IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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なんか、想像以上に福音が強くなってしまった……


四十六話『危機』

 

 

 

 

 

 第二次移行《セカンドシフト》――文字通り、ISの次の段階の進化である。

 速度などの機体性能の向上、稀に唯一使用の特殊能力(ワンオフ・アビリティ)が発現することがあるらしい。

 

 ――それが福音では()()なのだろう。

 

 純白の二対の翼。神々しく、美しさも感じられる福音はその翼を広げ、丸めていた体軀を伸ばしこちらを見る。

 

 ヘッドギアごしに流れる文字の羅列が今までの比でなく大量に流れていた。

 全てが流れ終え、それから動き出す。

 

 「――――♪――――――――♪――♪」

 

 常時、歌を唄っているように聞こえるようになり天高く飛び上がる。

 

 「何だ?」

 

 ISの望遠モードで福音を見るとかなり高いところまで上がっていた。

 

 福音が何か行動を起こす前にチャンネルに連絡が入ってくる。

 

 『凛、繋がったぞ』

 

 社長の声でそれだけ言うとラジオの周波数をいじった時のようなノイズが一瞬鳴り、次には全く別の声が聞こえてきた。

 

 『――ったく、アタシだってあんまり暇じゃないんだ、要件なら早くしてくれリン・ホシノ』

 

 アメリカの代表操縦者、イーリス・コーリングが気だるげに話しかけてくる。

 

 「申し訳ない、一つだけ確認したいことがありまして。Ms.ナターシャはどちらに?」

 

 『あぁん? さてはナタルの追っかけか? 残念だがナタルは今ココにゃいねぇぜ。ISの仕事でもやってると思うぜ』

 

 「連絡は着きますか?」

 

 『あぁ? 何でそんなことを教えなきゃいけない」

 

 剣呑な声色で言うイーリスにお願いします、とだけ言う。しばらくの沈黙のあと、あれ? という声が聞こえていた。

 

 『――あれ、かかんねぇな。いつもなら三コールくらいでかかんだけどな。友達も少ねぇしなん――――』

 

 突然回線がブツリと切断され、金属がこすれるような鳥肌の立つ音が響いてくる。

 数秒でそれは止み、代わりに沈黙が続く。

 

 「――?」

 

 なにかと思ったがすぐにまた金属のこすれる音がし、また止む。そして今度は何かが聞こえてきた。

 

 『・・・・ ・ ・ー・・ ・ーー・  ーー  ・』

 

 『・・・・ ・ ・ー・・ ・ーー・ ・・ ・・・ ー・ ・ー ー ・ー ・ー・・』

 

『ー・・・ ・ー・ ・ ・ー ー・ー ーー ・』

 

 「――!」

 

 それでブツリと完全にチャンネルが切れる。

 先ほどの内容がISで変換されるが、されるまでもなく分かった。

 ――これは軍用英文モールス信号だ。

 モールスはトン、ツーの連続音を組み合わせたもので、決まっているトン、ツーを組み合わせて英文をつくるといったものだ。

 

 さきほどのは短い英文が三つ。どちらも救難信号のようなものだった。

 

 『HELP ME(たすけて)』

 

 『HELP IS NATAL(ナタルをたすけて)』

 

 『BREAK ME(わたしをこわして)』

 

 と、短いがとても誰かの想いがこもったものだった。

 

 誰から送られてきたのかは定かではない。だが、英文に含まれていた『わたしをこわして』――もしかしたら福音が送ってくれたのかもしれない。そして、今闘っている福音にはナターシャが乗っているんだと分かった。ならば――

 

 「――絶対助ける」

 

 言われるまでもない、ISのために人が死ぬのは見たくない。絶対止める。福音も止めてやる。ナターシャさんの機体(子供)を死なせるわけにはいかない。

 

 超上空にいる福音を睨むように見ると、丁度福音が動き始めた。

 

 「来るぞ、星野っ!」

 

 一夏が警戒を高める。しかしそれも福音の攻撃を見て絶望に変わる。

 

 さきほどのように回転し、その純白の二対の翼から銀の鐘(シルバー・ベル)の二倍の量が飛んでくる。さらに羽を数度羽ばたかせる動作をしたかと思えば、純白の羽が雪のように舞い降りてきていた。

 トドメといわんばかりにビーム状の銀の鐘(シルバー・ベル)が発射される。

 

 『――『墜落堕天使(エンジェル・ダスト)、発動』

 

