IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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遅くなりました。



四十五話『威力』

 

 

 

 

 「――『銀の鐘(シルバー・ベル)発動』」

 

 「――っ!」

 

 「――!」

 

 二人は目を見開き、驚愕した。福音が電子音で喋ったからではない。その()()()()である。

 

 大型スラスターと広域射撃武器を融合させ、三十六もの砲口をもつウイングスラスターから高密度に圧縮されたエネルギー弾を全方向へ射出できるのは知っていた。驚いたのはその『量』にである。

 全方向に埋めつくさんばかりの光弾が放たれた。

 ISの視界に広がる尋常ではない光弾量に一夏も星野も血の気が引く。

 

 「――一夏っ! 全力で避けろ!」

 

 福音をどうやって捕まえるかなど今は忘れひたすらに回避に専念する。一発でも食らえば、そこから二撃三撃とたちどころに食らってしまう、それは避けなければならない。

 

 「く、おおおおっ!」

 

 鳴り続ける警告音(アラーム)。なおも続く福音の攻撃。

 

 「――――『銀の鐘(シルバー・ベル)効果弱。パターンBへと移行します』

 

 福音が機械的に言葉を発したかと思えば突如銀の鐘(シルバー・ベル)を撃ち続けながら向かってきた。

 速くはないが光弾の量は変わりないのでひとまず逃げる。

 

 「くそっ、らちがあかねぇっ!」

 

 「硬ぇっ! なんつーISだよ!」

 

 一夏は回避しながら、福音の攻撃の前になかなか近づけず毒突く。星野は回避しながらも手にしている『レイジング・ビー』を打ち続けているが、効果は薄かった。大抵が避けられるかエネルギー弾に当たり、当たったとしても物ともしていない。

 

 このまま消耗戦を続けるのは良くない、なんとかしてこの状況を打開しなくては――

 

 星野がそんなことを考えていた時だった。

 

 「――――『パターンB、効果弱。パターンCに移行します』」

 

 福音の機械音声を聞くのが少し遅かった。ディスプレイにデカデカと表示される

 

 「! 星野ッ!」

 

 「ッ!」

 

 一瞬で間合いを詰められ、ヘッドギアを鷲掴みにされる。

 ギリギリとヘッドギアが悲鳴を上げていく。俺は危険だがこれ以上ない好機だと思い『カニバリア』を福音に向けたところであることに気づく。

 

 ――まて、この状況で福音が近付いたのは何故だ? 何故掴まれた、福音なら遠巻きに攻撃していても十分に脅威だ…………右腕?

 

 俺がそのことに気づいた時、ISの警告以上に脳が逃げろ逃げろと警鐘を上げる。

 俺のISのデータを使ってるならこれは右腕は――

 

 ――ズガァァァァァァァンッ!!

 

 「――……かっ…………!」

 

 星野の視界が白に染まり、気を失いかけるほどの衝撃が頭部を襲う。

 脳みそをシェイクされたような錯覚、意識が朦朧としISの制御を手放しそのまま落下してしまう。

 

――俺の右腕『カポル』の兵装と同じギミックか。

 

 ぼーっとする意識の中でただそんなことを思い、水面へと叩きつけられた。

 

 

 「星野ッ!」

 

 助けに行こうとした一夏だったがすでに遅く、星野は攻撃を喰らい墜落している。そして福音は次の標的に攻撃を始めていた。

 

 「くそっ、近付けねぇ――!」

 

 銀の鐘(シルバー・ベル)の発動で再び回避行動をとる一夏、やはり攻撃しようにも星野を助けに行こうにも福音が邪魔で行けない。

 

 「星野、返事しろ星野!」

 

 一夏はオープン・チャンネルで星野に叫び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………」

 

 福音の性能をまじまじと見て、仮作戦司令室にいた者たちは声も出せず驚いていた。

 

 「――――私は出るぞ! もう我慢ならん!」

 

 ラウラは怒気を隠そうともせず立ち上がり、旅館から出て行こうとする。

 

 「まて、まだ待機していろ」

 

