IS~ある少年の過去と記憶   作:1056隊風見鶏少尉

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四十九話『結末』

 

 

 

 

 「――うおおおおおおおぉおおおおぉおおおおッッッッッ!!!!!!」

 

 

 右手には『グングニル』を左手には『レイジング・ビー』を持ち、雄叫びをあげて突撃する。

 

 『グングニル』を緋黒い機体――『テスカ・トリポカ』に狙いをつけて投擲、更に『レイジング・ビー』を純白の機体――『アーカード』に向けて撃つ。

 

 

 「――――――――」

 

 『pjmj!ptdwtpj?gjaukxkmp!』

 

 『テスカ・トリポカ』は黙したまま、『アーカード』は福音の時とは比べ物にならないほどの不協和音を放ちながら、しかし攻撃を受けた。

 

 手応えを見受けられる『グングニル』に『レイジング・ビー』だったが、それも二機の姿を見て意識を切り替える。

 

 ――まったく攻撃が当たってない。

 『レイジング・ビー』の弾丸は根本からかき消えていき、『グングニル』に至っては透過しているとしか考えられない。

 

 その時、ぞわりと背筋が粟立つ。IS、『テスカ・トリポカ』が動いた。

 

 ――『聖職者には断頭台を(デス・ストーカー)

 

 聞こえたのはそんな無機質な声と名称だった。

 ハッと我に帰ったのは自身がロックされていることと、危険だということを知らせるアラームだった。

 

 「――うおっ」

 

 急いで飛びのこうとして、視界の端に何かを捉える。見るとそれは何かの形に似ていた。

 そして、上を見て絶句した。こいつはギロチンの処刑台だった。

 

 今更反応しても遅い、図ったかのようなタイミングでギロチンの刃が落ちてきた。逃げることは不可、俺に出来ることはその間に『グングニル』と『レイジング・ビー』を割り込ませることだけだった。

 

 

 

 鈍い音が響いた気がする。気を失っていたのか、あの後どうなった?

 

 遠くに聞こえていたアラームが近くで聞こえた。見ればそれは緊急の警告。シールドエネルギーが残量の半分ほど削られ、手にしていた『レイジング・ビー』は砕け散り破片を手にしていた。『グングニル』は握られていない。そしてどうやら俺は海の中にいるようだ。

 

 そこまで考えて意識が完全に覚醒する。

 

 ごぼぉっ! と息を吐き出してから『レイブン』を起動させ、一気に上昇する。

 

 海面から飛び出たのを見計らったかのように再びギロチンが姿を表す。

 だが『レイブン』の速力とギロチンの落下速度では前者の方が速い。

 ギロチンをかわして『グングニル』を呼ぶ。正直、賭けに近かった。

 

 だが、その賭けには勝った。水面から一本の槍が飛び出てきて星野の手に収まる。

 持った瞬間、『グングニル』を『テスカ・トリポカ』に向かって突く。

 

 ――『我、光を身元から手放します(ラブ・オールイン・ワン)

 

 ――ガキンッ!

 

 硬いもの同士がぶつかり合う音が響いた。『グングニル』の穂先は『テスカ・トリポカ』には当たらず、かわりに周りに出現した光のカーテンのような膜に遮られた。

 ゆらゆらと揺れるそれにどんなに力を込めてもそれ以上進むことはなかった。

 

 「……くそが」

 

 攻撃が当たらないとは思っていたが予想外のことに悪態を吐く。まったくの無傷か、避けるかだと思ったのにまさか膜に遮られるとは。

 

 『テスカ・トリポカ』はそう機械じみた音声で呟いていた。

 どうやって止まっているのか、まったく原理が分からない。

 

 このままでは埒があかない、持久戦でも短期戦でもこちらに勝てる要素はない。ただ時間を稼げばいいだけ……そう思い出し一度距離を取ろうとするが、まるでさせないように『テスカ・トリポカ』が動いた。

 

 ――『陽は雨が在るからこそ映える(レイン・オブ・サン)』。

 

 『テスカ・トリポカ』の頭上に光でできた輪が、出現し、ガシャガシャと機械音をたてて動き始める。それと同じくして、どういうわけか光弾が雨のように一帯に降り注いでいた。

 

 「――反則だろおい!」

 

 そう叫ばずにはいられなかった。見たところ、一発一発はあまり威力がない。しかし、その量は先ほどの福音(シルバリオ・ゴスペル)の比ではなかった、比喩なのではなく雨そのもののように降り注いできた光弾をかわそうと翻弄するがかわせずいくつも受けてしまう。

 たまらず、ジャガーノートのエネルギーシールドを二枚、物理防御シールドを三枚展開、自身を守るように薄く広く展開して光弾から身を守る。これでジャガーノートのエネルギー残量は十九%。

 

