仗助から見たリヴィンは、変人ではあるが日常生活では怒ることのない穏やかな人間だ。常識外れで皆を困らせることがあっても、意地を張ったりせずに『どういった理由でそうなるのか』を聞いてくる。そうしてリヴィンは自分の思っている意見を投げかけて、できる限り双方共に納得がいくようにしていた。クラスメイトもそんなリヴィンに慣れて、現在はそこまで問題にはなっていない。
今のが嫉妬している状態だと言われたら、確かに納得はできる。億泰の家にいたリヴィン達へトニオのことを説明した時に、いかにトニオの料理が美味しかったかを2人で語ったせいだろう。だが、こんな風に嫉妬するのかと驚いたくらいにはリヴィンがこうなるとは想定していなかったのだ。話を聞いていた時のリヴィンも、ただ話を聞いているだけでおかしな様子はなかったのもある。もしかしたら仗助が気が付かなかっただけで、異変はあったのかもしれないが。
「けどよぉ、ふつープロの料理人相手に嫉妬するか?」
「そこは人によると思うけど……。お弁当だって手間暇をすごくかけてるのが分かるし、本人なりに丹精込めてるからショックだったんじゃないかな」
仗助が食べていた弁当の中身は、丁寧という言葉に尽きる。どこかの商品かと思うほど綺麗に作られており、彩りも鮮やかだ。自身の母親が作る料理は、食べられれば良いという精神で見た目をそこまで気にしていない。人様に出すとなったら整えることはするだろうが、リヴィンほど拘らないはずだ。
「でも嫉妬にしてはなんか……、静かすぎるっつーか」
嫉妬で納得をしかけたが、リヴィンの様子からはあまり負の感情を見受けられずピンと来ていない。しかし話すことによって、自分の感じていたリヴィンの違和感がはっきりとしてくる。
「……なんかよ、ずっと考えてるんじゃねーのかなって思ってよ」
「考えてるって、何を?」
「それが分かったら苦労しねーって」
大体リヴィンは仗助が予想をしていたところから遥か斜め上へと飛んでいく。きっとこうだろう、なんて考えるだけ無駄に終わる。これ以上深く考えることはやめにして、さっさとご飯を食べるのを優先した。
「もういいから食おうぜ。量多すぎっから、時間中に食い終われるか不安になってきちまってよォ〜」
「……そうだね、食べよっか」
仗助としては余裕で食べられる量だが、言った通り昼休み中に食べ切れるかが分からない。後に回すのは色々面倒そうなので避けたい気持ちもあり、唐揚げを口に頬張っていった。
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「で、なんで俺なんスかねェ〜……」
放課後、仗助はリヴィンと共にトニオのレストラン前へと来ていた。それもこれも、リヴィンが行きたいと言ったからである。
最初は億泰が案内する気満々だったのだが、余計に拗れそうだからと康一が押し留めた。代わりにとして、仗助が案内役となったのだ。
「場所を教えてくれれば、私一人で行けたよ?」
「いや、そ〜だろうけど」
リヴィン一人でトニオの元へ行かせるのは不安すぎた。かといって他の……花京院や形兆に頼みに行くのも違う気がして、結局仗助は着いていくことにしたのだ。なんだかなぁと思いながら、仗助が先陣を切ってレストランの扉を開いたのだった。