ぜんぜろつめた   作:寒さで体調をよく崩す人

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エレンとリンがホロウに巻き込まれるだけ。
アンケのカッコイイサメイドの品、これじゃない感があったら申し訳ない。


つよつよしゃーく

 ドーナツを頬張りつつ、フリーな手でピース。

 カメラ目線で自然な表情を作ったなら、あとはまばたきの時にボタンを押されないことを祈るだけ。

 

 カシャリ。

 

 シャッター音が鳴ったらもう一口頬張った。

 塊みたいなチョコで甘ったるく、あとで飲み物を飲みたくなるのだが、どうやら新エリ―都ではこれがトレンドのど真ん中らしい。

 エレンの用事に付き合ってるんだから、ちょっとぐらい寄っかかっても良いよね? 少しだけ隣に居る彼女に体を預けるとしよう。

 

「あんた、ちょっと重……えっ、軽っ。 いやでも自分で立ってよ」

 

「えー、ダメ?」

 

「ダメ」

 

 サッパリと返されてしまい、仕方なく自分の両の足で立つことにした。

 さっきの写真が送られてきたら、即座に保存とバックアップをした。 大切な思い出なのだから通信料は惜しまない。 もちろん、これらはビデオ屋とプロキシ業で得たディニーから飛んでいく。

 写真には笑顔でドーナツを頬張る私と、見る人が見れば笑っていると分かる学生服のエレンが映っていた。

 

「あとでみんなに送っとこ」

 

「今でもいいんだよ?」

 

「……やだ」

 

 今日はルミナスクエアよりも少し離れた新しめの街で、二人で食べ歩きをしている。

 たくさん食べて、たくさん歩けば、食べた分のカロリーを消費していることになるので実質ゼロという算段だ。

 そんなわけがないとか、そういうのは乙女にはNGだ。

 体重の事を気にしているのではない、健康的に良いという免罪符を振りかざしたいだけだ。

 

「ここさ、割といい感じのお店多いね。 ま、新しめのところだから人も店も少ないけど」

 

「でもしばらくしたら雑誌で特集が出そうだよね~。 あっ、ほら! あそこのお店のプリンとか、美味しそうじゃない?」

 

「食品サンプルが美味しそうだからって、本物も美味しいかなんて……待ってよ、食べないとは言ってないから」

 

 そうしてしばらく練り歩いていたのだが、ふとした違和感を感じた。

 なんというか、ぼんやりと悪い事が起こりそうだなっていう悪寒といえばいいのだろうか。

 いやいや、こんな日に限ってそんな事が起こるわけなんてないじゃん。

 

「……ね、もしかして疲れた?」

 

「へ!? あ、いやそこまでじゃない……かなぁ?」

 

「疲れたなら素直に言ってくれていいのに。 おんぶしよっか?」

 

「へ、平気だってば……ん?」

 

 そうこう言っていたのだが、辺りの感覚が不安定になる。

 しまった、もしかしてこれは——

 

「嘘、もしかしてホロウ!? でも今日のエーテル指数は極低だって……」

 

「ちぇっ……こんな日まで……」

 

 恐らく今さっき出来たばかりだろうから小さいとはいえども、丁度私が居た地区にホロウが出来てしまった。

 新しい街に遊びに来ただけだっていうのに、こんな不運に遭遇するだなんて。

 ああ、携わっていた企業が観測データを偽り、目先の利益だけを優先したわけじゃないと信じたいものだ。

 最悪なことに私自身が巻き込まれたため、パエトーンとしての仕事も一切出来ない。

 頼れる伝説のプロキシ様も今はひ弱な一般人なのだ。

 

「あー……あんたさ、案内とか今出来ないよね?」

 

「うぅ、ごめんね。 こんなことになるとは想定してなかったの」

 

「……まぁ、あんたのお兄さんたちが助けてくれるまでなら何とか出来るから」

 

