「君が東方仗助くん? リヴィンを助けてくれてありがとう。僕は花京院典明。君の甥である承太郎の親友で、SPW財団に勤めてる。よろしくね」
「ど、どもっす」
やってきたのは赤毛で前髪を一房別で流しており、後ろ髪を伸ばして纏めている暗緑色のスーツを着た人物、『典明さん』だった。全体的に線は細く見えるが、意志の強い紫の瞳がその細さを打ち消している。
花京院は遠くの方で待機している職員らしき人達に指示を出すと、リヴィンが倒した人物をSPW財団とロゴの入っている車へと連行していった。
「リヴィン、大丈夫ですか」
「……うん、だいぶ良くはなった」
億泰に支えられていたリヴィンは、俯いたままの状態で返事をする。花京院が一つ頷いてから、リヴィンの方へと近寄って手を伸ばし、リヴィンの手が自身の首へ回るようにしてから抱きかかえた。その際、花京院のスタンドと思われる緑と白で構成された紐状のものが、リヴィンが落ちないようにと花京院とリヴィンに巻きついている。
ココアを飲んだからか定かではないが、リヴィンの顔色は先ほどよりは確かにマシになっていた。
「じゃあ虹村家に行こうか。知っているかどうか分からないけど、リヴィンは虹村家でお世話になってるんだよ。……仗助くん、君が問題なければの話だけれど、一緒にくるかい? 聞きたいことがあるだろうし、形兆くんが呼びにいってるから承太郎と徐倫もそこにいる。承太郎には一度玄関前に来てもらうから、そこで確認をしてくれれば問題ないかな?」
「えっと、こっちは問題ないんで一緒に行かせて欲しいっス」
このまま「はいさようなら」するには気にかかりすぎる出来事だ。色々と聞くことができるのであれば聞きたい。仗助の返事を聞いた花京院は一度微笑んでから、仗助と億泰を引き連れて歩き出した。
虹村家は東方家に程近い場所に存在していた。そういえば最近改築してたのはここだったなと思いながら近づいていくと、白い巨人──承太郎が玄関先に佇んでいる。
「あっ、承太郎さん」
「来たか」
承太郎は帽子の鍔を掴んで深く被り直した後、ズンズンと近づいてきた。
「おいリヴィン、大丈夫か」
「……うん、少し休めば問題ないよ」
「体調が戻ってから説教だからね、リヴィン」
「う」
もう若干説教モードに入っているように見える。だが花京院はリヴィン相手に言葉を重ねることはなく、全員靴を脱いで(リヴィンのは花京院のスタンドがいつの間にか取っていた)家へと入っていく。休ませる為にか花京院は2階の方へと行き、他全員はリビングへと移動していった。
「ジョースケだ! あそぼ!!」
「億泰と遊べ。俺は仗助と話がある」
「ええー! やだやだやだ、ジョースケと遊ぶ!」
テレビを見ていた徐倫が、リビングに入ってきたこちらを見て目を輝かせながら寄ってきたかと思うと、承太郎からの言葉に地団駄を踏み始めた。バタバタ体を動かして不満を大いに表していると、形兆のスタンドの兵隊がどこからともなくやってきて、ピピーっと笛を鳴らす。徐倫はそれに興味が移ったのか、ピッピと笛を鳴らし続けてどこかへ行く兵隊の後を追っていった。億泰も承太郎の言葉があったからか、その後ろをついていっている。
こうしてリビングには仗助と承太郎の2人だけになった。あまり積極的に喋る様子がない承太郎に気まず〜と思いながら、自分から口火を切っていく。
「えーっと、結局襲ってきた人はなんだったんスか?」
「心当たりはいくつかある。が、本当にそれかどうかは知らねえ。財団がソイツに目的を吐かせてからだな。逆に聞くがソイツはなんて言ってたんだ?」
「あー、俺たちはリヴィンさん自体が目的だとかなんだとか言ってたような……」
リヴィンはディオがどうこう言っていたが、関係なさそうなので除外しておいた。仗助の言葉に承太郎は口を軽く結んで少し沈黙してから、言葉を選ぶような雰囲気で口を開く。
「……リヴィンには『ちいと色々』あってな。アイツ自身がやらかした部分は確かにあるが、狙われていい筋合いはねえ」
「はあ……」
話が見えない。何かがリヴィンにあるということくらいしか分からなくて、曖昧な返事しかできなかった。
「承太郎、それじゃあ伝わらないよ」
密かにリビングへ来ていた花京院から声がかかる。苦笑いをしながら寄ってきた花京院に、こっそり安堵のため息をついた。
「……リヴィンって、少しズレているところがあると思わないかな?」
「まー、そうッスね。言葉の使い方とかは外国人だからかなって思いましたけど、それにしてはちょっと行動が……」
外国人だからといって、自分が大怪我をしているのに痛がりもせず敵をぶん殴りにいくのが普通だとは思えない。
「リヴィンは特殊な環境下で育ってね。そのせいで敵に狙われてしまうことがあるんだ。だからズレてしまっているというか……。最近はもう敵に狙われることもなくなってきたから、大丈夫だろうと学校に入ることになったんだよ。今後については、僕達の方で調査をして防ごうと思ってる。でも、どこから何をしてくるか分からないから、できるだけ警戒はしておいて欲しい」
「勿論っス。別にリヴィンさんが悪いわけじゃあねーなら、やってやるッスよォ〜」
「……それと、リヴィンには普通に過ごして欲しいから、過去についての詳細をできるだけ言いたくないのを分かって欲しい。リヴィンもその辺りの配慮を望まないだろうし、僕達もリヴィンにはただの学生として過ごして欲しいんだ」
そう言われるとリヴィンの過去が気になってくるが、特殊な過去があるからこそ知って変に配慮されたくないということだろう。仗助自身も片親だからと勝手にどうこう言われて辟易した事があるので、余程のことがない限り深掘りしないでおこうと頷いた。
「……ありがとう。リヴィンが沢山面倒をかけるかもしれない。でもリヴィンもリヴィンなりに必死でやっているはずだから、寛大な心で見てくれると助かるよ。我慢しきれないことがあったら僕達に言って欲しい。互いに納得できるよう尽力をする。ごめんね、ジョースターさんのことで頭を悩ませている中で……」
「いやあ、何もそこまでは……」
理由が理由なんだろうけれども、少々過保護だと感じた。本当にどうしようもない時に頼るくらいがちょうど良さそうだと考えながら、困った時は頼りますと言っておく。
「仗助、何か分かったらまた連絡をする」
「じゃあ、俺はこれで」
「待って仗助くん。これ、お礼に」
高級そうな包み紙のお菓子を手渡された。もらうようなことをした覚えが全くなく動揺して花京院を見ると、温かな声でこう言ってくる。
「リヴィンを助けてくれただろう?」
「とーぜんのことをしただけっスよ」
とはいえ、わざわざ買ってきただろうものを受け取らないのもおかしな話だ。ありがたく貰って、虹村家からお暇をすることにした。
家から出て数歩歩いたところで、ふと疑問が現れる。
──承太郎さんは親戚だから分かるけど、典明さんとリヴィンさんの関係ってなんなんだ?