皆様、良いお年を。
やっと福音戦が終わったぜ……
重大なお知らせはあとがきに書いておきます。
声が聞こえた。
怒声だ。罵声も時折聞こえた気がする。
泣き叫ぶ声がする。
誰かに名前を呼ばれている気がする。
誰に――?
行かなきゃ。誰でも良い。呼ばれてるなら、そんな悲壮な声で名前を呼ぶなら、懇願するような声で名前を呼ぶなら――
『僕』は行かなきゃならない。たぶん、それは『僕』が知っている人で、守るべき、大切な人だから。
だから――動け、身体。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ぁ」
鉛を入れられたかのように重く動きが悪い身体に、高熱の時のような倦怠感。視界が定まらず、思考も霞がかかったかのように上手くまとまらない。
だが、確かに『俺』は戻ってきたんだ。
「――…………兄さん?」
目線だけを動かすと、まだ焦点が合わないが声でそこにはラウラ・ボーデヴィッヒがいて、俺の手をしっかりと握りしめているのを感じた。
そこからラウラは堰が切れたように鳴き始め、それに気付いた人達が次々にやって来た。
色々と聞かれたりしたが、喋ることも、体を動かすこともままならなかったため、後日ということになった。
「――ラウラは付きっきりで一週間、不眠不休でお前のことを看ていたんだ」
織斑先生が夜にやって来た。すでにラウラは俺が寝ているベッドで体をひっつかせてスヤスヤと寝息を立てている。
「心配するな、ここはIS学園ではないがそこと関連のある大病院だ。不備はない」
織斑先生は俺が寝ていた一週間の出来事を語ってくれた。
ラウラたち救出隊によって発見された俺とデュノアは運び出され、この病院に担ぎ込まれた。
外傷の見あたらなかったデュノアはすぐに全身を検査。外傷が酷かった俺は治療室に運び込まれたこと。
その前にクロエがお前の身体をしきりに見ていたり、ラウラに何か言っていたりしていたこと。
火傷は深度のダメージはそれなりにあるが治るとのこと。
「他にも、いろいろなことがあった。救出したナターシャ・ファイルスもここに入院してもらった。そこのベッドにいる。
間違いなく束の仕業なのだが、アメリカの全機ISの停止。大統領と会談し、それを合意させたらしいそこだけテレビ中継されていてな、アメリカだけに攻撃が向かないように他の国も牽制しながらな。開いた口が閉じなかったよ。あの時のISに理由があるんだ」
そのIS、というのはあの二機のISのことだと凛は思った。
それ以上は織斑先生は語らなかったが、こちら側にこうべを垂れて俯いている様はまるで謝罪しているようにも見えた。
「――そうだった。星野お前の体のことを言うのを忘れていた。お前の身体は火傷に侵されていたが、それは時間が経てば治る。そして星野、お前が救助された後、デュノアと同じように全身を検査したんだ。お前にも何か以上見つかるかもしれんと思ってな」
首元を指先で軽く叩きながら織斑先生はあとは、言わなくてもわかるよな。といった顔をしていた。
「――血中に大量のナノマシンの混入、全体の九割近くが破壊され、残りが活動停止していた」
たたみかけるように続ける。
「そしてこれがお前の首に刺さっていたものだ」
袋に入った注射器を見せてくる、本体には『Nano・Halt progression(ナノ・ハルトプログレッション)』と刻印されていた。
「…………?」
それを見て俺はわずかに眉をしかめる。異変に気づいた織斑先生はどうしたときいてくる。
「……俺の首に刺さっていたと、それが?」
星野が聞くとそうだという答えが返ってきた。
「……知らない薬品です。確かにあそこで戦闘はしました、注射器も刺されました、けどすぐに砕き割ったので破片状態じゃなきゃおかしいんですが」
しかし、何故? という疑問が降ってくる。少なくとも
「だいたい察しがついてると思いますが、俺の体内には肉体を治療するナノマシンが入っていたんですよ……それを破壊されたことは確信できますがそれの効力は分かりません」
それから織斑先生と数回にわたって議論を繰り広げたが解決には至らず、謎が深まるだけだった。
「――ちょっと良いかい? 少年」
夜。時間で言えば午後23時ごろ、相部屋の住人から声がかかった。
「何ですかMs.ナターシャ」
隔てられたカーテンを開けると、同じくカーテンを開け、俺と似たような状態になっているナターシャ・ファイルスがいた。
「暇だから何かお話ししましょう」
「良いですよ」
了承すると、ナターシャはつらつらと話し始めた。
「私は、いや、私のISはどうなったの? 破壊した?」
「いえ、機体にダメージはあるかもしれませんが破壊してはいません、
「やっぱり暴走だったのね……」
「やっぱり? それはどういう……」
凛がそう聞くとナターシャは話し始める。
「実機テスト開始時、私はあの子――『
なるほど、ナターシャに何度もコールしてもかからなかったのは応答拒否かと思っていたが単純に出れなかっただけか。
「……Ms.ナターシャ、もしよろしければテストを実行した場所と参加したお偉いさん、ゴスペルの機体に技術提供をした企業を教えてもらえませんか?」
俺の質問に少しだけ顔を歪ませたナターシャは煮え切らないと言った風に話し始めた。
「……ごめんなさい。それは規則に反するから言えそうに無いわ。
でもこれは言える。あの子に技術提供をしたのは前にイスラエルの
アメリカか……大きいな。
「貴重な情報、ありがとうございます」
「でも何故?」
「薄々気づいていると思いますが、今回の事件を裏で操っていた黒幕がいると思っています。
ゴスペルを止めた際、帰還時に二機のISが強襲してきましたが見たことが無い機体で恐ろしく強く、恐怖しました。
――これは推測ですが、実機テストの関係者か企業に黒幕がいるんじゃないかと思ったんですよ。どちらにしろあのタイミングで来たのはおかしいと思いまして」
それもそうなんだけどこの前、協力してる研究所のひとつが『事故』で吹き飛んだときは焦ったわ……まぁ、代わりの所が支援してくれたからどうにかなったけ。そのかわりに参加したのかSOL……そこら辺がどうもキナ臭い。
「――でも、私のISは壊されてなかったか……良かったよ」
やがてナターシャは心の底からホッとした表情を浮かべた。
「…………大事なんですねあのISが」
俺の問いにナターシャは何のためらいもなく頷いた。
その顔が俺にはどうしようもなく眩しく感じた。
午前3:00。すでに病院の電気は消灯となり、灯りは点いていない。
ナターシャも就寝したようでラウラと同じように規則正しい寝息が聞こえてくる。
「………………やっと」
そんな中、星野凛は起きていた。何かをポツリと呟き、ラウラを見る。
「やっと見つけたぞ」
その声には抑えきれない感情がありありと感じられた。
一度ラウラを撫で、外を見る。すでに暗くほぼ何も見えないが凛はまるで何かが見えているかのように一点を見つめていた。
2017.1/1.Am9:00に活動報告にて三人の絵を更新します。
誰かは当日に発表します。