人間を謳歌せよ if/没小話   作:雲間

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もうオリジナルアップロードし始めた方が書き上げられるんじゃないだろうか……(筆が進んでいない)


人間謳歌中④

 

「……よォ、康一。ちょっといいか?」

「あっ、どうしたの仗助くん」

 

 事情を知っているが関わりがない、話ができる人物。帰り道で見かけた、広瀬康一というあの時承太郎との話を聞いていた同級生にしか相談することができなかった。

 

「……そっか、仗助くんと同じクラスに入った外国の人が義理のきょうだいだったんだね」

「おー。しかもなんか、すげーズレまくってる人でよ。邪険にされてるわけじゃあねーんだけど……、モヤモヤすんだよなァ」

 

 仗助に対して気分を悪くすることもなく、内容はともかく疑問に快く答えてくれる。外国人だからという理由だけで見過ごせないズレ加減は気になるが、きっとそれは過去に関係しているのだろう。悪い人ではないのは確かだ。

 

 それでも、仗助には拭えない鬱屈とした気持ちが存在している。『父親』は知らなかったとはいえ、母と自分のことを放置して養子に同い年の子を迎えていた。何も思わない方が不思議な状況だ。

 

 康一は、口はひん曲げるが眉尻は下げた仗助を見てから何度か瞬きをしたのち、ゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

「その、リヴィンさんにはどういう経緯で養子になったのか聞いてみたの?」

「いや、あんまり過去のことに触れてやらないでくれって、保護者みたいな人から言われてたからよ。俺もあんまり深堀はしたくねーし……」

「本人にもそう言われたの?」

「……言われてねーな」

 

 仗助が花京院の話を踏まえて、勝手にこれ以上は話せないのだと納得をしただけだ。リヴィンから追及してくれるなとは一度も言われていなかった。

 

「なら聞いてみるのが一番だよ。聞かないのは仗助くんの為にならない。仗助くんの人生は仗助くんのものだし、『今後』を考えたら早いうちにぶつかってみるのが一番だと思う。ずっとモヤモヤした気持ちのままって気分悪いからね」

「……そうだな」

 

 首の後ろを掻きながら、ちゃんとリヴィンに聞いてみようと決意する。嫌なことを先送りしていても何も始まらない。

 本当に過去について言いたくないのであれば、本人の口からはっきりと聞けるだけでも、心持ちが違くなる気がした。

 

「康一、ありがとな」

「僕の言ってることが正しいかどうかは分からないけれど……、きっと後悔をしないのはそっちだと思ったから」

「おう、後悔しねーと思う」

 

 ニッと康一に笑ってから、前を向き明日のことを思った。

 

 ★★

 

 今日のリヴィンは言っていた通り、昨日の『学習』で午前の授業中そこまで変な行いを見せることはなかった。何日か授業を重ねれば、ある程度問題発言や行動を起こすことはないと思える。そんなリヴィンを再びお昼休みに誘って、今回ばかりは億泰に遠慮をしてもらいつつ屋上へと来た。

 

「どんくらい時間がかかるか分かんないんで、先に飯食っちゃいましょう」

「分かったよ」

 

 今日は昼休みのことが気になりすぎて早弁をするほどお腹が空かず、リヴィンと同じように弁当を食べ始める。早弁していたら食べ終わるのを待つだけの時間が発生したはずなので、かえってよかったのかもと仗助は思った。

 二人とも食べ終わり、片付けをしたところで、リヴィンから改めて質問がくる。

 

「それで、話ってなんだい?」

「……その、リヴィンさんって、……あー、典明さんからあまり聞いてやるなって言われたんスけど、どんな経緯で養子になったんですか?」

「花京院から聞くなって言われた……?」

 

 本題より別のところに疑問がいったらしいリヴィンは、頭を横に傾けながら言葉を続けていく。

 

「……多分花京院がそう言ったのは私への牽制だ」

「へ?」

「私がそのまま話してしまうのを防ぐ為に、先に仗助へ言っておいたんだと思う。私は聞かれない限りは話さないけれど、仗助にはしゃべってしまうと分かっていたんだろう」

「はあ……」

 

 そうかそうかと勝手に納得しているリヴィンは、仗助の理解が追いつかないままに喋り続ける。

 

「まず一般人向けの設定を言おう」

「設定??」

「リヴィン・ジョースター。1983年12月19日生まれのO型。好きな物は果物で、特に好きなのは林檎。養護施設育ちで、14の時に超記憶症候群なのを見込まれてジョセフ・ジョースターの養子となる」

「超記憶……?」

「自分が見聞きしたのを全て覚えていることだよ」

 

 さらさらと言ってくるが、そもそも設定とはなんなのか。リヴィンは頭の中にある設定を澱みなく続けて読み上げていく。

 

「日本に来た理由は、ジョセフの孫である承太郎から日本の話を聞いて興味を持ち、日本での生活をしてみたいと思ったから。現在はジョセフと親交のあるSPW財団のツテで、財団に勤めている虹村の家にホームステイをしている。と、ここまでが設定なんだ。嘘をつくのは心苦しいけれど、本来の経歴は一般人には到底信じ得ない内容で、尚且つ知られるとよろしくない経歴の為この設定を通している」

「はあ……」

 

 超記憶症候群なのは本当だよと言われたが、欲しい補足はそんなところではない。漫画の人物設定かと突っ込みたい気持ちを抑える。

 そして仗助は思った。花京院が過去を聞いてくれるなと言ったのは、リヴィンがこうなるのを見越してのものでもあったのではないかと。

 