 どんなに早く動いても雨からは避けられないのと同じで次々に光弾に被弾する凛。

 逃げ続けるのが目的でもこのままでは先にエネルギー切れでジ・エンドになってしまう。何か手を打たねば。

 

 ――そこで、星野凛は見落としていた。すこし前から戦闘に参加すらせず、ただただ傍観しているだけの謎のIS、『アーカード』に。

 目の前のことに手一杯の凛は忘れていた。

 

 「くそっ! グングニル!」

 

 苦し紛れに『テスカ・トリポカ』に向けて全力で投擲する。

 が、やはり何かに守られているように槍が弾かれてしまう。

 

 ――どうする? 逃げようにもとてもかわせない攻撃に、あてようにも当たらない攻撃。まるでチーターやバグを相手にしている気分だった。

 

 『レイブン』のリミッターを解除し、愚直に加速させ、逃げる。

 

 進めば雨が降っていない場所に出るように、穴があるかもしれないと思っての行動だったがいくら距離が離れても止む気配はない。それに間隔を空けても直ぐに見える範囲にまで『テスカ・トリポカ』は追いついてくる、それも多分原因の一つなのだろう。

 

 「(……ん?)」

 

 そこでふと、気付いた。もう一機、『アーカード』というISがいないことを。

 

 「――っ! まさか!?」

 

 あいつ、旅館の方に!?

 最悪の想像が頭をよぎる。超加速して追いつこうとするが、直ぐにその姿は確認できた。ただ、あの場所から動いていなかっただけだった。

 

 「(…………杞憂だったか)」

 

 胸をなでおろしたのも束の間、海に異常な現象が起きた。

 新しい島が出来る時のように海が大きくうねり、何かが、山のような大きな物体が激しい音を立てて姿を現せた。

 

 「なっ!?」

 

 それに驚いたのは俺だけでなく、二機のISもだったのではないだろうか、それほどまで度肝を抜く光景だった。

 そしてさらに驚くことが確認できた。

 この山のようにおおきなものはISの反応があり、全体ば大きすぎて確認できないが、海から出ているのがよく見ると頭のようにも見えた。

 

 「今度は何だってんだ……!」

 

 新しいISの出現に悪態を吐くしかない。これが敵の方の援軍なら凛は生身で参加した戦争の絶望的な状況など、奇跡に思えてくるほどだった。

 

 その山のようなISの口らしき場所が開いた。

 攻撃か、と身構える。

 

 「――兄さんっ!」

 

 凛の予想は大きく外れ、そのISから出てきたのはラウラと、篠ノ之束だった。

 

 「(…………間に合ったのか)」

 

 ラウラたちが旅館にたどり着いたこと。自分の努力は無駄にならなかったことに安堵し、内心で胸をなでおろした。気が緩んだ――――それが命取りだった。

 

 空間を抉り取ったような形容できない音が聞こえ背後から聞こえた。

 

 背後に視線を送る。いつの間にか背後に存在していた『アーカード』。そして気付いた『レイブン』が無い。破壊されたか。

 

 ――『永遠に生きる者なし(No One Lives Forever)

 

 無機質な声からそんな言葉が発せられた。それとともに腕が、手のひらがゆっくりと自分に向かって伸びてくる。

 

 ゆっくりと――凛の見ている景色にはいつからか色が消えていた。そして、音も消えた。

 

 あの手に触れられたらダメだ。直感が警鐘を鳴らしていた。

 逃げようにも遅く、身体を動かすが手の方が動きは早かった。

 

 『アーカード』が背後にいるのなら、目の前に現れた『テスカ・トリポカ』はまさしく死神で、戦神だな、と思った。

 

 『アーカード』が触れるよりも先に、慈悲のように、慈しむように広げられた『テスカ・トリポカ』の両腕に抱きとめられた。目の前で『アーカード』はナニカに絡め取られたかのように身動きが取れなくなっていた。

 

 ――『そして誰もいなくなった(And They Ther Were None)

 

 俺は自分に訪れる最後の瞬間までラウラを見ていた。

 ラウラはこちらに大急ぎで向かってこようと焦っている。束はこの場に出現した時には動いていた、しかし圧倒的に間に合わない。

 

 ――ラウラ。約束守れないかもしれない。ダメなお兄ちゃんでゴメンな。

 無意識のうちにラウラの方に手を伸ばしていた。

 その手に触れるにはどちらも遠すぎた。

 

 ――ラウラ。

 

 今一度、ラウラ・ボーデヴィッヒの姿を目に焼き付けたところで凛の目の前は真っ暗になった。

 

 何も見えない、何も聴こえない、何も臭わない、何も感じない。

 

 感覚すらおぼつかなくなってきた、ISは無いのか、ダメだ、

 

 意識が……遠のく、

 

 やべ。

 

 

 ラウ、ラ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星野凛の消えた海域では誰かの絶叫が遠くまで響いていた。

 




 いつまで経ってもヒロインが書けねぇ…………
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