だいまおうさまのにっき。   作:はめるん用

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大魔王様と蜂蜜。

 ◯月✕日

 

 蜂蜜が届いた。

 

 今年採集したばかりの新鮮な物は透明感のある明るい黄色の瓶詰めで、20年熟成の物は研磨した琥珀のように美しい。花の種類と蜂の種族により色合いが違うのも余の美的感覚に直撃である。

 もうこのままインテリアとして眺めているのも悪くない気もするが、食料とはヒトが食して初めて意味を持つ。大魔王とて生産者への敬意を払わねば、それはもはや暴君であり愚物も愚物。感謝の気持ちを忘れずに大事に味わうとしよう。

 

 いまでも忘れられない、ナナシが養蜂に成功し蜂蜜の安定供給が可能になったと報告しに城へやって来た日のことは。

 

 その功績を認め褒美をやろうと言った余に対して、千年以上も育てるどころか保護すらせずに乱獲してれば流通がボロボロになるのは当たり前だと呆れたように意見してくる胆力は見事と言わざるを得まい。その時に余は知ったのだ、魔界最高の魔力も、魔界最強の肉体も、正論という名の言葉のナイフの前では無力でしかないと。

 まだ我が父が現役の皇帝だった頃に若気の至りで勇者と戦い聖剣で斬られたことがあったが、それとはある意味比べ物にならないダメージでちょっと泣きそうになった。その程度のことも理解していない無能かよテメェと言われたようなものだからな。娘のひとりも魔族が長い年月をかけてやらかしたことをナナシひとりに尻拭いをさせた形になったと言って酸っぱい表情してたし。

 

 戦闘力と統治能力はイコールではない、そのことを忘れないようにするという意味でも余にとって蜂蜜は大事な食物である。

 

 強いて問題点があるとすれば、余の帝国以外にも他の魔王が統治する国家や中立を宣言している人間の国家と蜂蜜による外交のようなものが出来上がりつつあることぐらいだろうか? まぁナナシ領の蜂蜜は長年研究を続けているだけあって美味であるし、領地の一部が海に面していることから輸送に関する問題も少ないからな、各国の気持ちもわからんでもない。

 まぁ問題と言ってもそれはナナシが他国と秘密裏に繋がりを持とうとした場合の話である。国家を相手にした取引は、たとえどれほど相手が小国であろうとも地方領主が判断することではないとして全て帝都まで報告が届くので心配することもあるまい。

 

 むしろ、港町に建設されている大使館なる外交官のための施設に誰が常駐するかでガチバトルが起きていることの方がずっと問題だ。アレだ、他国の領土へと自ら赴かなねばならん外交官が弱い筈もなく、毎年毎年それはもう派手な魔法の撃ち合いが……他国の王たちも同じような悩みを抱えているのだろうか?

 今度お忍びで皆で集まって酒でも酌み交わしてみたいものだ。立場を忘れて互いに愚痴を言い合えば、下手になんか条約を締結するよりずっと国同士の連携が強化されそうだ。それはそれで統治者としては大問題だな……。

 

 

 

 

 ◯月✕日

 

 馬鹿の発想は似るものらしい。

 

 今年も蜂蜜外交を利敵行為だと騒ぐ間抜けがやってきた。文官たちも手慣れたもので、それは大変だと大袈裟に騒いで余との会見の場をものごっつスピーディーに整えおる。お前ら自分たちで説得するのが面倒だからって余に押し付けるの止めろよ。

 もうね、真面目に相手するのが馬鹿馬鹿しいから余も息子とかに任せたいの。でもね、何故かタイミング良く息子たちも娘たちも妻も側室たちも城からいなくなってるの。いや〜、家族が仲良しなのは父親として喜ばしいことではないかチクショウめ。

 

 いうて余も慣れたもので、ギャーギャー騒ぐ馬鹿に向けて貴様はたかが蜂蜜程度で帝国の威信が揺らぐと、大魔王の称号を持つ余の力が甘味一つに敵わぬと言いたいのだなと睨んでやれば解決することを学んだからな。今日も意気揚々と押し掛けてきた馬鹿どもを余裕綽々で追い返してやったわ。無駄に疲れたがそのぶん蜂蜜が美味いので良しとしておこう。なにも良くないが。

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