少しばかりミリタリー要素が入っています。お手数ですが知りたいと思ったときは調べて見てください。
それではどうぞ
「織斑くんのクラス代表就任を祝して~」
「「「かんぱ~い!!」」」
結果として一夏がクラス代表になったのでそれを祝いたいということで、食堂にこんなにも人が集まっている。
そうだな、まず先に試合のことを話さないとな。
――――――
試合が終わり、アリーナから戻ると二人に祝福された。
「やったな星野!お前結構強いんだな!」
「すごかったよ~、ほっし~」
やや興奮気味に一夏が、いつもと変わらない様子でのほほんさんが言う。
「……あぁ、ありがと」
少々、気分が悪い俺は二人にすまんと言って機体をしまい、部屋に帰ろうとした。その時声をかけられた。
「お待ち……くださいっ!」
――オルコットだった。
ISのおかげで目に見えてのダメージはないが内部にはそうとう蓄積されているだろう。そんな姿でも凛に声をかける理由があった。
「セシリア!? お前無理すんなって!」
「せっし~ だいじょうぶ~?」
そんな姿に二人はあわてて支える。
「お二人とも、助かりますわ…………凛さん」
「……何だ?」
「あなたに対して謝罪しますわ。すみません」
そう言ってオルコットは『俺』に頭を下げた。
「俺じゃなく、『あいつら』にしてやってくれないか」
「……誰のことですの?」
「してやってくれ」
少し迷ったが、オルコットは続ける。
「その……あなたのおっしゃるその方々、すみませんでした」
また頭を下げるオルコット。
その時俺は憑き物が落ちたようにオルコットに対する怒りの感情が無くなった。
二人はおろおろとしながらただ見守っていた。
「頭を上げてくれ」
おそるおそるといった様子で頭を上げるオルコット。
「ありがとう、それだけで俺は十分だ」
――それだけで自分の中の『あいつら』を守れた気がしたから。
「俺からも英国や個人を中傷するようなことを言ったことを謝ろう。すまなかった」
頭を下げる。オルコットはなぜか慌てている。
「頭を上げてくださいまし!勝った殿方がすることではありませんわ!」
何故か謝ったのに怒られたよ、解せぬ。
「……まぁいい。だがこれから一年ほどクラスを共にするんだ、蟠りなどは無い方が良い。だから――」
俺は手を差し出す。
「――これからはよろしく頼む、セシリア」
名前で呼ばれたこと。何よりそんなことが言われると思っていなかったセシリアは小さく笑った後に、
「そう……ですわね。こちらこそよろしくお願いいたしますわ」
差し出された手を握り返した。
不思議と、先程の不快な気分は晴れていた。
次はセシリア対一夏なのだが、セシリアの機体の損傷具合が酷いということで明日に持ち越しになった。……なんかやり過ぎた感が否めない。
それで俺対一夏戦になったわけだが、
「棄権します」
これまた一同が驚いていた。何より一夏が一番驚いていたよ。
まぁ、一夏の専用機【白式】がやっと届いたってのに戦う相手が棄権しちゃうんだもんな、俺だって驚くよ。
「えっと~、理由は……」
山田先生が震え声で聞いてくる。
「まず、ほとんどの弾を使ったことと、何より戦う理由がないですし」
セシリアの時にカッとなって試合って流れだったけどさぁ、俺クラス代表やりたくないしね。だるいし。
「ほう、ならばお前は補給と『理由』があれば戦えるんだな」
織斑先生はよほど弟の一夏を戦わせたいようだ。何より今何て言った?
