ぜんぜろつめた 作:寒さで体調をよく崩す人
エンドロールは長いようで短い。
全然知らない人たちの名前が読み切れない速さで流れていき、その中にどれだけの物語が詰まっているのだろうか。
この映画に対して、彼らはどのような感情を抱いていたのだろう。 ただの仕事として当たっていたのだろうか、はたまた人生の全てを掛けていたのだろうか? その人が一人暮らしなのか、ルームメイトがいるのか、家族を支える親なのか。
音楽と共に流れていく人々を眺めていると、片肩に感じていた重みが軽くなった。
「ん……あれ、いつの間に終わってた?」
「うん、今回も殆ど寝ちゃってたね」
「だってこの映画のプロキシ、鈍臭くて……私の知ってるプロキシのほうが映画に向いてる」
どうやらこのアクション・コメディは彼女に合わなかったようだ。
欠伸する彼女の横顔から、チラリとキザッ歯が見える。
「インターノットに名声轟く伝説のプロキシ、パエトーン……うん、こっちの方が良い」
「じゃあ、もしもパエトーンが題材の映画が出たら見る?」
「……別に。 リン役はあんたじゃないし」
そっぽを向くと、不機嫌そうに尻尾が動く。
やがてスタッフロールの終着点に辿り着き、部屋に静けさが訪れる。
店の何処からも足音一つしないし、あるとしたら私とエレンの小さな息遣い程度。
日常の気怠げで何気ない平穏は、災害やホロウと隣り合わせな私達の心を癒す長い時間のうちのほんのワンフレームでしかない。
「うーん……やっぱりパエトーンの相手は対ホロウ六課になっちゃうのかな」
「うわ、手強そう」
「だよね、時速200キロで迫られたら逃げようも……あっ、そういえばお菓子買ってきてあったんだ。 いる?」
「いる」
チョコレートが口に運ばれていく。
甘味を楽しむ姿はいつもと変わりないし、表情も変わりない。
それでもじーっと見入ってしまって、目線がぶつかって睨まれる。
「ジロジロ見ないで」
「ごめんごめん、美味しかった?」
「まぁ。 てかいつも買ってきてるやつじゃん」
そのツッコミは正しい。
いつ聞いても美味しいと返ってきて、なんだか嬉しくてリピートしている。
だから殆ど常備品みたいなものだし、バーコードを集めて応募するキャンペーンにも当選した。 とはいえども当たったのは食器セットだったが。
「てか主役がパエトーンの映画なら、あたしも出る?」
「エレンが出るなら見てみたいな! あ、でも映画なら本当のエレンは出ないんだ……」
「……ま、別にどうでもいいんだけどさ」
再びチョコレートが彼女の口に消えていく。
あとでお兄ちゃんと一緒に買い物に行くときにでも、追加購入しとこっと。
「あたしがいて、あんたがいる。 別に物語ってそういうのでしょ」
「エ、エレン……なんだか今日はちょっぴり詩的だね」
「詩的とか、別に。 古文の先生のせいだから、なんでもない」
照れ隠しか、そっぽを向いた。
からかったのは確かに悪いけれど、でも、そうか。
ふと羊飼いの言葉を思い出した――新エリー都では毎日『パエトーン』の新しい物語が綴られている、だったか。
だが『パエトーン』の物語に綴られるのは兄妹とボンプだけではなく、数多のエージェントたちも綴られることになるだろう。
そしてそれは巡り巡って、新エリー都の物語の一部ともなる。
「……うん、エレンと私でずっと一緒に物語を紡いでいこ!」
「うぅ……いきなり抱きつくなっての……」
もしも万が一原稿から解放された時に気が狂っていたらやる
-
ルーシーとキャンプファイヤー
-
アンビーと映画鑑賞
-
未所持だけど青衣さん
-
未所持だけど柳さん
-
未所持だけど朱鳶さん
-
↑何も引いてないの?もっとエレン書いて