それでは、どうぞ。
「お待ちください!納得がいきませんわ!」
その声には、聞き覚えがあった。
あ、セシリア・オルコットだった。
「そのようなことは認められません!大体、男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!?」
すごい女尊男卑思考だな。推薦してくれた子達に謝れよ。
「実力からいけばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような極東の島国までIS技術の修練に来ているのであって、見世物になる気は毛頭ございませんわ!」
……素直にすごいと思った。
だって、そこにいる織斑千冬――ブリュンヒルデだって日本人だし、篠ノ之束だって日本人だし、日本にケンカ売ってもセシリア一人じゃ勝ち目がないと思うがなぁ……あ、織斑先生青筋たってる。
「イギリスだって大したお国自慢は無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ。」
一夏が立ち上がり、オルコットに言い返した。
一夏、いくら姉を侮辱されたからって落ち着けよ、一触即発状態じゃねぇか。
「――決闘だ!」
「よろしくてよ!」
「待てお前ら、落ち着け」
このままでは、流れて的に俺まで戦わせられてしまう気がするからとめる。
「星野もなんかいってやれよ!」
俺!? そこで俺に振るのかよ!
「だから……一夏もオルコットもまずは落ち着け。イギリスも良いところはあるさ」
「んー、そうだな、イギリスは紅茶やアップルパイ、フィッシュ&チップスがうまいとかな」
アップルパイはアメリカが本場かとおもいきや、イギリスが元祖らしいからな。それに、一部かまずいだけでうまいものはたしかにある。
まぁ、俺はイギリス人ではないから分からんな。
「ほらみなさい!イギリスの良さを分かる者がおりましてよ!」
それじゃあ、だいたいの人は分かることになるぞオルコットよ。
「星野!? どっちの味方だよ!」
「人の話しは最後まで聞けよお前ら……オルコット、日本だって良いところがあるぞ、外国にはない、良いところが」
「何ですわ!?所詮イギリスには勝てませんことよ!」
「まず、飯がうまい、風情がある、そして――戦争が無いところだ」
その言葉にもう一言付け加える。
「分かったか?何でも自国を一番にするなよ、イギリス人」
「なっ!」
意外と俺も頭にきていたようだ。無意識でイギリス人なんて言っちまった。
そのイギリス人、セシリア・オルコットはわなわなと体を震わせている。…………それに一夏、なんでまだお前立ってんだよ。
「一夏、座っとけ」
「え? あ、あぁ」
席に座り直す一夏。
「だ、たからなんだというんですの!?戦争が無いなら、わたくしの国もなくてよ!!」
……アホか、こいつは。
「確かに内戦は無いかもな。だが、お前が知らないだけでイギリスの軍隊は動いているし、戦争にも参加しているぞ。これではたして戦争をしていないという気か、オルコット」
日本との違いは、戦力差。イギリスは強い。だから、国外と戦ったりするのだろう。日本は弱いからの自衛として動いているいたり、貧困・紛争地域への物資輸送の活動の際は他の国から護衛してもらっていると聞く。
イギリスは実際、俺がIS学園に来るほんの二週間前もどこかでやっていたらしいしな。
「お前は偉くなったつもりだろうが外を知らなすぎるんだよ。まさに井の中の蛙だ。これからはもっと外に目を向けるんだな、イギリス人」
怒り心頭、といった様子で、顔を真っ赤にしながら言い返してきた。
「なんですのあなたは!?わたくしをそんなにバカになさいますの!?だいたいあなただって日本人なはずなのに随分と『変わった髪の色をしてなさいますわよね、そんな黒髪の少ない白髪でよく日本人と名乗れますこと!!』人をイギリス人とバカにするくらいなら黒髪に直してからおっしゃったらどうなんですわ!!」
(――あ?)
不意に、封じ込めていた過去の記憶がよみがえる
「――凛は、キレイな黒髪のだったよね。もちろん今の白と黒の髪の毛もきれいだし、好きだよ――」
「――ふふっ、髪の毛、同じだね、これで色も一緒だったら良かったな――」
気付けば、服の中に仕込んでいたナイフをオルコットめがけて投げていた。
――ガッ!!