 「教官!」

 

 そこに千冬が待ったをかけた。ラウラは千冬を睨むように見る。

 

 「まだ、束の作業が終わっていない。それまでは待て。織斑と星野であぁも苦戦しているんだ、一人で行ってもやられるだけだ」

 

 「ッ!」

 

 千冬の言葉に悔しそうな顔をするラウラ。確かに一人ではあの福音を相手取るのは荷が重すぎる。

 

 束は今()()()I()S()()ラウラたちと同じようにデータをインストールしていた。

 

 三人同時並行だというのに苦もなくコンソールをたたきつづけていた。

 

 回避行動を続ける一夏に数分経つというのに上がってこない星野をディスプレイ越しに見ていたラウラは奥歯を砕かんばかりに噛み締め、うっ血するほど拳を握りしめ耐えていた。

 

 「――終わったよーちーちゃん」

 

 束が千冬に声をかける、すると待っていたと言わんばかりにラウラは仮作戦司令室である旅館の最奥の部屋から飛び出ていく。

 

 「ちょっ!? ラウラさん⁉︎」

 

 「あ、待ちなさいよ!」

 

 「……待って、早い」

 

 残った三人も千冬からゴーサインが出たため、急いでラウラのあとを追った。

 

 「ふーっ……山田先生、織斑にチャンネルを繋いでください」

 

 「は、はい!」

 

 山田先生に指示を出しインカムを装着し、一夏に声をかける。

 

 「織斑、今専用機持ち四名が向かった」

 

 『あぁ! 分かった、けど星野が!』

 

 「分かっている、星野はこちらから呼びかけてみる、お前は福音に集中しろ」

 

 『わかっ――うわっ!』

 

 攻撃のはずみか、チャンネルが切れてしまう。ディスプレイでは逃げながらも斬りつけようとしている一夏の姿が映っていた。

 

 「山田先生、今度は星野に繋いでください」

 

 再度山田先生に指示を出し、星野へと声をかける。

 

 「星野、寝ている場合か、一夏一人では荷が重い、さきほどボーデヴィッヒ、更識、凰、オルコットの四名が向かったが着くのには時間がかかる――仮にもボーデヴィッヒの兄ならば男を見みせろ!」

 

 聞こえてるかもわからないが千冬は星野に向かって叫ぶ。

 

 

 「――来い、『ジャガーノート』」

 

 何かを呼ぶ声とともに星野の墜落した場所が水面から爆発したように水飛沫を撒き散らす。

 水面から出てきたものを見て一夏や千冬は驚愕に目を見開く。

 

 ――『確かにいいとこ見せるために頑張んないとな』

 

 「――!?」

 

 「⁉︎」

 

 チャンネルから聞こえてくる声は星野の声なのだが姿形が違いすぎた。

 灰色一色のカラーラングでラファールが基礎となっており、そこそこの機動力を備えている、そこにヘッドギアをしたのが星野のISなのだがそこにいたのは白と黒で配色された巨大な、まるでファンタジー世界に出てくるゴーレムにそっくりだった。

 全てが一回りも大きく、赤く光る双眸に少しばかり圧される。

 

 「なっ――」

 

 一夏が再度驚愕する。巨人がその空中に体躯を浮かせ――と言っても後ろに付いている他方向推進装置(マルチスラスター)をふかしているからなのだが――手にはISから見ても巨大と分かる無骨な槍を持っていた。

 

 「――『最優先排除目標、排除します』」

 

 福音が再び牙をむく、銀の鐘(シルバー・ベル)の発動である。

 一夏が回避行動を取るなか、星野はゆっくりとではあるが前進する。とたん光弾が四方から弾着し爆散する。

 

 「星野!」

 

 「心配ねぇ」

 

 一夏が叫ぶ。だがチャンネルごしに星野のそんな声が聞こえた。

 効いているそぶりすらない星野は槍を持ち直し、投擲モーションに入る。それを見て福音も動く。

 

 「――『銀の鐘(シルバー・ベル)発動』」

 

