IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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はい、おまたせしました。

今年最後の投稿となります。間に合ってよかった……

では、どうぞ。


三十八話 『レゾナンスにて』

 

 

 

その後、ナターシャ・ファイルスの任から外れた俺は皆が待っているであろう水着売り場に戻る。

 

すると人数が増えていた。

一夏をはじめとするお馴染みのメンバー、一夏、セシリア、凰、そして箒の姿もあった。

ん? ひとり足りない? 織斑先生に呼ばれてました。

そしてそこにはもうひとり、眼鏡三つ編の見ない顔がいた。だがどこか本音に似ている気がするとも思った。

 

「待たせた、すまない」

 

皆に謝罪する。どうやら買い物はすでに終わり待っていてくれたようだ。

 

「別に良いわよ、お陰で有意義な話ができたから」

 

と楯無。なにそれ俺がいなくなってからの有意義な会話とかへこむわ。

 

「――――では、待ち人も来たことでしょうしお嬢様、そろそろ帰りますよ。まだ溜まっている仕事があるのですから」

 

「んもー、ちょっとくらいいじゃない。今日の分は終わらせてるんだし。それに堅いわよ虚ちゃん、もうちょっと笑顔、笑顔を見せなさい」

 

「笑顔は別料金となっておりますので無理です」

 

「金とるのか……」と思わず一夏がツッコミを入れる。

確かに俺は今しがた来たところだが、ニコリともしない。というか……

 

 

「…………誰?」

 

俺が聞くと楯無会長が答えてくれた。

 

「彼女は虚、布仏虚。三年生で生徒会の会計よ。そして本音ちゃんの姉よ」

 

バッ、と扇子を広げながら言う楯無。その扇子には『姉』の文字。

そういわれると似ていなくもない、目もとや顔立ちがどことなくのほほんさんに似ていた。

 

「お姉ちゃん……」

 

その時、本音が気まずげに姉の虚に声をかける。すると虚はくるりと本音の方へ振り返る。

 

「あら? 本音、いたのね。道中のお嬢様と簪様の護衛ご苦労様」

 

「うん…………」

 

労いの言葉をかけているはずなのにまったく感じられない虚のセリフに物言いたげに頷く本音。これが姉妹というなら破綻している、まるで上司と部下だ。

 

「…………はぁ、分かったわ。戻るから先に行っててちょうだい」

 

「かしこまりました」

 

 

深々と一礼すると虚はきびすを返して帰っていった。姿が見えなくなったとき楯無がため息を吐く。

 

 

「あればっかりはどうにかできないものかしらね……補佐として有能、淹れる紅茶は世界一、でも鋼のようにお堅い」

 

それが珠に傷ね。と楯無は呟く。

 

いまだ沈うつな表情を浮かべたままの本音。

アレが姉、ね…………。

 

俺は無意識に本音の頭に手を置き、撫でる。といってもその仕草は雑なもので瞬く間に本音の髪がグシャグシャになっていく。

それを驚愕の表情で見ていた本音だったが、しだいに表情を弛めていく。

 

 

「――さて、私たちは虚ちゃんに呼ばれちゃったから帰るわ。本音ちゃんはどうする?」

 

「私もかえるよー」

 

…………あれ? 俺はどうなんの?

 

「星野君は織斑君や一夏君に着いていってあげなさいな」

 

いや、どっちも一夏じゃんそれ。

 

そこで楯無、簪、本音と別れた凛は一夏たちのメンバーと合流することとなった。

どうやらこっちも水着を買いに来てたらしく、ここに立ち寄ったら三人がいたらしい。

 

「――――早く選べよ」

 

「うっさいわね! 女の服選びは時間かかるもんなのよ! だいたいアンタだってアタシたちのこと待たせてたじゃない」

 

「それは会社と社長とMs,ナターシャに言ってくれ」

 

というと鈴が、セシリアまでも水着を選ぶ動きを止めた。

「…………どういうことよ、何で今その人の名前が出てくるのよ」

 

「どういうことですの? 何故今その人の名前が出てきますの?」

 

次の瞬間には凛の目の前に二人がいた。驚愕する間もなく服を掴み上げられながら問いかけられる。

 

 

「C、Calm down(お、落ち着けよ)二人とも。たださっき会ってきて話をしたってだけだ」

 

そして、一拍の間をおいて、

 

「「――――はぁあああぁぁぁああッ!?」」

 

店中に声が響いた。

 

 

 

――――――――――――

 

店側から怒られたセシリアと鈴はそそくさと気に入った水着を選び、時に一夏に見てもらい、店を出た。はい、これでも三十分経ってます。

 

「――で話を戻すわよ、アンタ!」

 

店から出ると鈴が噛みついていた。

 

「なんだ?」

 

「なんだ? じゃないわよ、何でアンタみたいなのがナターシャさんと会談出来るのよ!?」

 

「あー…………、何でだろうな。色々と会社にお世話になったからじゃないか? それか過去に助けたことがあるとか?」

 

流石にまだ実用段階にも至ってない兵器のことをペラペラと喋るのはどうかと思ったので伏せておく。

 

「………………サイン」

 

「は?」

 

