病院での長い夜を開けて俺と上原パイセンと新野は今現在ホテルに戻って来ていた。
「……パイセン? リョースケはどうなりましたか?」
ピザを美味しそうに食べてるパイセンと肩の脱臼の影響の所為か……動かすと激痛が走り終始涙目ではあるものの口に運ばれたピザをモグモグ食べてる新野と新野の世話を焼いてる俺が居る。
「うん? ああ、あのもやしなら違法ヤー……いや、一瞬のスキを突かれて逃げられたぜ。いやー参った参った」
上原パイセンは笑いながらそう答えるが……新野は逆にほっと溜息を吐いたようだけど、上原パイセンからもやしが逃げられる筈が無いのだ。
そして、パイセンは逃げられたと言うわりには全く慌てておらずピザに手を伸ばしていた。
俺の考えが正しければ上原パイセンはリョースケを犯罪の温床と名高い外国人が運営する違法ヤードに連れて行き身柄を渡したのだろう。
ここに来るまでの間に輩との接点は出来ている訳だから、そう言ったやり取りもしていておかしくないのだ。
「まぁ~いない人間の事なんて考えたってしょうがないし、これからの事を考えようぜ……なぁニノちゃん!」
上原パイセンに話を振られるとビクビクし始めた新野改めニノは俺の方を見て助けを求める。
正直助ける理由は全く無いけれど、流石に両肩脱臼をさせたのはやりすぎたし俺も反省するべきなんだろうな……例え服の中にナイフを仕込んでいたとしても、実際に向けられた訳じゃ無いのだ。
「上原パイセン程々でお願いします。では……ニノさん」
「ハ、ハイ!」
背筋を伸ばして俺の方を見て返事をする姿は殊勝ではあるな。
「今回の件ですが……お互い水に流しませんか?
「……水に流さなかったら?」
「不幸な事に私達は出会わなかった以上……ニノさんは行方不明に「流します! 流しますから!」それは良かったです。じゃあ……明日は飛行機で帰りますよ」
「おう、一応到着したときに大丈夫なように俺の知り合いに迎えに行くように言っておくから、そのまま病院に連れて行ってもらえ」
「パイセンありがとございます!」
色々とあった宮崎だけど……とりあえず、明日には帰るとしよう
リョースケ問題も無事に解決したから、雨宮吾郎も生存するはずだし……後はニノを落とせばアイは死なないと思う。
ニノにピザを食べさせながらも俺自身も食べる
腹も膨れた事で、俺は自分の部屋に戻ろうとしたところでニノに見捨てないでと言わんばかりの目で訴えられた。
正直な事を言えば……パイセンは降りかかる火の粉を払っただけに過ぎないけれど……ニノからしたら理不尽の塊みたいなものだから、怖くて仕方ないのだろう。
「ニノさん私の部屋に来ますか?」
俺がそう言うとニノはコクコク頷いて近寄って来た。
これが普段の姿なら男なんて引く手あまたなのに……アイの事が気になり過ぎてる所為で自身の魅力に気が付いていないのは本当にもったいないな。
とりあえず、ニノと共にベットで寝る事にしたけど……はて何か忘れているような……?
次の日早速朝一番の飛行機に乗り俺とニノは東京に帰還した。
こうして思えば車の旅と言うのは中々刺激的で……二度とこんな目には合いたくないと思わずには居られなかった
飛行機内はケータイの電源を落とすのがマナーなので到着まで暇だったので、ニノの面倒を見ていたら……東京に着いた時にはある程度の信頼関係を築けるようになっていた。
そして、ケータイの電源を入れた時だった。
「……うわっ着信件数100件とか……やり過ぎでしょう」
着信履歴を見て見るとそれは全てアイだった。
面倒くさいけど一旦連絡するか……
「……もしもしアイさん?」
「ヒカル君今何時だと思っているの! もう赤ちゃん生まれて10時間も経ってるんだよ!」
あっ! 赤ちゃんに会いに行くの忘れた!
まーでも色々あったししょうがないか!
「すみませんアイさん……子供に関してはまたの機会で会いに行きますよ」
「待ってよ! ヒカル君今どこにいるの! 其処に行くから待っててよ」
「待つのは構いませんけど……もう東京に戻ってますね」
「なんでよ!!」
アイからの絶叫は続いていたけど……帰ってしまったものはしょうがないので通話を切った。
「だ……大丈夫なんですか? アイかなり怒っていましたけど?」
「まー人間誰しも怒る時は怒るものですし……今度会った時にでも謝っておくので大丈夫です」
ニノはかなり驚いていたけど……アイが怒る事なんてそんなに驚くに値しないと思うけど……
「……私の時もこれぐらい言い返してくれればよかったのに……」
何やらニノはぼそっと呟いたけど……アイの事なんて気にせずのびのびとアイドル活動していれば良かったんじゃないかな?
「……聞きたいんですけど、なんでそんなにアイさんに執着してるんですか? 唯同じグループでのアイドルってだけの話じゃないですか……」
「だって……だって……アイは私よりもアイドルしていて……ステージの上では誰よりも光り輝いてるんだもん。憧れない訳が無いじゃない!」
そうは言っても……別にアイとニノが肉体関係やまして付き合っている訳でもないのだから嫉妬しても仕方ないのに……
「アイさんに憧れるのは別段良いと思いますけど……アイさんがアイドルらしいからってニノさんには何一つ関係無いですよね?」
「関係無いけど……周りのみんなはアイは私より可愛いって言うし……私は辛かったの!」
「……いえ、外見の話だとニノさんも可愛いですけど? 正直言えばアイさんよりは抱きたいなと思います」
「わ、私をアイよりも抱きたい!?」
何でそんなに驚いているのか分からないが……俺から見ればアイもニノも大した差は無い
「昨日も言いましたが……アイさんは恐らく幼少の頃から性的な目で見られているのに気が付いてましたから、それを研究してステージの上で遺憾なく発揮してるだけです。つまるところアピールが上手いんです。でも、ニノや他のメンバーはそう言った経験が無いのでアピールが下手なんですよ」
「……ど、どうすれば良いの! 私もアイにみたいに輝きたい!」
「とりあえず、肩が治ってからですね」
ニノにそうアドバイスをしながら外に出ると……
「カミキさんで合ってますか? 上原さんから話は聞いてます」
おもっくそヤバそうな人に出迎えられた。
「ひぃ!」
ニノは短いながらも悲鳴をあげて飛び上がるほど驚いていた。
いや、俺も正直心臓が破裂するくらいバクバク言ってるからね!
「ちょっと待ってくださいね……」
パイセンのことだから恐らく写メか何か送ってくれている筈……そう思って慌ててケータイを見ると……写メが届いており、確認するとおもっくそヤバそうな人が写っていたので間違いではなかった。
「……それではカミキさん確認も取れたようなのでこちらの車に乗ってください」
車は……高級車でも何でもない唯の軽自動車だった。
俺とニノは後部座席に乗り込むとヤバい人は一瞬寂しそうな顔をし始めた。
でもね……無理なもんは無理だからね!