 四方に弾をばらまくのではなく一点に集中させて威力を高めた攻撃、それが星野を襲う。

 

 ――しかし、それも効いていないかのように動く。銀の鐘(シルバー・ベル)のビームが当たり、それを避けようともせずに槍を福音めがけて投擲する。

 槍が手を離れた瞬間、槍に隠れていた加速器(スラスター)が噴き出し、さらに加速する。

 十分な速力だったが福音はそれを見切り、射線上から体をズラし、槍は通過するはずだった。

 

 「――――⁉︎」

 

 しかしどういう訳か槍は途中で進路を変え福音の方翼の他方向推進装置(マルチスラスター)を食い破る。

 

 『――――――――――――――――――――‼︎‼︎‼︎⁇⁇』

 

 悲鳴。痛みを伴った絶叫に聞こえるそれは一段と大きく耳に突き刺さるように響き渡る。

 そしてバランスを崩し福音は海へと落下していく。

 

 「やったのか……てか、星野なのか?」

 

 一夏がフラグを回収しながら、こちらに話しかけてくる。しかし、油断なく福音の落ちた場所を見ながら。

 

 「――あぁ、俺だ。姿が違うのはどうやら束博士からインストールされた換装装備(パッケージ)が原因みたいだ」

 

 といって、手のひらを開いて虚空をつかむ動作をする。すると先ほどの槍が戻ってきて手に収まった。

 

 特殊兵装に該当する『ジャガーノート』。これは使用者のIS自体に装備される兵器。通常、ISにはエネルギーを消費して搭乗者を守る物理防御シールドともう一つ、IS自体を守るためにある装甲がある、この『ジャガーノート』はその装甲と物理防御シールドを搭乗者が動かせる限界まで厚くした防御極振りの換装装備(パッケージ)である。とはいっても流石に飛行するために幾らかの装甲は外されているので防御力は落ちている。

 また先ほど使っていた槍『グングニル』はその名の通り、狙った場所に必中する槍である。

 博士のくれたものなので性能は間違いなく高いと思っていたが、まさかここまでとは、予想の斜め上すぎてただすごいとしか言えない。

 

 「…………出てくれねぇな、Ms.ナターシャ」

 

こちらに向かう間に幾度となくナターシャにチャンネルを繋ごうとしていた。繋がりはする、するのだが繋がっても音信不通、数秒で切れるという状態がさきほどから続いていた。

 

 「――織斑先生、四人が来るのはどれくらいですか?」

 

 『あと数分で、そちらに着くそうだ』

 

 分かりました、といって一度チャンネルを隔離し、もうひとつ別のものに繋げる。

 

 「……――――どうした凛?」

 

 かけた相手は社長である。要点を社長に告げて確かめてもらうために。

 

 「――秘匿事項だから詳しくは言えないが社長、前にMs.ナターシャを連れてきたことがあったろ、二人に連絡取れないか?」

 

 「一人は分かるが……もうひとりは誰のことを言ってる?」

 

 「Ms.イーリス、Ms.ナターシャの護衛で来ていたアメリカの代表のイーリス・コーリング氏だ」

 

 「あぁ! あのS《護衛》で来ていた方か! 分かった少し待ってろ」

 

 「悪りいけど社長、イーリス氏と繋がったら連絡を繋いでくれ、こっちは今ちょっとたてこんっ――一夏っ‼︎」

 

 プツリとそこで連絡が切れる。社長、キーファー・アイスランドはとりあえず言われた人物にアポを取る。

 

 星野は一夏を捕まえて射線上からずれる。次の瞬間、先程のビーム状の銀の鐘(シルバー・ベル)よりも細い光線が通過する。

 

 「――――なんだ、あれ」

 

そして海面から出てきた福音を見て、二人は驚愕する。

 本来、多方向推進装置《マルチスラスター》、ウイングスラスターが搭載されている翼のような形状は形も無く、かわりに純白な二対の翼が生えていた。

 

 『第二次移行《セカンドシフト》――!』

 

 つながっているチャンネルから息をのむ音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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