 ずっと背負っていた鞄から、いつもの大鋏が数パーツに分かれて入っていた。

 テキパキと組み立てて構えたなら、戦うメイドさん……ではなく、戦う学生さんになった。

 もちろん、カッコよさやサメ尻尾の太さなどは諸々据え置きだ。

 

「ま、流石にそうそうエーテリアスに見つかるわけ……」

 

「エレン、後ろから来てる!」

 

「はあ? マジで……邪魔っ!」

 

 飛びかかろうとしてきたエーテリアスを、片手で振った大鋏で薙ぎ払う。

 そのままエーテリアスは横方面に吹っ飛んでいき、壁にぶつかって消えてしまった。

 だが、それは序章にも満たない。

 飛びかかってきた方向を見れば、エーテリアスがどんどんと湧き上がってきている。

 あの量を一気に相手をするだなんて無理だし、普段なら迂回ルートを提案していたが、私の言葉よりもエレンの一歩が早かった。

 軽く大鋏を振って、構えて、エーテリアスに突撃していった。

 まるで巡洋するサメのように。

 

「今日のデートが台無しになったの、あんたたちのせいだから!!」

 

「あれぇ!? 今日のってデートだったっけ? えーと……」

 

 どんどんと道の奥からエーテリアスが湧くが、大小問わず全て切断されていく。

 いつもの視点でも、今の視点でも、彼女の素早い動きは目で追いきれず、私も少しずつ付いていかないとはぐれてしまいそうだ。

 視界の隅に映ったであろう小さな飛翔体にも反応し、ほんの少し横に避けたと思えば、急ブレーキをして、すぐさま発射したエーテリアスを仕留めていく。

 こうやって見ていると、体に負荷が掛かるであろう戦い方ばかりでエネルギーがすぐ切れるのも分かる。

 だが、今日はいつもの貧乏ランなんかとは違う。

 サンドイッチ、ドーナツ、ケーキ、プリン、たい焼き、パスタ……九割ほど私が奢ったご飯のおかげで、フルエネルギーなのだ。

 

「ねえ、リン!」

 

「ちゃんとついてきてるよ!」

 

「そうじゃなくって……あとで、夕飯も付き合って! 流石にこれだけやってるから、疲れるって…のっ!!」

 

 すばしっこい中型のエーテリアスの攻撃をパリィし、怯んだ隙に先端を突き刺した。 非生物は苦悶の声も出さず、痛みを一つも訴える事もなく粒子へと変わっていった。

 それを見届けると、彼女はそっと大鋏を下ろした。

 沢山いたと思っていたエーテリアスも、流石にいなくなっていた。

 これが一ウェーブ目でした……なんてオチは流石に要らない。

 

「はぁ……で、これで流石におしまいだよね?」

 

「そうだと良いんだけど……」

 

「……てか、これ良くないパターンじゃね?」

 

「え? あっ」

 

 どこからともなく聞こえる衝撃音。

 そして圧倒的質量の足音が聞こえると、大きめの人型のエーテリアスが現れた。

 腕を癇癪のように振るうと土煙が巻き起こり、エレンがうざったそうに手を払う。

 どうやら、運命曰く「終わってない仕事がたくさんありますから、まだ休んじゃ駄目ですよ」とのことらしい。

 残業に対して嫌そうにしつつも、大鋏をまた構え直した。

 

「ねえ、夕飯のグレード一つ上げてくれたりしない?」

 

「え? 今月の電気代が………も、もちろん!」

 

 ほんの少し満足そうに笑い、飛び出していく。

 いつも通り、駆けて、避けて、突撃し、薙ぎ、突き刺す。

 ローファーの底が擦り減ろうが、彼女がこの戦場に波を引き起こし、この戦場をかき乱し、そして波も敵も制してしまう。

 凍てついた海流が何度もエーテリアスを削る。

 

「しつこい……」

 

 だが、エーテリアス側も体躯に見合った強さだ。

 エレンが攻撃しようと近づいたタイミングで大把腕を振るい、相手を強制的に守りの態勢に切り替えさせて、そしたら反対の手で殴りつける。

 大きい体を活かした、非常に合理的な戦法。

 だが、殴られる前には後ろに彼女は飛び退いていた。

 流石に消耗戦に入るかと思った、その瞬間。

 

