員が「あぁ~なるほど、そういった関係ね」といった表情をする。

 

「だいぶ仲が良かったのね」

 

「――私たちは『家族』のようなものだからな」

 

「「「「か、家族ーッ!!??」」」

 

またもやラウラが爆弾発言をし、全員が驚く。再度説明を求めてきたところでそれらをかきけす怒号が響いた。

 

「――やかましいぞ貴様らッ! 今はHR中だ! 何を騒いでいる!!」

 

織斑千冬がドアの前に立ち、教室中に響く激を飛ばす。

 

「星野君とボーデヴィッヒさんが家族ってどういうことよー!!」

 

「うあー、し、しんじられーん!」

 

しかし、織斑先生の声はクラスの混乱と姦しさによって聞こえていなかった。

「――すぅぅぅっ……」

 

ゆっくりと花から空気を吸い込んで、一歩だけ教室内にはいる。

 

カツンッ、とかん高いヒールを踏み鳴らした音が聞え、先ほどの五月蝿さがうそのように静まった。

 

「……とっとと席につけ。お前達もだデュノア、ボーデヴィッヒ、織斑、星野。凰、お前はクラスに戻れ」

 

「は、はい!」

 

睨まれた鈴は急いで教室に戻っていった。

「…………ボーデヴィッヒ、星野、お前たちは……」

小さい声で何か俺たちの名前を言っていた気がするので聞き返す。

 

「何か言いましたか、織斑先生?」

 

「どうしましたか、私と『兄さん』に何か不備でもりましたか?」

 

「…………いや、気にするな」

 

それだけいうと織斑先生は授業を始めようと声をかける。

しかし全員の視線はデュノア、ラウラ、星野を行ったり来たりしていた。

 

 

これでは授業にならんな……、とまた怒鳴る前に密かにため息を吐く織斑先生。その視線に気付いている凛は、後で説明するのが大変そうだと言わんばかりにため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

――教員室。普段なら教師たちが自分に与えられた机に向かい、仕事をこなすのだが、今はひとりだけしかいない――辺りはとっくにふけて夜になっていた。

そんな場所にガラリと扉が開かれる音だけがしっかりと響く。

 

「おまたせしました」

 

「ああ、山田先生、ありがとうございます」

 

「しかし織斑先生、その紙は一体?」

 

織斑千冬は受け取った枚の紙を見ながら山田先生に回答する。

 

「――前々から疑問に思っていたことを解消できるかもしれない紙ですよ。深い意味はありません」

 

「…………疑問、とは?」

 

重々しくも口を開いた山田先生はあまり聞いてはいけない気がする疑問をぶつける。

 

「――――星野凛の怪我の治りが異常に速いことへの疑問ですよ」

 

千冬は紙から目を離し、山田先生を見据える。そして見ていた紙を差し出すように置いていた。

 

山田先生はそのかみを織斑先生に渡すまで見ないようにしていた。何であれ、見てはいけないものかもしれないと思ったからである。

差し出されたそれをおっかなびっくりな表情で見てみる――――そして、書かれていることに驚いた。

 

 

「そして、ラウラ・ボーデヴィッヒの経歴です」

 

 

ラウラの経歴書にはほとんどが書かれていなかった――否、空白のところも目立つがそれよりも目をひいたのは、『最高機密』の文字に塗りつぶされていたこと。

星野の用紙は血液検査の紙だった。

血圧など身体に害がでるものは全て正常(グリーン)だった。

ある一部を除いて。

――『血中に赤血球、白血球を含む血液を構成するものの中に異物が一種類。検査したところナノマシンが検出されました。 詳しく調べたところ、これは肉体における外傷の治癒を速めることが出来るナノマシンで、別名『Nano・Rejuvenate(ナノ・リジュバネイト)』と呼ばれるものが投与されていました――

 

「な、なん……」

 

「…………私がドイツ軍・政府(過去にいた場所)に聞いてみたらこの事とは違う回答が帰ってきた」

 

