混沌にアッパレよ!   作:神奈戯

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能力モノです。



1.魔術と少女

 

 

 

いきなりこんな事を言うのもなんだけど、この世界はクソだ。

 

何もかもが生まれた時から決まっている。

 

例えば才能、人間が生まれた時から持っているハズのもの。

それを持っている事を最も期待されている物が、この世にはある。

 

魔術……世にも奇妙な、不思議な不思議な力。

 

自分には無い力だ。

 

魔術の才能の無いものはこの世界では最底辺に位置される。

 

奴隷の様な扱いをされる事を誰も疑問に持たないぐらいには、そういう考えはこの世に染み付いてしまっているみたいだ。

 

「おいテメェ!まだ汚れがあんじゃねぇか!」

 

「きちっとやれよきちっとよ!」

 

名前も知れない上司とやらの命令を受けて掃除を再開する。

 

「…すみません」

 

 

「あんま舐めてっと…俺の魔術を食らわすぞ」

 

「…すみません」

 

魔術を全くと言っていいほど使えない俺はこの魔術至上主義の世界ではどん底もいいところ。

 

使えるよう努力はしたものの、使える気配もなし。

それでも諦めずに近くの教会の人に魔術を教わろうとしても「君才能ないよ」なんて言われる始末。

 

そしてとうとう金が尽きるからと両親は俺を売り飛ばした。

 

 

「ちっ…さっさと再開しろ魔術も使えん無能が」

 

 

うす…とだけ返事黙々と掃除を続ける。

12歳の時に売られて、もう3年はこんな生活だ。

 

金が無いからって俺を売った両親を恨むよ。

 

 

「……………つら」

 

本当に、最底辺だ。

 

 

 

 

「おい、聞いたかよ…」

 

「あぁ、ベルクドベルンの話だろう?」

 

夜には死ぬようにベッドに転がる。

時たま聞こえる隣にいるらしい2人の会話を盗み聞きするのがここでの唯一の楽しみだ。

 

それにしてもベルクドベルン…聞いたことも無いな…

 

「そりゃあ近づく訳には…」

 

「まぁ組織もあそこには近づく気は無いらしいよ」

 

 

明日もまた労働か…

 

 

 

 

「ついに、ついに手に入ったぞ…「適合者」が!!!!」

 

 

朝、いつものように掃除をしていたら騒いでる人を発見した、何やら高そうな服を着ている。

 

 

「バルグ様…どうされました?」

 

「手に入ったんだよ…ついに!我らが神復活の10つの鍵のうちの1つが!!!!」

 

神…神ね、そーいや聞いた事があるな、この組織は神の復活やらなんやらを目指すとか何とか。

 

それにあの男…昨日のヤツに様なんてつけられてたってことは、幹部かなにかなのか?

 

「本当ですか!?」

 

「あぁ…ただし調整やらなんやらで1年はいるがな…」

 

「「適合者」は人間でな、誰かが世話をしなきゃならん」

 

「我々は大陸全土を回っているからそんな余裕はなし!なので」

 

「パーナ君!君に預けたいのです!!!!」

 

昨日の野郎、結構可愛い名前してんな。

つーかこの流れってまさか…

 

「え!?いやいきなり」

 

「何か、文句が?」

 

そういうとパーナ君は黙る、これが社会ってやつか。

 

「いえ…なんでもありません」

 

「そうだよねー!さっすがァ!」

 

じゃあよろしくねぇ!と幹部らしき人は魔術を使って目にも見えない速さで去っていった。

 

そしてパーナ君はこっちを見る。

 

「おいテメェ、さっきの話聞いてたろ」

 

んげ、ばれてーら

 

一応隠れてたつもりなんだが。

 

「「適合者」っつぅのはこいつらしい、お前が世話を見ろ」

 

「傷つけたりしたら殺す、そいつは返す予定の物だからな」

 

写真を見せられたが写りが悪いのか黒髪の人物としか分からない。

 

 

「分かり、ました」

 

正直、めんどくさい。

 

そもそもそんな重要なものをこんな下っ端もいい所に置いとくなんてどうかしてるだろ。

それか、ここって割と重要な場所だったり?

 

 

 

「ここが「適合者」の部屋だ、てめぇには1日1回、部屋の掃除と飯の配給をしてもらう」

 

 

「変な気は起こすなよ?部屋から連れ出したりしたらすぐアラームがなるようになってる」

 

「そんときゃお前は一発ドカンだ」

 

「わかりました」

 

最近、これしか言ってない気がするな。

とりあえず今からした方がいいのだろうか…

 

コンコンとノックを鳴らす、中から声は聞こえない。

扉を開ける、そこには

 

 

 

 

鎖で繋がれた紫が入った黒の長髪の13歳位の少女が座っていた。

しかも

 

「身体中に…痣…今にも折れそうなくらい細い体」

 

余程辛い扱いを受けたように見える…まるで奴隷の様な。

 

 

「………?」

 

紫の瞳がこちらを見る、酷く美しい瞳だった。

「綺麗だ…」

 

「……え?」

 

思わず、口に出てしまうぐらいには。

 

 

「…君、なんて名前?」

 

俺は膝お折り曲げ、正座の形で視線を合わせ、名前をその子に問うた。

 

少女はこちらを僅かにみながら答える。

 

「…メリィ=レイソン」

 

「そっか、よろしくなメリィ」

 

「お兄ちゃんは?」

 

「え?」

 

 

……名前、名前か

 

「(なんだっけな、俺の名前)」

 

名前なんて使う機会もなかったからよく覚えてない、それよりも生きることが優先だったから。

 

親にも、呼ばれたことなんて1.2度しかないし。

 

「…思い出した、クリス」

 

「クリス=エーテルラック、今日から君の世話を任せられたただの下っ端だよ」

 

今から始まるのは、世界と魔術と混沌の話。

 

 

「……お兄ちゃんは、私を傷つけない?」

 

 

「…ああ、”俺は”傷つけないよ」

 

 

こんなに幼い子が、なんでこんな目に?

 

 

 

この気持ちが何なのかは分からない。

過去の自分と同じような状況だから、同情でもしたのか?

 

あぁ、クソ。

 

 

 

つくづくだ

 

つくづく、この世界はクソだと。

 

俺はそう思った。

 

 

 




混沌はもうちょっと後に出します。

不定期にはなりますがこれから更新していく予定です。
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