人間を謳歌せよ if/没小話   作:雲間

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感想が嬉しいのと、こちらの書き方忘れそうなので短いけれど投稿。
今連載中のオリジナルが完結するまではそちらに集中しますが、それが終わったらまた区切りのいいところまでこちらを書くつもりです。


人間謳歌中⑤

 

 ちょっとコンビニに行ってお菓子でも買ってこようかと外に出た広瀬康一の目の前には、とんでもない荷物の量をたった1人で運びながら歩いている人がいた。

 

 パーカーのフードを被ったその人物は、大量の野菜や果物にパックされた肉や魚が入っているであろうレジ袋を両手に2、3個持っている。ダボついたパーカーなので体格は分かりにくくなってはいるが、どう考えても1人で持っていけるような体をしていない。

 このまま歩かせていったらいつか転び、沢山の食材が駄目になってしまうのではないか。まだ少し肌寒い時期とはいえフードを被っているのは怪しく見えるが、それよりも心配の方が勝って康一は流石に声をかけることにした。

 

「あの、すみません。運ぶの手伝いましょうか?」

「うん? 私かい?」

 

 立ち止まって康一を見たその人物の顔は、赤い目に碧い髪の毛をした外国人──隣のクラスであり、友人となった仗助の義理きょうだいにあたるリヴィン・ジョースターだ。校内では外国人というだけで目立つので、一目見ただけで姿を覚えていた。

 

「あ! ジョースターさん」

「私は君の名前を知らないけれど、確か同じ学校の生徒だね」

「あっ、ごめん。僕は同じ1年で、隣のクラスの広瀬康一って言うんだ。よろしく、ジョースターさん」

「リヴィンでいい。私も君のことを康一と呼ぶよ」

 

 挨拶は済んだが、本題が済んでいない。康一は荷物を持ったまま待たせてしまったことに慌てて、「持つよ」とビニール袋に手をかける。だがリヴィンは首を振って問題ないと言い募った。

 

「ええっと、これくらいは朝飯前……と言うんだろう? そう、朝飯前だから気にしないでくれ」

「合ってるけど、……本当に大丈夫?」

 

 リヴィンは気軽に荷物を上げ下げして問題ないアピールをしているが、康一は気になって仕方がなかった。確かに当人は無理している様子はないが、量が量なので心配なのに変わりはない。

 

「これらは私が事前に必要だと判断した物のみ購入をしていて、どのくらいの量になるか分かっている。運ぶことが不可能であるほどの量を購入することはないんだよ」

「ええっと、買い過ぎちゃうこととかもあるから……」

「うん? 買いすぎることはあり得ない」

 

 起こり得ないことを言われたという表情をされ、康一は少し戸惑う。同時に、仗助の言っていた『リヴィンはズレている』とはこういうことかという実感を味わった。

 

「う〜ん……。と、とにかく、転んだりしたら大変だし、僕が見てて心配だから、せめてリヴィンさんが家に帰るまで一緒にいさせてくれないかな……?」

「緊急事態が発生しない限り、私が転ぶことはないよ。しかし心配……、心配か。康一が心配という感情を抱いているなら、共に私の家まで歩こう」

 

 物言いが若干変なのは、外国人だからなのだろうか。これもズレのひとつなのだろうかと康一はそんなことを考えながら、一緒にリヴィンと歩いていく。

 

「リヴィンさんは日本語上手いんだね。どれくらい勉強したの?」

「私は超記憶症候群なんだ」

 

 症候群に関して簡単な説明を受けはしたが、それでも日本語を喋れるのはすごく大変だったのではと思い、話を続ける。

 

「でも、喋ったりするのは大変じゃない? 僕は英語の発音とかすごく苦手だよ……」

「日本語を喋っている人間の口と喉の動きを真似するだけだよ。大変だと思ったことはない」

 

 普通はそんなことできない。凄いけれどかなり変な人だと康一は困惑しながらも話をしていったが、その後も印象が変わることはなかった。

 

「ああ、あそこが私がお世話になっている家だ。心配をかけたね、これでもう君が心配になることはない」

「う、うん。ともかく無事にここまで来れてよかったよ」

 

 仗助が困り果てていたのも身をもってよく分かったが、悪意はないのもよく分かった。仗助くんは大変だなあと思いつつ、深く頷くリヴィンに苦笑いをしながらも、康一はリヴィンと別れて本来の目的であるコンビニへと向かうことにした。

 

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