進めや砲兵、大砲と共に【リメイク版】   作:チチメカ

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リメイクします。
長らくお待たせしました。


第〇発目・石原砲代と言う男

酷い悪臭。

薄暗い部屋。

男が一人、胡座をかいていた。

 

1944年✖︎月✖︎✖︎日フィリピン・マニラ

 

男、石原砲代は上官に対する暴行により、独房へと収監されていた。

ギラギラと目を見開いて、独房の扉を睨みつける。

必ず報復してやると、上官に思いを馳せて。

 

砲代は上官を殴った事に特別後悔をしていなかった。

何故なら、砲代は己のした行為が正しいものだと信じていたからである。

それについて、軍法会議で砲代は以下のごとく証言した。

 

ー後悔はしとらん。

奴さん、現地の女子を言い詰めて犯そうとしておった。

それが許せんかった。

だから殴った。

13人くらいの憲兵やら、一等卒やらがわしを止めようと躍起になった。

全員殴った。

全員倒した。 

落ち着いた頃には、周りが銃で囲まれとった。

 

睨みつける様に上を見上げる砲代を見ては、

少しやつれた裁判官は、その言葉を見下す様に聞いていた。

 

ーーーーー

ーーーー

ーー

ー

 

軍法会議はまるで既に結果が決まっていたかの様に、順調に進み決定した。

実際、結果は決まっていた。

砲代が殴った上官は裁判官であった大佐に賄賂と脅迫を行っていたのだ。

 

「ーよって、被告、石原砲代を独房送りにする。」

 

「なんじゃぁ!このタコが女子襲おうとしとったんじゃぞ?!軍規に違反しとるのはこいつじゃ!」

 

石原砲代と言う男は良い言葉で言えば「実直を貫く男」、悪くいえば「ド級の愚直をひたすらに進むバカ」であった。

しかし、悪というものには人一倍敏感であった。

 

ー何故このクズはお咎めなしなんじゃ!

 

頭に血が昇る。

許せないと言う感情に支配され、顔はいつにも増して眉間に皺がよる。

沸々と湧いた怒りという感情は、彼を人間とは思えない表情にさせた。

まさしく、鬼神の如くであった。

 

「黙れ!上官を殴る奴があるか!ましてや馬鹿などと……ヒィ!?」

 

ー裁判官…大佐が怯える。

なんで貴様が怒る。

 

「ンッ…ヴッン…これは決定事項だ。憲兵連れて行け。」

 

後ろから憲兵が来る。

後ろに括られた手を目一杯握りしめて、仁王立ちする砲代を連行せんと彼らはやって来たのだ。

されど、砲代はそれすらも拒んだ。

 

「邪魔じゃぁ!触るな!触るな!…許さんぞぉ!貴様それで陛下の皇軍かぁ!」

 

右に、左に憲兵が飛ばされる。

まさに鬼だ。

鬼がいる。

砲代の一回り大きい男であろうが、腕っぷしの強いと言われた男であろうが、砲代の怒り前では無力であった。

 

「ヒィッ?!!憲兵ェ!何をしてる!押さえろぉ!こいつをぉ!」

 

「じゃぁかぁー」

 

その時は背後から音がする。

“ドン”と音がしたその瞬間、火薬のにおいが鼻に当たる。

あれ程怒り狂っていた砲代の体が力を失う。

 

「しぃ…」

 

撃たれた。

それだけは理解できた。

気づけば、砲代は独房の中であった。

 

「許せん…あのハゲズラ…」

 

独り言が独房にこだまする。

砲代はずっと、ここからどう出るかを考えていた。

また出た後、上官にいかにして報復するかも考えていた。

 

しかし、少なくても、上官がマニラにいる時に砲代が出されることはない。

砲代もそれは理解していた。

だが、砲代はそれでもなお考えることをやめなかった。

 

ーぶん殴ってやる。あのハゲズラを。

 

それだけが今の彼を突き動かす全てであった。

 

「カァァー、神さん、仏さん!なんなら悪魔でもいい!あのハゲズラを殴らせろぉ!」

 

