※主人公にスタンドあり設定(でないとスタンドに触れられないので)
※リヴィンに入り込むラバーズ
「ああ……入り込んだのが私でよかったよ」
一体何を言っているのだ、と敵の目が語っている。
「元からそうだったとはいえ、私は約束をしたんだ。『人にはしない』、と。でも同時に危機的状況に陥った場合は使ってもいい*1とも約束をしたんだ」
「あ? 何がいいたいんだオイ」
「好きなだけ吸わせてもらうよ」
自身の体を『作り変える』。内側にあるものが決して出れないように、出口という出口を全て塞いでしまう。目は見えなくなり、外の音が余程の音量でない限り聞けない状態へと化していく。そうして中にいる存在を包み込み、味わうように少しずつ少しずつ吸っていく。
──これが、人間の味。
今までとは比べ物にならない量に満たされすぎて狂ってしまいそうだ。食べ物があるわけでもないのに精一杯味わおうと舌が口内でゆったりを動き、開いていないのに口元に手を当て、溢れ出してしまいそうなのを抑える。恍惚という文字がまさに当てはまり、このまま吸い尽くしてしまいたい気分だった。しかし流石に過剰接種すぎるのと、死体を生み出したいわけではないので、吸うのをやめて『出口』を開き直した。
「あ、……ああ……う」
余裕の笑みでこちらを見遣っていた男は、すっかり干からびた様子で地面へ崩れ落ちていた。生きてはいる。しかし先ほどまでピンピンしていた男がこれだ、と言われても納得できない姿に成り果てていた。ひどい病にかかって入院中の人です、と言われた方が納得できるだろう。
「あはは」
吸ってやった。吸ってやった! 腹の底からゾクゾクと上がってくる高揚感がリヴィンを支配する。
──ああ、もっと、もっと。食べてしまいたい。
そう思うほど恍惚としてきたリヴィンの心に、とある声で一気に冷や水がかけられた。
「リヴィン……?」
仲間からの声だ。現実へ引き戻されたリヴィンの熱く燃え盛っていた気持ちは、どん底へ真っ逆さまに落ちていった。
「あ、ああ、……ご、ごめ、ごめんなさい……ごめんなさい!!」
声になっていない声を出しながら、必死で脚を動かして前へ前へと逃げていく。ちゃんと足は動いているのに、動いている感覚が全くない。前も見えている。見えているのに見えない。暗闇ばかりがあらゆるリヴィンの感覚を襲っていき、すべてを閉ざしていく。
これは罰だ。人間のエネルギーを吸って、おいしいと、もっと食べてしまいたいと感じてしまった自分への罰だ。
どろどろと自分が崩れ落ちていくかのような、生きにくさがリヴィンを支配する。だから禁じられていたのだと、優しい約束にリヴィンは一筋の涙を流した。