「サイン、とか……ないの?」

 

俯いた状態で小さい声で何を言っているのかと思えばサインをねだってきた。そしてセシリアも。

これには俺も一夏もラウラもそして箒までもが困惑の表情を浮かべていた。

 

「いやぁ……ないかな」

ふとチャンネルに繋がる連絡先を思い出したが個人情報なのでやめておこう。

そういうと不満たらたらな二人。どんだけ好きなんだ。

そういえばMs,ナターシャは歌手とかやってるって言ってたな。次に会うときにねだろう。

 

「――――あれ? 皆さんお揃いで」

 

後ろから声をかけられる。振り向くとそこには山田真耶先生と織斑千冬先生がいた。

 

「山田先生と千冬姉、どうしてここに?」

 

「織斑先生だ――まぁ、公務中ではないからいいか。なに、少々買い物をな」

 

「臨海学校で着る水着を買いに来たんですよ…………星野君もですか?」

 

気まずそうにこちらに視線を向けて言う山田先生。え? 俺嫌われてる? 山田先生に嫌われてる?

 

 

「いえ、付き添いみたいなもんですよ」

 

そ、そうなんですか、とどこか安堵と落胆が混じった声色で返事をする。ねぇやっぱり俺嫌われてる?

「そうか。なら楽しんでこい。折角の休日だ。星野、お前もだ」

 

「はい……」

 

ちょっとショックを受けながら返事をする。そこで先生たちと別れた。

 

 

「――お腹減ったわねー」

 

おもむろに呟いた鈴、その意見に一夏が同意する。

 

「確かに腹減ったな」

 

 

でしょ? といいたげに一夏に視線を送る鈴。

セリシアも箒もラウラもそういえばすいたなといった顔をしていた。

 

「よし、じゃあ食いに行くか」

 

一夏が言うと鈴は何か分かったようで、口を出す。

 

「……もしかして、あそこ?」

 

「おう、いく場所は『五反田食堂』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――いらっしゃいま――って、一夏さん!?」

 

「久し振り、今ってやってるよな?」

 

「はい! やってます! どうぞ!」

 

赤面しながらも席へと案内する。俺達――特に鈴と箒が入ってきたときはあからさまに表情を変えていた。

 

「一夏、ここは?」

 

「あぁ、ここは五反田食堂っていって俺の友達のお父さんが営んでる店だ。めっちゃ旨い」

 

なるほど、だからここに来たって訳か。

 

「――――あれ、一夏じゃねぇか」

 

店から顔を出したのは先ほどの看板娘と同じ赤い髪色をしている男で伸ばした長髪をヘアバンドで止めている一見してチャラそうな男だった。

 

「弾! 久し振りだな!」

 

弾と呼ばれた男は一夏に軽く挨拶をし、後ろの箒を見てニヤつき、横の鈴を見てビビり、背後から感じる看板娘の気配に青ざめ、早々に退出していった。

 

 

「……意外とそうでもないのな」

 

凛はこの場から消えた弾という男のイメージを少しは修正した。

 

 

 

 

 

席についた俺達は――一夏の横に誰が座るか泥沼のキャットファイトをラウラと観戦しながら(勝ったのはセシリアだった)――注文をとってもらう。

焼き魚定食二つ、煮付け定食一つ、拉麺一つ、炒飯キョウザセット二つを頼み、来るのを待つ。

その間に一夏が昔話をしてくれた。どうやら今も一夏のそばにたっている看板娘は五反田蘭という人物で、兄に弾、この店を営んでる父親の厳、母親の蓮という家族構成らしい。そして蘭のこの反応、確実に一夏に惚れてますよ。

 

 

話が終わって少し経ったとき、料理が運ばれてきた。

どの料理も湯気が立ち上ぼり、うまそうな匂いが鼻孔をくすぐる。

 

「じゃあ、食べるか――いただきます」

 

全員が偶然にも手を合わせ、呟く。俺とラウラもそれに合わせて食べ始める。ちなみに頼んだのは二人とも炒飯キョウザセット。

 

 

「――へぇ、そんなことが行われているんですね、羨ましいなぁ」

 

蘭は一夏にIS学園のことが聞きたいといい、それに承諾して話始める。行事のことなどをひとしきり聞いた後、羨ましげに呟く。

 

「そうでもないさ、色々と男は大変だからな。な? 星野」

 

「ん? そうだな」

 

炒飯を食いながら返事を返す凛。その後、ラウラに「飲み込んでから喋るんだ、兄さん」と怒られていた。

 

 

「――でも女子としては羨ましい限りですよ! わ、私もIS学園に入ろうかと思うくらいですから! いえ、入ります!」

 

ふんす、と力強く意気込む蘭、それに乾いた笑いをもらす一夏――――その空気を両断する一声がかかる。

 

「本人がどうしてもなら良いと思うが覚悟だけはちゃんと持ってから行った方がいいぞ」

 

全員が凛を見る。その目には驚愕の色が浮かんでいた。

 

「か、覚悟って……」

 

そこまでは、といった感じで口ごもる蘭。

 

「一応、聞いておくがIS学園って何をする場所だと思う?」

 

 

