IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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四十二話の内容を少しばかり変えました。

 まさか別で用意したやつとすり替わっているとはっ!

まことにすいませんm(_ _)m



四十七話『助ける』

 

 

 

 

 ――なんとか助かった。

 凛は四人の姿を見て胸をなでおろすように息を吐き出す。

 

 「――兄さん、大丈夫か!?」

 

 「あぁ、助かった、良いタイミングだったぜ」

 

 一夏を含む全員を一度呼ぶ。これからの作戦会議のために。

 

 「ラウラ、鈴、セシリア、簪、アレはいつまでもつ?」

 

 四人に疑問を投げかけながら福音を見る。

 

 「……詳しくはわからないけど……もって数分かもしれない」

 

 拘束を解こうともがいている福音を見ながらあの拘束をしたであろう簪は告げる。

 

 「そうか……ならあまり時間はないな」

 

 福音の第二次移行(セカンドシフト)の強力さ、あの機動力の高さ、どうやって福音を捕らえるのか考える時間もあまりない。

 そこで先ほどから連絡のない織斑先生らに指示を仰ぐことにした。

 

 『――織斑先生、山田先生、聞こえますか? ただいまラウラ、鈴、セシリア、簪の四名と合流。第二次移行(セカンドシフト)した福音と交戦、苦戦中。なお、やはり福音の中には操縦者のナターシャ・ファイルスがいる模様、そちらで何か案などはありませんか?』

 

 正直、なくは無い。だがそれは操縦者を無視した場合だけだ。それではダメだ。

 

 『――――――――』

 

 ……数秒待っても応答はなかった。何故だ? ちゃんとチャンネルは繋がっている、何か異常が――

 そこで舞い落ちる羽が視界にはいる。

 

 「っ、ラウラ!」

 

 ラウラの名を叫ぶ。ラウラも急に呼ばれて驚いていたが凛の顔を見て動き出す。

 

 AICを大きく張り、全員を羽から守る。AICに触れた羽は時が止まったかのように微動だにせず溜まっていく。

 

 「兄さん、これは?」

 

 「これは第二次移行(セカンドシフト)した福音が出したものだ。触れるなよ、触れたら機体がバカみたいに重くなるうえ、エネルギーが持ってかれるぞ」

 

 それを聞いた一夏以外の全員が息を飲む。

 

 「あと、見たらわかると思うんだが、頭の上の輪っかから出るビームを溜めた(・・・)ような攻撃は絶対に避けろ。食らったら一発で堕ちる。ISには絶対防御(乗ってるやつを守るもの)があるが無いものと考えたほうが良い」

 

 全員が戦慄の表情を浮かべる。それを見ながら俺は話を続ける。

 

 「さて、手短に今考えた作戦を伝える……正直できるかかなり厳しいと思う。何か意見か案があったら遠慮なく言ってくれ」

 

 軋みを上げながら拘束を破壊しようとしている福音を横目にみんなに告げる。

 

 「鈴とセシリア、ラウラ、簪は福音に攻撃を与えてくれ、当たらなくて良いが一夏が近づけるだけの隙を作ってくれ。俺はヘイトを集めながらあいつをつつく。一夏はそれに乗じてぶった斬れ」

 

 「で、でも中に人が乗ってるんだろ? 零落白夜なんて使ったら……」

 

 一度が不安そうに言ってくる。気持ちもわかる、零落白夜は操縦者にも攻撃を与えうることのできるものだ。そんな物を使えば確かに搭乗者にも危ないだろう。

 

 「――大丈夫だ。狙うのは福音本体じゃない、福音のあの翼だ(・・・・・・・)

 

 一同が「こいつ何言ってんだ」と言うような目で見てくる。

 

 「だからな、あの翼は福音の第二次移行(セカンドシフト)で出たやつだ。見た感じエネルギーの塊だ、なら一夏の攻撃で削るしかないだろ」

 

 俺の発言にセシリアがため息を吐きながら意見する。

 

 「はぁ……仮にそうだとしますわ、ですがその後の話です、そのあとどうやって福音を捕まえるんですの? それからあれが一夏のそれで切れなかった場合はどうしますの?」

 

  もっともな意見に俺はただ一言だけ告げる。

 

 「そん時は福音のエネルギーが切れるのが先か俺らが倒れるのが先かになるな」

 

 「それは……」とセシリアがさらに言おうとしたところで遮る。

 