「っ、キャッ!」
ナイフはオルコットの髪を少し切り裂き、壁に突き刺さる。一瞬遅れてオルコットが悲鳴を上げる。
突然の凛の奇行に生徒、教師までもが目を丸くして驚く。
「…………おい、英国女」
「っ、なんですわ」
「……この際、お前が日本人やそこにいるブリュンヒルデなどの宣戦布告はどうでもいい」
俺の言葉を聞いて、顔を青くするオルコット。 今更気付いても遅いがな。
「だがな、『その言葉』は俺への最大の侮辱と宣戦布告だ」
吐き捨てるように告げる。
まるで、『何か』を汚されるのは許さないといったように。
「やる気は無かったが、やろうぜ、決闘。お前は潰す」
「よ、よろしくてよ! 後で逃げようなんて思わないことですわね!」
「自分より格下の相手に逃げるとでも?」
「なんですって!?」
「そこまでだ、馬鹿者共!」
そこに、織斑先生が割って入る。
「まったく、お前たちは、勝手に話を進めるな。……ならば来週の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑、オルコット星野の三人で総当たり戦を行う。各自、準備をしておけ、なお、織斑には専用機が配備されることになった」
クラスが騒然とする。専用機持ちはごく少数しかいないから当然か。
そのとき誰かが、「せんせぇー、星野君はどうするんですか?」と織斑先生に聞いた。
「星野はすでに専用機を持っている」
クラスがまたもざわめきたつ、それを静まらせ織斑先生は告げる。
その後、凛が殺気立っており、クラスの皆はびくびくしながら、授業を受け続けた。
それから放課後、凛と一夏は剣道場に向かった。
「――来たな」
そこには、篠ノ之が立っていた。
「早く始めないか?用事があるんだ俺は」
凛は箒に急かすようにいうが、
「いや、星野、俺から先にやらせてくれ」
一夏が割り込むように箒と対峙する。
「……さっさと終わらせろよ」
「どうだろうな、箒だから分からない」
箒を褒めているんだろうが、俺にとってはどうでもいい。
一夏に譲り、数歩下がって二人を見学する。
「行くぞ一夏!」
「来い!箒!」
先に動いたのは箒だった。
間合いをつめながら一夏へまっすぐに竹刀をふりおろす。
「はっ!」
それをかわして一夏も箒へ竹刀をふりおろす。
――そこからしばらくは箒が押していたが、時間が経つにつれて、一夏のほうが逆に押していた。 そこからは防戦一方の箒。
「はぁっ!」
なんとか隙をつくろうとして強引に竹刀振るう。
だが、難なく避けられて逆に隙をつくってしまった。
――しまった。と箒は思ったが、遅かった。すでに一夏は動き竹刀を頭へふりおろす。
「っ!」
竹刀で受ける衝撃を予想し思わず目を瞑る箒だったが、いくら待っても衝撃は来なかった。
目を開けると竹刀を寸止めした一夏がほほえんでいた。
「俺の勝ちだな、箒」
笑顔を向けられた箒は赤面しながらも口を開いた。
「ま、まて一夏――」
「次は俺だな。さぁ、とっとと終わらせようぜ」
一夏は俺の言葉を聞き、こちらへと向かってくる。逆にこちらはさきほどまで一夏がいた場所へと足を運ぶ。一夏から竹刀を受け取り、すれ違う際に――
「手加減はしてやるなよ、相手がみじめになるだけだぞ」
と、一夏に小さな声で言っておいた。
今の俺なら分かった。箒が最初に飛び込んできた時、迷ったのだ、一夏は。
そして、あえて後ろに下がるという選択をしたのだ。 あのまま横にかわしておけばすぐに決着しただろうに。
「さぁ、早く構えなくて良いのか?」
いまだ立ち尽くしている箒にそう言うと、はっとして構えた。
「まだだ、まだ終わっていない!!一夏!」
が、箒はまだ先ほどの試合の負けを認めたく無いらしい。
「邪魔だ! 私は一夏と剣道がしたいのだ!!」
私欲丸出しで凛に突っ込んでいく箒。
技は同じ、面に向かっての愚直なまでの振り下ろし。
「――バカが」
俺は、一夏に言ったことをそのまま行った。そして竹刀を寸止めする。
「――終わりだな、俺は帰るぞ」
竹刀を置いて、剣道場から出る。
「なぜだっ!」
その時、箒が叫ぶ。
「なぜ私はお前たちに勝てん!?あまつさえ、貴様にも!」
「自分で考えろ」
凛はそれだけ告げて、止めていた足を再び動かした。
「箒……」
一夏は心配そうに声をかける。
「…………今は、一人にさせてくれ」
「……分かった」
剣道場を出ようとする一夏。
「だが……」
「だが、私は諦めんぞ。必ず、一夏と共に――――」
箒はうつむいたまま呟くが、離れていった一夏には届かなかった。
部屋に帰った凛は早速、どこかに連絡をとっていた。
数コールのあと、誰かが電話に出た。
「――お前がかけてくるなんて、珍しいな」
「単刀直入で悪いが、一週間以内に火力最大の武器を寄越してくれ。それと『空母』のパッケージも送ってくれ」
「……お前は急に電話をしてきたと思えば、軍とでも戦う気か?」
呆れたような声が帰ってきた。
「ちげぇよ、ただ――」
「――俺はあいつらのために戦うんだよ」
電話の相手にそう言ってから切る。
一週間後、凛達は、第三アリーナにいた。
「ほっし~、持ってきたよ~」
「ありがとな、のほほんさん」
ガラガラと音をたてながら大きなキャリーバックを持ってきたのほほんさんに礼をする凛。
「なにが入ってるのほっし~?」
「見てれば分かる」
キャリーバックを開き、中にあったのはISの両手両足。
「何で、ISがこんなところにあるんだ?」
来ていた一夏がもっともな質問をしてくる。
「あぁ、どういうわけか、俺の機体は両手両足だけ待機状態の時でも量子化できねぇんだよ」
「――来い『弐式』」
正式名称を『ラファール・リバイブ・弐式』。ラファール・リバイブと性能などはあまり変わらないが、一同の目を引いたのが機体カラーであった。
普通のラファールならばオレンジであるが、凛は灰色である。
コンマで展開した弐式に両手両足を装着させていく。
調子を確かめ、「よし」と意気込んでセシリアの元へ行こうとした時、一夏に声をかけられた。
「頑張ってこいよ」
俺は「あぁ」と短く返事をして、第三アリーナへと赴いた。
――調子は万全、頼んでおいたパッケージもあれから翌日には届き、すでに入れている。
「――逃げずに来ましたわね」
すでに専用機『蒼い雫【ブルーティアーズ】』を展開し、空中で待機していたセシリア。凛は飛ぶことなく、地上からセシリアを睨むように見上げていた。
――蒼と灰。それぞれの思いが今、激突する。
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