ハリー・ポッターと本格的♂森の妖精 作:シリー・掘ッターと秘密の穴
世界の多くの人間は、それに気づかないまま、生活を送っている。
才能が無ければ感じ取ることは出来ないし、そもそも隠されているのだから仕方ないことだ。
魔法、それは実在している。
一般の世界に記録された、妖怪や悪魔や神、その全てが魔法に関わるのかと言われればそうとも言い切れないが、その内の多くが実在の魔法に関係している。
隠された魔法の世界をそのまま魔法界と呼び、魔法を使える者を魔法族、使えない者は非魔法族とされている。
ただ、非魔法族と呼ぶ魔法族は少なく、多くの場合は差別意識から始まった呼び名、マグルやノー・マジと呼ばれている。
大半の非魔法族、いわゆるマグルが過ごす世界では、人間以外の高度な知的生命体は存在しないが、魔法界ではそうではない。
人間以外にも会話が成り立つほどの知能がある生物が存在し、人に紛れて生活する者や、人里離れて暮らす者、人を食料として襲う者、様々である。
ある場所には、妖精という魔法生物がいる。
彼ら、あるいは彼女らは、昆虫のような羽の生えた綺麗な小人で、人のように発声は出来ないが、身振り手振りで人と意思疎通が出来る生物である。
尤も、魔力は弱く、人間からの扱いは専ら装飾品ではあるが。
妖精と人が名をつけた魔法生物が存在する。
しかし、妖精が住む森には、森の妖精を名乗るとされる、会話が出来る魔法生物が存在した。
妖精の近縁種を名乗るにしてはそのほとんどが男性体であり、体躯も人間と同等かそれ以上で、概ね筋骨隆々。
一応、妖精と同じような羽がついているが、これは必要に応じて出したり収めたりが出来るようで、その奇抜に過ぎる見た目と独特な会話の語彙を除けば、ただの人間である。
いや、もしかしたら人間なのかもしれない。
同じ人間と認めたくなくて、魔法族が彼らを別の生物であると定義したのかもしれない。
ただ、彼らが人の秩序を理解し、強く真っ直ぐで、自己研鑽に余念がなく、寛大であることだけは間違いなかった。
彼らは、森の妖精。
しかし、妖精がフェアリーと呼ばれたりするのとは異なり、通称はパンツレスラーと呼ばれる。
なぜならば、彼らは通常パンツ一枚を履き、肉体美を見せびらかす生物であり、更にコミュニケーションの一環として、互いのパンツを剥ぎ取り合う勝負を行うからであった。
マグルの流行りを酷く嫌う魔法族が、それでもこう呼ぶのは、ある種の恐れからである。
魔法界におけるパンツレスラーの知名度は高い。
それはパンツレスラーが、許されざる呪文という死や苦痛を与える強力な呪文を、真っ向から打ち破ることが出来る存在の一つだからだ。
彼らにとっては、魔法などパンツと変わらない。
トロールが地下室に侵入した!
ハロウィーンパーティを楽しむ生徒が集まる中、慌てた様子で現れたターバンを巻いた先生から放たれたその報告は、たちまち大広間に集まっていた生徒に動揺を走らせた。
校長から、各寮の監督生に、自身の寮の生徒を引率して寮へ帰るように指示があり、生徒はあちこち入り乱れながら監督生の方へ移動を開始する。
黒髪で丸い眼鏡をかけた少年、ハリー・ポッターは、他の生徒たちと同じように自身の寮へ帰るために階段を登りながら、同じグリフィンドール寮生で癖のある赤毛が特徴的なロン・ウィーズリーとトロールについて話していたが、ある事に気が付いた。
ロンや自分と同じグリフィンドール生のハーマイオニー・グレンジャーは、今回のトロールのことを知らないということに。
ハリーとロンは、ハーマイオニーがロンのデリカシーの無い一言に傷ついて、女子トイレで泣いているという話を、パーティーに行く前に女子が話していたのを小耳に挟んでいた。
ハーマイオニーが危ないかもしれない。
ハリーは、そのことをロンにすぐさま伝えた。
「ちょっと待って……ハーマイオニーはトロールの事を知らないよ」
立ち止まり、ハッとするロン。
ロンはハーマイオニーが優等生ぶった態度に苛立ち、本人に聞かせるつもりがない心無い言葉を吐いたが、心底嫌っているわけではない。
ハーマイオニーがトロールと遭遇してしまった場合を想像してしまい、唇を噛む。
「そうか。でもパーシーに気付かれないようにしないと」