「なに掴んで——ッ!? リン、避けて!!」

 

「へ? って、それは反則でしょっ!!」

 

 エーテリアスが突然車を両手で掴むと、それを下手投げをした。

 惚れ惚れするほどの綺麗な弧を描き、明確な殺意を以て私目掛けて投げ付けて来たのだ。

 急いで横へ走ると、さっきまでいた場所に廃車になりたてほやほやの車が突き刺さっていた。

 もしも当たっていたらと思うと、冷や汗が染み出してくる。

 

「さっさと死ねっ!!」

 

 今まで見た中で一番強い振りがエーテリアスの体を抉ると、そのまま巨体が膝をつき、何も居なかったかのように消えてしまった。

 彼女が軽く刃先を振るうと、なんだかふわふわした感覚が消えて、空がはっきりとした夕焼けに染まった気がした。

 動いていないのにそうなったということは、ホロウが消えたということなのだろう。

 ドッと疲れが出たのか、誰もいない広い道の真ん中でエレンが崩れ落ちた。

 

「エレン!」

 

「んー……疲れた、寝たい……」

 

「流石に道の真ん中は不味いよ、しかもまだ安全かとか……」

 

「平気でしょ、なんていうかホロウ消えたっていうか……くぁ……んだからさ、もう寝ていい?」

 

「ダ、ダメ! エレンが私の事背負えても、私はエレンの事背負えないんだからね」

 

 鋏を軽くバラし、刃先を軽く拭うと鞄に戻した。

 立ち上がるのも面倒くさそうにしつつも、大人しく私の手を借りて立ち上がり、肩を借りて歩き始める。

 ちゃんと戻ったら労って、たくさん夕飯をごちそうしてあげよう。

 

「……んね、リン」

 

「なーに?」

 

 夕焼けが私たちを強く照らす。

 慣れない道だったが、少し前に立ち寄った店が見えて安堵した。

 

「怪我、してないよね?」

 

「もちろん。 エレンが呼びかけてくれたからね」

 

「別に。 あんたが無事なら何でもいい」

 

 言葉とは裏腹に、心配そうな表情は隠せていない。

 順調だと思っていた戦いで、突然友人の命が狙われたのだから仕方ない。

 片手でエレンの頬をつついたら、思いっきり尻尾で背中を叩かれてしまった。

 なんだ、思ってたよりも元気だったかも。

 にしても、もしかして出来たてとは言えどもホロウを一人で消しちゃった……?

 別の方面から救助隊が敵を倒していたのかもしれないけれど、もしも万が一研究者にエレンが見つかったら解剖されないかな。

 ……流石に零号ホロウで何度も検査されてた気もするし、いらない不安か。

 

「流石に駅近いし、自分で歩く」

 

「ほんと? 大丈夫?」

 

「平気、怪我とか無いし」

 

 なんとか少し建て直したエレンが、自分の足だけで立った。

 ちなみに重いか軽いかはノーコメント、そういうのはあまり言ってはいけない。

 でも、エレンは体重を気にしてたけど、太ったというよりあんなに激しく動けているのだから、その重さの過半数ってもしかしたら筋肉なのかもしれない。

 だとしたら、今頃目に見えて分かるぐらいになってそうだし、やっぱり尻尾……。

 うーん……。

 

「あれ、もしかして電車行ったばっか? ちぇっ、まぁ数分で来るから良いけど……」

 

「あのさ、エレン」

 

「ん?」

 

「今日のデート楽しかったよ」

 

「……前言撤回、全然台無しじゃなかったかも」

 

 暗くなってきた空でも、そっぽを向かれていても、耳だけで彼女の表情は察しが付く。

貴方様が見たいサメイド。押したいだけの人は最下部をどうぞ

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  • シュモクザメが一匹……
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