リヴィンの性別はお好きな方で考えていただければ。どちらでも華奢な体をしています。男verは徐々に身長が伸びてはいるので167くらいにはなっている。女verは165のまま。
「……こんにちは」
「ど、どうもっス……」
下駄箱で靴を履き替えようとした時、誰かが近づいてくるのに気がついて見てみたら、それはリヴィンだった。たまたま帰る時間がバッティングしてしまった事実に、仗助は今すぐにでも逃げ出したい気分だ。
リヴィン・ジョースター。仗助の父親であるジョセフ・ジョースターの養子であり、実質義理のきょうだい。養子になったこと自体は最近だとだけ『甥』である承太郎から聞いた。そして、仗助のクラスメイトでもある。
同じクラスメイトなんだからタメ口でいいはずなのに、気まずさからなんとなく畏まってしまう。そんな仗助の様子には気がついていないようで、リヴィンは口元に弧を描きながら距離を詰めてきた。
「教室ではちゃんとした挨拶ができていなかったね。私はリヴィン・ジョースター。よろしくお願いします」
「お、俺は……東方仗助。……よろしく、お願いします」
一日中誰かしらに質問責めされていたリヴィンの元へわざわざ行くことはなく、ここが初対面のようなものだった。軽く頭を下げて挨拶をすると、頭をかきながら外を指差す。
「ええっと……、とりあえず帰りながら話しません?」
「うん、いいよ」
周囲には他の生徒も残っているし、絶対に色々と混み合った話になるだろうと思った仗助はリヴィンにそう提案した。快諾してくれたリヴィンと共に、遠回りになる人が少なめの林に近い道を選んで歩いていく。
「リヴィンさんは、俺についてどのくらい知ってるんスか?」
「『私の養父』の息子、ということしか知らないよ」
「その、すいません。俺のことで騒ぎになっちゃったみたいで……」
リヴィンと養父の関係がどういう形なのかは知らないが、衝撃を与えたことは事実であろう。頭を下げて謝ると、リヴィンは首を振って否定してきた。
「君は何も悪くないし、私は君に対して悪感情は存在していない。仗助、君がよければの話になるんだけれど、……仲良くしてくれると嬉しい」
少し緊張をしているのか、片手で後頭部を触って眉尻を下げながら見つめてきているのに気がついた。仗助が気まずいように、リヴィンも気まずい思いをしているのだ。そこに気がついていなかった自分を恥ずかしく思いながら、立ち止まってから右手を差し出す。
「俺も、仲良くしてくれると嬉しいっス」
「……ああ。よろしく、仗助」
リヴィンは暖かな微笑みを浮かべ、差し出した右手を握ってくる。そうしてしっかりとした握手をし、離れようとした。だがリヴィンは大きく目を見開いたかと思うと、急に手を離してその華奢な体からは想像できないほどの力で仗助を地面へと押し倒してくる。
「う、わァ!? ちょ、ちょっと何を……!」
体格からいってそうそう仗助を倒すことができないはずなのに、リヴィンはいとも簡単に成した。しかも倒してきた当人は仗助の頭と体が地面に直接ぶつからないように、己の手をクッションにしている。
そうして次に仗助に訪れた衝撃は、鉄の──血の匂いだった。
「なんで、血の匂いが……」
「うわ。困ったね」
困ったと言う割には困っていない様子と声色で、リヴィンは仗助の下に挟んでいた手をゆっくりと引き抜いて起き上がり後ろを向いた。戸惑い地面に倒れたままの仗助の視界に目に入ったのは、リヴィンの背中に存在する大きな切り傷と大量の血。長かった後ろ髪はバラバラに切られていて見るも無惨な毛先になっている。
「あっ、アンタなんでそんなッ」
「大丈夫だよ、仗助のことは私が守る」
「ハァ!? いや、そんなこと言ってる場合じゃねえって! 俺が治すから……!」
状況がさっぱり理解できない。何故リヴィンは傷を負っていて、しかも仗助を守ると言っているのか。このまま血が流れ続けたら、どう考えても命の危険にまで発展するのは目に見えている。体を起こして止めようとするが、リヴィンは首を横に振った。
「治す? よく分からないけど今はやめてくれないかい。使えなくなる」