 「ま、何とかなるさ。俺たちは六人もいるんだ、それも最高の奴らがな。カバーしあえばそうそう墜ちんよ」

 

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべるとラウラ以外は苦笑する。

 

 と、そこで福音の方からバキバキと音が聞こえてきた。いよいよ捉えておくのも限界か。

 

 『……………………――――――だ……か……そっ………きこ……い…………か!? こ……らは…………I………とこ…………きをつ――』

 

 一瞬だけ繋げていたチャンネルから声が聞こえてきた。しかしそれはほとんど聞き取れずまた切れてしまった。

 

 それは全員にも聞こえていたようで訝しげな表情を見せていた。

 

 「……何て言ったと思う?」

 

 「そんなの分かるわけないじゃない」

 

 一夏が聞き、鈴が皆の心境を代表するように答えた。

 

 ――ピロン。

 

 今度は場違いなほど間抜けな音が響く。全員が星野を見る。

 

 「何だこれ?」

 

 星野が確認するとディスプレイに表示されたのは『Gift from Wonderland(不思議の国からの贈り物)と書かれていた。

 

 しかしそれ以上は開けず、そのままディスプレイ上に小さく残る形になってしまった。

 

 本当に何だこれ、ISになんかされたのか? もしかして福音の影響か?

 

 「――――! ――――――――――!!!!!!」

 

 今度こそ完全に福音を拘束していたものが壊れた。考えてる時間はない。

 

 「全員、作戦開始っ!」

 

 各自移動し、自分の役割を果たす。

 

 打ち出してくる銀の鐘(シルバー・ベル)を避けなながら鈴、セシリアが攻撃を行う。

 

 どちらも篠ノ之束から承った兵装、鈴のが高火力型兵装『パイチィ』。セシリアが狙撃型兵装『ロック・シューター』。

 

 どちらも先ほど見せたように今までの攻撃よりも強く、福音に確実にダメージを入れていく。

 だが福音も馬鹿ではない。二人の攻撃を食らいながらもだんだんと攻撃をズラしていく。

 そこにラウラも加わり、対IS突破型兵装『リヒトー』を撃ち込む。

 

 「――!? ――――――――!」

 

 不意を突かれながらも反撃、銀の鐘(シルバー・ベル)を放つ。

 どちらも避けて、食らって、攻撃しての繰り返し、壮絶な戦闘行為だった。福音を圧していると思っていたが福音はまたも攻撃が芯で当たらないようズラし始めた。

 だが、そうは問屋がおろさない。福音が二人の攻撃を避けるのに集中している中、簪は静かに狙いを定めていた。

 

 福音が二人に銀の音色(シルバー・トーン)を使うまでは。

 

 ――今っ!!

 

 簪はその好機に兵装『ダイヤモンドダスト』を使った。

 効果は先ほどと同じ、着弾した対象物をAICと同じ原理で強制的に縛り上げる。

 

 『ふたりとも!』

 

 「『――おう!』」

 

 みんなが作ったこの瞬間は無駄にはしない。俺と一夏は多分、そう思っていただろう。

 

 【――承認。Gift from Wonderland(不思議の国からの贈り物)を解放』。

 こんな時に開かれた物を鬱陶しいと払いのけようとして目を見開く。

 こんな偶然が、いや……だが使える、と。

 その贈り物をパッシブにし、右手に出して使えるようにする。

 

 星野はその速度をもって一夏よりも少しだけ早く福音の懐に入っていた。

 一夏は瞬時加速によって福音の背後に回っていた。

 

 「――――――――――――――――!?」

 

 福音が暴れる。だがもう遅い。すでに星野の手に握られていた物は発動し、福音に取り付いていた。

 

 ――一度だけ見たことのある、授業でも、ほんの一端だけ触れたある兵器、剥離剤(リムーバー)。福音と操縦者を傷つけることなく止められるただ一つの方法。

 

 それを、使った。

 

 「――!――――――――!!!!」

 

 危機を感じ取ったのか、光の鎖を力づくで引き千切り、こちらの頭を掴み上げる、前にやったように光弾でも当てるつもりなのだろう。

 

 「――切れろぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!」

 

 絶好のタイミングで一夏の零落白夜が福音に襲いかかる。

 その一撃は福音の片翼二枚に接触し――

 

 「――!」

 

 必殺の刃が翼の半分まで切り裂いて、止まった。

 

