IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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 ようやっと投稿できましたが、短めです。

それでは、どうぞ。


四十話『砂浜にて』

 

 

 

 「…………」

 

 今回、デュノアは臨海学校にこないと言われていたが何故か二人の教諭に連れられてその姿を見せていることに疑問を抱き、織斑先生を見る。

 

 だが織斑先生もそれを言われるのがわかっていたようで手で制され、目で「今は言うなよ」と訴えていた。

 

 「――来たな」

 

 ふと織斑先生が俺たちとは違う方向を向く。そこには学校、知人以外で顔に見覚えがある人物が今しがた着いたといった感じでいた。

 

 「アリシア・ルイス……」

 

 俺は無意識に名前を呟いていた。

 デュノアの義理の姉でもあり、刑務所に入っていたはずの人物が何故ここにいるのか。

 

 「――姉さん!」

 

 「久し振りね、シャルロット」

 

 それに気付いたデュノアがアリシアに向かって走る。アリシアもデュノアを受け止めて嬉しそうに話している。

 

 「積もる話は部屋に戻ってからにしましょう、先に部屋に戻っていてね、シャルロット。私は少し用事があるから」

 

 デュノアは少しだけためらうようなそぶりを見せたが大人しくアリシアの言ったことに従って、旅館の方に戻っていった。

 

 アリシアはデュノアを一度見てから俺たちの方へやってきた。

 

 「ありがとうございます、シャルロットに会わせていただいて」

 

 深々と織斑先生たちに頭を下げる。

 

 「今回は貴方にはもしものためのストッパーになってもらうために呼んだだけですから。もしもの時は頼みます」

 

 「――はい。分かっています」

 

 そうアリシアは言い、デュノアと同じように旅館の方に歩いて行った。

 

 「――――何故、デュノアがいるのかというとな、学園側の指示だ」

 

 アリシアがいなくなった後、織斑先生がおもむろに話し始めた。

 海辺に言っていた五人はまだ戻って来ず、俺、簪、セシリアの三人が話を聞いていた。

 

 「学園側の指示、ですの? 何故学園がそんなことを?」

 

 セシリアが聞くと織斑先生がこちらを見ずに答える。

 

 「委員会|(うえ)は学園に少ない代表候補生の技術力の向上のために、まがりなりにも候補生のデュノア(フランス)だけ仲間外れにするのはいかがなものかと言っていた」

 

 振り返ってさらに続ける織斑先生。その顔はどこか優れない。

 

 「理屈は通っているが、どうにも信用できんのだ。実際、この話は無理矢理な形でとおされてな、ならばと思いアリシア・ルイスを読んだというわけだ」

 

 「簡単に事情は話してある、だからもしもの時は抑えになってもらうことを受諾してもらっている」 

 

 といって織斑先生は一度ため息を吐く。だが、と一度言葉を区切り、続ける。

 

 「――あいつにはもう誰も手を出させん。それは私が保証する」

 

 織斑先生ははっきりと、力のこもった言葉で断言する。次にはその覇気のようなものはなりを潜め、この話は終わりだと言わんばかりに話題を変える。

 

 「――さて、お前達、いくら今が自由時間だからといってもあまりよろしくないことはするなよ? わたしが飛んでくるぞ?」

 

 ぞっとしないことをいう織斑先生に俺たちは苦笑いを浮かべる。そこで織斑先生は何かに気がついたかのような表情を俺に向けてきた。

 

 「星野、お前水着はどうした、ボーデヴィッヒのやつが嬉々として買っていたはずだぞ?」

 

 「いくらラウラの頼みでもこれを着るのにはためらいが生まれますよ」

 

 そういって俺は例の水着を見せた。織斑先生は固まり、山田先生は顔を赤らめていた。

 

 「た、確かに、それを着るのは勇気がいそうですね………」

 

 山田先生が赤ら顔で言ってくる。

 

 「ならこれを着るといい」

 

 袋に入った何かを俺に突き出してくる織斑先生。

 見てみるとそれはごく普通の男性物の水着だった。

 

 「選んでる段階で不穏なものを選ばせてる感じがあったのでな、ボーデヴィッヒに買うサイズをそれとなく聞いて買ってやった」

 

 楯無ェ……ラウラに何か変なこと覚えさせたらただじゃおかん。てか織斑先生、別に俺泳げないんでいらないんですけど。

 

 「なんだその胡乱げな表情は。私が買った水着が変だとでもいうのか」

 

 いや、変ではない。ちゃんと男性水着のトランクスのような形をしているやつだ。文句は微塵もない。

 

 「織斑先生、星野さんは泳げませんのよ」

 

 セシリアが織斑先生に言うと、目をわずかに見開いて驚く。それを横で聞いていた山田先生が露骨に驚く。

 

 「え、星野君って泳げなかったんですか⁉︎」

 

 「えぇ、俗に言うかなづち、というやつです」

 

 言ってて悲しくなるな、これ。

 

 その時、俺は織斑先生の瞳に火が灯ったのを知る由もなかった。

 

 「――星野」

 

 「はい?」

 

 不意に織斑先生が名前を呼んできたので振り返る。それと同時に、まるで逃がさないかのように肩に手をかけられた。

 

 「泳げるようにしてやろう」

 

 「え、ちょっとまっ――」

 

 そのまま服を掴まれ、ずるずると砂浜を引きずられていった。

 手も足も出ず引きずられていく様を二人はただ見ていた。遅れて山田先生が慌てながらついていったのが少しだけシュールだった。

 

 「――む、兄さんはどこにいったのだ?」

 

 「ラウラさん、それが星野さんは織斑先生に連れて行かれたのですわ。何でも泳げるようにさせてやるとか」

 

 海辺から帰ってきたラウラと本音は星野がいなくなっていることに気付き、そのばにいたであろうセシリア達に話を聞く。

 

 「――ふむ、ならば」

 

 話を聞いたラウラはふむと一息ついてから結論を出した。

 

 「せっかくなら私も泳げるようになりたいしな。セシリア、織斑きょ――先生はどっちに行ったのだ?」

 

 「それでしたらあちらに――」

 

 「情報の提供、感謝するぞセシリア!」

 

 セシリアに感謝を述べると脱兎のごとく走り去っていったラウラ。それをセシリアと簪は惚けたような表情で見ていた。

 

 「……何といいますか、当時のラウラさんを知る身としては――」

 

 「……ラウラさんのこと、学園内で噂なら聞いていたけれど――」

 

 二人が合わせるように発した言葉は重なる。

 

 「――――まるで別人ですわね。年不相応の女の子って感じですわ」

 

 「――――全然噂と違うね。普通の女の子みたい」

 

 二人の言葉は二人だけしか分からず、何となく可笑しくなってセシリアも簪もここにいない人物に微笑みを浮かべて笑いあった。




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