今回はちょっと短いです。
それでは、どうぞ。
「――それでね、あなたのデータ、見させてもらったのだけど無茶苦茶するわね、面白かったわ」
「はぁ……そうですか」
ニコニコと楽しげに話すナターシャ・ファイルスという人物。容姿は非の打ち所のないほど美人で若干ウェーブがかかった金髪をしていた。スタイルも良く、来ている服も似合っていた。
「でもまっすぐな気持ちはひしひしと伝わって来たわ。良かったあなたみたいな子がIS(あの子)のテスターで」
「はぁ、恐縮です」
どうやら彼女自信もISをあの子と呼ぶくらいに大切にしているようだ。
「それであなたの……機体(子)というのはどんなのなんですか?」
純粋に興味が湧いた。彼女が大切にしているISがどんなものなのか。
「試作段階からの付き合いでね、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)っていうのよ」
それからナターシャはゴスペルの子とを話してくれた。一目見てこの子に乗りたいと思ったこと、上手く扱えるように並々ならない訓練をしたこと、訓練中の不具合で怪我をしたこと、色々と話してくれた。
「――この傷がそのあとの傷。まぁ、今ではいい思いでよ」
二の腕にうっすらとはしる傷跡を見ながらナターシャ昔を思い出すように目を細める。
「……プライベートなことまでありがとうございますMs,ナターシャ」
俺は彼女に頭を下げる。
本当にすごい人だ。
「それもそうなんだけどこの前、協力してる研究所のひとつが『事故』で吹き飛んだときは焦ったわ……まぁ、代わりの所が支援してくれたからどうにかなったけど」
「それは大変でしたね、ですが水の泡にならなくてよかった。こちらもどんな機体になるか楽しみにしていましたから」
それは嬉しいわねとナターシャは笑う。
「もし良かったらあなたの話も聞かせてくれる?」
興味ありげ、といったように顔を近づけてくるナターシャ。
「あー、私は別に構いませんが……そちらは大丈夫ですか? お時間とか」
「あら、何故?」
「何故って……」
そこまで言って俺は辺りを見渡す。すでに20分ほど経っているというのにいっこうに人だかりが途絶える気配はない。むしろ増えてる。
「失礼を承知で聞きますが有名人か何かで?」
米や日本のテレビなどはほとんど見ないので、テレビによく出ている有名人とかだったら申し訳ない。
「あら、知らないの?」
「申し訳ないテレビなどの娯楽媒体はほとんど見ないものでして」
そう言って深々と頭を下げる俺にナターシャは笑って返す。
「いいわいいわ、ならしょうがないもの。私、本業はハリウッド女優や歌手をやっているのよ」
「なるほど――って、ならご多忙でしょう!?」
「そんなことないわよスケジュールはちゃーんと空けてるもの。それに時間が来ればイーリが教えてくれるわ」
イーリ? と思っていると「ほら、あそこにいるわよ」と指を指す方向を見ると、
「はいはーい、下がれ下がれ。これ以上近づくんじゃねーぞ、アタシから先に行ったやつは実力行使だからなー」
気だるそうな声色でSSをしている女性だった。モデルのような長身に金髪のショートカットはとても似合っており、それが彼女の整った容姿を際立たせているといってもいい。
――――ん?
「あのー、すいません、あの方は……」
「ん? あぁ彼女はアメリカ代表操縦者で私の友人のイーリス・コーリングよ」
なんかどっかで、と思っていたらアメリカの代表操縦者がSSしてた。Ms,ナターシャとんでもねぇな。
「さ、話してちょうだいな。幸いなことにまだ時間はあるもの」
テーブルに両肘をつけて満面の笑みを向けてくる。 こちらも待たせているのだが仕事なため、俺は差し障りのない範囲を話すことにした。
PMCのこと、IS学園のこと、戦いのことを話した。
「あなたの方が随分な遍歴よねぇ」
ナターシャは話終えた後、一言そう呟く。
まぁ、それは確かにそうなのでうなずくしかない。
「男性でISが使えるようなやつですからね俺は」
肩をすくめてナターシャに告げる。
それにナターシャはくすくすと笑う。
「そうね、とっても遍歴だったわね」
愉快そうに言い、紅茶を一度飲んでからナターシャは星野に一枚のトランプのようなカードを目の前に置く。
「これは?」
「今日はとても楽しかったわ、これはそのお礼」
どうやら捲ってみろってことらしい、俺は癖で警戒しながらゆっくりとカードを捲る。そこにはある番号が書かれていた。
「私の携帯のアドレスよ、IS状態でそれにかけたらプライベートチャンネルに繋がるわ」
「は、はぁ……」
「あなたには興味が沸いたわ。あの子がちゃんと成人(なった)した時、また話しましょ? どうせ話をかいつまんでいるでしょうから」
「……根掘り葉掘り聞くつもりですか」
「差し障りのない範囲でね」
絶えず微笑を浮かべたままのナターシャに苦笑いを向ける星野。
「……なら俺も渡しておきますね」
そう言ってナプキンを一枚取り、ペンをはしらせる。
「――これが俺のプライベート・チャンネルの回線番号です。そちらは何かと忙しい身ですから会って話す、というのは難しいでしょう?」
「あら? これはご丁寧に。早速使わせてもらいますわね」
紙を互いに交換したところで第三者が現れた。
「おーい! ナタル、間に合わなくなっちまうぞー!」
SS(シークレット・サービス)だったアメリカ代表操縦者――イーリス・コーリングが呼んでいた。
「では行くわね。また話したくなったらあなたのところの社長さんに訊ねるわね」
そう言ってからイーリスのもとに行き、最後にこちらに手を振ってから帰っていった。
「どうだった、有名人兼テスターのデータから作られる機体の搭乗者の感想は」
「俺と同じくらい変わり者だったよ。あっちは良い意味でな」
社長に聞かれたことに答えると社長は愉快そうに笑った。