 福音が電子音で喋り、そんな単語を口にする。おそらくこの繰り広げられている攻撃なのだろうが、そんなことに気付く余裕もなく集中していた。

 

 「一夏ッ、後ろに隠れろ!」

 

 一夏を呼び、『ジャガーノート』を展開している俺の後ろに隠れさせる。

 

 次々に光弾が機体に着弾し、爆発していく。銀の鐘(シルバー・ベル)も当たるがものともせずに耐える。しかし――

 

 「――あぁ⁉︎」

 

 墜落堕天使(エンジェル・ダスト)と呼んでいた純白の羽が機体に、シールドに貼り着くとズシリと重くなる。同時に展開していたエネルギーシールドを維持するためのエネルギーをガリガリと持っていく。ヤバイと思ったが既に遅く、次々に羽が着いて機体が重くなっていく。

 

 「一夏、この羽に触れるな! この羽、機体に着くと動きが鈍くなって、エネルギーを持ってかれるぞ!」

 

 「なっ⁉︎」

 

 一夏を庇いながら、しかし純白の羽は凛の機体を覆うほどにまで着いてしまっていた。『グングニル』にもすでについていてしまっており、とても使えるような状態ではなかった。大容量エネルギー補充器(バックパッカー)を駆使して、機体を維持させる。

 だが、そんな大きすぎる隙を、福音は見逃すはずがなかった。

 

 『――『銀色の音色(シルバー・トーン)、発動』

 

 見た目は銀の鐘(シルバー・ベル)だった。しかし、それとは違い、()()があった。頭上で展開され、放たれるはずだったが、それは凝縮され、一本の細い線となり、こちらに向かって放たれた。

 

 何かヤバイ。そう思った凛は残量など無視し、『ジャガーノート』の遊離装甲展開、物理防御シールド展開、エネルギーシールド五重展開させて耐える。

 

 薙ぐように一線する一撃は明確に『ジャガーノート』に衝突する。

 

 「――嘘だろ」

 

 しかし、銀色の音色(シルバー・トーン)は想像の上をいっていた。

 『ジャガーノート』の遊離装甲を切り裂き、物理防御シールドを突破し、エネルギーシールド五重展開を削り切って、攻撃が当たる。右胸から肩に抜けるような一線は、それでも分厚いはずの装甲を破壊して操縦者にダメージを与える。

 

 「ぐっ……! 万事休すか?」

 

 「星野! 大丈夫か⁉︎」

 

 肩を切られただけに収まり、機体に着いた羽も剥がれ落ちたが、かなりのダメージを負ってしまった。大容量エネルギー補充器(バックパッカー)もだいぶ使ってしまい、残量が心許ない。これで、次射が来たら耐えられない。

 

 「――――てぇっ!!」

 

 そこにチャンネル越しに聞き覚えのある声が響く。何かに気づいた福音は行動を起こそうとしたが、さきほどの三種類の同時攻撃の反動のせいか回避行動は取らず、自身を翼で覆って防御姿勢をつくる。

 そして一拍を置いて攻撃が四回着弾する。

 

 「――――⁉︎⁉︎」

 

 一回目、翼に着弾すると、弾頭が突然捻れ、食い込んでいく。さらに弾頭は加速し、あわや消し飛ばさんとしたところで弾丸が耐えられずに消失する。しかし、確かに弾丸は翼を抉り、想像以上の威力を見せつけた。

 

 二回目、至近距離で爆撃でも起こったのではないかというほどの爆風と、熱量の暴力の余波がこちらまで降りかかる。福音を覆っていた翼全体を焦がし、こちらも想像以上の威力を見せつけていた。

 

 三回目、音も無く一発の弾丸が翼に命中する。すると着弾した途端、翼が無理矢理剥がされるように音を立てて開かれ、中の福音が露わになる。

 

 四回目、福音本体に着弾したかと思えば光の鎖のようなものに身体を縛られ、身動きが取れなくなり、もがいていた。

 

 「待たせたな――兄さん! 織斑一夏!」

 

 「一夏! 星野! 助けに来たわよ!」

 

 「一夏さん! 星野さん! 大丈夫ですか!」

 

  「凛君! 織斑君!」

 

 チャンネルに四人の呼ぶ声が響く。

 

 「…………やっと来たか」

 

 ラウラ、鈴、セシリア、簪が到着したところであった。

 

 

 

 

 




ならば他の奴らも強くするまで。
無傷で助けるとは言ってない(白目)
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