凛は炒飯を掻き込み、お冷やを一度飲んでから話を続ける。

 

 

「…………IS操作を習って大会に出る」

 

「あながち間違いではないか」

 

蘭が言った回答に頷く凛。

 

「――――ちょっと待ちな坊主」

 

こちらが口を開こうとしたタイミングで横槍を入れられる。

厨房から出てきた怒気殺気丸出しの筋骨隆々の男を凛は見る。

 

「てめぇさんにどんな権利があるかしらねぇが娘の邪魔ぁするんなら容赦しねぇぞ」

 

セシリアと鈴はその迫力と殺気に気圧され、一夏は今まで見たことがない厳の態度に困惑し、ラウラは何の気なしに、しかし凛の方をちらちらと見ていた。

 

「――別に邪魔をするつもりはないさ。さっきも言った通り、覚悟を持ってからにした方がいいって言っただけだ」

 

「それが邪魔をしてるってわかんねぇか坊主」

 

俺一人だけだったら客なのに糞餓鬼っていいそうだなこの店主。

 

「げ、厳さん、星野はそんなやつじゃ――」

 

「ちょっと黙ってろ一夏の坊主」

 

厳に睨まれて戸惑う一夏。

 

「さぁ、てめぇさんもかえってくんねぇか。そんなやつに食わせる飯はうちにはねぇ」

 

顔を近付けて凄む厳にただじっと見ている凛。やがて凛の方が口を開く。

 

「戦争映画は好きか?」

 

「は?」

 

予想を超えた解答に厳は間抜けな声を出す。

 

「だから戦争映画は好きかって聞いたんだ。いやゲームでもいいぞIS/VS(インフィニット・ヴァーサススカイ)はやったことはあるか?」

 

「…………見ねぇし、ねぇな」

 

「IS/VSなら少し」

 

渋々といった呈で厳が答える。

 

「ようはそのゲームに出れるようにまで鍛え上げられる。実弾、刀、ビームライフルなんでもごされ、実践でな。死にはしなくても衝撃はモロに来るからな、痛いぞ」

 

それを聞いて二人は顔をしかめる。

 

「そして、代表候補者ないし操縦者、優勝者になれば国の広告塔になる、候補者に該当するのがここにいる凰・鈴音とセシリア・オルコットだ」

 

二人に驚愕する蘭。

 

 

「――そして、抑止力にも使われる。戦争の」

 

「世界に少数しかない最強のパワードスーツだぞ? それを求める国は多いし、昔の映画で使われていた核なんかよりも強いからな、互いに保持国が牽制するのに使う道具にされる、IS学園にいる場合はあそこは国の干渉が及ばないらしいからいる間は大丈夫だけどな」

 

二人も鈴とセシリアも微妙な顔をしていた。まぁセシリアと鈴は薄々分かっていたというような顔つきだった。

 

「皮肉なもんだ、最初はどうだったか知らないが今じゃ誰もが羨む戦争の兵器だ」

 

 

俺が話終わると蘭と厳は難しい顔をしていた。

 

「――ま、苦ばかりじゃない。行事や楽しいこともある。多分、普通よりも面白いことがあるかもしれないってのは利点だな。実際、今週海行くし」

 

最後の餃子を食べて手を合わせる。

 

 

「厳さん、蘭さんだったか? それをふまえた上で、家族で決めてくれ。一人で決めようとせず、我関せずじゃなくちゃんと話し合って決めてくれ、頼みます」

 

そういって頭を下げる凛。その行動を厳と蘭は困惑げに見ていた。

 

「…………おう、分かった」

 

やがて、口を閉ざしていた厳が口を開き、了承の言葉を告げる。次いで蘭も了承する。

 

 

「そうか、ありがとう」

 

もう一度頭を下げる凛を見て、厳はむず痒そうに頭をガシガシと乱暴に掻きながら厨房に戻っていった。蘭も盆を握りしめて裏に引っ込んでしまった。

 

「………………すまん、皆雰囲気悪くさせちまったな」

 

気まずげに「やっちまった」と額に手を置いて天を仰ぐ凛。

 

 

「何を気にする必要があるんだ兄さん。兄さんは言うべきことを、いずれ知るであろうことをいったまでだ」

 

「厳さんはきっと分かってくれてると思うから大丈夫だ、あんな厳さん見たことないけどな」

 

「…………そうですわね、星野さんの先ほどのお言葉でわたくしも少なからず再認識いたしましたからけっして無駄ではなかったですわよ」

 

と俺のフォローをしてくれるラウラ、一夏、セシリア、ありがてぇ……。

 

 

「…………ふん」

 

そんななか、今まで口を開かなかった箒が口を開いた。

 

「当たり前なことを言っただけではないか」

 

「――だが、あの皮肉はその通りだと思ったぞ」

 

言葉を分けて告げる箒。

皮肉……あれか。ISの存在にタンを吐くかのような言葉だったはずだが、それを肯定するってことは篠ノ之自身ISを快く思ってないし、姉妹関係も悪いのかもしれんな。

 

箒のことばに一同は苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていよいよ臨海学校当日――――




次回から臨海学校編となります。
やったぜ(白目)
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