だいまおうさまのにっき。   作:はめるん用

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『忍び寄る世界の脅威、無慈悲なる恐怖の魔将現る!』

 勇者。

 

 それは人々を様々な危険から守護る力を持つ者たちに与えられた名誉ある称号。

 

 多種多様の属性を持つ精霊たちの加護を得た聖なる鎧『ホーリークロス』を身に纏い、ダンジョンから現れるモンスターや魔族の侵攻に立ち向かう、文字通り勇気ある者たちなのだ! 

 

 

 

 

 そして今日もまた、とある国の冒険者ギルドに所属する勇者パーティーが卑劣な手段を用いて勝負を挑んできた魔族を倒すべく急ぎ戦場へと向かっていた……ッ! 

 

 

 

 

「フンッ、ずいぶんお早い到着だな勇者さんよぉ? 約束の時間までまだ15分はあるぜぇ? ま……待ち合わせに遅れないってのはイイことだわなァ?」

 

「勇者様ッ!!」

 

「受付嬢さん、大丈夫ですかッ!?」

 

「約束通り、ここに来たのはオレたちのパーティーだけだッ! 人質を解放しろッ!」

 

「クックック……あぁ、もちろんだ。約束はしっかりと守らせてもらうぜェ? オイ、そのギルドの受付嬢とかいうヤツを勇者たちに返してやれ」

 

「ヘイッ! アニキッ! ……ほらよ、足元に気を付けてさっさと行きな」

 

 

「どうぞ、此方へ。ふむ、ケガなどは特に無いようですね」

 

「あ、ありがとうございます……ッ!」

 

「チッ……テメェら、なにを企んでやがる? わざわざ人質までとって俺たちを呼び出しておいて、あっさりと手放すなんてよ」

 

「ケッ! 命令は命令だからな、オレ様はミスティ様の部下として指示に従ったに過ぎねぇ。そして、テメェらを呼び出すために人質を使えとは言われたが、真っ向勝負でケンカしちゃいけねぇなんて指示はねェ。ただそれだけのことだ」

 

「ふ〜ん? 魔族にも正々堂々とした戦いを好む者もいるんだね。意外じゃん」

 

「クックック……ッ! テメェら人間如きに小細工なんて必要ねぇッ! 全員まとめて叩きのめしてやるから遠慮なくかかってこいやァッ!!」

 

 

 

 

『ん。アイツ、口先だけじゃない。勇者、ワタシの力を使う』

 

「わかったぜッ! ──唸れ、オレのホーリークロスッ! サラマンドラッ!!」

 

 

 説明しようッ! 

 

 この勇者パーティーのリーダーである青年は炎の精霊と契約しており、彼女の祝福が宿る真紅のホーリークロス『サラマンドラ』を身に着けることで、強力な炎属性の武技や魔法を使うことが出来るようになるのだ!! 

 

 そしてもちろん勇者パーティーのメンバーたちもそれぞれ精霊と契約しているので、全員がパワーアップして戦うことが可能なのである!! 

 

 

「この魔族野郎、ナメたこと言いやがって……ッ! ホーリークロス・シルフィードッ!!」

 

「いやまぁ、油断したらヤベーのはマジじゃん? ホーリークロス・サンダーバードッ!!」

 

「ほぅ? 部下には手出しをさせず、あくまで貴方ひとりで戦うつもりですか。非効率的ではありますが……嫌いではありませんよ? ホーリークロス・シャドウネイル」

 

「みんな、ケガをしたら回復は私に任せてね! ホーリークロス・フォレストフェアリーッ!」

 

 

「カカッ!! そうこなくっちゃ面白くねぇよなァッ!! ならオレ様も遠慮なく、ミスティ様より渡されたビーストメイルを使わせてもらうぜェッ!! 力をよこせ、月の魔獣ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 〜戦闘中 しばらくお待ち下さい〜

 

 

 

 

 

 

「──グァッ!!」

 

「「「「アニキィッ!?!?」」」」

 

「どうだ! これがオレたちの、仲間との絆の力だッ!!」

 

「まさか、この、オレ様が……人間如きに、負けるたァな……。いいぜェ、オレ様の首を遠慮なく持っていきやがれ。人質なんて卑怯なマネして負けたんだ、覚悟は出来てらァ」

 

「……いや、お前のことは殺さない」

 

「なにィ? テメェ、勇者が魔族を見逃すのがどういうことなのか、わかってて言ってやがんのかァ?」

 