頷きあった二人は、監督生のパーシーに気付かれないように屈み、グリフィンドールとは反対側へ行くハッフルパフ寮の生徒に紛れ込むようにその場を離れた。
途中、教師であるスネイプが正面方向から現れ、あわや見つかりそうになるも、石像のかげに隠れて事なきを得たハリーたちは、目的地へ急ぐ最中、酷い悪臭と低いうなり声、何かを引きずるような音を聞いて立ち止まる。
燭台の火で壁に映った巨大な影。
廊下の先から現れたのはトロールだった。
慌てて再び隠れたハリーたちだが、それには気づかずに、廊下の途中のドアの中へと消えていったトロール。
機転を利かせたハリーは、ドアのカギを締めて、トロールを閉じ込めることに成功した。
「「やった!」」
トロールを閉じ込め、喜びを胸に意気揚々とその場を離れようとするハリーとロンだったが、トロールを閉じ込めた方から、酷い恐怖を感じたような甲高い声……女の悲鳴を聞いた。
間違いなく、トロールを閉じ込めた部屋から聴こえたものだと思うと同時に、そこが女子トイレだということに気が付き、血の気が引く。
「「ハーマイオニーだ!!」」
気が動転した二人は、なりふり構わず手間取りながらも鍵を開け、ドアを開けて突入した。
そこには、洗面台や個室のドアを破壊しながら、女子トイレの中を進むトロールの姿。
見上げるほど大きなトロールの行く先では、ハーマイオニーが縮みあがって、壁に背を預けていた。
「ロン、こっちに引きつけろ!」
トロールの姿を見て足を止めたロンにハリーは叫び、壊された蛇口や瓦礫を投げつけて、トロールの気を引く。
トロールは身体に当たった何かに気付くと振り向き、ハリーの存在を目にして進行方向を変える。
トロールの知能は極めて低く、囮作戦はとても有効に見えた。
ハリーに対してトロールが棍棒を振り上げようとする。
その矢先に、金属パイプが飛んでくると同時にロンの叫びが聞こえた。
「やい、ウスノロ!!」
震える足を勢いで抑えながら、トロールを挑発するロン。
トロールはどちらかというと、当たったパイプよりも声に反応しているようだったが、ハリーたちの思惑通りにトロールは誘導され、ハーマイオニーが抜け出すのに十分な場所が出来る。
「ハーマイオニーこっちだ!早く!走るんだ!」
それを見ながらトロールの後ろへ回り込んだハリーは、声を出してトロールの気をロンと交に引き付けるようにしながらハーマイオニーへ逃げるように促したが、ハーマイオニーは突然死の恐怖で身体が竦んで動けなかった。
そうして叫んだ声がついにトロールを逆上させる。
「グォォォ!」
「うわぁっ!!」
トロールはひと際大きくうなり声をあげると、ロンの方へ向かっていくが、ロンは逃げ場がない。
それに気づいたハリーは咄嗟に、トロールの首に飛びつこうと駆けだ────せなかった。
ハリーの肩に置かれたやや大きな大人の手。
驚くハリーが後ろを振り向くと、知り合いの巨人と人間のハーフよりは小さいが、トロールなどとはまるで真逆の引き締まった肉体の、大柄な男が、何故か下着一枚で立っていた。
下着一枚とは、一応腰に巻いた布と上半身にチョッキのようなものを着ているトロールよりも薄着である。
「わぁ!?」
『あぁん?お客さん?』
ハリーはその姿を、この男の姿を、授業の為の教室の移動中、学校の廊下で見たことがあった。
見たことも無いような芸術的な筋肉を象った彫像が、廊下の隅に立っているのを、何度も見たことがあったのだ。
移動中、誰もこれに触れることは無く、動いた彫像に見つめられることがあっても、幽霊がいたり、絵画が動くのが当たり前のこの学校なら、そういう事もあると思っていた。
学校は魔法使いの城をそのまま使用したものだから、他が石像チックなのに、場違いに見えるけど、こういうリアルな彫像もあるのかなと、勝手に思い込んでいたのだ。
しかし、肩に置かれた手は暖かく、人の柔らかさを感じた。
つまり、この男は彫像などではなく人間で、しかも下着一枚で生徒の前で輝かんばかりの笑顔で立ち、あまつさえ凝視してくる変態だということ。
ハリーは、生徒たちが当然に思って意識していないのではなく、存在を認識したくなくて無視していたことにようやく思い至った。
そしてハリー自身も、こんなのが自分たちと同じ人間であるはずがないと、勝手に思い込んでいた、それほどの存在。
非魔法族育ちのハリーの常識から来る感性に、凄まじい怖気が走る!!
