ぜんぜろつめた 作:寒さで体調をよく崩す人
Twitterアカウント作った( https://x.com/hollow_syuukai )
今まで以上に自己満足を煮詰めていて世に出すの不安過ぎる、ハーメルンは今まで通知が来たことがないので置いておいて、pixivがめっちゃ怖い。
外を歩く足取りは軽い。
道のタイルの綺麗さは、ホロウの中では得られない人々の生活感を感じられて好ましく思う。
此度も一人でルミナスクエアに訪れた。 都会の喧騒はH.A.N.Dや治安局にとって、最も分かりやすい目に見えた成果といえる。
人々が笑い楽しみ、時に苦悩し葛藤する。
「さて、何にするべきか……」
こうした暇な時間を取ったのは、決して都会の中心で瞑想する修業ではない。 瞑想はたしかに大事とは言えど、それの為だけに普段の倍近くの速度で働く修業を実施するだろうか? 普通はしないだろう。
あくせくと働き、柳に沢山手伝ってもらって作った時間は、贈り物を見繕うのに用いるつもりだ。
柳に時間を幾分か作ると話した時、羽根を伸ばすのには使わないのか、と問われた。 しかし計画の全てを打ち明けると、ニコニコしながら仕事に戻っていったのは今でも不思議に感じる。
「む……拙策か?」
いざ街を歩き始めたはいいものの、よくよく考えれば好む物がどのようなものか詳しく知らない。
パーキングの近くに棒立ちして腕を組めど、アイデアは何も浮かばない。
ビデオ屋なのだからビデオでも――と思えども、コレクター気質なところもある彼女のお目に叶う物を、門外漢な私が選べるわけもない。
いや、こういう時は貰えたものは大抵喜んでもらえると柳が零していた。 だがそうではなく、きっちり喜ばせてみせたい。
気持ちに甘えるのではなく――という表現は良くないのだが――自身の中でどこか諦めたり妥協するのは、バレずとも失礼に当たる。
「余りにも無手法か、だがこのままでは柳に合わせる顔もない……」
無い尻尾を垂れ、思わず眉間を皺が寄る。
あまりにも無策が過ぎたが、それでもなんとかこの『贈り物を選ぶ修業』は成功させてみせなくてはいけない。
彼女に常に身につけて貰えるようなものか、それとも店において貰えるようなものか。
……一番このニーズに合ったものは、やはり日用品か。
「雑貨屋でも覗いてみるとするか」
踵を返して横断歩道を渡った。
すれ違う幾人は世間話に夢中なのか、私は誰にも騒がれること無く済んだ。 ファンと交流するのは仕事のうちであり、別に嫌いではない。 だが、今はただ一人のことだけを考えているというのに交流するのはある種の裏切りになりかねない。
雑貨の商品を覗くと、様々な会社が様々な商品を売り出しており、値段以外の違いが分からない。 やはり使って試すしかないのかと思えど、一人暮らしではないが故に日用品に関しては難しい点が多い。
……やはり一人暮らしは前向きに検討し続けたほうがいいのだろう。
「万策尽きた、か」
耳が項垂れる。
店を出ようとした時、ふと狐の嫁入りの日を思い出す。
ぽつりぽつりとしていた雨も、彼女と共に雨宿りする頃にはざあざあと音を立てていた。
雨がアスファルトを叩く音の中、隣合って外を見つめた昼下がりは久方ぶりに得た平穏な時間のように感じた。
「――またあのような時間を過ごしたい」
零れ落ちた言葉はあまりにも無意識的であり、思わず自身でも驚いてしまう。
過去を思うことはあれど――それが一度手から離れてしまったのであるのならば――割り切って思い出として胸に仕舞い、再び戦場に舞い戻るのみ。
だが、もしも指先で触れられる程度であれば追い求めようと走ってしまう。 なりふり構わず、髪が乱れようとただ一心不乱に。
本当にわがままなものだ。 我ながらそう思う。
手土産は――いやいい、自身の会話能力に任せよう。
「あっ! 雅さん、やっと会えた〜!」
久方振りにビデオ屋に寄ることができると、小動物よりも愛くるしく感じる店長が出迎えてくれた。