ー壁を殴れば殴るほど怒りが増していく。

血が溢れるが、痛みは鈍く、もはや何が何だか分からない程である。手は血だらけ、顔は真っ赤になり、鬼のような形相でひたすら怒り続けている。

 

これは違う世界。

この世で終わるお話。

 

しかし、ソレはこの石原砲代と言う男に目をつけた。

 

「―力を貸そうか?そこの貴様」

 

「?!、誰じゃぁ!」

 

―驚きながらも辺りを見渡す。

誰もいない。それはそうだ。この部屋は独房である。

個室の設計をしている。

ましてや、ドアの開く音もしていない。

この部屋には、いやこの付近には今誰もいないはずなのだ。

 

「お前だ、そこの男」

 

「だから誰じゃぁ?!」

 

―怒りが収まる事はないにしても、奇妙な状態になっている事は理解できる。

 

しかし、この石原砲代という男。

理解はできても、応用の利く男ではなかった。

教職として働いた経験はあるが、されどここまで感情に支配されれば応用もクソもない。彼は、ひたすらに部屋を探し回った。

 

「さっさと面を見せんかぁぁ!!」

 

「静かにしろ。力を貸すと言っているのだ。復讐がしたいんだろう?」

 

「…ほうじゃ。許せんのじゃ、あのクズを。」

 

ーせめて一発、いや二発。

殺めるまではせんとも、半殺しにはしたい。 

砲代は貪欲にその【結果】を欲していた。

 

「じゃぁ、"契約"しよう。」

 

「なんじゃぁ〜契約ゥ?書類でも出さなきゃならんのかぁ?」

 

「いや、貴様と私との間で口約束をするんだ。」

 

「ほぉー。で、なんじゃ。わしは何をすればいいんじゃ?」

 

いつのまにか、先ほどの熱はなりを潜めていた。

ついに探すことを諦めた砲代は、目を瞑ってその声に耳を傾ける。

 

「…話が早いな。」

 

「おうよぉ!わしはなぁ、"これだ!"って思った事には全部、賭けることにしとるんじゃ!今の所全部当たっとるからのぉ!」

 

―自慢げに話す砲代の間には、何処かゆるい空気を感じる。

何処か抜けた男だ。

ソレはそう感じた。

 

「まぁ、いい。契約の内容は簡単だ。俺はお前がここから自力に出れるほどの力をやる。その男に復讐をした後、私の頼み事を達成すればいい」

 

「ほう」

 

ーなんじゃ、胡散臭いのぉ〜

あまりにも都合の良い契約。そして、わからない相手側の意図。だが。

 

「…ええじゃろう。乗ってやろうや、その話。」

 

こうして、砲代は【力】を手に入れた。

 

ーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

ー

 

―男は気分が悪かった。

理由は自分の幾つも下の階級の男に殴られ、犯すつもりだった女にも逃げられたからだ。

この男、幾度もこの手の犯罪を犯しては、自分の階級やコネを使って事件を揉み消す畜生である。

 

「…くそ…あの下士官め…」

 

―赤く膨れた頬を抱えて、男は次の女を探す。

胸の大きい女…尻のでかい女…髪の綺麗な…

まるで、思春期の男子高校生の様に血眼になって女を見る。

 

「お!あれは上玉だ!」

 

目の前に大きな餌を見つけた猿の様に。

大きな釣り餌を見つけた魚の様に、男は女に近づこうとする。

 

「おい、そk「おぉぉい!そこのハゲズラァァァァァォ‼︎」

 

「?!」

 

しかし、それは聞き覚えのある声によって止められる。

男だけではない。街行く人々は皆その大声に振り返る。

その男…上官はその影を見てはすぐさま思い出した。

 

「ぶち殺させろォォォォォ‼︎こんのぉ〜屑やろォォォォォ!」

 

「ヒェェィィィイィ?!!!!」

 

ーなんであいつが…!

なんで!