「使えなくなる……?」
リヴィンはそう言いながら背中へと手を伸ばし、滴り落ちていく血を掬うように手へとっていく。ある程度手のひらにたまったら、その血を遠くまで散るように大きく飛ばしていった。
「一体何を」
「クロス・ロード」
言葉と同時に、血は白く細かい粒──小麦粉のようなものへと変化して空気中を舞っていく。一面が白くなったかと思うと、『何か』が白を切り裂いてこちらから離れていく動きが見えた。
「なるほど」
頷きながらリヴィンは自身の残っていた長い髪の毛を数本抜き、何故かピンと立ったままのそれを『何か』に向けて目に見えない速度で投げる。
『ギャピィ!』
「うがあッ!!」
『何か』がいた辺りから大きな声が上がり、別の場所で男の痛みに耐える声が上がった。リヴィンは髪の毛だったものが刺さったままの『何か』を乱雑に左手で持ち上げ、締め上げつつ男の声が上がった方へと歩いていく。『何か』は抵抗をしているのか、持っているリヴィンの左腕にどんどん切り傷を増やしていくのだが、当人は全く気にすることなく真っ直ぐに進んでいる。やがて大きな木の裏側に回ったかと思うと、『何か』を掴んでいない方の右手で男を引きずり出してきた。
「ソイツが攻撃してきたヤツなのか……?」
「多分そうだね」
男は肩辺りから一筋の血を流し、首元を必死に掻くような仕草をしている。おそらく『何か』はこの男のスタンドで、スタンドが受けているリヴィンからの攻撃に苦しんでいるのだ。
リヴィンは無表情のまま男を右手でぶん殴り、平静な声で質問をしていく。
「君、なんだい? あの餌でしかないDIOの崇拝者かい?」
「でぃ、DIO? し、……らねーなぁ。俺らは、アンタが、目的だから、よ」
リヴィンの目が一気に細まった。スタンドを持っている左手の力が強まったのか、男が更に苦しそうな呻き声をあげる。
「んだ、よ……、人間、でも、つえー、……じゃ、ねー、がッ!!」
リヴィンの瞳孔がかっぴらき、持っていたスタンドを投げ捨て先程よりも強烈な一撃を男に打ち込み気絶をさせた。そしてその背中から垂れ続けている血を紐へと変化させ、ある程度の長さになったのを拾い上げて男を縛り上げる。ぐるぐる巻きにされ動けなくなった男を放置し、リヴィンはふらりと幽霊のごとく動いて『どこか』へいくような素振りを見せた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 終わったんすよね!? なら俺が治しても問題ないですよね!?」
ほんの少しの距離だが走ってこのまま消え去りそうなリヴィンの右手を取り、自身のスタンドを出現させて背中と髪の毛と切り刻まれまくった左腕、傷ついた手の甲を治す。服も直ったので一見何事もなかったかのような姿にはなったが顔色が悪い。スタンドで治した以上、血液も戻っているはずなのだが。元からそうなのかは分からないが、冷たい手を暖めるようにギュッと握りしめる。
「アンタのスタンド使う為なんだろうけど……、ダメっスよォこんな風になるのは。すげーこっちヒヤヒヤするんですから」
「……ああ、そうだね。そうだった。治してくれてありがとう」
どことなくぼんやりとした返事にますます心配になってくる。大丈夫なのだろうか、この義理きょうだいは。どこかへ行ってしまいそうで手を離してはいけないと思った仗助は、暖める意味以外でもしっかりと手を握っていく。
ふいにリヴィンが急に明後日の方向を見たので同じ場所を見ると、小さな人形が小さな軍用機に乗って向かってきているところだった。続いての敵かと思って身構えると、リヴィンが空いている手の方で軽く手を振り始める。
「知り合い、なんですか?」
「私の大切な人だ、敵じゃない」
大切な人という言い方に外国人だなーとギョッとしながらも、遠くから近づいてくる2人の人物に目を向ける。
「……さん、リヴィンさんッ!!」
「リヴィンね、……さん!」
改造学ランを着た男が2人、こちらへと走ってくる。1人は金髪を逆立てた厳つい表情をした男で、もう1人は両サイドを刈り上げ残りを上部に纏めた黒髪のひょうきんな顔した男だった。