トントントン、と指先でリズムを刻みながら不機嫌さを醸し出す織斑先生。

 

「――――そ、そんなことよりも! ――あ、い、いやボーデヴィッヒさんの出生が不明というのは確かに気になります、ですが! 星野君の、星野君に使われているこれはッ!」

 

バンッ、と怒りをあらわすように両手で机を叩く。その表紙に紙が机の上からゆっくり落ちる。

 

「――数年前に問題となっていかなる場合であってもその製造と人体投与が禁止されていたものじゃないですか!」

 

「知っている。その投与された者がショック死したのも、投与してまだ若くして亡くなった者のことも、過剰投与をし、過回復が起こって亡くなった者のことも」

 

「ですが、なぜ!?」

 

「…………私にも分からん」

 

織斑先生は一旦上を見上げて重い息を吐き出す。

 

「……すみません、いきなりどなってしまって」

 

我に返った山田先生は俯きがちに織斑先生に謝る。

「気にしないでください。私も、そんな気持ちですから」

 

訪れる沈黙。辺りの暗さも相まってか、空気が重く感じられた。

 

 

「山田先生」

 

そんな時、たしかな意思をもった声が山田先生を呼ぶ。

 

「私の友人に非常に情報に強い者がいます、この件は私たちに任せてもらいます。もしかしたら山田先生の力も借りるかもしれませんがその時はお願いします。それまで、この件は頭のすみにでも置いておいてください」

 

「…………はい。分かりました」

 

どことなく釈然としなかったが、山田先生は頷くしかなかった。

 

「――星野、お前は一体、過去に何があったのだ。何故ボーデヴィッヒと……?」

 

囁くように発した声は近くにいた山田先生にも聞こえずに暗闇に飲まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

『あ゛~、だりぃななんでアタシに行かせてくれなかったんだよ』

 

『――仕方ないでしょ、アナタは別の用事があったんだから』

 

『だからってそりゃないぜ【S】、あのアラクネはアタシが乗る機体だろ? だったらアタシに回収させてくれたってよかったじゃねぇかよ。ついでに暴れられるし一石二鳥だせ』

 

ガリガリと茶髪の長髪を掻きながら金髪のドレスを着たような女性に向かって悪態を吐く。

 

『それにてめぇはいいよな【K】。久しぶりの外で思う存分暴れられたんだからよォ』

 

壁にもたれ掛かっていた赤髪の女性に恨み言を吐く。

 

『そーでもないっすよ腕の調子なんて、確かめる間もなくルーキーに取られましたからね』

 

『あァ……あいつか。ったく扱いづれぇったらありゃしねぇよ強制的に言うこと聞かせてるだけの傀儡(デク)だしな』

 

『あらあら、そんなこと言わないの。使える、特上の駒(クイーン)よ』

 

金髪の女性の言ったことに対して二人の意見はどちらも個性が出ていた。

 

『あ? チェスか? あんなみみっちいもんやりかた知らねえよ』

 

『クイーンよりもルークの方が使える気がするっすけどね……』

 

 

『つれないわねぇ……まあ、いいわ。それじゃそろそろ行きましょうか』

 

『あァ、そうだな、長居しても意味ねぇしな』

 

『――ま、待ってくれ、た、助け――――』

 

そちらを見ずに茶髪の女性は腰から拳銃を引き抜き、一発だけ撃った。

その弾丸は正確に研究員だろうか、その男の眉間に当たった。

男は絶命した。

 

 

『ッち、んだよ。アイツ処理甘すぎんだろうがよ、まだ残ってんじゃねえか』

 

『あらあら、まったくこっちはこっちで中途半端ね……やっぱり人間らしさは要らないんじゃないかってつねづね思うわ』

 

『そうですね。まぁ、道具には要らないでしょう』

 

『そうよねぇ――ま、それは帰ってから検討でもしましょうか』

 

『そうだな』

 

 

 

『『『――――亡国機業(ファントムタスク)に栄光あれ』』』

 

 

 

その日、ひとつのIS研究所が、跡形もなく爆破された。

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