 「終わりだ福音」

 

 だが、その一瞬は福音にとって致命的な一瞬だった。

 

 福音に取り付いた四本の脚のようなものから発せられた電撃が福音の体を灼く。

 

 『――――! ――!――――――「アアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」』

 

 苦痛を伴っているのか、先ほどとは比べ物にならないくらいの絶叫が響き渡る。

 それに比例するようにガッチリと『ジャガーノート』で強化、拡張したバイザーを掴まれ、潰さんとしてる。

 

 「おらぁあぁぁぁあっ!」

 

 バキリ、とバイザーに亀裂が奔る。それでも剥離剤(リムーバー)を離さない。

 

 「アアアァァァァァアアアァァァアアァ、ア、ア……ァ…………あ……ぁ」

 

 変化はすぐに目に見えるものとして現れた。

 最初に周囲に漂っていた羽根が消え、次に翼が消失した。そして最後に福音がゆっくりと粒子化し、星野の右手には福音の(コア)が握られていた。

 

 そして左腕で福音の操縦者、ナターシャ・ファイルスを抱きかかえる。

 

 「……ふう」

 

 上手くいったことに安堵の溜息が出る。不確定要素の方が多かったのに、よく成功できたものだ。

 

 「おい、星野、お前大丈夫なのか⁉︎ 頭グシャグシャになってんぞ⁉︎」

 

 「あぁ? 見た目以上に酷くない。ただバイザーを潰されただけだ。メインディスプレイは使えなくなったが、投影型ディスプレイは使えるから安心しろ」

 

 びっくりさせんなよ……、と一夏安堵していた。

 ラウラ、セシリア、鈴、簪も一夏と同じ反応をしたので説明すると同じく安堵の息を吐いていた。

 

 「――戻ろう、臨海学校に。先生たちに報告しに行こう」

 

 チャンネルが繋がらないことは周知の事実だったので全員が頷き、今まさに移動しようとしたその時だった――

 

 『――聞こえるか! 誰でもいい、応答しろ! 織斑! 星野! オルコット! 凰! 更識! 応答しろッ』

 

 突然、チャンネルが繋がり、酷く焦った声色の織斑先生が怒鳴っていた。

 

 『こ、こちら

セシリア・オルコット。私を含め、全員が無事、および目的の回収に成功しま――』

 

 『全員無事なら急いでその場から離脱しろ! そちらに国籍不明の謎のISが二機向かっている! 急げ、時期に追いつかれる!』

 

 『なっ……⁉︎』

 

 伝えられたことに一堂に動揺が奔る。全員を見て凛は口を開く。

 

 「……全員、エネルギーはどれくらい残ってる?」

 

 「……俺は四分の一くらいだ」

 

 「わたくしは半分ほどですわ」

 

 「あたしもそれくらい」

 

 「私もそれくらいだ」

 

 「……私も」

 

 「なら、少ない順に俺の持ってる大容量エネルギー補充器(バックパッカー)で補充してくれ。あまり量はないから均等にな」

 

 操作して、大容量エネルギー補充器(バックパッカー)をラウラに譲渡する。

 

 「セシリア、頼む。一夏、落とすなよ?」

 

 セシリアにナターシャを、一夏に福音のコアを渡す。

 

 「…………兄さん?」

 

 ラウラは不審な顔をして、そして気付いたんだろう。激しく拒否する。

 

 「――ダメだダメだダメだ兄さん! それでは兄さんが危ない! それに兄さんだってボロボロじゃないか!」

 

 凛を掴み、止めようとするラウラ。それに周りも同調する。

 

 「星野、それはダメだ。一緒に来い」

 

 「アンタ、それはダメよ」

 

 「星野さん……それは最悪のプランですわよ」

 

 「星野君、ダメ、絶対」

 

 みんなが星野を止めようとするが星野も案を変えようとしない。

 

 「頼む。ここで誰かが時間を稼がないといずれ全員が追いつかれるんだ。その二機の目的が福音のコアの略奪と操縦者の殺害ならこの上ない好機なんだ。それにそんな不明機二機がどんな攻撃をしてくるのか分からないのに生身のナターシャさんを担いで戦闘行為なんて出来ないだろう」

 

 「っ、だが一人で戦うことはないだろう」

 

