「こういった場では帽子や制服を着用するのが正しいのだろう? 貸してもらってもいいかい?」
「Bene! もちろんお貸ししマス」
リヴィンはトニオが持ってくる間にトイレへと入っていったかと思うと、髪の毛を頭の上で纏めた髪型にしてから出てきた。ハンカチを持っていることから手も洗ってきたらしい。戻ってきたトニオはそのリヴィンの姿を見て再度感嘆の声を上げてから、制服を手渡していく。着替えの場所まで案内されており、本格的すぎて仗助は少し腰が引けてきた。そんな風に仗助が思っているとは知らないまま状況は動いていき、トニオと着替え終わったリヴィンは調理場へと入っていった。仗助も入ろうか迷ったのだが、手を洗ったとしても『再び』何かをしてしまって怒られる可能性が否定できない。結局、大人しく椅子に座って待つのを決めた。
待つというのは暇である。暇潰しできるものは特になくて、適当に店内の飾りを見たり窓から見える景色を眺めたり、爪をチェックしたりとできる限りの暇つぶしをしていた。日も暮れてきてそろそろ限界が見えてきたころ、ようやく料理が終わったらしい二人が調理場から出てくる。二人はいい匂いのする料理が乗ったトレーを持っており、その匂いが鼻に届くと同時に仗助のお腹の虫が声を上げた。
「待ちくたびれたっスよォ~!」
「待たせてすまない仗助」
テーブルの上へと料理が配膳されていく。今回はリヴィンが作ったからなのか、一品ずつ持ってくる形式はとらなかったようだ。三人で食べる為か料理は小さな皿に3つ小分けにされており、見た限り2種類の料理を作っていた。
ひとつはあり合わせで作ったという野菜のスープ。ひとつは魚と野菜の入ったパスタ、鯛のラグーパスタ。説明を受けつつも、いいから早く食べたいという欲が勝っていた。
「説明はいいんで食べていいっスか?」
「そうだね、確認してもらうのが本題だ」
リヴィンもトニオも席に座り、それぞれスプーンやフォークを手に取った。仗助もフォークを手に取ってパスタに手をつけ始める。
「いっただきま~す」
パクリと口に含むんで咀嚼していくが、やはり『普通に』美味しい料理だ。特に文句をつけるところはないけれども、トニオほどの料理ではない。
ガツガツいっている仗助とは対照的に、二人はしっかりと味を確かめるように一口一口味わっていた。とは言ってもリヴィンは一口食べる毎に必ず首を傾げている。そうして全員が食べ終わった頃にトニオがリヴィンの方を向いて口を開いた。
「食べて、アナタの味わっている姿を見て、分かりマシタ」
トニオは一呼吸置いた後、衝撃の一言をリヴィンへ放った。
「アナタは、美味しいと思ったコトがありますカ?」