何度か電話をかけてくれていたらしいが、全てホロウのせいで一度たりとも繋がることは無かった。 やはりホロウは全て消し去らなくてはいけない。
紙袋を持ち手をギュッと握りしめる。
「すまない。 掃討作戦があまりにも早く終わり、他の場所に駆り出されていた」
「じゃあきっと疲れてるよね、折角だからゆっくりしていって」
2階に招かれ、先にソファに座ったリンはそっと隣を勧めてくる。
刀を隣に立て掛け、招かれるがまま隣に座った。 力を抜けば心地の良い沈み込みが体を迎え、すぐさまふわふわとした気持ちになってしまう。 もしもディストピアであれば、きっと真っ先にこのソファは取り締まり対象となっていただろう……ああ、これは褒め言葉だ。
「ふぅ……お前のソファは、本当に眠たくなる……」
「じゃあ眠っちゃう? 毛布もあるし……ん?」
反射的に彼女の服をつまんでしまう。
少しうつらうつらとしていたとしても、肘から先を素早く動かす程度は造作もない。
「いや、問題ない。 『ソファでも問題なく会話をする修業』をするつもりだった、故に好都合だ」
「ホント? ムリだけは駄目だからね?」
「ああ、安心しろ。 ……ん……くぁ……」
「ほんとかなぁ……まぁ、いっか」
安心したようにソファに深くもたれる。
噛めなかった欠伸がこぼれ出てしまい、彼女に心配をかけてしまったのは完全に私の失敗だ。
飾られた写真に、いつか私が写ったものが添えられることはあるだろうか? ポンプの充電スタンドは六課のものと同じだっただろうか?
右から左へと部屋を見ていると、ふと棚に私が贈った髪飾りがあることに気がついた。
「あの時の髪飾りは飾ってくれているようだな」
「だって大切なものだからね。 起きて前に通る時、いっつも視界に入ってるよ」
「そうか」
彼女の部屋の片隅に私の色がある。 それだけで、どこか優越的な感情が心に浮かんだ。
時折、何処か彼女に対して感情が稚拙になる。
出そうと思った言葉がどこか突っかかり、何気ない仕草の虜になり、幼稚な独占欲が指先を震わす。
ふと、紙袋を持ってきたのを思い出し、同時に彼女も紙袋に興味が湧いた様子だった。
「家を出る時に菓子を持っていけと、幾つか適当に持ってきた」
紙袋から大きい箱を取り出す。
メロン味ではない為、自身でもピンとこない外装。 だがジッと見ていると、贔屓にしている企業や個人を尋ねる時に父がよく持っていく菓子だと、やっと思い至った。
他にもクッキー缶などをガサゴソと出し始めると、彼女がビクリとした。
「ちょっ、こんなに!?」
「ああ、日頃の感謝として受け取ってくれ」
何故か慌てふためき始める。
確かに些か多いが、身内と一緒に食べれば……一ヶ月程度か一ヶ月半程度で消費しきれる……だろうか?
「……ね、ねぇ雅さん。 一緒に食べない?」
「私の贈り物を、私が食べても問題ないのか?」
「うん! だって、そうしたら思い出まで貰えちゃうからね」
包装を丁寧に開け、中の箱が明らかになる。
彼女の普段のそれや部屋の様相に対して、時折こうも丁寧になるものかと思ったが、贈り物だからだろうか。
個包装された焼き菓子を開け、口元に運びこむ。
硬すぎず柔らかすぎず丁度良くサクサクと食べれる。
「……口に合ったか?」
「甘くて、今までで一番美味しいクッキーだったかも……」
「そうか。 ならば、そちらの味も頂こう」
ゆったりとした時間の中、二人で一通り試す。 やはり老舗の菓子屋が作っているのもあってか、外れはなくどれも美味だった。
ただ一つ残念な事があれば、メロン味が無かったことか。 手土産なのだから私の好みを反映するべきではないとはいえど、少し悔しさは残る。
ふと、彼女がジッと私の顔に注目しているのに気がついた。
視線が交差すれば、じわりと頬が赤く染まり、慌てた様子で視線が外れされる。
「む……?」
「そ、その、ちょっと珍しいな―って……」
「そこまで顔が赤くなるような事があったのか? ……ああ、服は透けてないはずだ」
「っ!? ちょ、どこでそんな知識覚えちゃったの!?」