「別に構いませんが、セシリアみたくフルボッコにしますよ、全力で」
これでも戦わせるなら姉弟の仲を疑うぞ。
「……はぁ、ならばしょうがないな。良いだろう、不戦勝ということで織斑の勝ちにしといてやる」
良かった逆に、戦えよとか言われたらどうしようかと思っていたから安心した。
俺はその後、手足を整備室に持っていって部屋に帰った。
そして、机の上にあるいまだ開けていない二つの黒いガンケースに触れた。
「勝ったぜ、俺」
ケースを慈しむように撫で、話す。
そして――開けた。
中には一挺の銃――コルト・ゴールドカップ・ナショナルマッチと呼ばれるガバメントのカスタムラインの一つである銃が入っていた。
そしてその端に、あるものが入っていることに気付いた。
所々に大小の傷があるクロームシルバーメッキの銃本体にアイボリーのグリップがついたオリジナルカスタム。その横にネックレスが入っていたのだ。
写真入れ(ロケット)ペンダントのようだった。
もしやと思い、もう一つのケースも開ける。そこには同じように銃の他に入っていた。
銃自体は一緒だが、色が違った。今度はブラックカラーの銃本体に爪痕を模した様なタイガーカラーのグリップのオリジナルカスタム、その銃の緩衝材の下にあった。
それはまだ幼い凛と同じく幼い少女が並んで撮られている写真だった。
ペンダントの方はその少女達が写っている写真が入っていた。
「あいつら……」
これをやったのはトムとジョンだろうと凛は思った。
(やってくれるぜ、くそ)
凛はその夜、人知れず涙を流した。
「一夏、惜しかったな」
試合を見ていた凛はそう呟いた。
翌日、結果としてはセシリアが勝った。
だが一夏もそれなりに強く、序盤でのダメージが敗因となってしまったようだった。
……あとセシリアの顔が紅潮しているように見えるがあれは大丈夫なのか?
風邪か? と考えていた時
「くそ~、負けちまったぜ」
とアリーナから帰ってきた一夏が悔しくもどこか清々しい、そういった風に見える。
「負けたってのに、やけに嬉しそうだな」
「ん?そうか?でも飛ぶってスゴいことだからな」
それに、と一夏はつけ足す。
「負けたら次は勝ってやるってそう思うだろ?」
こいつは早いうちに強くなる。そう凛は思った。
思った以上に実戦での飲み込みが速く、数回だけしか動かしていないとは思わないほどだ。
(お前が羨ましいよ、一夏)
言葉に出さず、心の内にそのセリフを留めた。
――――――――
「どうして俺なんだ?セシリアや星野の方が勝っただろ」
自分がクラス代表になるのが嫌なのか、周囲に聞いている一夏。
分かるぞ、クラス代表なんて面倒なことを全部押し付けられるみたいだからな。
「まぁ、それは俺やセシリアが辞退してお前を推薦したからだ」
ぶっちゃけ、セシリアがノってくれるとは思っていなかったがラッキーだった。
「そうですわね。まぁ、わたくしが勝ったといってもここはわたくしが大人になるべきかとおもいまして譲ってさしあげたのよ」
高圧的な態度に少しだけ表情を変える一夏だったが、セシリアはですが、と続ける。
「あなたや日本をバカにしたことは申し訳ないと思いまして、それでですわ」
一体、何がそれでなのかは聞いてはいけないんだろう。
「お、セシリア分かってるねぇ~」
「せっかく男子がいるんだもん、使わないと~」
おいそこ? 使わないとって物扱いかよ。
と談笑し盛り上がる一同。
「さて、ちょっとこれから用事があるから先に失礼するよ」
瞬間、皆から飛んでくる(最後までいろよ)ブーイング。
これはキツい、なんとかそのなかから脱出し一息つく。
「なんだ、抜けてきたのか」
声の主は織斑先生だった。
「ああゆう空間はあまり好きじゃないんですよ、それに用事があるのは本当です」
織斑先生は短く笑った後「そうか」と言って歩き去った。
――――屋上
夜も耽けつつある時間、まだパーティをやっているのかかすかにその喧騒が聞こえてくる。
クスリと笑って目的の電話番号にかける。
数コールで繋がる電話。
「もしもし、俺だ。悪いなこんな時間に――――」
話している凛の表情はどこか、優しい笑みが浮かんでいた。
次回はあの娘が登場すると思います。
銃自体は存在しますが、カラーリング等はオリジナルですのであしからず。