 

男はすぐさま走り出し、砲代から逃げ始める。

しかし、それは無駄であった。

 

「なぁぁんでぇ!あんな足が速いんだよぉ〜!」

 

先ほど目視では200メートルは裕にあった距離を、もうすぐ後ろというところまで来てしまっていた。必死の逃走虚しく、男はあっという間に捕まってしまった。

 

「捕まえたぞ…このボケが…」

 

襟をしっかりと掴んでは、その方腕の筋肉だけで持ち上げていく。

尋常ではない腕力。

男は自身の命の危機を強く感じ取っていた。

 

「け…憲兵ェェェェェ‼︎助けt」

 

すぐそばにあった露店の壁を貫通するほどの威力で、その奥の茂みに吹き飛ばされる。それを見ていた人々はあっという間に逃げおおせる。

いつのまにか、近くには人っ子一人姿を消していた。

 

男は這いつくばり、どうにか逃げようと匍匐を行う。

しかし、

 

瀕死の兎は狩人の前では、逃げられない。

「反省せぇ…反省せんかぁ!!」

 

男の胸ぐらを掴んでは地面に叩き伏せる。

そこからはいつぞやの時と同じであった。

馬乗りになって、殴る、殴る、殴る、殴る。

血を吐き、目が白目になってしばらくした後、砲代の拳は動きを止めた。

半殺しの言葉が優しく思えるほど、男はボコボコにされた。

 

「このくらいでいいじゃろ。いやぁ〜良いことをすると気分がよくなるのぉ〜」

 

「なんだ。もう良いのか?」

 

また辺りを見渡すが、誰もいない。

先程から聞こえてきていた声は、姿を現す事なく砲代について来ていた。

砲代はその現状を不思議に感じていた。

だが、ソレを解明する間もなく、遠く方から声がした。

おおよそ憲兵の声であった。

 

「…まずいのぉ…よし!」

 

―砲代は白目のを剥いた男の服を全て剥ぎ、帽子、拳銃、軍刀を持ってその場を立ち去る。

後のその場には、ふんどしのみのハゲた男のみが残っていた。

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

ー

 

 

「ぉうぉう!来とるのぉ〜!」

 

―後ろからは銃声と、怒号がやってくる。

後ろからする聞きなれない機械音からその距離を測る。

どうせ、自動車も出しておるのだろう。

脱走兵一人の為とはいえよくやる者だ。

 

「でー、何処なんじゃぁ!?おまえさんの言うドアとやらは?!」

 

「もうすぐだ。」

 

不気味な声に導かれ、ジャングルをぐんぐんと進む。

足場が悪いせいか、先程の身のこなしもうまく使えない。

 

「待てぇ!「うぉ!失せんかい!」

 

突然木々の合間から現れた兵士に驚きながらも、武器を引ったくり、兵を吹き飛ばす。

 

ーこれでもう後戻りはできんの。

取り敢えず、前線に出て敵拠点を単騎で制圧くらいしないと、生かしてもらわれんじゃろ。

 

「ここだ。」

 

そんなことを考えていると。

少し、薄暗い洞穴にたどり着いた。

まるで沖縄にあるガマの様であった。

しかし、砲代にはここに例の"ドア"とやらがあるとは思えなかった。

 

「お前さん…わしに嘘をついたのかぁ〜?」

 

「早く行け。追っ手も来てる。」

 

「ドコダァ!」 「サガセェ!」

 

「…わかった。行ってやるわい。」

 

―本の道が続く薄暗い洞穴。

壁にはところどころ壁に絵のようなものが見える。

奥に行けば行くほど、それは増えていく。

 

「なんともキミの悪い場所じゃ……ん?ありゃぁ?」

 

そこには一つの木製の扉があった。

黒い、ひたすら黒い扉。

少し塗装が外れているが、その黒の塗料は明らかに彼が見た中で一番黒く、暗い色をしていた。

 

「ここじゃな?で、わしにどうしろと――

 

「日 本 を 救 え 。 こ れ は 契 約 だ 。 」

 

 

その瞬間。

ドアに引き摺り込まれた。




さて、もう一度
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