「以前、『ニューススタンドの雑誌を全て読む修行』の際に時に見掛けた。 次来る時に持ってくるとしよう」
「う、うーん、お兄ちゃんが良い顔しないと思うからいいかなぁ……」
少し残念に思っていると、そこまで凹まなくても大丈夫だと励まされる。 関節の可動域を超えるシーンが多くあり、興味深いシーンが多く見受けられたためリンにも共有したかったが、身内がそうなら仕方あるまい。
「そのね、雅さんがすっごく楽しそうに笑ってたからつい見入っちゃって……」
「そうか? お前と一緒にいる時はいつも楽しい」
「へ? え? あ、ありがとう……?」
もう一つ、もう一つとついつい口元に菓子を持っていってしまう。
彼女もまた同じように焼き菓子を美味しそうに頬張り、そして破れた包装が積み上がる。
昼下がりの何気ない休暇だったはずが、少しずつ特別な色に染まるような気がする。 そう思えば、確かに今頬が綻んでいるのは納得といえる。
「……こうして、誰の目も気にせずに話すのは久しく感じる」
「うん、あんまりビデオ屋の中まで入ってきてくれないもん」
「すまない、お前に会えただけで満足していた」
「んもう。 はいはい、そういう事って他の人にも言ってるんでしょ~?」
リンが頬を膨らませる。
不機嫌そうといえばいいのか、拗ねているといえばいいのか。
「言ってもよかったのか?」
「まぁ、私だけの方が嬉しいけど……」
「なら、そうしよう」
幸い、言う相手も居なかったので守れる約束だ。
言霊という言葉が存在し、約束という契約が存在し、言葉が契約を形作る。 小さなものであれ、大きなものであれ、それらには下も上も格式もない。
それが彼女のためになるのならば、そうするだけに過ぎない。
「そうだ。 話すだけではなく、もう少し趣向を凝らしてみてみるのはどうだ」
「うん? えっと……っ!?」
彼女の手に、私の手を重ねる。
先日は手のひらに、此度は手の甲に重なった。
雨の日に見た驚いた顔と同じようではなく、照明に照らされたそれは疑念の方が強いように思えた。
「リン?」
「……み、雅さん……えっと、その……」
体を少し寄せる。
確か雑誌はこんなシチュエーションの漫画があった気がしたが、私の関節の可動域ではこの程度しかできない。
「こ、こんな……事されちゃ、す、好きになっちゃ……う、でしょ……?」
「私はお前の事が好きだが」
「す……っ!? わ、私だって、まぁ……その……」
歯切れの悪い返事。
彼女の言う『好き』の意味は数ある中でどれに付随するのか。 恋愛に疎い私であろうと、頬を紅潮させて目を伏せがちにする意味程度は心得ている。
少し冷たい指先に、じんわりと体温を共有していく。
言葉が出ずに口籠る彼女を口説く方法は、未だ私は知り得ない。 やはり恋愛漫画や映画をもっと履修して――
「その、雅さんは……も、元々私の婚約者だし……?」
突然穿たれた言葉は、私の思考が全て絡まるのに余剰なほどだった。
その言葉を言っていたのが何時だったのか全く思い出せないというのに、どこか聞いたことがあるような気もしなくもないもどかしさ。
婚約……いや、婚約……?
「…………」
「あー、えっと、雅さん?」
「……とっくのとうに、私とお前は付き合っていたのか?」
「へ? ……そ、そう! 付き合ってたの!」
待て、本当に今何が起こった?
私はリンと付き合っていたらしく、婚約というのだから結婚を前提にしていたらしい。
そして今日それをようやく知ったのか、それとも忘れていて今日知ったのか?
自分の頬を抓るが痛覚はあった。
「……なら、これは改めてになるのか?」
「あ、えっと、まっ」
彼女が止めようとする声を遮って、言を発する。
「お前が好きだ、ずっとそばにいてくれ」
「……ひゃ……ひゃい……」
もしも万が一原稿から解放された時に気が狂っていたらやる
-
ルーシーとキャンプファイヤー
-
アンビーと映画鑑賞
-
未所持だけど青衣さん
-
未所持だけど柳さん
-
未所持だけど朱鳶さん
-
↑何も引いてないの?もっとエレン書いて