「花京院から釘を刺されているのと、君のことを巻き込みたくないから、私に関しての真実を全て話せないのは許して欲しい。いつかは話せると思う。そうだね、話せる範囲で言えることは……私は形式上ジョセフの子供になったんだ。私が心持ちとしてなったのは『リヴィン・ジョースター』であり、『ジョセフの子供のリヴィン』ではない。勿論、ジョセフやスージーのことは愛しているよ。父母としてではなく、家族としてね」

 

 挙句の果てにもっと訳のわからないことを言われた。仗助は頭がパンクしそうなのをなんとか抑えて声を上げていく。

 

「え〜〜っと、つまり、リヴィンさんはジョースターになりたかったってこと……?」

「有り体に言ってしまえばそうだね。だからといって、ジョセフ以外のジョースターという苗字の人なら誰でもよかった訳ではないんだ。私はジョセフの……、……親族に、人生を救われてね。……一番大切で愛している人達、なんだけれど、」

 

 止まなかった言葉が途切れ途切れとなり、やがて止まった。

 じっと見つめていたリヴィンの茜色した瞳に、涙の膜が張られていくのが見える。

 超記憶症候群だと言っていた。つまり、いつでもその時の記憶がすぐに思い返せるということで、リヴィンにとっては先程の出来事くらいの気持ちなのではないか。

 一度リヴィンは瞼を閉じて涙を抑えた後、数回瞬いてから弱々しい声で語っていく。

 

「亡くなって、しまってね。その人達と家族になりたかったんだけれど、なることができなくなってしまった。けれどジョセフがその人としていた約束で、養子として迎えてくれたんだ。だから私がなったのは『リヴィン・ジョースター』という訳なんだよ」

「……なんか、その、すんません。辛いことを話させてちまって……」

 

 想定外すぎる理由で養子になっていた事実に、仗助は気後れして後頭部を掻きむしった。父親は亡くなった人との約束を果たす為にリヴィンを養子にとり、リヴィンもその人達と家族になりたかったが故に養子となったのだ。単純に養子をとりたかったという理由ではなかった。モヤモヤしていた気持ちはとうに吹き飛び、今は罪悪感が鎮座し始めている。

 

「辛いだけじゃない。今こうしてリヴィン・ジョースターとして存在し、沢山のことを気づかせてくれた『大切な人達』がいる幸せがあるんだよ。仗助も、気にしないで欲しい」

「……うっす。あ、後聞かせて欲しいんスけど、どうしてわざわざ杜王町に?」

 

 設定と言っていた以上、先程話していたことは事実ではないはずだ。仗助のことを知ったからここに来たのか、それとも違うのか、話せる範囲でいいからそれを知りたかった。

 

「杜王町は日本の市町村の中で、平均以上の行方不明者が出ているのを知っているかい?」

「……あー、そんなような話を聞いたような」

 

 嘆かわしい事実だと祖父が愚痴をこぼしていたのを覚えている。とはいえ、仗助の周りでそのようなことが起こったことはない。

 

「SPW財団はスタンドの仕業なのではないかと見て、調査のするよう億泰と形兆の父親に命じ、虹村家は東京から杜王町へ引っ越すことになった。それで本題なんだけれど、私は元から虹村家と親交があってね。億泰と形兆と同じ学校に通いたいという気持ちでここに来たんだよ」

「じゃあ、俺のことを知らないで杜王町に来たんスか?」

「うん。……実は私が仗助のことを知ったのは、会う前日だったんだ。私が暴走するからだという理由でね」

 

 しゅんとした目をして言っているが、確かにこの予測不可能な人がどうなるのか全く想像がつかない。ギリギリまで伏せていたのも頷ける。

 ともかく仗助のことを知ったから杜王町に来たのではなく、『大切な人』と同じ学校に通いたいから杜王町に来たということだ。抱いていた疑念が解消されて、心の底に溜まっていた憂鬱な気持ちがため息と共に完全に消え去っていった。

 

「なんつーか、たまたまタイミングが悪かったんだなあ……」

「何がだい?」

「いや、俺とリヴィンさんが出逢っちまったのが」

「悪いことではないと思うけれど……?」

 

 何が悪いの? という純粋な目で見つめられ、仗助は言葉に詰まる。そう言われるとそうなのかも……と雰囲気に飲まれていると、リヴィンはビシッと右手の人差し指だけを立ててこう言った。

 

「そうだ仗助。今度私と一緒にアメリカへ行って、無責任なジョセフを説教しに行こう」

「別にそこまでは……」

「いいかい? ジョセフが君のことを知らなかったとはいえ、その発端となる事実はあったんだ。とても忘れていいことではない、不誠実だ。君の母親がどうであれ、君には怒る権利がある。……物理的な制裁は死んでしまう可能性があるから、やめて欲しいんだけれども」

「さ、流石にやらねーっスよ! 結構な歳なんだろッ!?」

 

 確かにまだ見ぬ父親に対して思うことがないとは言わないが、年配の人間を殴ったりまではいかない。否定すると、なら良かったとリヴィンが息をついた。

 

「ともかくだよ。仗助が行ける時に行こう。時はあっという間に過ぎ去っていく。後悔をする前に、やれるべきことはやる方がいいんだよ」

「……そうッスね」

 

 今だってそうだ。実際にリヴィンへと聞かなかったら、心境は全然違っていただろう。

 リヴィン本人は『グレートにトンチキ』なところはあるが、仗助に対して真髄に向き合ってくれているのが分かる。

 

「じゃあ仗助、5月の連休にアメリカへ行こう。善は急げというだろう?」

「そんなに早く行かねーっスよ!? パスポートとかもあるし、流石に気が早すぎなんですって!」

 

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