 「この中の誰よりも耐久力があって防御力がある俺が適任だ。それに何も闘うわけじゃない、時間稼ぎだ。お前らが逃げれたら逃げるさ」

 

 「……………………助けにくるからな、兄さん、絶対に」

 

長い葛藤の末、ラウラが絞り出した言葉は了解の意だった。

 

 「ああ、助けに来てくれ」

 

こりゃあ、この件が終わったら怒られるな。後でラウラのわがままいっぱい聞いてやるからそれで許してくれ。

 

 「さあ、とっとと行くぞ織斑、セシリア、鈴、更識」

 

 「ちょっと待てよ――」

 

 「助けたいと思うならさっさと動け。そしてまた来れば良いんだ」

 

 ラウラの言葉に全員がおし黙る。

 

 「絶対無茶すんなよ……」

 

 しねぇよ、早く行け。と凛は一夏にいう。一夏や簪は最後まで心配そうにこちらを見ていた。

 ラウラだけはこちらに一度も振り返らなかった。

 

 「――――……ふうぅ〜」

 

 全員の姿が米粒よりも小さく見えるまで行った時、凛は押しとどめていた息を吐き出した。

 

 「何も死ぬつもり何て無いっつうんだ。ヒーローじゃあるまいし、俺が奇跡的に二機を倒すことが出来るなんて毛ほども思ってねぇよ」

 

 ただ、と星野は言葉を続ける。

 

 「――ただ、やっと家族に会えたんだ。泣かせることはあっても失わせるなんてのを味わさせるわけにはいかねぇよ」

 

 覚悟を決めた瞳で臨戦態勢をとる星野。

 

 ――大容量エネルギー補充器(バックパッカー)は渡したため消失。兵装は『グングニル』、『カポル』、『レイジング・ビー』、『アヴェンジャー』のみ。『ジャガーノート』、損傷率九%、内臓エネルギー・内臓シールドエネルギー七十六%・四十二%、『弐式』及び『レイブン』のエネルギー残量ともに五十%。

 

 

 そこまで確認して二機の危険反応を捕らえる。俺はグングニルを構え――

 

 「来いよ。死ぬ気はねえが死ぬ気でテメェらを止めてやる」

 

 ――思い切り投擲した。轟、という音とともに放たれた槍は右側の機体にぶち当たる。

 

 大きく仰け反った一機、次はもう一機――

 

 頭上を通過する寸前、空気が爆ぜた。

 

 ――ドウゥゥゥッ!!!!

 

 それとともに急激に進路変更する一機。

 

 「――よォ、どこいくんだよ、お前らの相手はここだぜ?」

 

 俺を攻撃対象として認識したのか、ただこちらを観察するようにその場に留まり見ていた。

 

 俺は二機を睨みつける。一片の隙も油断もなく睨めつける。こうでもしなければ折れてしまいそうだった。

 

 二機から放たれる不気味な空気と、異常な殺気に。

 

 ――血のような赤と新鮮な臓物のような紅を混ぜ合わせたような緋に、太陽光すらも飲み込んでいるのか全く反射光がない不自然なほどに黒いツートンのカラーリング。

 

 ――汚れ、一切の不純を否定するかのような純白の白。全体がその純白のカラーリングの機体。

 

 「…………はっ、負けねぇよ」

 

 無意識に出た言葉は一言だけで後は口を噤んだ。

 

 星野凛は知らない。

 

 

 

 搭乗者にはSSS(トリプルエス)レベルでの厳重な監視、警戒と少しの異常でもあれば搭乗者が殺戮対象に指定されるほどの徹底さ。ペンタゴンなみの厳重な処置が施されているはずの忌み名がついた機体『No.666(ナンバー・オーメン)』《破戒》【テスカ・トリポカ】』

 

 ――――――――そして、ISには存在せす、研究段階で構想、データは闇に抹消された禁忌中の禁忌。

 

 あの束ですらそのデータから一度製作したものの、その過程で全てを破棄し、コアネットワークの使用番号を永久凍結し、ISのコアごと破壊して打ち止めたほど。

 

 ひとたび乗れば永遠にこちらの世界(・・・・・・)には二度と還って来れず、永遠と血や魂を啜るために人を殺す肉袋と化す『No.444(エンジェルナンバー)』《永久欠番》【アーカード】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 存在しないはずの者たちとの戦争が、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 臨海学校がクライマックスになるまでは――

 ISのパワーインフルを――

 ――止めないっ!!
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