「そりゃあ、ギルドの受付嬢さんを誘拐したことは許せないけれど、お前は正々堂々と戦って、負けを認めたじゃないか。そんな真っ直ぐな奴を殺すなんてことは、オレの信じる正義じゃない」

 

「…………テメェ」

 

「皆、すまない。でもオレは」

 

「フンッ、どうせそんなことになるだろうと思っていた。まぁ、仕方あるまい。リーダーであるお前の決定なのだからな、俺はそれに従うだけだ」

 

「ま〜狼系の魔族って時点でさ、人質とか似合わないことしてるワケだし? ここで見逃したって、ミスティとかいうヤツの命令でもなきゃ一般人には手を出したりとかしないって!」

 

「それが一番の問題だということを理解して頂きたいのですが。命令さえあれば、彼は街の人々を攻撃できるのですよ? 例え、彼自身が武人として信用できる魔族だとしてもです」

 

「キズ、見せてください。──ヒールウォーターッ! さぁ、これでもう大丈夫ですよ!」

 

 

「……なるほど、勇者ねェ。テメェら、見ての通りオレ様の完敗だ。撤退するぞ」

 

「「「「……ヘイッ! アニキッ!!」」」」

 

「だが後悔するなよ? 次はより強くなってテメェら勇者パーティーの前に現われることになるぜェ?」

 

「だったらオレたちのもその時まで修行してパワーアップしてやるだけだぜ!」

 

「ケッ、言ってろ。それじゃあ────ガァッ!?」

 

「お、おいッ!?」

 

「──ッ!? リーダーッ!! 彼から離れて下さいッ!! 何者かの巨大な魔力が暴走を始めていますッ!!」

 

 

 

 

『おやおや、勝手な真似は困りますね……』

 

 

 

 

「なんだ、この声は……ッ!?」

 

『ご機嫌よう、脆弱なる勇者パーティーの皆様。ワタクシは大魔王ディアマンド様直属の部下にして帝国軍の大幹部、魔将ミスティコラールと申します』

 

「魔将……ミスティ、コラールだって……ッ!?」

 

「ミスティ、さま……ッ!? これ、は……いったい……ッ!?」

 

『いえ、この程度の雑魚に敗北した不甲斐無いアナタに力を授けてあげようと思いまして。そのビーストメイルにはワタクシがちょっとした工夫を施していましてね。なんと周囲の魔族から()()()()()()()()()()()()パワーアップする機能が搭載されているのです』

 

 

「な、にィ……ッ!? ま、まさか……ミスティ様ッ!?」

 

 

「あ、あ、アニキィ……ッ!?」

 

「身体が……動か……」

 

「腕がぁぁぁぁ、脚がぁぁぁぁッ!?」

 

「息が出来な……苦し……ゲブッ」

 

 

『まったく、こんな簡単な方法で力を得られるというのにどうしてアナタは敗北を認めてしまうのか。弱者など同族だろうと部下だろうと搾取されて当然なのですから、遠慮など必要ないのですよ? あぁ、ついでに下らないプライドも自動的に塗り潰されるようにしてありますので、遠慮なく暴力衝動のままに殺戮を楽しんでください』

 

「ふ、ふざけんなァァァァッ!! オレ様は、誇りある人狼族として、部下たちと同族たちを守るために、テメェに……ゴフッ!?」

 

『今回の侵攻命令は大魔王ディアマンド様から直々に頂戴したご命令なのですよ? あのお方のご命令より価値のあるモノなど存在しないのですから、その命をここで使い潰されることはアナタにとっても名誉なことでしょう? ……おや、嬉しさのあまりに涙まで流してしまいましたか。結構、ワタクシも特別製のビーストメイルを用意した甲斐がありました。全ては偉大なる大魔王ディアマンドさまのため……それでは勇者の皆様、また機会があれば』

 

「て、めぇ……ミスティィィィィァァァァッ!!!!」

 

 

『ん。魔族が巨大化した。ワタシたちもエレメンタルナイトを召喚して戦う』

 

「そんなッ! アイツは、だって、裏切られて……部下までッ!」

 

『だからこそ。このままだと、あの魔族は力の無い者たちまで襲うことになる。本人の意志とは無関係に』

 

「 ……チクショウッ! みんなッ!!」

 

「応ッ!」

「あいよッ!」

「えぇ」

「はいッ!」

 

 

「「「「「降臨せよ、エレメンタルナイトッ!!」」」」」

 

 

 ホーリークロスに認められし5人の勇者が拳を天に突き出す。

 

 背後に出現した巨大な魔法陣から召喚されたのは、黄金の巨人騎士。

 

 これこそが精霊の加護を持つ勇者だけが使える秘密兵器『エレメンタルナイト』なのだッ! 中は精霊の力による拡張空間に設置された操縦席があるため見た目に反して居住性もバッチリである! 