育ての親から酷い扱いを受けていたハリーだが、その教育のせいか、この男がとんでもないド変態だということはすぐに分かってしまう。
そのせいで、ハリーはロンが危機的状態にあることを一瞬忘れてしまった。
「うわぁああ!?」
「ロン!!」
ロンの悲鳴にハリーは男への視線を切って、もう間に合わないかもしれない恐怖を感じながらロンの方へ向き直るが、最悪の状況は訪れていなかった。
いや、ある意味最悪の状況かもしれないが。
『よっこらァあああああああ!!!!』
「うわぁぁぁぁ!!?」
何とハリーの肩に手を置いていた男とは別の、よく似た筋骨隆々の変態が、ロンに振り下ろされたトロールの棍棒を片腕で受け止めているではないか。
『いかん、危ない危ない危ない……』
「ひっ」
ロンからも、かなり先ほどとは意味合いが違う悲鳴が喉から漏れている。
地獄より酷い光景だった。
ハリーの顔は嫌悪感からか、百味ビーンズのゲロ味や鼻くそ味を食べた時より酷く歪む。
もしかしたら本物の自分はトロールに既にやられていて、これは走馬灯か何かなのではないかとさえハリーは思った。
『なんだあのでっかいモノ……』
恵まれた肉体から放たれる思い声に、ハリーがびくりと肩を跳ねさせたのも意に介さず、ハリーの背後にいた変態はそうつぶやくと、トロールに近づいていく。
トロールはと言えば、もう一人の変態の手に掴まれた棍棒を、引っ張って取り戻そうとしているが、恐ろしいことに棍棒はピクリとも動かないし、変態もピクリとも動かない。
『ん?ワイキキでベンチプレス』
誰も聞いてないし、絶対に違うとハリーは思った。
しかし、なんという筋密度なのだろうか、トロールの怪力ですら持ち上がらない体重とは。
『遠慮なくヤる』
ハリーサイドの第一の変態は突然謎の宣言をして、トロールの履いている腰布に背後から俊敏につかみかかった!
『新日暮里!!!!』
「グオォァァァ!?」
そして、何とトロールの巨体を引き倒したのだった!!
『アーーーーーーッ!!!』
「きゃああっ!?」
『ビビるわぁッ!?』
トロールが倒れる衝撃と、倒れるがままトロールの下敷きになった変態の凄まじい音圧の叫び声に、言葉もなく竦んでいたハーマイオニーと、ついでに第二の変態が驚き悲鳴を上げた。
ハリーは目の前の光景は置いておいて、ハーマイオニーを逃がすことにし、ハーマイオニーの方へ駆け寄った。
「ハーマイオニー、逃げよう!」
「えっ、ええ、でも、腰が抜けて、」
「ロン!」
「ごご、ごめんハリー、僕も……!」
ハーマイオニーを助けようとしたハリーは状況を見てロンの力を借りようと、ロンに声をかけるが、ロンも動けないときた。
グリフィンドール生は勇気、大胆さ、気力、騎士道的精神を重視するそうだが、流石にまだ1年生では荷が重かったと見える。
トロール以上の生理的恐怖に抗うのは、闇の魔法使いでも難しいかもしれないが。
ハリーは仕方なく、一人でハーマイオニーの腕をとり、肩を貸そうとするが、特別身体を鍛えている訳でもなくまだ少年の域を抜け出せていないハリーでは、腰の抜けた女子一人の体重は重かった。
そんなハリーの肩に、再び何者かの手が置かれた。
またか、そんな気分で振り返ると、また新たな変態がそこにいた。
『イケメ~ン?wwwイケメ~ン??www』
イラァッ!!