「億泰、形兆」
「どこ行ってたんだよぉリヴィンさん! どこにもいなくて心配したんだぜぇ」
「……リヴィンさん。地面に散らばってる粉に、ソイツとそこにいる男はなんなんだ?」
金髪の男が睨みつけるように見てくるので、慌てて手を離し「うへえ」と思いながら転がっている男を指さしながら受け答えをする。
「リヴィンさんと話をしてたんですけど、急にアイツが襲いかかってきたんです。それでリヴィンさんが怪我したんすけど、リヴィンさんが自分のスタンド……ですよね? で、撃退したんです。俺はそんなリヴィンさんの怪我を治しただけっス!!」
「形兆、仗助の言っていることは本当だよ。……ああ、不便だな。血を使いすぎたみたいだ、倒れる前に座る」
「えっ」
リヴィンは躊躇なく土の上に座り、手を地面について上半身を支えながら項垂れる形になっていた。黒髪の方──億泰が慌ててリヴィンに寄り添ってしゃがみ込み、背中に手を当てている。
血を使いすぎた、と言っていた。仗助がスタンドで治して地面や服についた血液も本人に戻っているのだが、リヴィンがスタンドで変化させたであろう物質はそのままだ。つまり、変化させたものは本人のモノではなくなっているということなのだろう。
「大丈夫かぁ!?」
「うん、大丈夫だよ億泰。形兆、花京院を呼んでくれないかい? あの人間の始末を頼みたい」
「承太郎さんはいいのか?」
「承太郎には徐倫がいるだろう、ここに来させるわけにはいかない」
甥と又姪の名前が出てきて、そういえば知り合いなのは当然だったと今更ながら思い至った。形兆は眉間の皺を深くさせながら、すぐに戻ると言ってスタンドを先行させつつどこかへと走っていく。
「どの道承太郎さんもくると思うけどなあ。ええーっと、仗助っつったか? ありがとな、この人よく無茶すんだよ。おめー恩人だな! ……あっ、俺は1年の虹村億泰。典明さん呼びに行ったのが俺の兄貴で、3年の形兆ってんだ。よろしくなあ!」
「いや、怪我してんのを見て見ぬふりはできねえし、俺も庇ってもらったし……。俺はその人と同じクラスの東方仗助。よろしく」
典明さんって誰だよと思いながら軽く挨拶をしたのち、せめてもの足しになればと飲み物を買ってくると言って、自販機のある場所へと走り貧血にいいと聞いたココアを買いに向かった。
昨日からそうだったが、何かとんでもないことが起こり始めているのだと、改めて感じる出来事だった。
★スタンド…クロス・ロード
【破壊力 - E / スピード - A / 持続力 - E / 射程距離 - E / 精密動作性 - A / 成長性 - B 】※あくまで能力自体であり、変化した後については含まない
自分の体を別のモノへと変質させるスタンド。
片手を鋼鉄化したいと思ったらその部分だけ鋼鉄になる。ただし質量は必ず同一でなければならないので、変質させる部分より大きく作ることは不可能。
(例:爪一枚だけで野球ボールは作れない。腹などの部分から同一質量を取り出して作ることはできる)
小さく作りたい場合は変質させる部分を少なくするだけでよい。そしてリヴィン自身がその作り出したいモノを理解していなければならないので、本人が知らないもの(空想上のもの)に変質させることができない。
電池などを作り出そうとすると電池という物質は作れるが、電池の中に入っている電気は作り出すことはできない。あくまで物質のみ。物体として存在していないモノは作れない。
食物を作ろうと思えば作れる。が、それが食べたいかという別問題は発生する。
人の失った部分をその人物のモノとする(実質再生)ことはできるが、一度その人物に入り込まなければならない。
スタンドを使った場合、使った部分が再生するのにインターバルが約1分発生する。
体の再生の効く闇の種族でなければ使えないスタンドともいえる。もっとも、人間となった今では体の再生はできないので使える部分が減った。
変質したモノはリヴィンの体の一部でなくなるので、逆にリヴィンの体に戻すことはできない。不可逆。