 

 

『ゴ……オ……オォ……ッ!』

 

「おい、リーダー。ヤツの動き、なんだか不自然じゃないか?」

 

「そういやパワーアップしたって割には動きが鈍いような気がするじゃん」

 

「……なるほど。これは憶測でしかありませんが、彼はきっと抗っているのでしょう。武人の誇りを汚されたこと、そして仲間を奪われたことへの怒りと悲しみで、魔将ミスティコラールの支配に対して」

 

「そんな……なんて酷い……ッ!」

 

『ん。勇者』

 

「あぁ、わかってる。オレの全力でアイツを倒す──いや、アイツを救ってみせるッ!! うぉぉぉぉッ!! 奥義・ボルケーノブリンガァァァァッ!!」

 

『ゴァァァァッ!?!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ありがとうよォ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ! 魔族の幹部をひとり倒したと思えば、まさか魔将なんて大物が動き出したとはな。それもとびっきりのクソみてぇな性格ヤツがよ」

 

「さすがの僕もアレは結構カチンときたじゃん。魔将ミスティコラールと、その背後にいるっていう大魔王ディアマンド……ね。ソイツらをなんとかしないと、人間領域が丸ごとヤバいってコトっしょ?」

 

「あるいは、魔界領域もそれに含まれるかもしれませんね。大魔王ディアマンドと八人の魔将は、他の魔王を名乗る魔族たちとも敵対関係にあるという情報を聖王国の大図書館で読んだ記憶がありますので」

 

「同じ魔族の命まで、まるで道具のように扱うなんて許せないよ……! 精霊に選ばれた勇者として、あんなヒトたちに平和を渡すワケにはいかないよね」

 

「あぁ、もちろんだ! だが、魔将ミスティコラールか……声を聞いただけなのに、あまりにも圧倒的で攻撃的な魔力の波動を感じたぜ……ッ! 今のオレたちじゃとても勝負にならない……ほかの勇者たちと協力しなければ人類に勝ち目は無い……ッ!!」

 

 

 それは勝利と呼ぶにはあまりにも苦い結末……ッ! 

 

 弱肉強食の掟に従う魔族たちの過酷な現実! それを一方的に支配するほど強大な力を持つ魔将との邂逅! 果たして人類の希望が、勇者たちの正義の刃は大魔王に届くのか! 

 

 決意を新たに勇者たちはギルドへと帰って行く。ついに魔族たちが本格的に世界征服に乗り出したことを確信し、これから始まるであろう激闘の予感に心を奮わせながら……ッ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅん。アレがこの国の勇者か。それほど悪くはないけれど、ボクたちの相手にはならないね」

 

「仕方あるまい。お遊びレベルの侵攻ばかりを相手にしていたのでは、勇者たちもレベルアップに苦労するだろうからな」

 

「フフッ……ボクたちナナシ様の配下と戦っている国の勇者たちと比べる方が可哀想だったかな? それにしても、兄さん」

 

「あぁ。魔将ミスティコラールめ……相変わらず不愉快な存在だ。あのような汚物がナナシ様と同格など、冗談ではない……ッ!」

 

「それにヤツのせいでディアマンド陛下の名誉まで貶められていると思うと、怒りで全身の血液が沸騰しそうになるよ」

 

「そうだな、弟よ。ワタシも同じ気持ちだ。だが早まった行動だけはしてはならない。今の帝国は絶妙なバランスで成り立っているからな。もちろんナナシ様がディアマンド陛下の御為に魔将を名乗る塵芥虫どもを駆除すると宣言なされば、我が魂魄が砕けようとも戦い続けるつもりではあるが」

 

「今はまだ、耐え忍ぶ時だと言うことだね兄さん」

 

「腐っても魔将、我ら兄弟が力を合わせても捨て石にすらなれないようでは意味が無いだろう。ディアマンド陛下への御報告に関しては……どうなのだろうな? ワタシは余計な心労という意味では、今回のことはひとまず我ら兄弟の胸の内に秘めておくべきかとも思うのだが」

 

「ボクもそれに賛成だよ兄さん。もうすぐ魔王会議の時期だからね。先代皇帝陛下のようにストレスによるアトピー性皮膚炎で引退するようなことになってしまったのでは大変なことになってしまうから」

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