そんな擬音が聴こえてきそうなほどにハリーの顔が苛立ちに歪む。
この新たに現れた変態は、一体何の目的でこんな不快な顔でハリーに向かって煽りを向けてくるのか、皆目見当がつかなかったが、とにかくこの変態の煽りスキルは恐らく闇の帝王を超えることは理解出来た。
しかもこの第三の変態は他の変態と下着の色が違う。
最初の二人は白、この変態はどちらかというと黒で、意味が分からなくて余計に腹が立つ。
「あの!ちょっと邪魔し────なぁ!?」
ハリーがそう言って肩の手を振り払おうとするより前に、するりと手が肩から離れ、ハリーが掴んでいたハーマイオニーの腕を奪い去り、そのまま抱き上げた。
「きゃああああああああああああ!???」
『良い匂いで辛い!』
一体その華奢な身体のどこから出たのか、ハーマイオニーがトロールに襲われた時以上の悲鳴を上げたが、変態が発した最悪のセリフでその悲鳴は更にデカくなる。
ハリーは鼓膜が破れるかと思ったが、気持ちは痛い程分かることと、謎の変態にハーマイオニーを奪われたので我慢して、変態の腕へとつかみかかるが、他の変態二人より細身のこの変態の腕でさえ、ピクリとも動かせない。
「おい!ハーマイオニーを離せ!」
『何の問題もないね。』
「問題しかないわよ!!」
『嘘ぉ!?』
「うわぁ!!」
腕にぶら下がるハリーごと、女子トイレの入り口の方へと俊敏に移動した変態は、変態的な見た目と言動とは裏腹に、大人しく丁寧にハーマイオニーを降ろした。
呆然として気絶する寸前のようなハーマイオニーに寄って、安否を確認しようとしたハリーだったが、ロンがまだピンチであったことを思い出して、ロンとトロールたちの方へ振り向いた。
しかしそこには、腰布をはぎ取られ、チョッキを身に着けるだけになって倒れたトロール。
そして、その上でフロントダブルバイセップスで筋肉と、はぎ取ったトロールの腰布見せつけながら、笑顔で立つ変態の姿があった。
これでお互い衣服一枚で同等か、あるいは自分の勝利だとでも言うのか。
トロールが下半身丸出しだとしても、変態度はどう考えてもこの筋肉の変態どもの勝利である。
ハリーなら戦う前にこの変態から逃げ出すことだろう。
「きゅぅ……」
ハリーがふと聴こえた声に下を見ると、ハーマイオニーが気絶していた。無理もない。
ちなみにロンは、第二の変態の肩に抱えられてぐったりしていた。
こちらもどうやら気絶しているようで、トロール含めて意識が無いものは3名。
ハリーは、何故自分は意識を失うことができなかったのか、友人たちを少しだけ羨んだ。
「これは一体なん、なん!?……どういう事ですか!?」
呆けて立ち尽くすハリーが、後ろから聴こえた声に振り向くと、グリフィンドールの寮監であるマクゴナガル先生と、先ほどすれ違ったスネイプ、そしてトロールの存在を報告したターバンをつけたクィレルという、3人の教師の姿があった。
いつも真面目なマクゴナガル先生は、見たことがないような表情で動揺していたし、スネイプはクシャクシャになった紙のように酷く顔を歪めており、ハリーは不快な気分がちょっとだけ愉快な気分になった。
普段は嫌なスネイプの視線を向けられても、今は微塵も気にならない。
中の惨状を見て慌てて逃げ出そうとするクィレルの腕を片手で掴まえたスネイプが変態とトロールに近づいて行ったが、マクゴナガル先生はトロールに杖を向けながらハリーの方へ歩いてきた。
「…………ミスター・ポッター、何があったかはまた後で聞きますから、今は寮に戻りなさい。ミスター・ウィーズリーとミス・グレンジャーは私たちが医務室に連れていきます。」
「はい、先生……」
ハリーは大人しく言葉に従った。
友人たちが心配でないと言えば嘘になるが、今はもう現実を忘れたかった。
これが夢であることを願いながら、ハリーはグリフィンドールの寮へと帰った。
『細いチ○チンね~www』
最悪の煽りの声を背に。
多少上向いていたハリーの気分は、再び急降下した。
次の日、いつもと変わらない姿で廊下に立つ第一の変態が、何割か増しでこちらに笑顔を向けてきたことに、ハリーは額の傷の痛みよりも余程大きな頭痛を感じた。
この時ハリーは気付いていない。
この学校で見かけたこのような変態は、3人だけではなかったことを。
誤字がある毎に掘りゲージが溜まります。勢いで書いて何も確認していませんが、多分誤字は無いし、僕はどうせちゃんと読み返さないので溜まらないと思います。